作品の概要と感想(ネタバレあり)
車が故障し、人里離れた町に取り残された男。
通りかかった修理工に助けられるが修理代を払えず、支払いの代わりに、廃墟となったテーマパーク「ウィリーズ・ワンダーランド」の清掃員として一晩だけ働くことに。
しかしパークには暗い過去があり、かつて子どもたちに大人気だった動物キャラクターのロボットたちは恐ろしい殺人鬼と化していた。
2020年製作、アメリカの作品。
原題も『Willy’s Wonderland』。
主演のニコラス・ケイジが、製作にも関わっているようです。
ちょっと、思ったのと違いましたね。
いや、えっと、あの、悪くはありません。
むしろ勝手に思い込んで観始めた自分が悪いのであって、B級ホラーテイストのアクションコメディとして観れば、悪くはありません。
でも、
ちょっと、思ったのと違いましたね。
『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』みたいな、グロありB級スプラッタホラーを勝手に期待してしまっていました。
まさにニコラス・ケイジの無駄遣いですが、製作にも関わっているので、こういうのやりたかったのでしょうか。
台詞を一言も喋らせない潔さは、ドラクエの主人公レベルで尊敬に値します。
全体的にゲームっぽい雰囲気の作品でもありました。
実際、『Five nights at Freddy’s』という雰囲気がかなり似たホラーゲームがあるのですが、このゲームが元ネタの一つにもなっているようです。
主人公に名前すらないので、以下「ニコラス」と呼びましょう(失礼)。
まず、登場時からどう見てもホラー映画の被害者ではない風貌のニコラス。
普通のホラーを期待していると、この時点で「あれ、これ、違うかも」という違和感を覚えさせてくれます。
とにかく最後まで素性が謎なニコラスですが、明らかに怪しい廃テーマパーク「ウィリーズ・ワンダーランド」に閉じ込められてからは、本業はプロの清掃屋か?と思うほどの手際良い清掃を見せてくれます。
たびたび出てくる掃除のシーンははっきり言って無駄ですが、綺麗になっていく様はちょっと爽快感がありました。
どこがプロかといえば、しっかりと休憩を取るところでしょう。
たとえ悪ガキたちが命の危険に晒されようとも、休憩だけは欠かしません。
休憩のたびに飲んでいた「PUNCH」なるドリンクが気になります。
エナジードリンク系だったら、あんなに飲んでたら死にそう。
しっかりと従業員Tシャツを着るところも、プロ魂を感じさせます。
唯一ピンボールに並々ならぬ関心を寄せていたところが、ニコラスの過去を探る上での考察ポイントでしょうか。
考察のしようがありません。
ピンボールでだんだんトリップしていったのは、そんなにもピンボールが好きなのか、「PUNCH」に何かやばい成分が含まれていたかのいずれかでしょう。
怪我をしても、テープを貼っておけば問題なし。
動物ロボットたちのボス、イタチのウィリーとのラストバトルでは、ポケモンで言うところの「ひっかく」ではなく「きりさく」レベルの攻撃を受けまくっていましたが、何事もなかったかのようにお手製武器でボコしていました。
もはや、ニコラスも人間ではないのでは?疑惑すら浮かんできます。
ウィリーズ・ワンダーランドの過去も、大して深みはありませんが、個人的には好きな設定で、一応整理しておきます。
ウィリーズ・ワンダーランドを創設・運営していたのは、ジェリー・ウィリスなる連続殺人鬼で、スタッフはみなジェリーが養成した者たちでした。
ジェリーは行動力も経済力もある殺人鬼だったようです。
彼らは殺人に快楽を感じていたのか、訪れる家族たちをたびたび殺害。
というより、そのために作ったテーマパークだったのでしょう。
特に、誕生日の家族をハッピールームに誘い込み、惨劇ショーを繰り返していました。
しかし、そりゃあ当たり前ですよねという感じで警察が押しかけてきますが、彼らはハッピールームで悪魔の儀式を行い自殺。
その魂は、ウィリーズ・ワンダーランドのマスコットキャラクターたちの動物ロボットに乗り移りました。
その後、新オーナーのテックスがウィリーズ・ワンダーランドを再開しようとしましたが、ロボットたちが暴走。
テックスは仕方なく解体しようとしましたが、解体業者はロボットたちに食い散らされて無惨な死を遂げ、解体できず。
空腹で血に飢えたロボットたちが町に押し寄せてきたので、保安官や住民たちは取引をします。
かくして、町に訪れてきた孤独な人物、モラルの低い若者、そして運の悪い人々を、生贄の食糧としてウィリーズ・ワンダーランドに送り込んでいたのでした。
そんな過去の惨劇によって両親を殺されたリブは、保安官に育てられた様子。
しかし、生贄を送り込む保安官や住民たちに抵抗し、悪ガキ仲間たちとウィリーズ・ワンダーランドを燃やそうと画策していました。
燃やせば良かったじゃん。
と、ニコラスの活躍でばったばったと薙ぎ倒されていった弱小ロボットたちを見ていると、思ってしまいます。
しかしそれは結果論でもあり、悪ガキたちはしっかりと殺されていったので、ああ見えてニコラスがめっちゃ強かったのかもしれません。
悪ガキたちが殺される場面はそれなりにグロさもありますが、ロボットのクオリティがクオリティだけに、どうしても無表情に。
返り血ならぬ返りオイルを浴びているニコラスの姿を繰り返し見ていると、「これは、何を見せられているんだろう」とどんどん感情が失われていってしまいました。
返りオイルを浴びたらしっかりと従業員Tシャツを着替えるところも、プロ。
リブ目線で見れば、両親を殺害した因縁の相手の全滅に成功し、積年の恨みが晴らされた形になります。
ニコラスは、まさに寡黙なヒーローですね。
動物ロボットたちのキャラはそれぞれ個性がありそうだったので、あっさり壊されてしまったのは惜しいところ。
主人公が一言も喋らずに無双するという、斬新といえば斬新ですし、好きな人は好きな作品でしょう。
監督のインタビューでは、脚本を見て「話さないキャラクターは面白い」「話さないキャラクターを演じるのはみんな嫌がるだろうが、ニコラス・ケイジは挑戦する人物であることを知っていたのでニックに頼んだ」といったようなことを言っていたので、実際にチャレンジングな作品でもあったようです。
が、個人的には、いかにB級といえど、少々コメディとアクションに走りすぎていたので、うまく合いませんでした。
そもそもちょっと、自分の期待値(というか方向性)が残念ながら間違っていたのでした。
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