【映画】DROP/ドロップ(ネタバレ感想)

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映画『DROP/ドロップ』のポスター
(C)2025 Universal Studios
目次

作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『DROP/ドロップ』のシーン
(C)2025 Universal Studios

幼い息子を育てるシングルマザーのバイオレットは夫の死を乗り越えられずにいたが、マッチングアプリで知り合った男性ヘンリーとのディナーに応じることを決める。
高層ビル最上階の高級レストラン「PALATE」の窓際席で会話を楽しむ彼女のスマホに、誰かからスマホのドロップ機能を使ったメッセージが届く。
その内容は「目の前にいる男を殺せ。さもなければ、お前の息子を消す」という脅迫だった。
ドロップの通信圏である半径15メートル以内から監視され、スマホも完全にハッキングされるなか、絶体絶命の危機に追い込まれるバイオレットだったが──。

2025年製作、アメリカの作品。
原題も『Drop』。

大好きな『ハッピー・デス・デイ』シリーズのクリストファー・ランドン監督作品。
さらにはあらすじを読めば、好物のワンシチュエーション・スリラーもの。
否が応でも期待が高まっていましたが、いざ蓋を開けてみれば期待を裏切らぬ面白さでした。

全体的には非常にシンプルで素直なワンシチュエーション・スリラーでしたが、iPhoneで言うところのAirDrop機能を活かした展開がユニーク
作中で使われていた「デジドロップ」というのは、本作オリジナルのネーミングのようです。

一時期、AirDropで性的な画像を送りつけるエアドロ痴漢なる犯罪が話題になりましたが、実際に悪用された実例があるだけに、身近なリアリティを感じられます。
人知れず指示されて追い込まれていくといったようなスリラーは決して目新しいわけではありませんが、デジドロップによってよりリアルタイムに、かつ犯人が誰だかわからないまま進んでいくスリル感が魅力でした。
指示に従わざるを得ない状況に追い込んでいく過程も巧妙で、バイオレットのもどかしさに強く共感できました。

半径15m以内に犯人がいるはず、という状況も絶妙でした
電話やメールなどであれば相手はどこにいるのかわかりませんが、確実に近くに犯人がいるという状況が、周囲への疑心暗鬼を掻き立てます。
レストランという場所がまた絶妙で、スタッフや見知らぬ客がみんな怪しく見えてくるところも面白い。

映像やカメラワークもスタイリッシュで引き込まれました。
リアルさだけにこだわらず、注目するべき人だけにスポットライトがあたり他は暗くなったりと、次々展開していく中でわかりやすやも重視されていました。
ランドン監督いわく、「『DROP/ドロップ』は、ヒッチコックのような古典的サスペンスに、ジョン・ヒューズの登場人物の視点や感情を掛け合わせた作品」とのことらしく、そのあたりの歴史や技術的なことはわかりませんが、シンプルに魅力を感じました。
オープニング映像は『ファイナル・デスティネーション』シリーズ感も。

大きな謎を抱いたまま緊迫感を持って進み、終盤では犯人が明かされ、解決のためのアクションが繰り広げられる。
という王道的な展開のため、何か考察するような複雑さはなく、特筆して語ることもないといえばないのですが、純粋に楽しめる良質エンタメでした。

主人公のバイオレットは、過去に元夫ブレイクからDVを受けていたようです。
暴力により支配されていたバイオレットは、ブレイクが死してなお、今でもまだその影響が残っていた様子。
しかし、本作の事件を機に、それを乗り越え支配から抜け出します
元夫を撃つことができなかった(それはそれで当たり前ですが)バイオレットが、本作の最後では息子トビーを守るために犯人に向かって銃を発砲するシーンが、それを象徴していました。

この点は、バイオレットが覚醒する背景としては良いのですが、やや説明不足感も。
犯人のおじいちゃんリチャードは「バイオレットが元夫のブレイクを殺した」と認識しており、世間的にはそのような事件として扱われていた可能性が示唆されていましたが、実際はブレイクの自殺だった?ようです。

バイオレットが「自分が殺した」とでも自供したのかもしれませんが、そのあたりはすっぱりカットされているのでわかりません。
でも、殺人扱いになっていたらあんな呑気に生活を送れていなかった気もしますが……そうだとすると、リチャードもバイオレットも「実際は自殺だけど、バイオレットが殺したも同然」みたいな認識だったのか。
まぁまぁその辺は置いておきましょう。

ただ、少し元も子もないことを言ってしまえば、あれだけのDVをするような男性が、自殺するとは思えません。
少なくとも、バイオレットもトビーも殺して自殺するという心中が現実的でしょう。

あと余談ですが「自分が被害に遭った経験があるから、同じような被害に遭っている人の援助に回る」というのは、実際には非常にリスキーです。
ブレイクの死からそこまで時間は経っていないようでしたし、まだ乗り越えきったとも言えない様子だったので、心配。

というのはさておいて、先ほどは「説明不足感も」と書きましたが、背景の描写は最低限に留め、あくまでも今起こっている事件のスリルに重きが置かれていた点は、非常に好印象でした
あまり過去パートに時間が割かれていても、冗長になってしまっていたでしょう。

細かく見れば、強引な点も多々あります。
改めて振り返ってしまえば「犯人はそもそも何であんな回りくどい手を使ったんだ?」という根本的な疑問も。
バイオレットがうまく動いてくれなかったら、犯人側が窮地に立たされてしまっていたように思います。

他にもご都合主義的な展開は多くありましたが、あくまでも観終わったあとで振り返ったときに生じてくる疑問であり、観ている間はテンポ良く次々と展開していくので、大きく引っかかることなくのめり込んで楽しめました
ワンシチュエーション・スリラーは、よほど致命的な矛盾や興醒めしてしまうほどのご都合主義がなければ、それで十分だと思っています。

一方で、細かな伏線もしっかりと。
ヘンリーの飲み物に毒を入れる際は「席で入れろ」と指示があり、別にどこで入れてもいいのでは?と思いましたが、ヘンリーが異物を入れるシーンが防犯カメラに映っていることが重要なのでした。
バイオレット宅に侵入していた目出し帽の男性は、最初にメーター検診に訪れた男性でしたが、それほど顔を覚えていなかったので、目出し帽を脱いだ瞬間は「え、誰?」となってしまった点はご愛嬌。

犯人側は、レストランの防犯カメラやバイオレットのスマホまでハッキングする技術は相当なものですが、人がけっこうポンコツでした
レストラン担当のおじいちゃんのリチャードは、演技が上手でしたが、毒を盛られたとわかると速攻ブチ切れ。
実際にあの高さで窓が割れたら、あんな飛行機みたいに気圧差で吸い出されるのかは微妙。
ですが、いずれにしても吸い出される環境だったので、窓はもっと強化ガラスにしないと危険ですね。

バイオレット宅側の目出し帽くんは、あの広い家を1人で担当するのはなかなか大変そうでした。
リチャードから「2人を殺せ」と指示があってからもだいぶもたついていましたし、あの距離でジェン(バイオレットの妹)を撃っておきながら致命傷を外してしまっていたのも素人以下(ジェンが助かって良かったですが)。
バイオレットとヘンリーのデートも、お姉系なウェイターのフィルも、みんな「今日が初めて」で盛り上がっていましたが、もしかしたら目出し帽くんも現場仕事はあの日が初めてだったのかもしれません

このまま登場人物に話を移すと、どのキャラも個性があり魅力的。
ウェイターのマットは、本作の癒しキャラかつユーモア担当でした。
ランドン監督いわく『ハッピー・デス・デイ』と比べて「今回はコメディ要素を控えめにし、よりリアルなスリラーとして仕上げた」そうですが、彼がコメディ要素を一身に背負っていました。
程よい笑いが、良い緩急に。

バーテンダーのカーラは、さり気ない気遣いも立ち振る舞いも、最後に果敢にバイオレットを助けてくれたシーンも、かっこよかったです。
唯一の犠牲者となってしまったピアニストのフィルは、何だかんだ助けようとしてくれた根は良い人だったのに、完全なる巻き込まれでかわいそう。

トビーのラジコンカーが伏線になっていたところも憎い。
ラジコンで銃が運ばれてきたのは、とても笑える上に激熱なシーンでした。

そして何より、デート相手のヘンリーが良いヤツすぎました
彼の人柄がバイオレット親子の命を救ったと言っても過言ではありません。
あそこまで挙動不審にされたら普通帰りたくなるでしょうが、「何かあるんだ」と察する思慮深さ。
正義感に溢れて勇気があり、お腹を撃たれながらもバイオレットを引き上げるタフさもありと、なぜ結婚できていなかったのか不思議なほど。

しかし、初デートであのレストランはなかなかにハードルが高いですね。
早めに「帰る」とも言いづらそうですし。
バイオレットは家もかなりの豪邸だったので、だいぶお金持ちのようでした。

ラストも変にひっくり返したりせず爽やかで綺麗な終わり方で、奇を衒わず素直な作りだったので強く印象に残るわけではありませんが、好みのスリラーで楽しめました。
クリストファー・ランドン監督はかなり好きそうなので、長らく停滞していてようやく動き出したっぽい『ハッピー・デス・デイ』の3作目も、ずっと観たい観たいと思いながらまだ観られていない『ザ・スイッチ』も含めて、今後の作品にも期待したいと思います。

映画『DROP/ドロップ』のポスター

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