【映画】アンフレンデッド ダークウェブ(ネタバレ感想・考察)

映画『アンフレンデッド ダークウェブ』のポスター
(C)2018 Universal Studios. All Rights Reserved.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

(C)2018 Universal Studios. All Rights Reserved.

手に入れた中古のパソコンでソーシャルメディアにアクセスしたマタイアスは、そこに表示された以前の所有者と思われる「Norah」というアカウント名を、自分のアカウントに書き換えて使い始める。
すると、PC内に、監禁された女性を映した動画など、おぞましいファイルの数々が保存されている隠しフォルダ発見。
その時、見知らぬアカウントから「俺のPCを返せ。さもないとお前たちは死ぬ」というメッセージが届き──。

2018年製作、アメリカの作品。
原題も『Unfriended: Dark Web』。

以下、前作『アンフレンデッド』のネタバレも含まれるのでご注意ください。
前作『アンフレンデッド』については、以下の記事をご参照ください。

というわけで、パソコンの画面上のみで展開されるホラー映画『アンフレンデッド』の続編。
いじめを苦に自殺したローラ・バーンズの霊?呪い?恨み?による恐怖が描かれていた前作に対して、本作は大きく路線が変わり、人間怖い系の作品に(前作も、いじめていた側の人間怖い系でもありましたが)。
ホラーというよりスリラーという方がふさわしく感じる作品でした。

オカルト路線な前作とは異なり、本作は「実際にあり得そう」と思える現代的な恐怖感
前作は、タイトルの「unfriended」という単語が内容にもリンクしていましたが、本作は単純に続編として用いられているだけであり、ほぼ関係ありませんでした。
ストーリーも関連はまったくなし。

前作のようなホラーを求めていた方には肩透かしだったかもしれませんが、個人的に情報セキュリティやハッキング、クラッキング、ダークウェブあたりは興味が強い領域で、『ピエロがお前を嘲笑う』なども大好きなので、かなり楽しめて好きな作品となりました。
そのあたりに興味がないと、真相もよくあるパターンではあるので、ややインパクトには欠ける作品かも。

展開に関しては、細かく見るとかなり強引というか相当無理がある気がしてきますが、勢いがあるので観ている間に醒めてしまうこともなく、良かったです。
前作はITに強いキャラが1人だけでしたが、今作は時代が進んだこともあってか、専門的な深い知識があったのはデイモンだけだったとはいえ、登場人物みんな知識がそれなりにあり、話もスムーズ。
無駄にぎゃーぎゃー騒ぐシーンも減っていたので、ストレスも少なめ
主人公のマタイアスには、ややイライラさせられるかもですが。

前作や、同じくPC画面上のみで展開される『search/サーチ』などもそうですが、画面上の情報に会話の内容、そして字幕と、情報量がかなり多いので、内容の割に気軽には観られないのが、良い悪いではなく特徴ですね。
特に本作は、手話の訳もあったり、会話をしている振りをしながらチャットをするみたいな場面も多く、さらには字幕が下だけでなく右にも左にも表示されるので、追いきれずに何回か巻き戻してしまいました。


本作では、ダークウェブやクラッキングなどを中心に、ネットの裏側や怖さが描かれていました。
エリカ・ダンの誘拐の罪を被せられたと思ったら、すべてはもともと仕組まれていたゲームだったという複数の段階に分かれた設定も、どんでん返しとまではいきませんが最後まで飽きることがなく良かったです
あんなに大事なパソコンなのに、1ヶ月もネカフェの落とし物コーナーにあったり、アカウントのパスワードが「?」という単純すぎるものだったり、SNSどころかあらゆるパスワードが全部キーチェーンに保存されているのはかなり不自然でしたが、それらは見事に伏線でした。

しかし何にしても、とにかく「全部マタイアスのせい」だったのが残念ポイントですかね。
作品として残念だったというわけではなく、全体的に言い訳がましかったりするところもあり、人間性が残念だったというか。

遺失物を警察に届けて一定期間持ち主が取りに現れなければ拾得者のものになることはありますが、どれだけ放置されていたとはいえ、落とし物コーナーから持ち帰ってしまうのは歴とした犯罪行為。
しかも、ネカフェの落とし物を持ち主を名乗って持ち帰るのであれば、特にPCのような高価なものであれば、名前や連絡先など記入するのが普通でしょう(アメリカ事情はわかりませんが)。
もしかしてマタイアス、落とし物コーナーに置いてあったのをこっそり持ち帰ってきたのでしょうか。

恋人のアマヤのために手話を本気で習得しようとしていなかったようなところも、やはりどうなのかなと思ってしまいます。
アマヤのためにソフトを開発したのはとても偉いですが、アマヤの気持ちを考えれば、それ以前にまず自分が手話ができるようになってあげるのが先だったでしょう。

終盤、カロンたちの裏をかいてマタイアスが手話でアマヤにメッセージを送るシーンがありました。
いざという場面で必死に手話で伝えようとするマタイアスの姿に、「ここまで手話がうまくできなかったのは、このための伏線だったのか!」とちょっと感動しかけましたが、結局何の意味もなくアマヤが襲われてしまったところは、とても皮肉が効いていて好きです。

マタイアスの仲間たちは、みんな殺されてしまいかわいそうでしたが、これもやはりマタイアスのせいとしか言いようがありません。
いや、まぁさすがにあそこまで予想できるものではなく、殺したのはもちろんカロンたちが悪いのは悪いですが、完全にマタイアスによる巻き込まれ感が否めません。

他の登場人物たちがホラーあるあるな愚かなキャラたちではなく、前作では全員がローラ・バーンズのいじめに関わっていたように、本作の事件に巻き込まれても仕方ないような落ち度があったわけでもありません。
良識ある良い仲間たちでしかなかったのが、本作の悲壮感を高め、ダークウェブに蔓延る悪人たちの理不尽さや容赦のなさを強調していました。


ナリを演じたのは、ジョーダン・ピール監督『ゲット・アウト』において黒人女性の使用人ジョージナ役で圧倒的な存在感を放っていたベッティ・ガブリエル。
すぐにわかりましたが、『ゲット・アウト』での癖が強すぎる独特で不気味な雰囲気は完全に鳴りを潜めており、普通の人でした(当たり前)。

『アンフレンデッド』シリーズで製作を務めるのは、ジェイソン・ブラムとティムール・ベクマンベトフ。
安心安定信頼のジェイソン・ブラムは『ゲット・アウト』でも、ティムール・ベクマンベトフは『search/サーチ』シリーズでも製作に携わっています。

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考察:本作で起こっていたこと(ネタバレあり)

(C)2018 Universal Studios. All Rights Reserved.

細かい部分の整合性を考察するとなかなか乱暴なため、細かく考察するような作品ではありませんが、けっこう情報が入り乱れている作品でもあるので、本作では何が起こっていたのかの整理を少しだけ。

本作では繰り広げられていたのは結局、カロンたちによる「ゲームナイト」でした。
マタイアスたちもゲームナイトをやっていたのが、皮肉というか伏線というか、となっていたわけですね。
「GAME NIGHT XIV」と表示されていたので、14回目のゲームナイトだったようです。
最後、「マタイアスを生かすべき?」という問いに2万人以上が投票していたことからは、かなり大規模で、おそらくダークウェブ上では有名なイベントなのでしょう。

イベント開催の目的としては、メインはやはりお金と考えるのが自然です。
見る側は、リアルな殺人を楽しむというエンタメですね。
ライブ配信されていたので、リアルタイムで見ながら、おそらくスパチャのように投げ銭ができるシステムでしょうか。
犯罪や殺し合いのライブ配信をしてお金を稼ぐという設定は珍しくはなく、ネタバレになってしまう気もするので作品名は伏せますが、同様の設定の作品はたくさん浮かんできます。

被害者たちをうまく騙せるのか?といった要素や、被害者の生死を投票で決められたりする要素があるのが、「ゲームナイト」たる所以でしょう。
運営側も、お金目的だけではなく、そういった悪趣味なゲームを純粋に楽しんでいるような部分もありそうです。


運営側のメンバーが「カロン」なのだと思いますが、最後の画面では「Charon2911」っぽい数字も見えたので、カロンだけでも相当な人数がいそう。
もしかすると視聴者もカロンなのかもしれず、そうであれば数万人単位ということになります。

最後の画面では、マタイアスたちを実際に殺害したり、ゲームの事後処理などにあたっているらしいメンバーの様子が映っていましたが、警察官らしき制服を着た男性も映っていました。
富裕層向けのマニアックなコミュニティというよりは、アングラな世界でかなり広まっており、支持者も相当に多いのでしょう

地下鉄のホームでナリを突き落としたり、マタイアスを車で轢き殺したりといったような、公共の場で物理的に襲いかかるのはさすがに隠蔽が難しそうな気がしてしまいますが、それを上回るほどの協力者がいるのかもしれません。

カロンたちが画面に映らなかったのは、映像が乱れてもいたので、ステルス迷彩(通じますか?)的な、電子デバイスに映らなくなる妨害装置のようなものを所持していたのでしょう。
実際にあれだけの精度のものがあるのかはわかりませんが、欲しい。


マタイアスが持ち帰ったMacBookがそもそも餌だったわけで、必死に調べたり対抗しようとするマタイアスたちの行動はすべて、カロンたちの手のひらの上で転がされていただけでした。
遠くロンドンの地にいたデイモンが襲われたのも、入院していたセレーナの母親が殺されたり病室の映像があったりしたのも、事前に準備がなされていたから、ということになります。
マタイアスが持ち帰らなければそもそもゲームが始まらなかったわけですが、きっとマタイアスの性格は普段から少々問題があり、読まれていたのでしょう。

マタイアスがダメ男な感じで描かれていたのは、最後の「マタイアスを生かすべき?」の質問で「No」に多く投票させるためというのもあったかもしれませんが、ゲームの性質上、どう足掻いてもあれは「No」になりそう
それにしても8〜9割が「No」だったマタイアス、何とも言えません。

ただ、誘拐されたエリカ・ダンは、実在していました
最後に現れて助けを求めるシーンでは、額に穴が空いていましたが、あれは序盤で話されていた穿孔術のリクエストが実行された結果であると思われます。

それを踏まえると、マタイアスが持ち帰ったMacBook内の動画は本物であり、「ゲームナイト」とは別に、あれはあれで実際に行われていることということになります。
リクエストに答える拷問やスナッフ・ビデオ、といったところでしょうか。

いずれにせよマタイアスは生かされるわけはありませんでしたが、生死を決める投票が「Yes」になった場合は、あの場ですぐには殺されず、エリカ・ダンのように拷問など悪趣味な殺され方をする方に使われていたかもしれません。
そう考えると、車に轢かれて即死できたのはまだマシだったのかも


ちなみに、最後の画面で都市ごとの投票数みたいのが表示されていましたが、何と、トップは2488票で「TOKYO」でした。
これはおそらくマタイアスの生死に関する投票ではなく、画面の左側のチャット部分では次回の舞台として希望する都市への投票がなされていたので、その結果であると考えられます。
アメリカは「NEW YORK」と「LOS ANGELES」に分かれていましたが、それを足しても「TOKYO」の投票数には及びません。

カロンたちによるゲームナイトで続編が作られることになれば、次回作はきっと、日本が舞台だ!

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