【映画】フレーム 危険動画サイト(ネタバレ感想・考察)

【映画】フレーム 危険動画サイト(ネタバレ感想・考察)
(C) CREATURES OF THE DARK,2017
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

暴力、セックス、一切の規制がない何でもありの動画生配信サービス“フレーム”が全世界で大流行していた。
そんななか、若い男女が山奥の邸宅でパーティを開催。
そこへ突然見知らぬ男たちが来訪するが、彼らは快楽殺人を生中継する人気配信者だった──。

2017年製作、スペインの作品。
原題は『Framed』。

規制なしの過激なライブ配信で視聴者数を稼いじゃおう!
という、シンプルな設定で起こる惨劇。
どんなに過激な配信しても規制がかからないという、炎上系ライブ配信者にとっては究極のプラットフォームと言えそうです。

そんな“フレーム”において、殺人のライブ配信“快楽の館”が最高視聴者数を獲得し、世界中が熱狂(?)している様子は、極端に描かれていつつも社会風刺的な側面もありました。
ライブ配信を行った3人組と、終盤で特殊部隊が突入する際に家を取り囲んで大騒ぎしていた野次馬たちと、果たしてどちらの方が恐ろしいでしょうか。

とはいえ、決して社会派な作品というわけではなく、ベースはあくまでもB級ホラーエンタメ。
こういった作品の割にチープさがあまりなく、特に、ゴアになかなかに気合いが入っていたのが個人的には好印象
殺され方も様々なパターンで見せてくれましたし、それも「ショーのため」という理由づけがあったので、不自然さもありませんでした。
スローや無音を使った映像もスタイリッシュでテンポが良く、オープニング映像もかっこよくて好き。

『フレーム 危険動画サイト』の特徴は、被害者側に何の落ち度もなく、ただ巻き込まれただけという点でした。
あまりお友達になりたい感じではありませんでしたが、ホラーの被害者あるあると言えるほどお馬鹿だったり愚かだったりするわけではありません。
標的に選ばれた理由も特になさそうですし、強いて言えばお金持ちで家が大きいので、ショーの舞台として最適だった、ぐらいでしょうか。

そのあたりも、無差別に炎上系に巻き込まれる恐ろしさが強調されていました
背景や設定は全然違いますが、おかしい奴らが家に押しかけてくるという点では、ちょっと『パージ』に似た雰囲気も。


そしてとにかく、それぞれキャラが強すぎた謎の3人組の存在が、ともすれば平凡なB級ホラーに落ち着いてしまいかねない作品の個性を際立たせていました
リーダー格の男は無駄にイケメンで、それも(作中の世界の中で)視聴者を稼ぎ人気を博した一因にもなっていそう。
ただそれもなかなかに風刺的というか、現実世界でも、男女問わず犯人の顔立ちが整っていたりするだけで、ファンのような人たちが多く存在してしまうのもまた事実です。

電動の丸ノコ“ルーシー”を抱えた女装男子(男子とは言えないですが)もなかなかに強烈。
いや、あれ、男性ですよね?
え、男性ですよね?
いやいやそういうのは別にどっちでも良いというか、センシティブな時代だし……と思いつつも、『スーサイド・スクワッド』あたりに出てきそうな見た目は一度見たら忘れません。

そして最後に控えしは、ブッバ。
とにかく本作最大の謎は、ブッバの存在で満場一致でしょう
彼は生きたまま人肉を食べたかったのか?(それすら最後まではっきりとはわからず)
だからレザーフェイスリスペクトでマスクをかぶっていたのか?
本当は何歳なのか?
インパクト強すぎる上に謎の可愛さが漂う「ブッバ、ニャンニャン」(としか聞こえない)。

終盤の野次馬たちの中にも、ラストシーンで描かれた事件後の様子でも、ブッバファンは一定数いそうでした。
一番印象に残るのは間違いありません。
リーダー格の男や電ノコ女装男子が「理解できるイカれた奴」だとすれば、ブッバは「マジでヤバい奴」と言えます


一方、本作の弱点は、被害者側のメンバーが誰が誰だかさっぱりわからない点でしょう。
初見で全員をしっかり把握するのはほぼ困難。
というか、観終わってなお、誰と誰がどういう関係なのかよくわからないままの人たちも。
名前も何回聞いてもなかなか覚えられないので、以下、カッコ書きでわかりやすく特徴も書いていく親切設計で進めていきます。

とりあえずアレックス(主人公っぽい)とクラウディア(ファイナルガール)が兄妹なのはわかりました(最初は恋人かと思ったので混乱しましたが)。
そして、アレックスとベア(電ノコ“ルーシー”に切り刻まれる)が元恋人同士。
そのベアの現在の彼氏がモリス(頭に包丁)。

で、他がいまいちよくわかりません。
あの豪邸の家主がサラ(ゾンビもどき化)で、サラのいとこと紹介されていたのがトム(頭ガンガン)。
ハビ(サラに食いちぎられる)がどんな立ち位置だったのかが、いまいちわかりませんでした。
アレックスの送別会とのことでしたが、もともとどんなグループなのかもわからず。

どれが誰だかいまいち把握できないまま進んでいきどんどん死んでいってしまいましたが、そのあたりはわからなくても特に支障ありません。
ただ、その中で異彩を放っていたのはやはりモリス(頭に包丁)でしょう。

「警察に電話する前にやり返してやろう」と言って包丁片手に1人の外に出て行くという、これ以上ないほどに「最初の犠牲者フラグ」を立てておきながら、まさかの生還。
さらに、頭に包丁が刺さったままやばい笑顔を振りまいて爪痕を残し、他の登場人物の誰よりもおもちゃにされてしまい、それなのに最後にはまさかの生命力を見せてクラウディアに反撃の包丁を差し出した上、最後には何と生き残ったようです(あの状態で!?)。
こうやってまとめてみると、もはや本作はモリスなしでは語れないと言っても過言ではありません

次点は、ゾンビもどき化したサラでしょうか。
彼女が一番色々な面で身体を張っており大変そうでした。
というか何なんやねんあのクスリ、というのは突っ込んではいけません。

ちなみに、操り人形と化してしまったトム(頭ガンガン)に盛られた(というか目に注射された)薬は「ブルンダンガ」と説明されていましたが、これは一応実在する薬のようです。
もちろん本作のような何でも言うことを聞く操り人形になるわけではありませんが、「摂取すると自制心を失い、記憶が残らない」という十分凶悪な作用。
「世界最凶のドラッグ」と呼ばれ、犯罪にも多用されているとのこと。


内容に関しては、あまり考察するようなものではありません。
犯人の目的も明確には描かれませんでしたが、一応ちょっとだけ考えておくと、おそらくは視聴者数の記録更新だったのだろうと考えられます
ただ、それは主にリーダー格の男の目的であり、電ノコ女装男子はルーシーを使って暴れたかっただけ、ブッバは食べたかっただけで、半分ぐらいは即席のチームだった可能性が高そうです。

リーダー格の男は、彼なりの美学や哲学に基づいてショーを繰り広げていたようでした。
あくまでも視聴者数を増やしたい、つまりは視聴者に楽しんでもらえること、視聴者が求めているものを提供することを意識していました。
規制されていなければ何をやってもいいわけではありませんが、規制されておらず、ある意味では容認されている枠組みの中で信念を貫こうとした彼の姿は、一定数の支持を得るのも必然だったかもしれません。

最後には視聴者3千万人という世界1位の記録を達成し、彼は満足げに死んでいきました。
最後には自分の死すらショーの一部として視聴者を稼いだところからは、とにかく記録達成が目的だったのだろうと考えられます

彼も死んだのは間違いないので、ラストシーンでの姿や声はクラウディアの幻覚でしょう。
あんな事件直後ですし、当然といえば当然。
早く情報を集めたい警察の事情もわかりますが、それにしても刑事さんちょっと冷たすぎました。


本作においては、どんなライブ配信も規制されないというなかなかぶっ飛んだ設定もオリジナリティを発揮していました。
その割に、殺人配信がなされたら警察が捜査するというのだいぶ穴だらけですが、その辺も突っ込むのは野暮というもの。
規制がなければ暴力的あるいは性的な配信が増えるのは理解できますが、虫嫌いなので、あの虫(名前を呼ぶのすら嫌なので、ヴォルデモートのようになってしまいました)や自分の便を食べている男性が一番狂気を感じました。

あと、テレビでライブ配信の映像を同時に流すというのもなかなかに意味がわかりませんでしたね。
「ご覧ください」じゃないんですよ。
過激なシーンになりそうになったら「もういいです、止めてください」と言っておきながら、視聴者数が爆増したら急に冷静になって見守りながら「視聴者数が増えています」じゃないんですよ。

どんな危険が待ち構えているかわからないのに、熱狂的な野次馬たちを下がらせることなく突入していく特殊部隊たちの姿はちょっと笑ってしまいました。
被害者である血だらけのクラウディアも、姿を隠してもらえることなく、堂々と花道のように野次馬たちの間を歩かされてかわいそうでした。

最後のニュースでなぜか日本の映像が流れたのはちょっと嬉しかったです。
しかもあれ、何ちゃって日本ではなくて、ちゃんと渋谷のスクランブル交差点でした。
スクランブル交差点を象徴する店舗の一つ、薬局の「三千里薬品」が映っていましたが、奇しくも2024年12月31日に閉店し、62年の歴史に幕を閉じています。

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