
作品の概要と感想(ネタバレあり)

壊滅的なハリケーンに襲われた沿岸の町。
取り残された住民たちは、急激な増水とそこにうごめく飢えたサメたちを相手に生き延びるための戦いを余儀なくされる。
2026年製作、アメリカの作品。
原題は『Thrash』で、Netflixのオリジナル作品。
観終わってから気がつきましたが、監督は『バイオレント・ナイト』のトミー・ウィルコラ監督だったようです。
テンポの良さや散りばめられたギャグ要素は、確かに通ずるものがありました。
ずっと観たいと思いながら積んでいる『処刑山 デッド卍スノウ』も同監督のようで、そろそろ観ないと、という気持ちが強まりました。
本作は、一言で言えばシンプルかつ良質なサメ映画でした。
ぶっ飛び路線ではなくリアル路線で、程よく緊張感もあり、頭空っぽで楽しめるサメサメパニック。
細かく見ればツッコミどころは満載なので、感想は観終わった勢いでの「楽しかった~」に留めておくのが正解なジェットコースター映画ですが、「楽しかったです。終わり」というのはブログ的には非常に躊躇してしまうので、少しだけだらだらと振り返ってみましょう。
まず良かった点ですが、一番に評価したいのは、これだけサメ映画が飽和している中で、あえてリアル路線の作品であったことです。
他のサメ作品の感想でも書いていますが、もはや発想勝負でコメディ寄りなサメ映画が多くなっている中、リアル路線のサメ映画というだけで貴重です。
ハリケーンにより町にサメが溢れるという設定的は、ハリケーンからのワニワニパニックな『クロール ―凶暴領域―』に似ている、というよりほぼ同じ。
町全体が水に吞み込まれるという壮大さの一方、スポットが当たるのは限られた数人のみという点も似ていました。
もう一つ良かったのは、サメのクオリティの高さ。
CG感丸出しなサメも多いですが、本作のサメはしっかりとリアルさがありました。
サメに限らず全体的に映像の質が高かったのは、Netflixの余裕(予算)の現れでしょうか。
人体破壊はそこまででしたが、チープとまでは言えず十分許容範囲。
高潮で津波が押し寄せる映像の迫力は、3.11の恐怖が刻まれている日本人としては心拍数が上昇し、町全体が吞み込まれていく恐怖と絶望感に溢れていました。
一番クオリティが低かったのはCG赤ちゃんかもしれませんが、実際の赤ちゃんをプカプカさせるわけでにはいかないので、それは仕方ありません。
CG赤ちゃんは『イカゲーム』などでも使われており、最近よく見るようになった印象ですが、本物の赤ちゃんを使うには限界や制限がかなり大きいと思うので、技術の有用な活用でしょう。
ただ、まだCG感は目立ってしまうな、と感じます。
トータルで見ると楽しめて好きでしたが、個人的に微妙だったポイントもいくつか。
まずは、壮大な設定に対して、何だか狭く浅く終わってしまったような印象が拭えない点。
色々な設定が、すべて表面をつまんだだけで終わってしまったような印象です。
まぁアニマルパニックモノはそういうものではありますが、もうちょっと活かせそうな要素が多かった気もします。
サメの登場も早く、テンポも良く感じられたのですが、そのせいもあってか、登場人物の掘り下げは最小限。
さほど感情移入はできないままの数人だけにスポットが当たっていたので、このキャラは助かってほしい……!というドキドキ感はやや弱めでした。
最初にリサ(妊婦)を助けに来た男性2人が死んだときが一番ショッキングだったかもしれません。
登場人物はだいたいテンプレ的で、緊迫した状況に出産間近の妊婦という設定ももはや定番ではありますが、リサ(妊婦)はどうにも見ていてイライラしてしまいました。
必死で余裕がないのもわかりますが、何だか常に偉そうで、ちょっとその態度どうなん、と正直思ってしまったこともしばしば。
メインキャラの中でも中心っぽかったダコタすら、早くに両親を亡くしている、それによってパニック発作っぽい症状があったり引きこもっている、といったよくあると言えばよくある設定以上の深みはありません。
元来の聡明さと強さで目の前の困難を乗り越え、ダコタ自身の課題も乗り越える、という展開も王道であり安定はしていますが、目新しさはなし。
一番個性を放っていたのは、養子の3きょうだい(ロン、ディー、ウィル)でしょうか。
こういう作品にしては嫌われ役や自己中やらかしキャラが少なかったですが、ビリー夫婦がその役目を一手(二手?)に担っていました。
ビリーは序盤からその傾向はありましたが、最期は完全なるギャグキャラに。
食肉加工会社のタンクローリーを運転していたおじさんは、何がしたかったのかいまいちわかりませんでしたが(いやもちろん、彼なりにあの車で助かろうと懸命だったのでしょうが)、最終的に大量の肉と血?をぶちまけてサメをおびき寄せてしまったので、本作随一の戦犯でした。
まぁあそこで銅像に引っかかってタンクローリーが真っ二つになるのは、不運としか言いようがありません。
ダコタの叔父で海洋生物学者であるデイルはかっこいいおじさんでキーパーソン感が半端なく、大活躍するか、あるいは壮絶な死を遂げるかの2択かなと思いましたが、あれ、どっちでもなく、そんなに目立つこともなく……。
ちょいちょい挟まれるギャグは、面白かったですし程よい緩急になっていましたが、ちょっと中途半端にも感じてしまいました。
特に、後半に進むにつれてギャグ要素が増えていったので、緊迫した災害+サメパニックとしては失速感も否めません。
それでも、パニックな前半に対して後半はドラマ性とサバイバルがメインとなっていたので、86分というコンパクトさもあり、最後まで飽きることはない作りでした。
ご都合主義的な展開はこのような作品では当たり前ですが、無駄に細かい伏線回収(水中出産やステーキなど)が多く、それが必要以上にご都合主義感を強めてしまっていた印象も。
色々と繋がるのは面白かったですし、デイルが長年追跡していたホホジロザメのネリーが助けてくれた(?)のは、予想できたとはいえインパクトがある画で良かったです。
あとは、野暮ながらどうしても気になったところを突っ込んでおくと、
・ナイフで切り裂けるあのぺらっぺらの車の屋根、何?(オープンカーになる的な?)
・半分水に浸かった状態だと、たぶん車のドア開かないですよね
・リサが車に閉じ込められてる間、水位、全然上がってなくない?
・水の中にあれだけ閉じ込められていたのに、全然低体温になってなさそう
・出産直後に元気すぎない?(アドレナリン全開どころか限界突破?)
・ダイナマイトの爆発、思ったよりしょぼい(血肉が飛び散ったところは良い)
・サメ、もっとたくさんいなかった?
といったあたりでしょうか。
ラストは、ボートの先端に座っているニュースキャスターにサメが飛びかかってエンドロールで間違いなし!と思いましたが、まったくそんなことはなく、珍しくそのままハッピーエンドでした。
というわけで、全体を通して見ると、完全なリアル路線としてはご都合主義が目立ちすぎ、コメディと言うには笑いに振り切っていたわけでもなく、ドラマとしては登場人物がテンプレで薄い。
中途半端な設定や展開が目立ち、異なる視点もクロスオーバーするわけでもありませんし、色々混ぜ込まれていたけれど軸足がどこに置かれているのかわかりづらい、というのが正直な感想です。
特に尖った要素があるわけでもないので、数あるサメ映画の中で記憶に残るかというと微妙なところ。
それでも、丁寧なサメ+災害のパニックモノとして十分楽しめるので、求めていたものはしっかりと得られた1作でした。

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