【映画】ダークハウス(ネタバレ感想・考察)

映画『ダークハウス』
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『ダークハウス』

幽霊屋敷と噂される廃墟で5人の若者たちが惨殺された。
捜査を開始したルイス刑事は、恋人である精神分析医クラインを現場に呼び、唯一の生存者ジョンから話を聞くことに。
ジョンの証言によると、若者たちは降霊術で呼び出した悪魔に殺されたのだというが──。

2015年製作、アメリカとイギリスの合作作品。
原題は『Demonic』。

安心と信頼のジェームズ・ワン!
というわけで、個人的に大好きなジェームズ・ワン製作の本作。
内容や展開は相当に粗い印象なのですが、なぜか好き。
監督は別の人(ウィル・キャノン)なので、ジェームズ・ワンはどこまで関わっているのかはわかりませんが、やはり自分はジェームズ・ワン作品が好きなようです。

原題が『Demonic』で「悪魔的な」といった意味なので、オカルト路線なのは最初から隠すつもりはなさそうでした。
霊の仕業、と見せかけて実は悪魔の仕業でしたが、その点も原題からは容易に想像はできます。
なので、そこは別に意表を突くつもりはなかったのでしょう。

ニュース映像から始まる演出も定番ではありますが、過去の事件や儀式といったキーワードから始まる冒頭の映像は、ワクワクしました
その後のホラー要素も、ジャンプスケア中心で、基本的にはどこかで見たことがあるような演出が多く続きます。

悪魔というのもホラー映画では定番中の定番ですし、本作ならではの個性はそれほど強くはありません
それなのに不思議と飽きずに楽しめたのは、見せ方などが上手かった、というか自分に合っていたのかな。

先に事件ありきで、生存者の証言を通して真相が明らかになっていく構図も、斬新というわけではありませんが面白かったです。
ただ、序盤から複数の登場人物や時間軸が入り乱れるので、状況把握に少し戸惑う場面もありました。
異常現象の起こる家の中のあらゆる場所にカメラを設置する、というのももはや定番ですが、POV要素がそれほど強いわけでもなく、カメラ映像の使い方がほど良いバランスで良いアクセントになっていました。
小物の使い方や雰囲気作りも好き。


難点としては、設定がだいぶ粗いのは上述した通りですが、明らかに矛盾というか、どう考えてもよくわからない部分がありました。
ただ、おそらくそれは意図して整合性は放棄されたものでしょう。
ラストのどんでん返しはザ・ジェームズ・ワン感もありますが、細かくすべてが繋がるというより、強引にでもミスリードさせてのインパクト重視で、勢いを楽しむことに重きを置いた作品なのだろうと感じました。

なのでそれは良いのですが、どうしてももどかしかったのは登場人物たちの魅力の乏しさでした。
ルイス刑事はかっこいいですが、だいぶ感情的で高圧的。
やり手っぽいのはわかりますが、パワハラ気質で、部下は大変そう。

ルイス刑事の恋人、心理学者のクラインは、最初にちょっとジョンを気遣って共感する姿勢を示した程度で、特に心理学的なアプローチは見られませんでした。
ただただ順を追って記憶を手繰り、証言を引き出していくだけだったので、「あえて心理学者である必要があったのかな……?」というのは思ってしまいましたが、「失われた記憶をスムーズに引き出す」という点が、心理学者であれば説得力が増すと考えられた結果でしょうか。

ちなみに、単純に自分の専門なので細かく気になってしまうだけですが、U-NEXTのあらすじなどでは「殺人事件の生き残りである青年が精神分析を受けることで、その事件の全貌が少しずつ語られていく」など「精神分析」という言葉の使用が散見されますが、精神分析的なアプローチも皆無です。

若者側は、とにかくブライアンが「何もそこまでしなくても」と思ってしまうほど嫌味を極めたキャラでした。
どれだけミッシェルに未練があるのかわかりませんが、そこまでジョンに突っ掛からなくても。
ホラー映画の登場人物に人格者を求めているわけではありませんが、その中でも理解し難いランキング上位に食い込むようなキャラでした。

そんなブライアンを放置する周りも周りですし、ジョンの恋人ミッシェルとその兄サムも、ジョンが打ち明けた悩みをあっさりブライアンに持っていくところは、やや配慮に欠けている感が否めません。
技術担当で人見知りなドニーは「何もそこまでしなくても」と思ってしまうほど相当ヤバめな変態でした(しかも特に意味はなし)’。
やはりオカルト好きは変人が集まるということでしょうか(偏見)

そんなはちゃめちゃ集団だったので、若者側のシーンは終始空気感が険悪で、観ていて居心地が悪かったです。
ジュールが一番まともでヒロイン感があったかもしれません。

ジョンは、生き残りというだけで特に証拠もないのに疑われ、脅迫レベルで自白を求められていたのもかわいそうでしたが、あれはあれで本物のジョンではなかったですし、結果犯人というか元凶だったので、結果オーライだったと言えるのかどうか。
一応、取り調べの様子を撮影していましたが、あれでジョンが本当にただの被害者だったら、問題にならないんですかね。

という、ちょっとキャラに魅力が乏しい点が没入感と緊張感を低下させてしまっており、ジェームズ・ワン絡みのオカルトホラーとしては『死霊館』『インシディアス』に軍配が上がってしまいますが、83分というコンパクトさもあり、楽しめた作品でした。

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考察:出来事の整理と、どうしようもない謎(ネタバレあり)

映画『ダークハウス』

出来事の整理

まずは簡単に、起こっていたことの流れを整理したいと思います。

遡ること20年以上前の1988年、若者たち(おそらく6人)がリビングストンの家で降霊会を行い、その影響でマーサ・リビングストンが若者4人を殺害し、自身も自殺しました。
そのときの唯一の生き残りがサラ・マシューズで、その息子がジョンです。

ちなみに余談ですが、冒頭のニュースであったリジー・ボーデン事件というのは実際にあった事件です。
1892年、ボーデン夫妻が斧で惨殺された姿で発見され、娘のリジーが犯人とされましたが、裁判で無罪となり、以降、現在まで未解決のまま。

『ダークハウス』に話を戻すと、大人になったジョンは、数年前に亡くなった母親サラがリビングストンの家にいる悪夢を見るようになりました。
それを恋人のミッシェルとその兄サムに話した結果、幽霊の存在を証明したいグループでリビングストン家へ。

その結果起こったごたごたが本作のメインですが、儀式を行ったのち、ジョンがサム、ドニー、ジュールを惨殺して、自らも首を吊り自殺。
取り憑かれたらしいブライアンも、ルイス刑事に撃たれて死亡。
ジョンの子どもを妊娠していたミッシェルは監禁された状態で見つかり、救助されますが、実はそのお腹には悪魔が宿っており、儀式の成功によって悪魔の解放が示唆されて終わりました

と、いうのが大筋ですが、非常に謎が多い本作。
ほとんど解決できず、細部を検討してはいけない感もある作品ですが、以下、主要な謎2点を検討してみたいと思います。

残された大きな謎たち

結局、悪魔は何がしたかった?

悪魔の仕業だった本作において、一番の謎はやはりその目的です。

ここは作中でも説明されていた「儀式を行い、参加した全員を殺害すれば解放される」というのが目的であったと考えられます。
リビングストン家の床にあったシンボル「左道の封印」は、悪魔を封じ込める場所を示すものだったようです。
つまり、悪魔はあの家に封印されていたので、解放を目指したのでしょう

ここで問題となるのが、過去のマーサ・リビングストンの事件です。
あの事件では、若者たちが降霊会を行った理由や目的は不明ですが、本作と同じような事件が起こりました。
5人が死亡して1人だけ生き残った、という点も同じです。

ジョンたちの事件において、ジョンの姿をした悪魔は「儀式は成功した」と言いました
つまり、ミッシェルは「器」であったため、ミッシェルは死んでいなくても他のメンバーが死亡すれば儀式は成功、という解釈のようです。

そうすると、過去の事件でもサラが「器」だったので、儀式は成功していたのでは?ということになります。
その場合、当然ながらジョンが悪魔ということになります。
ジョンたちの年齢ははっきりわかりませんが、当時サラが妊娠していたとなると、本作のジョンは20代ということになるので、当時サラが妊娠していたと考えても不自然ではありません。
儀式の最中に妊娠しているお腹が痛み、「(手を)放して」というセリフをサラもミッシェルも放った点も、合致します。

本作で成功しているのであれば前回も成功しているので、すでにジョンは悪魔として解放されているはずで、あえて本作で改めて儀式を行い、ミッシェルの身体を器として解放されようとした理由がわかりません

過去の儀式が成功していなかったので、今回改めて解放のために儀式を行ったというのであればわかるのですが、今回と前回で構図はほとんど一緒。
そのため、この点が最大の矛盾点というか、本作の設定の根源を揺るがすポイントとなってしまっています。

やや強引に解釈するとすれば、サラは事件当時は妊娠していなかった、という可能性も考えられます。
その場合は、全員殺害できなかったので、儀式は失敗。
しかしその場合は、「以前はサラが器だった」という悪魔のセリフが矛盾してしまいます。

儀式は失敗しましたが、悪魔は何とかぎりぎり生き残りのサラの身体に潜り込み、ジョンとして生まれましたが、真の解放までは至っておらず中途半端。
なので今回、改めて若者たちを誘い込み、儀式を完成させた。
ジョンの父親については話題にもまったく出てこなかったので、可能性としてはあり得るかもしれませんが、ちょっと都合が良すぎる気もします。

最初の方で述べた通り、細部の整合性を求める作品ではありませんが、あまりにも粗く感じてしまったのはこのポイントでした。
ただ、何か見落としがあるかもしれないので、違うご意見があればぜひ教えていただきたいところ。

ブライアンはどうなっていた?

ブライアンは、儀式後、リビングストンの家から脱出し、車を盗んで逃走しますが事故ってしまい、駆けつけた警察官の銃を奪って逃走して、店に強盗に入ります。

本作における黒幕は悪魔でしたが、乗っ取られたのはジョン(あるいはもともとジョンが悪魔)で、残されていた映像からも、若者たちを殺したのはジョンで間違いありません
では、このブライアンの行動は何だったのでしょうか。

血痕が残されていたことからも、ブライアンは牛乳受けから脱出したようです。
ジョンに襲われて逃げたというのが妥当でしょう。

ブライアンに悪魔が取り憑いていた説もありかもしれませんが、そうすると、悪魔はあの家に封印されていて、そこからの解放を目的としているはずなので、家から出られているのが謎になってしまいます。
悪魔ジョンが犯人として、ブライアンはあくまでも(ダジャレじゃありません)逃げただけと考えるのが自然です。

悪魔ジョンが、今回のように手間暇をかけた事件を起こし、ルイスやクラインと対話を行ったのは、目的からすると意味がありません。
さっさとミッシェル以外殺害して、ミッシェルだけ発見・搬送されて封印の上を通過すれば、目的は達成できていたはずです。

今回のような手間をかけたのは、ブライアンを逃してしまったからとしか考えられません
ブライアンも殺さないと儀式は成功しないので、そのためにブライアンを犯人に仕立て上げ、警察に探させたというのが一番しっくりきます。

拳銃を奪って逃げ出したブライアンが店に入った際、「警察を呼べ」と店員に言っていました。
えっ、舌ないんじゃないの?
というのが死ぬほど気になりましたが、あの場面、どう見てもブライアンが店員に言っているようにしか見えません。
ブライアンの口元はすでに血だらけでした。

その点は些事として置いておくと、ブライアンは家やジョンから逃げ出したという前提なので、店員に助けを求めたのは理解できます
いや、その前に警察官に助けてもらえたのに撃って逃げたやん、というツッコミが生じますが、ジョンが追いかけてきたと勘違いして錯乱したのかもしれません。

しかしそうなると、店員を殴ったのも、警察に囲まれてすぐ助けを求めず立てこもったのも、無線に向かって叫んだのも、訳がわかりません。
百歩譲って、ジョンとブライアンの無線が繋がった時点でジョンに操られた可能性もありますが、そうだとしても、それ以前に店員をボコスカ殴ったりした理由は説明がつきません。
舌がなくて喋れないので、ジョンへの怒りを伝えるために無線に怒鳴った可能性もありますが、そうだとすると間髪入れずに椅子から吹っ飛ぶというリアクションを見せた悪魔ジョンのアドリブ力が高すぎます。

なので、あくまでもブライアンが悪魔に乗っ取られてみんなを殺したとミスリードさせるための演出でしかなかったのかな、という結論に至ってしまいます。
この点もだいぶ根幹をなしている部分なので、いくらエンタメ重視とはいえちょっと……と感じてしまう点でした。

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