作品の概要と感想(ネタバレあり)
泥沼の戦いとなったベトナム戦争のさなか、第一歩兵師団に従軍していたブレットのもとに弟がトイレで変死したという訃報が舞い込む。
終戦後、失意のままに母国へと帰ったブレットは、弟の死の真相を知るべく彼が遺した家の調査を始める。
ブレットはトイレに狂暴な悪魔がとりついてることを知り、ディングルベリー神父に悪魔祓いを依頼。
人を嘲笑い、火を噴き、そして激しく爆発する悪魔トイレを相手にした史上初の”トイレ・エクソシズム” が始まろうとしていた──!
2018年製作、アメリカの作品。
原題も『Death Toilet』。
何かもう、何を言えばいいのでしょう。
「問題作」と名高い本作ですが、本当にもう、問題作以前の問題ではないでしょうか。
55分という短さに、「どう考えてもZ級だけど、55分なら無駄になってもいっか」と思ったのが運の尽き。
人生の貴重な55分間を、あまりにも無駄に消費してしまいました。
矛盾しているようですが、無駄のレベルが違ったのです。
最近、映画を倍速視聴するというのが物議を醸していますが、この作品はそれでも正しいです。
この作品に「ホラー」タグをつけてこのブログで取り扱うべきなのか?というのを、1週間ぐらい悩みました(本当は10秒ぐらい)。
しかし、せめてここで取り上げて昇華(消化?)しないと、55分間を完全に無駄にしたまま終わってしまう気がしたので、書くことにしました。
さて、上述した概要はPrime Videoから拝借したものですが、こんな設定があるとは知りませんでした。
ディングルベリー神父という名前だったのとか、初めて知った。
Prime Videoもよく配信したなと思いますが、GYAO!の超投げやりな説明文と比べると、しっかり真面目に配信しているように感じられます。
完全に、作品を観ないで「デストイレ」というタイトルから連想しただけとしか思えません。
さて、『デストイレ』のお話です。
心理学的に見ると、戦争のトラウマ的体験によるPTSDが、本作に大きな影響を及ぼしていると考えられません。
心理学など、この作品の前では何の役にも立ちません。
突っ込みながら観るしかない。
展開があるたびに突っ込みどころしかないので、突っ込みを入れていくともはやあらすじのようになってしまいますが、そうやって色々な人と共有して何とか楽しむのが本作です。
ぜひ、全人類に観てほしい。
全人類が55分を無駄にすれば、平等になります。
まず、冒頭5分でこの作品のやばさを垣間見ることができます。
POVなのか?と本気で錯覚するぐらい、ぐらぐら揺れて始まる映像。
いきなり何の説明もなくおじさんがトイレに座り、哀れ犠牲に。
まさかの超物理(サバイバルナイフ)に、謎の目玉。
何とも言えないBGM。
うめき苦しむシーンが長すぎて、つい笑いが洩れてしまう最初のシーンです。
たびたび挿入されるベトナム戦争と思しき映像。
徐々に、「この映像は意味がないのではないか?」と不穏な予感が込み上げ、それは最終的に的中します。
さて、戦争によるPTSDに苦しめられているっぽいのに、常に米軍の迷彩服を着ている主人公ブレット・バクスター。
冒頭で犠牲になったおじさんは、歳上に見えましたがブレット・バクスターの弟とのこと。
調査しに来たのか設定がよくわからないまま、ブレットは事件のあった弟の家に住み始めます。
猫、2ヶ月どうやって過ごしてたの?
そしてトイレから聞こえる、これまた何とも言えない謎の声。
個人的にはうめき声みたいにしか聞こえませんでしたが、ブレットには笑い声のように聞こえたようです。
ここからとにかく、冗長。
歯を磨くシーンがめちゃくちゃ無駄に長いのを筆頭に、すべての行動が時間稼ぎとしか見えなくなってきます。
台詞も、同じ内容を繰り返すだけ。
一人芝居の電話のシーンは、かける先が多いからか、相手の声は適当。
任天堂のキャラのように、何を言っているのかわからないように加工されています。
配管工、トイレの向こう側で何やってんの?
そんなとこに、工具で作業する何があるって言うの?
配管工の顔は一切出てこない徹底ぶり。
このあたりから、ブレットの身勝手さが目立ち始めます。
夢の中、銃を持ってトイレと対峙。
まさかの炎を吹いて大爆発!
打ち切り直近の超低予算バラエティ番組の再現VTR以下のCG!
目覚めたブレットは、銃を構えてトイレへ。
その光景はシュールすぎます。
跳弾が心配すぎて、本当に撃たないかどうか観ていてひやひやしました(してない)。
トイレに警告するも何も反応がないシーンは、観ていて何だか切なくなりました。
ついに悪魔祓いをお願いすることにしたブレット。
「トイレの悪魔祓い」という単語を出しただけで、無言で切られてしまいます。
そんなに?
そんなにあり得ないの?
わがままな条件を通して、何とか対応してくれるところを見つけます。
その後、謎の武器を両手に構えて厨二病のように陶酔するブレット。
ここが本作最大の山場であり、「しゅっ、しゅっ、しゅっ、しゅっ、しゅっ」と執拗に繰り返される構えと掛け声。
これでもかというほどの執拗さに、笑わずにこのシーンをやり過ごすことは不可能です。
トイレの悪魔祓いだって電話で伝えていたのに、派遣されてきた神父はトイレの悪魔祓いだと聞いてぶち切れ。
そんなに?
そんなにあり得ないの?
家の前では何か不穏さを感じてるっぽかったのに。
しかも、手当たり次第電話してようやく見つかった依頼先なのに、弟と面識があったというのも謎。
そして再び、引き延ばし引き延ばし口論しながらトイレを調べる神父。
突然の爆発!
そこからはもう、超力技の悪魔祓いが始まります。
神や聖書の言葉など一切使わず、「立ち去れ!」とキレながら叫ぶだけの神父。
ブレットにもキレてましたし、なかなか情緒が心配な神父です。
爆発により、神父、やられちゃった……?
というシーンのあと、まさかのインターミッション。
謎のBGMに、軍隊が更新するだけの何も意味がない映像。
約1分ほど続きます。
斬新すぎ。
55分の映画でインターミッションを挟む点もそうですが、残り15分のところで挟んでくるアンバランスさが斬新すぎ。
生きていた神父。
大爆発するトイレ。
思い出したように聖水を使い、また力技でねじ伏せようとする神父。
激しい戦いに、手に汗握ります(握りません)。
そしてついに便器悪魔祓いに成功した神父!
心に傷を抱えたブレットにも、教会に来るように勧めます。
何と優しい、と思いきや、強制するように「来るんだ!」と怒鳴る神父。
やっぱり、情緒不安定で心配です。
最後にようやくアーメンと叫び、事態は一件落着。
と思いきや、悪魔祓いできていませんでした〜。
これまでなぜかずっと大丈夫だったブレットも、ついにトイレの怒りに触れてしまったのか、哀れ弟と同じ運命を辿ります。
え?首の手榴弾、おもちゃじゃなかったの?
その真実はわからないまま、首を切られて死んでしまったブレット。
その後、家はいわくつきの物件として売り出されます。
そこで明かされた真実、「トイレは2つある」。
ブレット、何でわざわざ不穏な方使い続けたの……?
これを一つの作品として生み出した精神は、尊敬に値します。
中身はスカスカで、引っ張りまくって55分ですが、実質5分で終わらせられそうな内容。
しかし、実際に55分の作品を作り、映画として売り出した行動力は、賞賛に値します。
「映画なんて自分に撮れるものではない」と、多くの人が思っていることでしょう。
しかし『デストイレ』を観ると、「こんなのでもいいの……?」「これなら自分も映画監督になれるかも」と勇気をもらえます。
いまや、iPhoneのカメラにもシアターモードが搭載されている時代です。
皆さん、映画を制作してみませんか?
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