作品の概要と感想(ネタバレあり)
物欲主義な子どもたちに嫌気がさして久しく、なにかと疲れ気味のサンタクロースは、それでも体に鞭を打ち、良い子にプレゼントを届けるため、トナカイの引くソリに乗ってクリスマスイブの空を駆け回っていた。
とある富豪一家の豪邸に降り立ち、煙突から中へ入ったサンタは、金庫にある3億ドルの現金を強奪しようと邸内に潜入していた悪党のスクルージー一味と鉢合わせてしまう。
見なかったことにしてその場を去ろうとするも、すぐさま大騒動に発展。
子どもたちにプレゼントを届ける能力はあっても戦闘能力はゼロのサンタが、武装集団を相手に孤軍奮闘する──。
2022年製作、アメリカの作品。
原題も『Violent Night』。
いやぁ、面白かったです!
その一言に尽きる、頭空っぽにして楽しめる系のブラックなユーモアが散りばめられたアクションコメディ。
まさにエンタテインメント。
このブログで扱うかどうか微妙なラインですが、グロさもありましたしせっかくなので簡単に。
It’s 『ダイ・ハード』 meets 『ホーム・アローン』
と、日本版の予告では表現されていましたが、まさにその通り。
作中でもその2つの作品名は出てきていたので、オマージュというかリスペクトされているのは間違いありません。
トミー・ウィルコラ監督のインタビューでも、「『ダイ・ハード』に強くインスパイアされている」と述べられていました。
それにしてもあらゆる完成度が高かったです。
主な舞台となるライトストーン家の豪邸は、クリスマスの装飾も含めてあまりにも美しい。
主要キャラも早々にキャラがつかみやすかったです。
コメディ要素もくどくなく、程よいバランス。
そして何より、展開がシンプルながら無駄がありません。
強盗側もザ・悪役顔揃いで、やる気がないのに根が優しくて頑張っちゃうサンタとの対決は、クリスマスという日付とも相まってまさに現代版『ダイ・ハード』以外の何ものでもありません。
スクルージ役のジョン・レグイザモは『ダイ・ハード2』にも出ていたようで、全然覚えていませんが、そのときもスノーモービルに乗っていたようです。
サンタをサポートするトルーディによる『ホーム・アローン』ばりのトラップは、まさかの「前日に『ホーム・アローン』を観た」という直球設定。
かといってトラップも無理があったり多すぎることもなく、あくまでもメインはサンタでありバランスも良かったです。
監督のインタビューでは「本作はクレイジーなアクションあり、ゴア描写あり、ユーモアありの映画ですが、それでも、ストーリーはつねにサンタクロースと少女(トルーディ)の関係性へ立ち返るようなものにしました」とも述べられており、まさにその点が、軸のぶれない安定感に繋がっていたように感じます。
その他の面でも冗長さはほとんどなく、112分の中でどんどん新しい展開が繰り広げられるので、飽きることもありませんでした。
サンタクロースは最初思ったより弱すぎて、早々にジョン・マクレーン(『ダイ・ハード』の主人公)以上にボロボロになって心配になりましたが、後半は完全に無双状態で爽快。
そこも緩急があって良かったですし、手に馴染みのあるハンマーを手にしてから無双状態になるというのも、きちんとした背景設定がなされていました。
しかし、サンタクロースはオフィシャルでも「戦闘能力ゼロ」と謳われていますが、中世の時代頃には甲冑を着て脳天潰しで暴虐の限りを尽くしていたようなので、「1000年以上経って老化もした現在は」ということかもしれませんが、さすがに戦闘能力ゼロではありませんでした。
やさぐれた感も含めて、デヴィッド・ハーバーはぴったりでした。
サンタの煙突の移動の仕方も、プレゼントが入った袋も、子どもたちの情報が書かれた巻き物(?)も、どれもさり気なく描かれながらも感心する発想力でわくわくしましたし、CGのレベルも高く感じました。
しかもそれらを活かして敵の情報を得たり戦ったりと、設定の活かし方もかなり緻密です。
トランシーバーでサンタとトルーディが会話できるようになる流れなども見事でした。
バトルで言えば、やはり個人的にはしっかりとしたグロさがあったのも良かったですね。
ポップな曲でマイルドになっていますが、それでも誤魔化せず(当たり前)にレイティングがR15+になっただけあるゴア描写。
倒し方もバラエティに富んでおり、クリスマスのアイテムを使って殺していくところも面白いです。
『ダイ・ハード』『ホーム・アローン』に並ぶクリスマスアクション(コメディ)映画の金字塔になれる気がしますが、「サンタは実はいないんだ」という現実を取り扱っていることもあってか、お子様はお断りの親切設計(?)。
その点、大人向けに振り切っているところも素敵でした。
「サンタなんていないのが当たり前」という大人の価値観を逆手に取って、本物のサンタクロースという思い切った設定で、大人に夢や子どもの頃の気持ちを思い出させてくれるのも良い。
信じる気持ちの美しさや家族の絆を取り上げながらも、押し付けがましさはありません。
最後も結局、みんなが信じたからサンタクロースが生き返ったのかはわからず、あくまでも「クリスマス・マジック」で終わらせるところも好きです。
唯一、生粋のお馬鹿枠だったモーガンがあっさり殺されてしまったのは意外でしたが、もはや誰も悲しんでいないところが面白かったです。
事件後も、息子のアルバは父の死を悲しむどころか強盗の死体を前に配信するなど、現代的要素もばっちり(エンドロールの途中で挟まれるシーンなので、見逃した方は見てみてください)。
あのアカウント、BANされるでしょうね。
製作会社の「87ノース・プロダクションズ」は、2019年に設立されたばかりのまだかなり新しい組織のようです。
しかし、アクション映画に特化した製作会社で、すでに『Mr.ノーバディ』『ブレット・トレイン』といった有名作品を手掛けているだけあり、アクションも非常に高い完成度でした。
今後も期待。
そんなわけで、考察要素などは皆無で、頭を使わずひたすらポップに楽しめる最高のエンタテインメントでした。
あらゆる面でシンプルイズベストかつ完成度が高く本作が完成形でしょうが、評価も高めですし、いつか続編もできそうですね。
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