【映画】ハングマン(2015)(ネタバレ感想・考察)

映画『ハングマン』
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

家族旅行に出かけたミラー一家の留守宅に謎の男が侵入し、盗撮用のカメラを仕掛けた。
男は一家の若い母親を狙って覗きや侵入を繰り返し、その行動を次第にエスカレートさせていく──。

2015年製作、アメリカの作品。
原題も『Hangman』。

ここにまた、新たなキモキモストーカー男伝説が誕生した──

いや、2015年の作品なので、誕生したというより、発見したという方が正しいでしょうか。
あと、この犯人の男(以下、ハングマンと呼んでおきます)は次々と家族を狙っていたようで、本作のミラー一家に対しても、母親のベスがメインのターゲットではありましたが、彼女への好意にもとづいて行動していたのかは不明でした。
そのため、日本のストーカー規制法で言えば、ストーカーに該当するかは微妙なところ。

みたいな細かいことはさておいて、終始ニチャア……としたねっとり感が漂うPOVスリラーでした

ひたすら気持ち悪く、大した起伏もないため評価が低めなのも納得してしまいますが、個人的には何だか好きな作品でした。
理由は自分でもよくわからないのですが、おそらく、映像が好みだったのと、ただひたすら不快要素だけに特化しているからかな、と思います。

映像に関しては、POVやファウンドフッテージなだけで楽しめてしまうタイプですが、本作は潔く途中でカットされているシーンも多く、テンポは良かったです。
カメラの数も多く、まさにハングマン視点で覗き込んでいる感覚がひしひしと伝わってくる演出でした(荒い息遣いも合わさって)。

「不快要素だけに特化」という点に関しては、ハングマンの背景や目的が一切わからないまま奇行だけが描かれたところが、消化不良でもあり魅力でもありました
ただおそらく、背景や目的がはっきりと説明されていたら、駄作になってしまっていたのではないかと感じます。
観終わってなおまったく理解できないからこそ、気持ち悪くも恐ろしい。

ハングマンの背景や目的を考察するに足る情報はほぼないに等しく、可能性はいくらでも考えられます。

幸せな家族に憧れていたのか?
母親となった世代の女性が好きなのか?
アルバムを見て泣いていたけれど、過去に家族に捨てられたりしたのか?
「僕は浮気なんてしない」と言っていたのは、過去に浮気でもされたのか?
アーロン(ミラー家の父親)の言葉を真似ただけなのか?
「愛している」と言わせてから殺すのは、相手を支配したかったのか?
しかし冒頭の女性は「愛している」と口にする前に殺していたので、ただ怒りをぶつけたかっただけなのか?
幸せな家族を妬んでいるだけなのか?
作中では一貫して子どもは殺していなかったので、両親と確執があったのか?

などなど、可能性は他にも無限に湧き出てきます。
一つの回答を導き出せない、不可解な行動のオンパレードはお見事でした
ジュースの件なんか意味不明すぎますし、無差別テロにもほどがある。

ミラー家だけでもかなりの日数滞在していましたし、その前後も他の家族を狙っており、ひたすらあのような生活だけに人生を捧げているようだったので、いわゆる「無敵の人」っぽさも不気味でした
けっこう行き当たりばったりで殺しまくっているので、普通に考えればあっさり捕まりそうですが、ほとんど社会的には生活しておらず、あの粘着ストーカー生活だけを繰り返していると考えれば、意外と尻尾をつかみづらいのかもしれません。


いずれにせよ、最も怖いポイントは、そのような不可解なハングマンと対比して、ミラー一家はあまりにも普通な家族の上、何の落ち度もない点です
そんな家族が、一方的に家に侵入され、知らないうちに日常を侵食され、目的も相手が誰かすらもわからないまま殺害される。
自業自得要素は皆無。
これ以上の恐怖があるでしょうか。

ミラー一家の何でもない日常シーンが多く見られた点も特徴的でした。
ただの時間稼ぎと取ることもできますが、あまりにも普通すぎる日常が、我々の生活とも被ります
知らない男にカメラを設置されてすべてを覗き見られているのに、まったく知らず疑いもせずに生活している。
「うわ〜きも〜」と思いながらこの作品を観ている自分も、実は今見られているかもしれない。
ちょいちょい挟まれる謎のカメラ目線は「こっち見んな」でしかありませんが、「お前も見られているぞ」というメッセージだったのかもしれません(たぶん違う)。

そこまでのリアリティがあったり不安を煽るような作品ではありませんが、日常シーンがあまりに平凡だからこそ、ハングマンの狂気が輝いていました
途中、ハングマンが来客のメリッサのハンドバッグを漁っていたときにアーロンが近づいてきた際、慌てるでも逃げるでもなく、いつでも襲えるように刃物を手にじっと様子を窺っていたシーンなんか、日常と狂気が紙一重で隣り合っている構図が見事に視覚化されており、とても印象的でした。


ところが、本作には何となく脱力した空気感も漂うのはなぜでしょうか。
日常シーンが多いから、ではないはずです。
そう、それはきっとハングマンのビジュアルのせいでしょう

闇に紛れていると、顔がまったく見えない姿はかなり不気味です。
しかし、よく見ればストッキングだかタイツだかみたいなのを被っていたので、明るいシーンで近くで見るとどうにも間抜け。
というか、あれ、けっこう分厚そうでしたが、前見えていたのでしょうか?
別にあそこまで顔を隠す必要はなかった気もします。
だいぶ息苦しそうでしたし。
などと細部は突っ込んではいけないタイプです。

ハングマンの由来も不明ですが、一家の父親は首吊り状態で殺すのが彼のパターンのようなだったので、何かしらこだわりがあるのでしょう。
海外には「Hangman」という単語当てのゲーム(微妙に悪趣味)もあるようですが、関係なさそう。


その他、細かいツッコミどころが多いのはそっとしておくとして、序盤でわざわざ派手に窓を割って侵入し、家を荒らしていたのは、「不安を与えるため」と「侵入者がもう出て行ったと思わせるため」であったと考えられます。

後者に絡んだ話では、「phrogging(フロッギング)」という行為が海外では問題になっているようです。
旅行中などの家に忍び込んで、その家の物を使って数日暮らし、なるべく痕跡を残さず立ち去る、といったような行為。
これはこれで恐ろしく、phroggingを取り扱った好きな映画もあるのですが、タイトルを出すと若干その作品のネタバレになるので伏せておきます(ネタバレを気にしなかったり心当たりのある方は、こちらの作品です)。

なので、そのように「不在の家に勝手に滞在する」という行為は、決して珍しいというわけではないようでした。
本作の序盤では、あえて派手に痕跡を残したことで「若者あたりが勝手に家を使ってパーティでもしたのだろう」と思わせ、逆に細かい捜索を回避させた、つまり隠しカメラが見つからないようにしたのでしょう


最後に、息子のマックスを演じていたのは、『ジュラシック・ワールド』や『インシディアス』シリーズにも出演しているタイ・シンプキンス。
現在はかなり大人になっているようです。

そして、マックスの姉・マーリーを演じていたのは、ライアン・シンプキンス。
そう、タイ・シンプキンスの実姉とのこと。
つまり、本当の姉弟が、作中でも姉弟を演じていたわけですね。
なかなか珍しい気がします。

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