【映画】アトラクション/ヘル・フェスト(ネタバレ感想・考察)

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作品の概要と感想(ネタバレあり)

ハロウィンの季節。
大学生のナタリーは幼馴染のブルックを訪ね、ブルックのルームメイトのテイラー、そして彼女らのボーイフレンド達や気になる男子と共に、ホラーがテーマのアミューズメント・パーク「ヘル・フェスト」へと繰り出す。
様々な装飾が施され、アトラクションでいっぱいの作り込まれた世界観に興奮を隠せないナタリーたち。
しかしそこには、仮装したスタッフに紛れ込む形で1人の殺人鬼が息を潜めていた──。

2018年製作、アメリカの作品。
原題は『Hell Fest』。
邦題は『アトラクション』だったり『ヘル・フェスト』だったり?

遊園地のホラーイベントに本物の殺人鬼が!
という、シンプルかつ最強の設定です。

似た作品として『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』が浮かんできますが、『アトラクション』はお化け屋敷どころではなく、テーマパークです。
内容よりも何よりも、ホラー好きとしてはあのテーマパーク自体が羨ましい
細かいギミックやデザインなど最高で、終盤の人形の部屋とか白い仮面の部屋とか大好きでした。

とはいえ、実際にあったら相当治安と民度は悪そうで、行きたくなくなりそうですね。
本当に襲われて必死に助けを求めても、演出だと思われてスルーしてしまう。
目の前で刺されたりしてもなお信じてもらえないかもしれないというのは、ホラーテーマパークならではの恐ろしさでした。

内容としては、平凡といえば平凡というか、深みはまったくありません
殺人鬼の背景も99%描かれないので、なぜあのような凶行に至っていたのかはまったくの不明。
純粋にシチュエーションと殺戮を楽しむ作品で、楽しいといえば楽しいですが、記憶に残るシーンやインパクトには少々乏しかった印象です。

とはいえ殺戮も、無差別ではないのでややテンポが悪く、グロさも後半に向かうにつれて失速
テーマパーク内にあんなに凶器になる物が置いてあること自体危ないですが、ギロチンもさすがに刃は偽物だったようなので、注射器ももしかしたら本物の針ではなかったかもしれません。
ただ、斧とかは普通に破壊力がありました。

それこそ、そう、個人的にはもっとギロチンに頑張ってほしかったです。
ギロチンの刃を高く上げるのに必死になり、目の前で逃げたのにも気がつかず獲物を逃しちゃうドジっ子殺人鬼。
ちなみに、表舞台でのギロチン演出は、よくすぐにあのテイラー(ハイテンションパンク女子)のパンクな髪型の生首を準備できましたね。
テイラーはちょっとお友達にはなりたくない系でした。

目玉に注射器は良かったですが、それこそ類似の殺害方法は他作品でも見られるので、斬新というほどでもありません。
アッシャー(目玉注射されたテイラーの彼氏)は、シャツがパッツパツでめっちゃ筋肉質に見えましたが、あれは飾りだったようで、あっさりとパワー負け。
あるいは、殺人鬼が中肉中背に見えて尋常じゃない握力だったのかもしれません。
しかし、目に刺されるまで目を閉じないアッシャーの精神力は、並大抵ではありませんでした。

最初にギャビン(主人公に恋してる長身癖っ毛)が殺されたのは、意外性がありました。
とても頼りなく、しかし優しさが滲み出ていたギャビン。
少女漫画か?と思うほど、前半では時間を割いてナタリー(主人公)とのぎこちない距離感が縮まっていく過程が描かれていたのに、あっさりと退場。
頑張って人形をゲットしようとするのではなく、窃盗に手を染めようとしてハンマーで頭をかち割られ、カ〜ンという情けない断末魔の音を残すなど、最後まで情けない姿でした。
終盤、頼りがいのある男に成長するのかと見せかけての即退場は、斬新で良かったです。

マスクの不気味さは、『ハロウィン』のマイケル路線。
ストーカー的なスタイルからも、マイケルのファンなのかもしれません。

しかし、マスク殺人鬼を見るといつも思いますが、めちゃくちゃ視野が狭くて大変そう
特に『アトラクション』は終始暗かったので、相当見えづらかったのではないかと思います。
マイケルとか『13日の金曜日』のジェイソンなどは、半分モンスターみたいなものなので良いですが、『アトラクション』の殺人鬼はどうやらただの一般人だったようなので、なおさらでした。

全体的に、悪くはありません。
けれど、登場人物たちは脳みそ空っぽ能天気性欲大学生にしか見えず、ナタリーとブルック(元ルームメイトの親友)の友情以外は背景がほとんど深掘りされなかった一方で、殺人の目的も不明、殺戮もグロはありつつ派手さは乏しい。
と、どれか一つでももう少し突き抜けたものが欲しいと思ってしまう作品でした。


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考察:殺人鬼の目的を中心にいくつかの謎の検討(ネタバレあり)

殺人鬼の目的

『アトラクション』に登場する殺人鬼は、その目的も背景もほとんどわかりません
ラストシーンでその日常が少しだけ描かれましたが、考察するには情報が乏しすぎます。
手元にある情報だけで推測しても、考察というよりただの妄想になってしまいますが、その目的を少しでも考えてみたいと思います。

まず、何のためにあのような殺人を行っていたのか?
しかも、今回だけではなく、繰り返し行っていたようです。

ラストシーンで、愛する娘(出てきませんでしたが奥さんも?)の待つ家に帰った殺人鬼は、棚に今回の事件で使用したマスクと、戦利品であるナタリーとギャビンのプリクラをしまっていました。
この棚には、以前の事件で使用したらしいマスク、そして過去の被害者から奪い持ち帰った戦利品らしい写真やアクセサリーなどが並べられていました。

これらから、何かしら個人的なルールに基づいて殺人を繰り返している様子が窺えます。
写真やアクセサリーからは、被害者はほぼ若い女性のようであり、若い女性を殺害することに愉悦を感じる快楽殺人を繰り返しているのかもしれません。

秩序的な快楽殺人者は、日常では家庭を持っていたり、社会にうまく馴染んで溶け込んでいることも少なくありません。
そういった異常快楽殺人犯としてイメージされていたのかな、と思います。

ターゲットの選別

彼は、ターゲット以外は極力傷つけない、というよりはターゲット以外にはほとんど目もくれず、興味がないように見えました。
では、彼のターゲットはどのように決まっていたのでしょうか。

ヒントとなるのは、ナタリーたちが行ったのと同じ夜に最初に犠牲者になった女の子でしょう。
彼女はがお化けスタッフに対して「怖くないわ、どっか行って」と言った瞬間、殺人鬼はものすごい反応速度で彼女の方を見ました
それからマスクをつけてわざと彼女にぶつかりますが、彼女から「ちっとも怖くないわ。消えなさいよ」という言葉をかけられます。
その後、アイスピックを手にして彼女を追いかけ、ナタリーたちの目の前で殺害しました。

それがナタリーと殺人鬼の初顔合わせシーンでもありましたが、殺人鬼に会った際、ナタリーは「あなた、怖くない」と言い放ちました
それにムッと来たのか、殺人鬼は「ああん!?」とやった雰囲気で距離を詰め、アイスピックを握り締めていました。

これらのことから想像するとすれば、「怖くない」と強がっている、あるいは本当に怖がっていない女の子をターゲットにしていたのでは、と推察されます。

映画冒頭、数年前の事件で殺された女の子も、殺害される直前に「私を怖がらせたいの?それなら成功よ」とやや呆れた調子で言い放っていました。
おそらく彼女も、殺人鬼と出会った際、「怖くない」的なことを言ったのでしょう。

つまり、殺人鬼は、怖がっていない女の子を怖がらせて殺すことに快感を覚えていたのだと想像します。
そのような女の子を怖がらせて殺害し、彼女らが所持していたものを戦利品としてコレクションしていたのです。

娘にあげていたプレゼントは、ただのついででしょう。
殺人をしながら手にいれたぬいぐるみ等を娘にあげることで、彼にとっては殺人も日常でしかないということも示唆されていたのだと思います。

その他細かい謎ポイント

①トイレでナタリーを殺さなかった理由

トイレで髪を乾かしていたナタリー。
あれ何なんですかね?ドライヤーではないでしょうし、鏡の曇りを解消するためのものでしょうか?
あるいは、演出の都合で汚れて洗いに来る女性を想定してのドライヤーだったのでしょうか?

そこはどうでもいいです。
あのシーンで、髪を乾かしているナタリーに近づいた殺人鬼は、手を伸ばしてナタリーの髪に触れようとしましたが、触れずに手を引っ込めて一旦消えます。
女子トイレに侵入して髪に触れようとするという、だいぶ変態っぽいシーンですが、なぜこのときにナタリーを殺さなかったのでしょうか

上述した殺人鬼の特性からすると、ターゲットの強気な女性を怖がらせて殺すことに快感を覚えていたはずです。
ナタリーの友人たちを殺したのは、その目的のためであり、つまりはナタリーを怖がらせるための演出に他なりません。
ナタリーを殺すのは、あくまでも最後
なので、トイレでは怖がらせるに留めたのだと考えられます。

②殺人鬼はなぜギロチンのスタッフになれた?

ギロチン演出後、一瞬映った裏方さんは、だいぶバタバタしていたご様子。
なので、バイトが多かったり、スタッフ間も顔見知りではない可能性は多分にあります。

それにしても、表舞台の演出スタッフを演じるのは、それなりに経験が必要そうです。
もしかすると、殺人鬼はヘル・フェストで働いている、あるいは働いていた経験があるのかもしれません
そうだとすると、パークやアトラクションの内部をだいぶ熟知していたらしい様子も、説明がつきます。

ただ頻繁に入り浸っていただけかもしれませんが。

4人の死体?

ラストシーンの報道で流れていた情報によると、「今回の惨劇で4人の死亡が確認され、そのうち2人の死体は迷路に隠されていた」とのことでした。

ナタリーの目の前で殺された女の子。
ハンマーで殺されたギャビン。
注射器で殺されたアッシャー。
刺し殺されたテイラーとクイン。

5人ですが!?

迷路に隠されていたというのは、迷路内で殺されたというのは、最初の女の子とアッシャーでしょう。
テイラーとクインの死は、大勢が目撃しています。

ということは、制作上のミスでなければ、ギャビンの死体が隠されていてまだ見つかっていない、と考えるのが自然です。
確かに、いくら人気ひとけが少ないとはいえ、人形の補充のため人が出入りするロッカールームに死体が残されていたままだったら、速攻で通報されてしまいます。
報道は事件直後のようだったので、まだギャビンの死体が見つかっていないとしても、不思議ではありません。

④傷は……?

殺人鬼が帰宅したのは、事件直後、逃走してそのまま家に帰ったのだと考えられます。

ナタリーに脚?脇腹?あたりを刺され、かなりの出血を残しながらも姿を消した殺人鬼。
帰宅後は、少しよろよろ歩いているようにも見えましたが、娘を抱き締めるときは機敏に膝をついていました。

傷、どしたの……?

人間アピールに見えたラストシーンが、逆に実は人間じゃなかったことを示唆しているというさらなるどんでん返しなのかもしれませんが、これもまた制作上のミスでないことを祈ります。

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