【映画】牛首村(ネタバレ感想・考察)

映画『牛首村』のポスター
(C)2022「牛首村」製作委員会
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『牛首村』のシーン
(C)2022「牛首村」製作委員会

ある心霊動画に映った自分そっくりの女子高生を見て驚く奏音。
動画の中の女子高生は牛首マスクを無理やり被せられ、廃墟のエレベーターに閉じ込められるが、映像はそこで途切れていた。
言い知れない胸騒ぎと不安に駆られた奏音は、動画の撮影地である富山県の坪野鉱泉に向かう。
そこで彼女は「牛首村」と呼ばれるおぞましい場所の狂気と恐怖に襲われる──。

2022年製作、日本の作品。
『呪怨』シリーズの清水崇監督による、『犬鳴村』『樹海村』に続く「恐怖の村」シリーズ3部作の3作目
もともと3部作構想であったわけではなく、『犬鳴村』のヒットによりシリーズ化が決定しましたが、清水監督の意向ではなく東映側から「村」縛りの要望があったようで、それはそれで大変だったでしょう。

このブログを始める前に観たのでまだブログにはありませんが、『犬鳴村』『樹海村』も鑑賞済み。
『牛首村』の感想としては、けっこう良かったのではないかと思っています。

というと何だか偉そうですが、正直、『犬鳴村』『樹海村』を観て絶望を感じてしまっていたので、『牛首村』も違った意味で恐る恐る鑑賞したのですが、前2作に比べてだいぶ楽しめました。

Jホラー好きとしてはとても残念に感じてしまった前2作。
実在の心霊スポットを取り上げ、過去の風習などと絡ませる設定は最高に好きだったのですが、いかんせんよくわからない時空を超えたストーリーとあまりにしょぼいCGにより、絶望の縁に突き落とされてしまいました。
それが今作回復したのは、CGがそれほど多用されていなかったからかな、と思っています。
終盤の牛首村に登場した双子も、全員本物の双子がキャスティングされていました。

雨宮奏音かのん(と三澄詩音)を演じた主演のKōki,は、期待を裏切ってくれる良さでした。
個人的には、残念ながら香月蓮(奏音のことが好きな男友達)がかなり嫌いなタイプだったので、正直途中退場してくれて良かったです。
ごめんね蓮くん。
嫌いなタイプのお馬鹿というか、無神経すぎるからですかね。
というのは個人的意見すぎるので置いておきましょう。

山崎さんは、都合の良い進行役でただただかわいそうだったような。
車を停めようとしていたので何か用事があったでしょうに、牛首村の説明をしながらひたすら運転手になり、果ては呪い(?)の犠牲者に。

パラレルワールド?的に直接の繋がりはありませんが、過去作に登場したアッキーナと、遼太郎くん&
奥菜恵演じる母親の再登場。
こういうシリーズ間のリンクは、どんな作品でも好きです。
清水監督のインタビューによると、すでに新シリーズの構想があるようで、アッキーナを登場させるかどうか(冗談半分で?)考えているようでした。

ストーリーは、可もなく不可もなく。
風習系は大好きなのでそれは良かったのですが、双子というと、ゲーマーとしてはどうしてもゲーム『零〜紅い蝶』が頭を過ります
双子の風習を取り扱ったストーリーとしては『零〜紅い蝶〜』が最高傑作だと思っているので、その点、『零』シリーズ好きとしてはどうしても見劣りしてしまいました。
海上に人の影が見えるのも、『零〜刺青の聲〜』を思い出す演出でした。

前2作もそうなのですが、後半が失速して感じてしまったところがやや残念。
特に牛首村に行ってからが、シュール展開に感じてしまいました。
前半の方が面白かった。
3作とも「血筋」をテーマに織り込んでいるらしいので仕方ないかもしれませんが、過去の人たちが現代に現れると、どうしてもシュールに見えてしまいます。

あとオカルト系はやはり、わからない状態の方が怖いので、真相がわかってきたり、姿を現し始めると怖さが薄らいでしまうのが難しいところです。
ホラー演出は古き良きJホラーといった雰囲気でしたが、Siriが勝手に喋り出すところは好きでした

何だか否定的な感想になってしまった気もしますが、前2作よりは全然好きだったので、Jホラーの復権、期待しています。

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考察:牛首村は実在する?ラストシーンの意味は?(ネタバレあり)

映画『牛首村』のシーン
(C)2022「牛首村」製作委員会

牛首村や坪野鉱泉はどこに?

『牛首村』冒頭や途中でも登場した、詩音が押し込まれたエレベーターのある建物は、ホテル坪野や坪野鉱泉と呼ばれる、富山県魚津市に実在する廃墟
1970年に、当時の流行に乗って、温泉だけでなく様々な施設が併合された大型レジャー施設として誕生。
しかし、バブル崩壊の煽りなども食い、廃業後は再開発も断念されて現在まで放置されたままになっています。

かなり頑丈な作りのようで、建物自体はしっかりと残っているそうです。
ただ、地元の不良の溜まり場になっており、内部はかなり破壊されているとのこと。
『牛首村』作中で出てきた建物内はスプレーでの落書きだらけでしたが、あれが実際の内部のようでした。

心霊スポットとしても有名な坪野鉱泉。
1996年に、「魚津市に肝試しに行く」とメッセージを残して、少女2人が失踪する事件がありました。
それは結局、2020年に、海の中から落下した車および白骨化した少女2人の遺体が発見され、事故として解決しましたが、それまでは坪野鉱泉に行って失踪したのではないかという噂が立ち、「神隠しホテル」として心霊スポットの地位を確立していました。

「牛首村」という村も、今はありませんが、石川県の河北郡津幡町や白山市白峰などに実在していました
ただ、映画『牛首村』に登場するような風習やいわく、因縁がある村だったり心霊スポットだったりするわけではなく、作中の設定は映画独自のもののようです。

この地域でという話ではなく、双子が「忌み子」と呼ばれ不吉な存在として疎まれたり、双子を産んだ母親が「畜生腹」と呼ばれたりするという差別や偏見は、実際に昔あったようです。
戦後でも、双子の片方を殺害するという事件もあったそうな。
畜生腹というのは、「一度に複数の子どもを産むのは犬猫の仲間だ」という発想らしいですが、すごい発想ですね。

「牛首トンネル」も実在し、有名な心霊スポットです。
中には地蔵が祀られています。
ただ、このトンネルは、石川県と富山県の県境に位置しており、坪野鉱泉からはかなり離れています。
トンネル自体は短く、入口からすでに出口が見えるもので、『牛首村』作中に出てきたトンネルは牛首トンネルというわけではなさそうです(モチーフにはしているかもしれませんが)。

「牛の首」という怪談も実際に存在しており、作中で説明されていたのと同様、「怖すぎて内容を知っている人はいない最恐の怪談」という、トンチのような怪談(というか実際は内容は存在しない怪談)です。

というわけで、総合すると、映画に出てきた「牛首村」は、地名自体は過去実在しましたが、その実態は完全なる創作です。
双子にまつわる差別や偏見も、昔の日本には実際にありましたが、牛首村や坪野鉱泉とは特に関係がありません。
また、実在する旧牛首村と、坪野鉱泉や心霊スポットとも関連はありません。
北陸の有名心霊スポットである坪野鉱泉、そして「牛の首」という怪談から、不穏さを感じさせる名称として「牛首村」が選ばれたのだと考えられます。

心霊スポットとしての坪野鉱泉は実在。
それ以外は、「牛首村」という坪野鉱泉と同じ北陸に過去に実在した村、「牛の首」という怪談、双子にまつわる過去の因習、といったものを組み合わせて出来上がったのが『牛首村』でした。

映画に焦点が当てられたものではありませんが、吉田悠軌らによる『実話怪談 牛首村』(竹書房)という本に、坪野鉱泉などにまつわる歴史がまとめられています。



映画の牛首村で行われていた風習とその後

映画の中の牛首村では、双子が「忌み子(忌み嫌われる子)」と呼ばれ、双子を産んだ母親が「畜生腹」と呼ばれていました。
双子の片方は、7歳を迎えると牛の子として牛の頭を持った村の守り神に返されていました。
それは、牛の頭をかぶせて穴に投げ捨てるという風習です。
どうやら飢饉などの時代で、口減らしの意味合いもあったようでした。

奏音の祖父(実)も祖母(妙子)も双子で、それぞれ片割れを失っていました。
妙子の片割れが、奇子あやこ
実際には妙子が犠牲になるはずだったのが、奇子がふざけて妙子の牛の頭を脱がし、自分でかぶってしまったので、間違えて奇子が捨てられることになりました。
間違えたことに気がついた村人が慌てていたので、姉か妹(兄か弟)のどちらが犠牲になる、など決まっていたのでしょう。

しかし捨てられた奇子は、同じく捨てられた子どもたちの肉を食べながら生きながらえていました。
とはいえ、奏音の前に現れた奇子が、実際に生き延びた奇子であるわけはありません
ただ、実際に肉体もあったりと、どんな存在なのかはいまいちわかりません。

とりあえず「霊」としておきますが、奇子の霊が幼少期の奏音と詩音の前に現れ、奏音を連れて行こうとします。
この頃にはさすがに風習はなくなっていたはずなので、双子が2人とも生きていられることが憎かったのか、単純に「1人は寂しかった」だけかもしれません
のちのち詩音が奏音を連れ戻せたこと、「アヤちゃんと遊んでいた」と奏音が言っていたらしいことからは、後者でしょうか。

その事件があって、奏音と詩音の両親は危険を感じたのか、2人を引き離して別々に暮らすことに。
何も説明していなかったのは謎ですが、万が一にも再会して何かが起こることを恐れたのですかね。

アッキーナとミツキが死んだのは、坪野鉱泉に立ち入った上、詩音をエレベーターに押し込んだことで奇子を呼び寄せてしまった(?)から呪われてしまったのでしょうか。
坪野鉱泉と牛首村の関連も、いまいちわかりません。
アッキーナとミツキは完全にいじめっ子な2人でした。

ラストシーンの意味

ラストもどうにもわかりづらく、これまでの2作と同じく、ホラー映画らしい不穏さを残すためのエンディングだった気がするので、それほどしっかりと設定が練られているのかわかりませんが、少し考えてみます。

そもそも奏音と将太(詩音の彼氏)が時空を超えて過去の穴の中に吹き飛ばされたのも謎すぎますが、牛の首を媒介として、詩音か奇子に引き寄せられたのでしょうか。
妙子おばあちゃんはなぜか呼ばれず。
時間軸としては、奇子が投げ捨てられてから数年〜数十年後でしょう。

詩音も、どうも坪野鉱泉のエレベーター内で落下した際、同じ時空に飛ばされた様子。
牛の頭をかぶせられて落下したというのは儀式と重複しており、こちらは少し繋がりが理解できます。

奏音たちと詩音は合流して何とか脱出しますが、奇子も飛び出してきて詩音が捕まります。
このときに、呪われたというか、取り憑かれたというか、乗っ取られたというか、いずれにせよ奇子の霊だか恨みだかが詩音の中に入り込みました(たぶん)。
これが、詩音が奇子の「依代よりしろ」になったということでしょう。

その後、何とか牛首村からは脱出するも、詩音が奇子化
このときのビジュアルももう少し何とかならなかったものかと思ってしまいますが、詩音が正気を取り戻し、奏音と将太に逃げるように呼びかけますが、

奏音は「一人ぼっちじゃかわいそう」と奇子化詩音を抱き抱えてまさかの心中!

将太も飛ぶんかい!

シュールなスローモーション!

からの、突然の現代のエレベーター内に帰還!

という怒涛の突っ込みポイントが続きますが、このあたりはもう理屈じゃありません、感じるんだ。

勢いで乗り切った3人は、命からがら生還。
奏音と詩音は、結局それぞれ元の生活に戻ったようです。

奇子を弔うためか、詩音と母・風歌は、お地蔵さんにお参り。
牛の首を戻して、手を合わせます。

しかしその後、奏音と電話をしながら立ち去る詩音の背後で、牛の首が再び落下。
「だって、1人じゃかわいそう」と言いながら振り向いた詩音の顔は、奇子のものになっていました。

……考察してみようと思って勢いのまま書き始めましたが、考察しようもないですね、これ。
とりあえず、奇子は詩音の中に入り込んだままであり、牛の首が再び落下したことからは、まだこの呪い(?)は解決しておらず、今後も続くことが仄めかされるラストです。

牛の首が取れたのは、幼き奇子が穴に運ばれる途中のことでした。
落下した牛の首を、奇子は咄嗟に拾い、穴の中でも持ち続けていました。

この牛の首を蓮の遺体が持っていたことからは、蓮を殺したのも奇子で間違いありません。
蓮が殺された理由もよくわかりませんが、アッキーナやミツキと同じ理屈でしょうか。
「1人じゃ寂しい」ため、奇子が呼び寄せていたのかな、と思います。

妙子が実と結婚する際に首なし地蔵に挨拶をしたあと、実に「先に行っていてください」と言ったのは、おそらく奇子のいる穴に向かったのだと考えています。
その際に奇子が生きているのを知ったのか、それ以前から知っていたのか、あるいは双子のシンパシーで感じ取っていたのかはわかりません。
ただ、奇子が生き延びモンスター化しているのを妙子は知っており、詩音が行方不明になった際には奇子の仕業と考え、呼び寄せられるように奏音がやって来るだろうと予想していた、と考えると、妙子おばあちゃんの諸々の言動が少し繋がります。

取れた牛の首は、奇子の無念の象徴です。
それが戻しても再び落下してしまったというのは、奇子の想いはまだまだ浄化されていないのだと考えられます。

小説版による補完

『牛首村』はノベライズも出ており、細かい点はこちらも読むと補完されそうです。
あまりすぐ読む気になれず、全部読めていないのですが、読んだ中では以下のように説明されていました。

  • 奏音は音楽が好きで音大に行きたい。音にも敏感で、音で人の気配を判別している
  • 小説では、奏音と蓮を心霊スポットが好きな2人と勘違いしたため、山崎が余計な気を回して、わざわざ遠回りして牛首トンネルに寄った
  • 山崎は反社会的な生業に就いている。虐待され児童養護施設で育った。記憶にないが山崎も双子だったようであり、7歳前後の記憶が特に抜けている(牛首村の風習と同じようなことが起こった?)
  • 山崎は、最初は奏音と蓮を売り飛ばしてやろうかとも思ったが、自分に似ている雰囲気を感じ取り、自分が歩めなかった普通の人生を送ってほしいと思い、協力した
  • 山崎も蓮も「(自分を)殺してくれないかな」と独り言を呟いたシーンがあり、それを奇子に聞かれていたために殺されたよう
  • 蓮は高速バスで襲われたが、バスに乗車した記録が残っておらず、遺体は高岡駅(富山県)近くで見つかった
  • 双子のうちどちらを牛頭の神に返すかは、親が決めていた
  • 奏音と詩音の母、風歌も双子だったが、片割れの初歌ういかは7歳になる年に行方不明になった。風歌いわく、奇子に連れ去られたよう。その後しばらく、風歌と初歌の母親・妙子は取り乱していた
  • なので、4歳のときに奏音が行方不明になったのは奇子の仕業だと妙子はすぐに気がついた。「富山にいると再び奏音がいなくなるかもしれない、大人になるまで引き離した方が良い」と妙子が言ったため、物理的距離を取るために父親は奏音を連れて家を出た
  • 詩音が落下する前、エレベーターの中で上から伸びてきた腕は、空間を超えて繋がった奏音の腕だった(なので、奏音の腕に傷が残っていた)。なぜ繋がったのかは不明。詩音の危機的状況を双子の奏音が感じ取った?
  • ラストシーンの地蔵参りは、事件のしばらくあと。祖母・妙子は亡くなっており、遺影は妙子のもの。奇子の供養のために訪れた



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