【映画】フューリーズ 復讐の女神(ネタバレ感想)

【映画】フューリーズ 復讐の女神(ネタバレ感想)
A Tony D’Aquino film, (C) 2019 Killer Instinct The Movie Pty Ltd, All Rights Reserved.
スポンサーリンク

 

作品の概要と感想(ネタバレあり)

【映画】フューリーズ 復讐の女神(ネタバレ感想)
A Tony D’Aquino film, (C) 2019 Killer Instinct The Movie Pty Ltd, All Rights Reserved.

ある夜、ケイラは友人マディとともに何者かに拉致される。
棺桶のような箱の中で目を覚ましたケイラは、森の中で朽ち果てた死体を発見。
悲鳴を上げた彼女のもとに、同じようにこの森へ連れてこられた2人の女性が駆け寄ってくる。
そこへマスク姿の殺人鬼が次々と現れ、女性たちを惨殺。
そして女性が殺されると同時に、1人の殺人鬼の頭が爆発する。
不可解なルールに翻弄されながらも、マディを探し出して一緒に脱出するべく奔走するケイラだったが──。


2019年製作、オーストラリアの作品。
原題も『The Furies』。
「フューリーズ(あるいはエニューリス)」はギリシャ神話における復讐の女神を指すようです。

8人の美女 vs 8人の野獣!
という設定だけでもう勝っているようなこの作品。
設定だけ面白そうで内容はチープな作品も多いですが、本作は予想していた以上に楽しめました。

シンプルなスラッシャーデスゲームですが、8人対8人という構図が光ります
何より、終始しっかりとゲームの描写に特化しているのがとても良かったです。
余計な描写や回想などで時間稼ぎをせず。
人数も多いので、最初からコンスタントにグロい描写が挟まれ、テンポも良く飽きませんでした。

人体破壊も派手ながらチープすぎず、変に隠して誤魔化すこともなく、頑張っていました。
Beast側の殺人鬼マスクもどこかで見たことがあるようなオマージュデザインが多かったですし、製作側のホラー愛と、「こういうのが好きなんだろう?」と言わんばかりの「理解わかってる」感がひしひしと伝わってきました
侮れません、オーストラリア。


余計な描写がないどころか説明は最低限、むしろ説明してほしい部分すら潔く切り捨てている姿勢も好感が持てます
こういったデスゲーム的な作品で、ルール説明すらないのはけっこう斬新な気がしました。
訳がわからない状況からスタートし、収集した情報だけから推測するしかないという、観ている側も主人公のケイラと同じ情報量しかないのが面白い。
目に機械を埋め込んで管理しているという設定もシンプルで良いですし、「こういうものなんだ。細かいことは気にしないで楽しめ」とばかりに科学的な説明は完全に放棄して押し切っているところも好き。

暗い部屋でモニターの明かりだけが灯り、謎の人物が監視しているというシチュエーションもコッテコテすぎて素晴らしいです。
今どき、あそこまで「いかにも」な部屋、なかなか見られません
死んだ人のモニターがドクロマークになるのも。

大富豪が娯楽のために仕掛けたデスゲームというのももはや目新しさは皆無ですが、男女ペアという設定が一つ加わるだけで、新鮮味を感じました。
まだまだ無限の可能性がありますね。
首が吹き飛ぶのは『バトル・ロワイアル』を思い出しましたが、影響を受けてたりするのかな。
『バトル・ロワイアル』は日本でこそデスゲームの金字塔ですが、海外での知名度はどうなのでしょう。

しかし、本作はBeauty側が死ぬとペアのBeastの首が吹き飛んでいましたが、逆はどうだったのかな。
Beastが死ぬとペアのBeautyが死ぬという描写はなかった気がするので(たぶん)、もしかすると、Beauty側が結束すれば全員助かることも可能だったのかもしれません
確か、ケイラが自身のペアの殺人鬼を殺しても、ケイラは死ななかったはず。

もしそうだとすると、女性陣が疑心暗鬼になって殺し合っていたのは、あまりにも滑稽だったということになります。
特にローズは本作におけるイライラキャラの筆頭でしたが、「友達」にこだわりまくっていましたし、過去に何があったん?というぐらいのメンヘラ。
それなのに過去がまったく深掘りされないのもあまりにも潔い。


冒頭、ケイラとマディが男性優位社会への批判を訴えていたのも印象的です。
スラッシャーホラー映画は、男性の殺人鬼、女性の主人公という構図が多いですが、そのテンプレに対するカウンターにも感じられました

しかし本作では、「美女と野獣」という古典まで用いて男性対女性の対立構造となっていますが、そのまま男女の対立、あるいはそのカウンターとしてフェミニズムを描いていたようには感じません。
男性も女性も対等の8人。
協力すれば助かるかもしれない、女性が死んだらペアの男性も死ぬ、という通常のスラッシャーホラーよりは平等(ではないかもですが)な条件の中で、男性陣は一切言葉を発しない中、お互い罵り合って自滅していく女性陣の姿はなかなかな皮肉な演出にも感じました。
男性優位社会を一番批判していたマディが殺人鬼に守ってもらおうとしていたのもシニカルといえばシニカル。

かといって女性蔑視とも思いませんし、特に、スラッシャーホラーでは必ずと言っていいほど出てくる性的・お色気要素が一切なかったのが、個人的にはとても評価したいところ。
男性陣は男性陣で、もたもたと愚かな襲撃しかできない脳筋おバカでしたし、そんなに深く考えず、シンプルにちょっとお間抜けデスゲームとして捉えて楽しむのが一番でしょう。
ド派手な人体破壊含めて、まさにスラッシャーホラーに求めているものをしっかりと提供してくれた印象です


お間抜けといえば、あれでケイラが生き延びられたのも隙だらけすぎました。
何のために監視していたんだ、と。
監視員はあの部屋にいた1人だけだったのか、と。
そうだとしても気づくだろう、と。
でも序盤、16人分のモニターを1人でチェックしなきゃいけないのは、だいぶブラック。

フューリーズ(あるいはエニューリス)は上述した通りギリシャ神話における復讐の女神ですが、主に3人の女神を指すようです。
それを踏まえると、ケイラ、ローズ、マディが3女神に該当するのかもしれません。
まぁ、ケイラとローズは協力して生き残ったわけではありませんし、一緒に復讐しているわけでもありませんし、マディに至ってはケイラの空想上の存在でしかありませんが。
ただ、最後、黒幕たちに復讐に行くというのもベタ展開ながら、タイトルの回収にもなっていて上手いなと思いました。

公式の生き残り(?)であるローズに対しては「勝者は次試合の準備を」と言っていたので、生き残ってもまた死ぬまで何回も参加させられるのだとしたらとても悲惨。
それとも、今回のゲームでは以前のゲームで生き残ったキャラはいない風だったので(隠していただけかもですが)、また違うゲームに参加させられるのかな。

ゲームに選ばれる基準も不明でした。
唯一わかったのは、男性側は、組織の会員メンバーが規約違反を重ねると強制参加させられるっぽい点だけ。
女性側は一切不明。

ローズなんか、彼女の言葉を信じるとすれば「家の中にいたのに拉致された」とのことだったので、誰でも良かったとは思えず、かなり明確な意思を感じます。
それにしても、意識障害のあるケイラはあまりにも不利すぎませんかね
さすがにちょっとかわいそうでしたが、主人公補正で頑張りました。


Beast側は全員一切言葉を発していませんでしたが、喋ったらアウトだったのでしょうか。
Beast側も棺桶スタートだった点を考えると、ルール説明の時間があったとも思えませんが、Beast側はペアとなるBeautyを守らなければいけないことを理解していたようなので、ある程度ルールは知っていたと思われます。
ただ、そもそも死に瀕しても叫び声すらあげないのも不自然なので、Beast側は喋れないように口も細工がなされていた可能性が高そうですかね
指を切られた手を相手の口に突っ込むのは、さすがに自分の方がダメージが大きそう。

ロケーションもぴったりで、木ばかりなのに身を潜めるには細いのが何とも絶妙。
貴志祐介のデスゲーム小説『クリムゾンの迷宮』を連想したのですが、そういえばあれは、舞台としてロケハンされたのがオーストラリアのバングルバングルという国立自然公園だったではありませんか。
連想は間違っていなかった!と思ったのですが、本作の地図に書いてあった「ユーレカスプリングス」はアメリカのようです。
え……。


何となく続編も作れそうな雰囲気を残して終わらせている気もしますが、どうでしょう、続編はあまり作らない方が良い気もします。
ただ、せっかくの8対のペアという設定自体はあまりうまく活かされていなかった気がするので、そのあたりをうまく活かした展開が見てみたい気持ちもあります。
設定や見せ方はとても面白いのにいまいち知名度や人気を得ていないのは、良い素材を活かしきれていないような何とも言えない消化不良感が残ってしまうのが大きそうで、ちょっともったいない印象
ですが個人的には、けっこう好きさ作品でした。

一番上に載せた画像はDVDのパッケージですが、ゲームのパッケージ感が尋常ではありません。
『Dead by Daylight』というすでに似た感じのゲームがありますが、設定もゲーム性が高いですし、本作をゲーム化しても面白そう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました