【映画】7500(ネタバレ感想・考察)

映画『7500』のポスター
(C)2014 CBS Films Inc. All Rights Reserved
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

映画『7500』のシーン
(C)2014 CBS Films Inc. All Rights Reserved

様々な事情を抱えた乗客を乗せ、ロサンゼルスから東京に向かって飛び立ったヴィスタ・パシフィック航空のジャンボジェット7500便。
飛行中、突然の乱気流に襲われて機体が激しく揺さぶられ、乗客は一時パニックに陥る。
やがて乱気流はおさまるが、今度は乗客のひとりが苦しみだし、血を吐いて絶命。
それをきっかけに機内では謎の死が相次ぐ。
怪異現象に襲われながらも飛び続けるしかない7500便の機内は、異様な様相を呈していく──。

2014年、アメリカの作品。
原題も『7500』。

監督は『呪怨』で有名な清水崇監督。
本作が、『THE JUON/呪怨』『呪怨パンデミック』に続くハリウッド3作目。
何だかんだハリウッド含めてこれだけ作り続けているのはすごいことですね。

さて、本作は清水監督のハリウッド製作の中では唯一『呪怨』シリーズとは関係のない作品。
個人的にはフライトパニックものは好きなので、それにホラー要素が追加されていて楽しめました
観終わったあとにレビューサイトを見たら評価が恐ろしく低かったので涙ですが、やはり他の方の評価や感想は参考にはしつつも、自分の目で確かめるのが大事ですね。

ただ、評価が低めなのもわからなくもありません。
キャラの個性はみんな強くて良かったですがそこまで魅力的というわけではなく、伏線と思われた細部は結局ほとんど意味はなしで、謎は放り投げられたまま終幕。
そして何より、ラストの「実はみんな死んでいました」というどんでん返し。
やはり「実は死んでいたのを自覚していなかった」パターンはあの超有名作品(一応、伏せておきます)が圧倒的すぎて、後発の作品は二番煎じ感が否めなくなってしまうのも確か。

もちろん、だからといってそのネタを使ってはいけないわけではなく、本作は何だかんだ終盤まで気がつかなかったので、巧く構成されていたと思います。
ブラッド(救命士)は好きでしたが、妻(あの時点ですでに元妻?)ピアとのシーンも感動的とまでは至らず。
あのどんでん返しは、キャラに対する思い入れが衝撃度を左右すると思うので、そこは惜しかった印象です。

細部がよくわからないのは間違いないのですが、あくまでもフライトパニック・ホラーに徹していたと思うので、個人的にはありでした
清水崇監督のインタビューでは、フライトパニックものの作品製作を持ちかけられた際、「見ず知らずの人達が知り合って、恐怖体験を共有するという “群集心理”に興味があったので、その場で話が決まり、速攻で脚本を依頼していた」と述べられているので、その点はうまく取り扱われていたのではないかと思います。

そもそも、フライトパニックものの映画は多いですが、そこにオカルト的なホラー要素が組み合わさった作品というのは、ほとんどないのではないかと思います。
ものすごい偶然ですが、ちょうど直近に観ていたタイの短編ホラーオムニバス『フォービア/4つの恐怖』に収録されていた「最後のフライト」という作品が、方向性は違えど「飛行機+オカルトホラー」だったので、それを観ていなかったらさらに新鮮だったかも。
ちょっと演出が被るシーンもあって笑ってしまいました。

ホラー要素も、清水監督らしくじめじめしたJホラーな恐怖感。
最終的には投げっぱなしに近いとはいえ、何が起こっているのかわからない展開は好きでした。
下手に幽霊や死神を映したり、CGを使用していなかった点も好印象です。
清水監督のインタビューでは「もう二度と飛行機に乗りたくないと思わせたい」とも述べられていたので、やはりあくまでも「フライトパニック+ホラー」という飛行機内で繰り広げられる恐怖に特化した作品で、細部の整合性はあえて放棄したのだろうと思います


そんな中でも内容を少し整理してみると、本作において一番キーとなるのは「シニガミ」でしょう
死んだ者は未練を断ち切らないと先に進めない。
未練を断ち切ると、シニガミがその魂をあの世へと導く。

何だか日本人の監督でありながら日本の死神のイメージとは若干異なる概念な気がしますが、洋風なシニガミ人形のデザインも合わせて考えると、ややアメリカナイズした演出なのかな、と感じました。
あわよくば、伽椰子や俊雄(『呪怨』のキャラ)に続く「シニガミ」ブームが起きればラッキーと思っていたのかな、などと邪推。

乗客はほぼ全員、乱気流に巻き込まれた際に気密が破れ、気圧低下と酸欠で死亡したようでした。
その後は各自、未練を断ち切ることで死の自覚へと向かっていきます。
ブラッドとピアはお互いの理解と和解。
客室乗務員のローラは、機長との不倫の解消。
同じく客室乗務員で初めての彼氏ショーンにとらわれていたスージーは、今の彼氏ニックとの婚約を断念。
妊娠の検査をしていた女性は、その結果(陰性)を知ること。

ただ、それ以前にシニガミあるいはランスの死体?に襲われたり攫われた人たちは何だったのか、これは結局よくわかりません。
ランスの死体から腕時計を奪ったジェイクなど、現世への執着にとらわれていた人はシニガミに襲われてあの世に強制連行されたとも考えられますが、未練を断ち切ったはずのローラやスージーも襲われていました。
このあたりは、あくまでも整合性はないもので、ホラー演出として捉えるべきでしょう

ローラやスージー、妊娠検査の女性などは、未練を断ち切るイベントがあったあとに連れ去られているので、未練を断ち切ったために連行されていった可能性もあるかもしれません。
そう考えると、ジェイクなどは「こいつは未練を断ち切れないだろうな」と判断されて早々に連れ去られたのか、あるいはシニガミに取り憑かれたランスの腕時計を奪ったので、ランスの怒りを買ったのか。

後半の切迫した状況で、スージーが「いつも考えるの。人は死ぬ間際、何を思うか」と話し始めた瞬間は重要な話が切り出されるのかと思いましたが、「私はきっと、初めての彼氏ショーンのこと」と続き、今そんな呑気な話をしている場合か?しかも死ぬときに初めての彼氏を思い出すとはまた意外と恋愛体質なんですね?などと思ってしまいましたが、未練を断ち切らせるための伏線回収だったんだとあとから理解できました。
にしても、ちょっと強引感は否めませんが。

パンクなヘビメタ女子?のジャシンタの最後は、自分と同じ姿をしたシニガミ?と抱き合っていました。
またわかりづらいシーンを突っ込んできたなと思いますが、死体の手にわざわざ触れるなど、ある意味では以前から死に取り憑かれていた様子も窺えるので、自分を受け入れる=自分の死を受け入れる、ということだったのかな、と思います。

最後の最後は、潔癖症で空気の読めなさが最高にウザ……迷惑そうだったリズだけが誰もいなくなった機内に残っており、ゴミ箱から現れた手に襲われるところで終幕しました。
これもよくわかりませんが、「死は命の一部」と述べるジャシンタに対して「私の命には含まれていない」と言い放ったリズなので、一番死を受け入れなかったために最後まで残ったのかと考えています
それでも結局、潔癖症な彼女が忌み嫌うゴミから伸びてきた手に連れ去られてしまったと思われるので、逃げる術などはなかったのでしょう。


そんなわけで、乱気流後の出来事に関しては、現実とも死んだ彼らが見ていただけの妄想とも、どうとでも解釈できます。
ただ、どうしてもわからないのがやはり乱気流前に突発的に死んだランスです。

彼はかなり謎ですが、どうやらシニガミ人形を作っていたのも彼のようでした
シニガミ人形の伝票で、発送者が「MORRELL RARE TOY DESIGNS」となっていましたが、ランスの名前がランス・モレルだったので、おそらく彼の会社でしょう。
ちなみに、宛先は「TAKASHI SHIMIZU」となっていた小ネタも。

冒頭から不穏な電話をかけていたランスですが、女性の名前を添えて髪の毛を保管していたりと、殺人を行っていたことも仄めかされています。
もしかすると、殺した(あるいは死んだ)人間の髪の毛などを使って、シニガミ人形を作っていたのかもしれません
冒頭の電話における「髪の質が粗悪で、目は青じゃなかったぞ。目玉をくり抜け」については、あんなに堂々と電話していたので、さすがに人形作りの指示だとは思いますが。

そんな彼は最初の乱気流のあと、突然の発作を起こして死亡しました。
これは謎のままですが、彼は乱気流で揺れていた際にかなり緊張していましたし、「飛行機で死にたくない」と言っていたので、飛行機恐怖症だったのかな、と思います。

とはいえ、恐怖症のパニック発作などで死んだとも思えません。
その後も死体が消えたりしていますし(全員死んだあとなので現実の現象かわかりませんが)、あれはあれで、シニガミ人形を作り続けた報いで、シニガミに呪われてしまったのでしょうか

そもそも、本作のタイトル『7500』を考えてみましょう。
調べてみると、まったく同じタイトルで、2019年に製作されたハイジャックもののサスペンススリラー映画が存在しています。
どちらも飛行機が舞台ですが、航空無線におけるスコークコードと呼ばれる数字において「ハイジャック発生時」を示すのが「7500」とのこと。

ここでポイントとなりそうなのが、ハイジャック以外のすべての緊急事態は「7700」で表されるそうです。
つまり、ハイジャックを扱った2019年の映画が『7500』なのは理解できますが、本作が『7500』なのは違和感があります
本作の飛行機が「ビスタパフィシック7500便」だったので、単純にそれが理由な可能性もありますが、そうであるにしてもわざわざ7500という数字が選ばれたのは偶然とは思えません。

この点を踏まえると、本作の全体のイメージとしては、飛行機がシニガミにジャックされてしまったということなのかな、と思いました。
つまり、たまたま気密が破れるトラブルが生じてしまったのではなく、そもそもあの飛行機はシニガミに取り憑かれており(ランスが人形を持って乗ったのが原因?)、全員が死ぬ運命は最初から決まってしまっていたのでしょう。


というわけで、細部の謎はほとんど解消されないまま終わっていますが、フライトパニック・ホラーとして個人的にはけっこう楽しめた作品でした。
機内の様子もリアリティがあり良かったで、普段は見られない貨物室などを観られたのも楽しかったです。
が、本作を観たのは2024年4月なのですが、2024年1月3日に羽田空港における航空機衝突事故で貨物室の犬は救出できなかったというタイムリーな出来事があったので、貨物室に犬が乗っていたシーンは何とも言えない気持ちになってしまいました。

あと、あの規模で客室乗務員が2人だけというのは、ビスタパシフィック航空、なかなかブラックなようです。
一応調べてみたところでは、法律で規定されているのは「客席数50席に対し、1名以上の客室乗務員を乗務させなければならない」とのこと。
かつ「緊急脱出時配置数(ドア1つに対し1名)を下回らないこと」らしいので、本作の飛行機のドア数はわかりませんが、微妙そうですね。

ちなみに、「客室乗務員 人数」で検索したのですが、「客室乗務員 にん」まで入力したところで、サジェストの一番上に出てきたのが「客室乗務員 妊娠したら」でした。
スージーとローラも似たような会話をしていましたが、やはり大変な仕事なんだな、と改めて尊敬の念。

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