【映画】サメストーカー ビギニング(ネタバレ感想・心理学的考察)

【映画】サメストーカー ビギニング(ネタバレ感想・心理学的考察)
(C) 2017 Film One, LLC.
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

【映画】サメストーカー ビギニング(ネタバレ感想・心理学的考察)
(C) 2017 Film One, LLC.

ボーイフレンドとヨットで過ごしていたローラは、突然サメに襲われる。
窮地を救ってくれたのはブルースという青年だった。
町のヒーローとなったブルースはローラの家族に気に入られ、ボーイフレンドを失った傷心のローラに真っ向からアプローチしていくが──。

2017年製作、アメリカの作品。
原題は『Stalker’s Prey』。

まず、もはや各所で言及されているので簡単に触れるに留めますが、本作は3部作のシリーズで、製作順と日本公開順が異なっているのでややこしいことになっているようです

製作順は、
①『サメストーカー ビギニング(原題:Stalker’s Prey)』(2017年)
②『サメストーカー(原題:A Predator’s Obsession: Stalker’s Prey 2)』(2020年)
③『サメストーカー リターンズ(A Predator Returns)』(2021年)
ですが、

日本で公開された順番は、
②『サメストーカー』
①『サメストーカー ビギニング』
③『サメストーカー リターンズ』
とのこと。

なぜ?と思ってしまいますが、きっとそれほど人気が出るとは思っていなかったのでしょう。
とりあえず人気の2作目だけ輸入したら意外と人気が出たのでシリーズ全部輸入した、といった感じかなと推測します。

また、邦題もややこしさに拍車をかけています。
「ビギニング」というと「1作目のあとに製作された前日譚」みたいなニュアンスが強いですからね。

そしてそもそも、『サメストーカー』というタイトル。
タイトルの割にはサメの出番が少ないですが、原題の「prey」は「獲物、捕食」といった意味合いなので、サメが捕食者であるストーカーのメタファーにもなっているのでしょう
原題は決してサメ推しではありません。

かといって、「ストーカーの捕食」なんてタイトルではまったくもってパッとしないので、目を引くための邦題を苦心したことが窺えますが、邦題と内容の不一致というあるあるパターンを生み出してしまいました。
難しいですね。


さて、そんな本作ですが、とにかく前日譚などではなく、純粋にシリーズ1作目。
サメ映画はもはや飽和状態であり、いかに新しい要素と掛け合わせるかという発想の勝負になりつつありますが、そんな中でも「サメ × 人間のストーカー」という斬新な発想で、しかもサメよりもストーカーのヒトコワ要素の方が強い展開という、意表を突いた1作になってしました。

サメはほとんど出番がなく、サメが出てくる必然性もなく、CGはちょっとちゃっちかったですが、決してまったく意味がないわけではなく、冒頭とラストという大事な要所を押さえていますし、上述した通り捕食者であるストーカーのメタファーにもなっていました。
サメをメインに据えない、という判断は斬新で良かったと思います。
ただ、邦題的にはどうしてもサメ映画を期待してしまうので、そこはマイナス印象になってしまいます。

本作はとにかく、B級サメ映画と見せかけて、だいぶ完成度の高いストーカーサスペンスである点が特徴でした
ブルース、怖すぎますが。

主人公のローラ、ローラの彼氏でサメに食べられたニック、そしてストーカーのブルースと、全員かなりの美男美女で、演技が上手かった点もポイント。
特筆すべきはやはりブルースで、最初は普通にとてもかっこよかったのに、だんだんすべての言動がキモく見えてくるのは演技力の高さを感じました。

最初から微妙な感じもありましたが、まだ許容範囲な言動から、どんどん不気味で気持ち悪い存在に変わっていくグラデーションも見事。
合鍵で侵入し、寝ているローラの背後に添い寝をするあたりで、一気に印象が「キモい」に振り切ります


正面から攻めれば普通にモテそうなブルースですが、だいぶ拗らせていそうなので仕方ありません。
丁寧に考察するには情報が足りませんし、普通にストーカーとして心理分析するほどではないので控えますが、とりあえず「元カノであるアリソンと似ていたから」というのがローラをストーキングした要因であると考えられます

その点を踏まえると、誰彼構わずストーカーしていたわけではないので、共感はできませんが理解はできます。
ただ、アリソンの死がブルースをおかしくさせたのかと思いきや、どうやらそれ以前からだいぶモラハラメンヘラ気質で、そもそもアリソンの死はブルースのせいだったので、同情の余地はありません。

アリソンが死んだのは、別れ話を切り出されて自暴自棄になったブルースが起こした事故でした。
現実的に考えると、ブルースには自己愛の強さが窺えるので、自分も死ぬつもりだったとはあまり思えませんが、まぁそこは置いておきましょう。
衝動性の高さはかなり強そうなので、衝動的に起こした可能性はあるかもしれません。

自分の思い通りにしないと気が済まないので、死んだアリソンの代替として、ローラを思い通りにしようと企んでいたのだと考えられます
そうしないと前に進めないところも、外見で選んでいるところも、幼稚さが垣間見えるポイント。

ローラをストーカーした理由はある程度描かれていましたが、もともと危ない素因があったのか、何か拗らせる理由があったのか、そのあたりのブルースの過去はまったく描かれていないのでわかりません。

ただ、推測できるポイントはいくつかありました。
一つは、最初のインタビューで「ヒーロー」という単語に反応したこと
もう一つは、「僕が政治家の息子以上の存在だと証明するんだ」というセリフです。

この二つは、単にアリソンやローラへの執着以上のものを感じさせます。
おそらく、父親が議員である裕福な家庭で育った中で、彼なりの苦悩や抑圧があり、コンプレックスが生じていたのでしょう。
ストーキングやDVをするタイプは、自己中心性や自己愛が強い一方、自己肯定感や自信が実は低いことも少なくありません。

サメがストーカーのメタファーだとすれば、サメを殺すことは、ストーカーである自分、つまりは自分の自己肯定感や自信のなさといった弱い部分を克服することを意味します
しかし、それを乗り越えるのは容易なことではありません。
一度、サメを倒せそうなタイミングで銛銃(?)を打ち込むことができなかったのは、その困難さを意味していたのではないかと思います。
結局は捕食性を象徴するサメに食べられてしまうので、自分に負けたようなものと言えます。


全体的に完成度が高く、あまりチープさを感じなかった本作ですが、残念だったポイントは、やはり上述したサメのちゃっちさでしょう。
とりあえず、単純に小さかったです
捕食のグロシーンがなかったのは個人的には残念でしたがそれは一旦置いておいても、そのようなシーンがなかったのと、サメがあまりに小さかったので、「そんな一瞬でやられるか?実はニックは死んでいないのでは?」など邪推してしまいました。

あと、細かい話ですが、ラストの水中でローラとブルースが揉み合っているシーン。
ブルースの右肩に銛が刺さった傷があり出血していましたが、その傷が消えているシーンがありました。
一瞬ですが、角度的に見えなかったわけではないと思いますし、なぜあの見せ場のシーンでそんな凡ミスを……と、ちょっと気になってしまいました。

そんなわけで、おすすめしてもらったのであまり調べたりもせず何となく観始めたのですが、期待よりもだいぶしっかりとした作りで個人的には楽しめた1作。
ここからシリーズがどう続くのか……?
まさかブルースは生きているのか……?
いやさすがにそれは……?
など色々と気になるので、残り2作も追っていきたいと思います。

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