【映画】ザ・ハウス 呪縛の時計塔/呪縛のAIマンション(ネタバレ感想・考察)

スポンサーリンク

 

作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

1983年、クリーブランド。食肉処理場で警察に追われる男が時計塔の窓を突き破って自殺した。
そして現在。アレックスはある古い建物を全面的にIoTマンションに改装し、「フェアモント・ロフト」と名付ける。
アレックスと妻シャーロットと彼らの幼い娘ミア、ある情報機関で働くデビン、プロアイスホッケー選手ジャクソンらが同じ日に入居するが、ミアは正体不明の少年を目撃する。
さらにその晩、ある男性が命を落とす事件が──。

2016年製作、アメリカの作品。
原題は『The Charnel House』で、「遺体安置所」「納骨堂」といった意味合いのようです。
邦題は『ザ・ハウス 呪縛の時計塔』と『ザ・ハウス 呪縛のAIマンション』の2パターンがあるよう?

今度はIoTが暴走だ!
と、思ったのですが、何かそんな感じではありませんでした

それも当然で、自分が観たのは『ザ・ハウス 呪縛のAIマンション』だったのですが、原題にはそんなニュアンスは皆無でした。
Io化は、あくまでも設定の一つに過ぎません。

とはいえ、原題のニュアンスもいまいち不明
建物が、過去にたくさんの人間が殺されていた食肉処理場だったから、ということでしょうか。
モニタの映像で執拗に家畜たちの無念さを伝えてくるところからは、家畜たちの死も含まれているのかもしれません。


総評としては、そこそこな感じ
後半の盛り上がりは個人的には好きでしたが、そこまでが少々長く感じてしまいました。
また、色々な謎は残されたままで、明かされた部分もいまいち整合性にも欠けています。

ただ、謎の少年ルパート=アレックス(マンションのオーナー)というのはそこそこ終盤までわからず、驚きもありました。
終盤、おかしくなったアレックスは、まさに『シャイニング』な雰囲気

しかし、本作はホラーなのか?と問われると、ホラーなのか?と問い返さずにはいられません
あまり演出が怖く感じられなかったからでしょうか。
家畜や屠殺シーンの映像は、怖いというよりは不気味というよりは意味不明な感じですが、あれはあれでけっこう良かったと思います。

過去に食肉処理場であったことや、AIやIoTといった設定が、あまり上手く活かされていなかったところが少々残念でした
食肉処理場じゃなくても良かったし、IoT化されていなくても良かったように感じてしまいます。

IoT化は、実に中途半端でした
序盤だけ観たときには、新しいもの好きなので「すごいな!いいな!」と思いましたが、実態を知るほどに魅力が薄れていってしまいました。

実質、最新技術が使われていたのは、タッチモニタと音声認識、そして最初に説明されて以降はすっかり忘れ去られていた「生体リズムをモニタリングして部屋をベストな状態にしてくれる」といったところぐらいでしょうか。
部屋の鍵もスマホで開閉できるようでしたが、いくらオーナーで緊急事態とはいえ、シャーロット(アレックスの妻)が自分のスマホでガンガン各部屋の鍵を開けていくのは、ちょっと問題がありそうです。

また、歴史的建造物なので、食肉処理場の古き良き部分も残そうとしているのでしょうが、あの手動のエレベータ
あれ、実際に住んだら最高にストレスなのは間違いありません


マンションへの文句はさておいて、内容へ。

一番気になってしまったのは、食肉処理場で何が行われていたのかが明らかにならなかった点です。
本筋に影響がないといえばないですが……。

本作で起こっていた現象については、細かく考察してもあまり綺麗にまとまらなさそうなので、少しだけ整理しておきます。

過去に経営者のトマスによって殺人が行われていた食肉処理場で、犯行が発覚しパトカー食肉処理場に駆けつけるに同時に、トマスは息子ルパートを抱えて時計塔から投身自殺。
しかし、ルパートは事前に未来が見えたため、魂を分裂させて死を回避
食肉処理場は閉鎖。

30年ほどの時が過ぎ、大人になったルパートことアレックスは、当時の記憶はないながら感じるものがあったのか、食肉処理場を近代的なIoTマンションに改築。
しかしそこで不審な出来事が。
これがなぜなのかわからないのですが、殺された人々や家畜の恨みが建物全体に残っていたのでしょうか。

ずっと建物で彷徨っていたルパートは、ドッペルゲンガーと再結合して1人の人間として死ぬことを望んでいました。
そのためにアレックスは引き寄せられてきたと考えるのが自然でしょう。

無事に長年の願いが叶い、一つに戻ったルパート&アレックスは、なぜか娘ミアを抱えて投身自殺しようとしましたが、今度はミアが未来を見て死を回避。
しかし、今度はミアの魂が分裂してしまったのでした

というのが大筋ですが、なぜ住民たちを巻き込んでの惨劇が起こったのかがわかりません
ここに関しては、

  1. ルパートはアレックスと再結合して死にたかった
  2. 建物には、食肉処理場時代に殺された従業員や家畜の恨みが残っていた

という二つの軸が混ざっていたと考える方が、個人的にはしっくりきます。


デビン(殺害された元従業員の息子)いわく、「再結合の邪魔をしようとする者があれば、建物と協働して邪魔者を排除しようとする」とのことでしたが、住民たちは別に、ルパートがアレックスに接触するのを邪魔しようとしていたようにも見えません

おかしくなったアレックスも、肉に囚われた感じがあり、ランチ用の肉をねっとり弄んだり、肉体派のジャクソン(アイスホッケー選手)に対しては執拗に、逆さに吊るしてまるで食肉を加工するかのように殺害していました。
このあたりは、ルパート云々より、食肉処理場に渦巻く怨嗟のようなものを感じます。

序盤で、不穏さを感じて早々に帰ろうとしたのに地下室に導かれ、発作で死んでしまったコーニッシュさんなんて、とばっちりにも程があります。
エミリー(ジャクソンとデートした304号室の女性)は、完全に『ファイナル・デスティネーション』な死に方でした。

ルパートがなぜ執拗にミアを地下室に導こうとしていたのかもわかりませんが、地下が過去の殺戮現場だったのかな、と考えています。
デビンが、父親の殺される映像を見せられたのも地下室でした。
ルパートにとって、アレックスとの再結合で一番邪魔なのはミアだと考え、排除しようとしたのかもしれません。

といったように、あまり惨劇の理由がはっきりしないところが、いまいち盛り上がりに欠けてしまいました。
序盤の屋上でのパーティでは、けっこう大勢参加していたように見えましたが、主要人物しか建物内で出会わなかったのも少々気になります。

設定や舞台など悪くはないのですが、うまく活かしきれておらず、どうしてももやもやが残ってしまう作品でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました