【映画】カッターヘッド 真夜中の切断魔(ネタバレ感想・考察)

映画『カッターヘッド 真夜中の切断魔』のポスター
(C)2018 Screen Gems, Inc. All Rights Reserved.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『カッターヘッド 真夜中の切断魔』のシーン
(C)2018 Screen Gems, Inc. All Rights Reserved.

ローラは幼い娘マディとケイラを連れて湖畔の別荘へ向かう。
夫ショーンは仕事の都合で遅れてくる予定だ。
別荘に到着したローラは、周辺の警備をしているオーウェンから、別荘の前の持ち主についての話を聞かされる。
その一家の幼い息子が行方不明になり、残された家族は悲しみに暮れて引っ越したのだという。
日が暮れた頃、マディが突然腹痛を訴えはじめ、紙くずを吐き出す。
その紙には「HELLO」と書いてあった。
やがて、玄関をノックする音が聞こえ──。

2018年製作、アメリカの作品。
原題は『He’s Out There』。

湖畔の別荘で殺人鬼に襲われるという、『13日の金曜日』の流れを汲むシンプルなスラッシャーホラーでした
ただ、主な登場人物はローラら4人家族と殺人鬼ジョン、そしてご近所さんのオーウェンだけ。
犠牲者もショーンとオーウェンだけなので、全体的にこぢんまりとした印象でもありました

周囲に何もない(なさすぎる)別荘にローラと娘2人だけの状態で、夜中に謎の殺人鬼が襲ってくるというシチュエーションは良かったです。
インパクトは強くないですが、「いかにも」な殺人鬼マスクも好き。
犠牲者は少ないですが、殺害シーンは一瞬だったり安っぽかったりすることもなく、あっさりはしていつつも低予算(?)ながら頑張っていた印象。
子どもたちの演技も良かったと思います。

メインで描かれるのはローラ一家だけですが、特に本作を通じて家族の確執が解消したり絆が深まったりするわけではないところも、理不尽な殺人鬼による恐怖に焦点が当てられてるのがはっきりしていて良かったです
「母は強し」でありながらも、ショーンの死体を見たショックで娘たちの前で泣いて弱さを見せてしまうところもリアル。
終盤はあの怪我で動けるのは脅威的でしたが、それこそ母親パワーで、一生分のアドレナリンを総動員したのでしょう。


一方で、小規模な分、89分という短さの割に冗長さも否めませんでした
そもそも「ローラと娘2人は生き残るのでは?」という予想があったので、夜中に謎の殺人鬼に襲われる緊迫感はうまく描かれていましたが、心のどこかで安心感も。

ショーンは思ったよりあっさり殺されてしまい、他に死に要員がいないので「オーウェンが来るぐらいしかなさそうだけど、こんな時間に来るのも不自然だしなぁ」と思っていたところ、普通に来ましたオーウェンさん
だって、あれ、夜中の3時ぐらいですよ。
むしろあんな時間に来る方が怪しすぎて、オーウェンも共犯なのかとすら思いましたが、まったくそんなこともなくこちらもあっさりと殺されてしまいました

久々に人が来たから、夜中にも見回ってくれていたのでしょうか。
そうであればあまりにも良い人すぎますし、何かあったわけでもないのに夜中に見回りしないといけないほど治安が悪いのであれば、そもそもそれが問題な気もします。
ドタバタ騒いでいたので、何かしら不審を察知して見に来てくれたのかもしれませんけどね。

ローラか子どもたちの誰かしらが殺されていたら尖った作品になっていたかもしれませんが、冒頭で話題に出てきたジョンが殺人鬼の正体だったことも含めて、予想を裏切るポイントはほとんど皆無な、良くも悪くもオーソドックスなスラッシャーホラーでした


舞台は雰囲気は良いのですが、諸々謎が残りすぎるところはやはりマイナスポイントに感じてしまいました
考察できるような情報はほぼなく、「スラッシャーホラーだから背景設定は描かなれなくても問題ない」と割り切るにも中途半端なレベルでもないので、物足りなさや消化不良感が残ってしまったのも事実。
ただこの点は少し考えられる点がなくもないので、後述します。

本作の教訓は「スマホは車に置きっぱなしにせず持ち歩こう」「見知らぬものを口にするのはやめよう」でした。
というか、別荘にも固定電話があるとはいえ、ショーンが遅れてくるのにスマホを車に置いたままにしていたローラはなかなかズボラ。
マディの体調は、いつの間にか何事もなかったかのように回復していたので良かったです。

邦題で失敗するのはいつものことですが、「真夜中の切断魔」はかなりスプラッタ展開を期待させてしまうので、良くないですね。
切断魔というわけでもないですし。
そもそも原題は『He’s Out There』で「彼はそこ(外)にいる」といった意味合いなので、スプラッタ押しではなさそうです。

序盤、マディの様子がおかしくなるのは『エクソシスト』など悪霊に取り憑かれた少女っぽかったり(結局トラップケーキのせいで体調が悪かっただけでしたが)、夜に地下のテント横に座って窓を開けて外を見ていたシーンは『シックス・センス』を彷彿とさせるシーンでもあり、オカルト路線にミスリードさせようとするような意図も感じられました

原題も合わせて考えると、序盤は『イット・カムズ・アット・ナイト』のように恐怖の正体が不明な雰囲気が強く、ヒトコワ路線なのか殺人鬼路線なのかオカルト路線なのかがわからないように作られていたように感じます
その点でも『カッターヘッド 真夜中の切断魔』というタイトルはネタバレ気味ですし、本作はU-NEXTで観たのですが、「襲いかかる殺人鬼!」とばっちり紹介されていたので、観る前から殺人鬼モノであるとわかっていた点が、序盤に冗長さを感じる要因になってしまっていたとも考えられます。

なので、序盤は冗長というよりむしろ低予算・小規模なりの工夫であり、情報が何もなければ何路線かもわからず楽しめたかもしれません。
とはいえ、現代では完全に情報なしで観ることもなかなかないですし、本作のような小さな(と言ったら失礼?)作品ではなおさらあらすじは見てしまうので、難しいところ。

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考察:殺人鬼ジョンの動機や背景(ネタバレあり)

映画『カッターヘッド 真夜中の切断魔』のシーン
(C)2018 Screen Gems, Inc. All Rights Reserved.

本作一番の引っ掛かりポイントはやはり、殺人鬼と化したジョンの背景や設定が不明すぎる点でしょう。
スラッシャーキラーは理屈じゃなかったり現実離れしていて構いませんが、それにしては情報が小出しにされていて中途半端さは否めません。
そもそも失踪した理由も謎で、残された家族は悲しみに暮れて引っ越していったことからは、不遇な家庭環境に置かれていたわけでもなさそうです。

失踪後はどうやって生きていたのかも不明。
オーウェンはジョンのことを「頭の弱い」と表現していましたが、ローラ一家の追い詰め方は行動を先読みした巧みなトラップが多く、ベッド下に隠れていたケイラとマディに話しかけていたときの様子からも、それほど知的に問題があるようには見えませんでした

ラストシーンでは倒したはずのジョンが消えていましたが、これをただの理屈を超えた定番の演出と捉えるか、ジョンは実はすでに人間ではなくなっていたことの示唆として捉えるか。
失踪後も生きていて、どうにかしてお茶会の準備などをして、毒入り(?)ケーキも用意して……などと考えるとどうにも不自然さが生じてしまうので、ジョンは「ジェイソン的な人間を超越した殺人鬼になっていた」と考えてしまった方が細かい点は気にならなくなります。

また、殺人の動機も、自ら描いた絵本的な絵に合わせて殺して目をくり抜いたり腕を切断したりしていたのも、目や腕をお手製人形にくっつけて儀式めいたことをしていたのも、本作の限りではまったくわかりません。
そこも「理由はない殺人鬼」とした方が、簡単に解決できます。

つまり、「失踪してその後も生き続けていたジョンが襲いかかってきた」という前提が間違っていることになります

では、なぜジョンが殺人鬼となったのか。
ジョンとは関係ないローラ一家以外となると、オーウェンしか登場人物がいません。

オーウェンはジョンの失踪を特段悲しんでいる様子はなかったので、オーウェンがジョン失踪の原因だった可能性は十分考えられます
監禁したりしていた可能性もなくはありませんが、失踪からかなりの時間が経過しているらしいことも踏まえると、実はジョンはオーウェンに殺されていたと考えるのが一番自然でしょうか。


殺人の動機に関してヒントになり得るのは、ベッド下のケイラとマディに話していた内容です。
そこでは「毎年ここで君たちを待っていて、ずっと見ていたのに、君たちは僕を見つけなかった」といったようなことを言っていました。
「声かければいいじゃん」で済む話ですが、実は彼は死んでいたとすれば、「見つけてほしかった」というメッセージになります

また、絵本の問題の答えを彼はわからなかったと言いました。
あの絵本の問いはおそらく、ラストシーンで朗読されていた「晴れた日に闇の隠れる場所はどこ?」であると考えられます。
その答えは明かされませんが、いくつか想像できます。
本作に絡めて考えられるのは「影」あるいは「心の中」でしょうか。
それはジョンを殺したオーウェンを暗示していたかもしれません。
オーウェンの闇に気がつけなかったから、彼は殺されてしまったのです。

いずれにせよ「見つけてほしかった」という言葉を踏まえると、彼は死んでいて、埋められるなり隠蔽されている可能性が考えられます。
「晴れた日に闇の隠れる場所」の答えの一つとして「土の中」もあります。

この説だと、真夜中にオーウェンがローラたちの別荘まで来たのも「ジョンの死体を見つけないかどうか心配だった」と少し説明がつけやすくなります。
まぁ、別荘裏手の森は果てしなく壮大だったので、奥深くに埋めればそんな心配もなさそうではありますが……。

ジョンはオーウェンに殺されてしまったのだとすれば、その後、家族が去ってしまった彼に残るのは孤独感のみ。
そう考えると、ローラ一家を襲い、目や腕を切り取ってお手製人形にくっつけていたのは、家族を求める行動だったのかもしれません。

オーウェンに対しては、殺人鬼として蘇ったのであれば、これまでにいくらでも殺す機会はいくらでもあったはず。
本作においてオーウェンを殺したあとも特に感慨深いリアクションは見せていなかったことからも、オーウェンに対する恨みはそれほどではなく、それよりも孤独感や家族を求める気持ちが強かったのかな、と考えられます

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