【映画】カルト(ネタバレ感想・考察)

映画『カルト』
(C)2012 Next Media Animation Limited. All rights reserved.
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

映画『カルト』のシーン
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人気タレントのあびる優、岩佐真悠子、入来茉里の3人は、霊にとり憑かれたというある母娘の除霊をする番組のレポーターを務めることに。
しかし、母娘にとり憑いた霊は強力で、訪れた霊能力者たちは次々に倒れてしまう。
最強の霊能力者と言われるネオが除霊に挑むが──。

2012年製作、日本の作品。

それこそカルト的な人気を誇る白石晃士監督作品。
個人的には、『貞子 vs 伽椰子』、『口裂け女』に続いて3作品目の鑑賞。
もっと観ていかねば。

しかし、この3作品だけでも独自の世界観が強いのはひしひしと伝わってきます。
最初はなかなか面食らいますが、クセになりハマる感覚もわかってきました。
M・ナイト・シャマランやジョーダン・ピールのような、「ジャンル:白石晃士」といった印象

しかも、白石監督がモキュメンタリーを得意としてるのは知っていましたが、白石モキュメンタリー作品としてはこれが初となりました。
なるほど、『口裂け女』は正直「うーん、ちょっと……」感が強めでしたが、このぶっ飛びがちな白石ワールドは、モキュメンタリーの方が説得力が増しそうです


本作のキャストは、あびる優、岩佐真悠子、入来茉里のメイン3人は本人役で出演。
何とも懐かしい名前、と言っては失礼かもしれませんが、あびる優、岩佐真悠子は名前を知っているぐらい、入来茉里は名前も知らなかった、という体たらくなので、逆にリアリティが感じられて良かったです。
演技はもう少し自然体でも良かった気も。
3人の中では最も演技慣れしてそうな岩佐真悠子の演技が一番微妙に感じられましたが、どうやらご本人はまったく怖がりではないらしく、怖がる演技が逆に難しかったり恥ずかしかったりしたそうです。
なるほど。

「テレビの企画で怪奇現象が起こる家に挑む」という内容は、実際にテレビ番組でありそうなところも、モキュメンタリーの相性が良い。
あまりテレビを見てこなかったので疎いのですが、実際にオカルトブームの時代はそのような番組も多かったはず。

今で言えばYouTubeの企画でありがちなイメージで、YouTuberモノとして引き継がれた一つが『真・事故物件/本当に怖い住民たち』と言えるでしょう。
だいぶぶっ飛び展開なところも似ている印象です。


さて、そんなベタな心霊現象や心霊映像から始まる本作ですが、なかなか展開のテンポも良く、しかもどんどんジャンルが変わっていく感じだったので、飽きることなく最後まで駆け抜けました
いかにもな心霊現象と除霊、ミミズのようにぐにゃぐにゃしたクリーチャー的な存在の登場、そしてカルト集団の不気味な行動に、スーパー霊能力者による真っ向からのバトル。

前半のコテコテな心霊映像は、懐かしさすら感じました。
スローモーションでアップしてくれる親切設計で、見落としもなし。
映像の解像度が上がり、現実とフェイク画像(映像)の境界が曖昧となった近年では、心霊写真や心霊映像の信憑性は急降下。
それでもやはり、こういった映像は不気味さがあって良いですね。

特に隣の家の窓に人影が見えるシーンが好きでしたが、あれがまさかの心霊現象ではなく、本当に隣人だったとは
そのあたり、2012年であればすでに心霊映像ブームも下降気味だったと思うので、逆手に取った構成でお見事でした。

展開が進むにつれて、ホラーというよりエンタメ感が強くなっていきました
特にCGはやはりちょっとクオリティが……と思わざるを得ないので、モキュメンタリーながらリアリティは薄め。
そんな中でも、逆再生で階段をのぼるシーンなどは、笑ってしまいましたが工夫がとても面白い。
白石監督が舞台挨拶で「笑ってもいい映画ですから、怖がるところは怖がっていただきつつ、笑えるところは楽しんでいただければなと思います」と言っていたようなので、エンタメ作品としての認識も笑うのも間違っていないようです。

『カルト』というタイトルとの関連が見えてきたのはだいぶ終盤でしたが、個人的に本作で一番不気味だったのは、家の前で大勢がおいでおいでみたいな謎の儀式(?)をしていたシーンでした
次点は、隣人の不気味さです。
オカルトからクリーチャー、ヒトコワまで色々な要素が詰まっていたことで、「やっぱり一番怖いのは理解できない人間だなぁ……」と再認識。


モキュメンタリーですし、考察というほど情報はありませんが、一応筋書きとしては、とあるカルト集団が、幼少期の臨死体験によってあの世と繋がりを持つ体質となった金田美保の身体を通して神を呼び出そうとしていた、という流れでしょう。
しかし、そこらとのカルトとは違い、マジモンのヤバい存在を崇拝していたこのカルト集団

というか、みんな自主的に、あるいは洗脳されて崇拝しているのではなく、オカルトパワーで支配され操られていたような感じでした。
一番霊感が強そうだった入来茉里が支配されたことからも、体質などによって支配されるかどうかが変わりそうです。
身体に刻まれた幾何学模様が、支配の証であり信者である印なのでしょう。

美保ちゃんにとってはいい迷惑でしかありませんでしたが、演じていた岡本夏美の演技がとても良かったです。
近年もドラマや映画に出演している様子。

そして何よりネオのキャラが良かったですが、演じてた三浦涼介は、戦隊モノに多数出演していたようです。
なるほど、だから妙にあんなバトル慣れ(?)していたのですね。
厨二病を極めたような、手袋をした左手も良い。

しかし、あそこで終わらせる決断はなかなかすごいですね
「さぁ、始めようぜ!」みたいなところであえて終わる作品も珍しくはありませんが、「えっ、終わり?」と思わず口に出しそうになりました。
白石監督いわく続編はないと明言されているところも、とても潔い。

ただ、白石監督はX(当時はTwitter)で、2021年5月30日に「カルトの続編は撮りませんが、カルトの先のクライマックスを含めるような作品は近く撮りますので、どうぞお楽しみに。」と発信されていました。
公開時期や感想などで見る限り『オカルトの森』がその作品っぽいので、こちらもいずれ観ていきたい。


残された謎は多めで、それは意図的なものでしょうが、序盤で美保がジロー(犬)を食べていたところは、インパクトはありつつも、必要性が説明されなかったのはネガティブポイント
動物がいると神(?)にとって不都合があったのかな、など想像はできますが、個人的にはあまり必要性なく動物を殺害するのはマイナスに捉えがちなので、モザイクがかかっていたとはいえ微妙なライン。
その後、にこにこしながら「ありがとうございました!」とビデオ撮影しているのは違和感もありましたが、あれはあれで取り憑かれたり記憶をコントロールされていた状態だったからかもしれません。
とはいえ、あのあと一切話題にものぼらなかったジローはちょっとかわいそう。

あとは、美保の実母も心配です。
母親もカルトに所属していて自ら娘を差し出したのか、あるいは、そうでないとすれば消されてしまっている可能性が高そう。

入来茉里は、だいぶ思わせぶりに覚醒した割には、それほど見せ場もなく終わってしまいました
そもそも、3人組の中でもちょっと他の2人と距離感があり、かわいそうな感じでした。
恐怖で限界を迎えたときも、「仕事なんだから」と責められたり、果ては霊媒師・龍玄からも「そういう精神状態だと、危険ですよ」と冷たく言われてしまったり。
塩を触ったときも、実際に熱かったのを咄嗟に隠したのだと思いますが、めちゃくちゃ怒られててかわいそうでした。
あそこでやや3人組の本当の関係性が垣間見えたような。

雲水&龍玄コンビは、いかにもっぽくて良かったですが、残念ながら予想通りの力不足で退場。
お祓い中も「気を確かに!」とか「気をしっかり持って!」とか抽象的な精神論ばかりだったので、いざ自分があの場、あの状況であの指示をされたら、どうすればいいのかわからなくなってしまいそうでした。

ちなみに雲水役の山口森広、「どこかで見たことあるな、よくある顔だからかな」と思って調べてみたら、大好きな映画『バトル・ロワイアル』にも出演していました。
織田敏憲役、と言ってもわからない人がほとんどだと思いますが、「桐山の銃撃を防弾チョッキで防いで助かったけれど、刀で首を斬られて、口に手榴弾をねじ込まれて放り投げられたヤツ」と言えば、観た方なら何となく思い出せるのではないかと思います。
すっかり大人になっちゃって……!
雲水さんは優しかったので残念でしたね。
今(2024年)リメイクするなら、ハナコの岡部が似合いそうな気がします。

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