
作品の概要と感想(ネタバレあり)
旅行に出かけたキンバリーは、自分の車がハイウェイに入る寸前で大事故に巻き込まれる夢を見る。
これは予知夢では、と確信した彼女は、ハイウェイの入り口を車で封鎖。
そして夢の中では事故の犠牲となった7人の目の前で、その通り大事故が起こる。
間一髪で危機を免れたものの、嫌な予感は収まらない。
果たして事故の生存者の内のひとりが、不可解な“突然死”を遂げる──。
2003年製作、アメリカの作品。
原題は「Final Destination2」。
『ファイナル・デッドブラッド』公開記念シリーズ再マラソン。
『ファイナル・デスティネーション』から続けてn回目の再鑑賞。
本記事には、前作『ファイナル・デスティネーション』のネタバレも含まれるのでご注意ください。
前作『ファイナル・デスティネーション』については、以下の記事をご参照ください。

『ファイナル・デスティネーション』の感想でも書きかけましたが、『デッドコースター』は続編としてとても秀逸だと思っています。
ベースのプロットはそのままに、派手さとスピード感を増したピタゴラ死。
ストーリーは前作からしっかりと続きつつ、無駄ではないプラスアルファでミステリィ要素を維持。
少し細かく見ていくと、まずはやはり、派手さとスピード感のアップが気持ち良かったです。
1作目は今となってはどうしてもスピード感が遅く感じてしまいますが、『デッドコースター』は展開がスピーディ。
「180便の事故からちょうど1年後」「180便事故のあとの不審死が話題になっている」という前提に、トニー・トッド演じるウィリアム・ブラッドワースをうまく活用することによって、新たな登場人物たちのルール理解を早めていました。
ピタゴラ死も過激さが増しテンポが良くなり、まさに邦題『デッドコースター』のネーミングは秀逸でした。
しかし、まさか3作目の冒頭事故でジェットコースターが使われようとは、『デッドコースター』の邦題をつけた時点では想像もしていなかったでしょう、みたいなことは『ファイナル・デッドブリッジ』の感想で書きました。
冒頭の壮大な事故はシリーズ通しての見どころですが、中でも『デッドコースター』のインパクトはかなり高めでしょう。
襲い掛かる丸太の破壊力は恐怖そのもの。
現実で高速道路などを運転するたびに、木材を積んだトラックを警戒してしまいます。
ストーリーのミステリィ要素は、むしろ1作目より増していました。
1作目とは逆の順番で死んでいく被害者たち。
「新しい生命」により助かるという謎。
前作のヒロイン・クレアの再登場は熱いですし、彼女を交えてキンバリーが感じ取る予兆をヒントに謎を解き明かしていくストーリーの魅力は、シリーズ随一であったと感じます。
イザベラの出産が鍵を握るかと思わせておいて実は関係なく、キンバリーの仮死→蘇生により死のリストをリセットする。
この2段構えもイザベラのミスリードも、ミステリィとしても非常に巧かったです。
今回の生き残り全員が、180便の生き残りの影響によって危機一髪死を回避していた、というのも面白い。
そして、本シリーズ最大の魅力であるピタゴラ死。
1作目から片鱗が見られましたが、『デッド・コースター』からついに、制作側と観客による読み合い合戦が始まります。
これで死ぬのではないか?
これで死ぬのではないか、と観客は予想しているのではないか?
これで死ぬのではないか、と観客は予想しているのではないか、と制作側は読んでいてこれはフェイントなのではないか?
それは最初の犠牲者、エバンの死からすでに顕著でした。
いきなり「何がどうなったらそんなに排水溝から腕が抜けなくなんねん」という強烈なツッコミポイントを提示しつつ、「死神の仕業なんだから何でもありだろ?」という挑戦的なスタンスを明示。
その上で、あ、これで死にそう……と思わせて死なない。
脱出できたと思わせてから、投げ捨てたパスタの伏線を見事に回収してインパクトのある死。
その後の歯医者でも、水が漏れて感電しそうだったり、麻酔中のティムの口に飾りが落ちて窒息死しそうになったり、というのはすべてフェイント。
その直後にほぼノータイムの即死トラップ。
この緩急は、後発のシリーズ作品でも引き継がれている得意技でしょう。
その一方で、ティムの母親・ノラなんかは予兆通りにスタンダードな死。
しかしそこでも、エレベータに乗っていた変態鉤手男はあまりにも訳がわからなさすぎますし、「安全装置?解除しておきましたよ。エレベータのパワー?強くしておきましたよ」と死神が言わんばかりのエレベータでの首チョンパ。
どれがどこまでフェイントなのか?と、観る側を惑わせてきます。
容赦のなさも魅力でしょう。
前作の後日譚が語られることで、カーターはやはり1作目ラストの看板で死んでいたことが判明。
そしてアレックスも死んでおり、クレアは病んで自ら保護室に入院。
前作のアレックスたちの努力をすべて無に帰してきます。
アレックスなんて、主人公としてあんなに頑張ったのに「レンガが当たって死にました」というニュース記事だけで流されますからね。
しかも、レンガが当たって死んだとか何ですか?
お友達は顔半分を吹き飛ばされたり、先生はパソコンの破片からの包丁が刺さった上に大爆発したりしたのに、レンガが当たって死て。
地味にもほどがありますが、微妙にアレックスらしい気もしてしまうのが憎い。
そして、クレア。
こんなに病んじゃって……まぁアレックスまで死んでいたら仕方ありませんね。
保護室で最初に会った際、キンバリーがキレ散らかしまくっていたのは、さすがにクレアがかわいそうでした。
ちょっとしたことですぐ死んでしまうかもしれないわけですし、そこまで責めんでも。
そんな彼女も、ついに覚醒!
キンバリーたちとともに死のリスト無効化に向かって突き進んでいく……と思いきや、バーンですよ。
苦しまなかったのがせめてもの救いかもしれませんが、これまた前ヒロインらしからぬあっけない死に様。
そして燃えて無残な姿になったところまで映されてしまうので、なかなかに制作側も趣味が悪いです(誉め言葉)。
死のリストに名を連ねていたローリーに助けられたことによって死のリスト入りしてしまい、最後に大爆発した少年も非常にダーク。
容赦なく少年を犠牲にする攻めの姿勢も、とても好きでした。
全体的には、コメディ色が強い死に方はシリーズの中でも一番少なかった気がします(全部がコメディめいている、という意見は置いておいて)。
せいぜい大きなガラスでぺしゃーん!!のティムぐらいでしょうか。
というわけで、死のリストの設定も強化されていますがややこしいわけでもなく、基本的には頭空っぽで楽しめるバランスの良い1作。
このプロットを生み出したという点だけで『ファイナル・デスティネーション』こそが偉大であり、続編たちはすべて1作目ありきではありますが、個人的には、単純に内容を比較してみれば2作目の方が面白いという稀有なシリーズでもありました。
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