『ソウ2』の概要と感想(ネタバレあり)
ある惨殺死体から手掛かりを得て、刑事のエリックはジグソウ逮捕に成功する。
だが、アジトに置かれたモニタには、エリックの息子ダニエルを含む、どこかに監禁された8人の男女の姿が。
ジグソウのルールのもと、8人は生き残りを懸けた戦いを始めるが──。
2005年製作、アメリカの作品。
原題も『SAW II』。
本記事には、前作『ソウ』のネタバレも含まれるのでご注意ください。
前作『ソウ』については、以下の記事をご参照ください。
こんなにも完璧な続編があるでしょうか。
いや、それはさすがに贔屓目すぎ、言いすぎであるのは自覚していますが、個人的にはそう思わずにはいられないほど素晴らしい完成度の続編です。
盲目的な信者である自分の目には、もはやマシューズ刑事すらめっちゃかっこよく見えてますからね。
感情的で、暴力で脅迫し、証拠捏造で冤罪をでっち上げ、奥さんには逃げられ、息子にもすぐに怒鳴るという、冷静に考えれば良いところがない最低な人物なのに。
当然ながら1作目の『ソウ』は別格であり、シリーズを通して愛していても続編を追うごとに粗さが増していくのは認めざるを得ませんが、それでも『ソウ2』は続編の中では群を抜いた完成度。
とはいえ『ソウ3』も捨てがたいですし、やはり『ソウ3』まではリー・ワネルがまだ脚本に関わっている点は、あまりにも大きいでしょう。
『ソウ2』で評価している点は、まず、実は『ソウ』ではほとんど描かれなかったジグソウ(ジョン)の背景を深掘りしている点です。
ジョンを演じるトビン・ベルが『ソウ』シリーズを象徴する存在ですが、『ソウ』では実際はほとんど出てきませんし、『ソウ3』以降はほとんどリアルタイムでは出てきません。
「場のすべてを予測しコントロールしている」ジョンの魅力が一番描かれていたのが『ソウ2』です。
遺体から切り抜かれたジグソウピースが「生存本能の欠如」という人間の1ピースが欠けていることを示唆している点など、ジョンの思想もより覗き見ることができました。
感情的なマシューズとは対照的な、常にクールな対応(体調が悪かったのもあるでしょうが)。
自己中100%理論ですが、ぶれない信念。
「話をするだけで息子は助かる」というルールの提示。
今でこそジグソウのルールに従うことの重要さは身に沁みていますが、『ソウ』を観て『ソウ2』を初めて観た時点では、この些細なセリフがそこまで重要であるとは認識していなかった方も多いのではないでしょうか。
トビン・ベルの雰囲気も相まって、ジョンを『ソウ』シリーズを象徴する存在に押し上げたのが本作でしょう。
それが良くも悪くも、続編もいつまでもジョンの存在にとらわれ続けた要因にもなっていたのではないかと思います。
評価の2点目は、前作から路線をやや変更してきた点です。
『ソウ』シリーズというと「あぁ、あのグロいやつね」と言われることが多いですが、実は1作目はそこまでグロくはありません。
サイコスリラーやミステリィ要素が強めであった1作目に対して、『ソウ2』はそれらの要素を引き継ぎつつも、メインとなるゲームでは痛々しさやゴア描写、そしてデスゲーム度が増し、よりスリラー感が強めに。
その副作用が、続編におけるゲームの過激さのインフレではありますが。
やはりミステリィ的などんでん返しという意味では、前作の壁はあまりにも高いですし、すでに犯人もわかっているので、どんでん返しのインパクトだけで勝負するのはかなり困難。
その中で、より残酷なゲームを軸に展開させつつ、ポイントを絞ったどんでん返しによって全体をひっくり返してくる魅せ方は、前作すら逆手に取った巧妙さでした。
早くも「ジグソウは最前列で見ている」という設定やジグソーピースのサインは若干崩れかけていつつも、あくまでも本作の軸はマシューズのゲームであり、その意味ではずっと目の前で見ていたのです。
粗い点はもちろん無数にありますが、これだけの情報量を100分でまとめ上げ、最後にはしっかりと勢いのあるどんでん返しをしてきたのは、あまりにも素晴らしいとしか言えません。
さて、ここまでが盲目的信者の崇拝感想でしたが、以下、前作に続いて本作のゲームについても少し振り返ってみましょう。
まず、上述した通り、『ソウ2』におけるメインのゲームは、エリック・マシューズ刑事に対するものでした。
もともとは彼も、刑事としてジグソウを追いかけていたようです。
色々と問題を起こし内勤に追いやられていたようですが、彼が選ばれた理由としては「息子の命を尊重していなかったから」ということになるでしょうか。
あとは、暴力や冤罪などで多くの人の人生を狂わせてきたのもあるかもしれません。
実はこの点、選別の理由が若干曖昧というか、明かされている限りではちょっと弱いのではないかとは思っています。
感情的になり、暴力で脅し、目的のためには手段を問わない生き方をしてきたマシューズ。
彼に対するゲームのルールは、ただ「話をすること」だけでした。
シリーズ通してもっともシンプルなルールで、個人的にお気に入りです。
また、マシューズ刑事は、ジョンの後継者であるアマンダの最初の被験者でもありました。
アマンダはマシューズ刑事に麻薬所持の冤罪で刑務所送りにされたようだったので、それもマシューズ刑事が選ばれた一つの要因だったのでしょう。
そう考えると、ジョンとアマンダに共通する存在としてマシューズ刑事が選ばれたのだと考えられますが、相変わらずちょっと、私情だったり私怨だったりによる偏りも否めませんね。
そして、監禁された8人が行わされたゲーム。
こちらは、とりあえず解毒剤をゲットして3時間後に鍵が開くまで耐え、脱出することがゴールでした。
そのためには全員が協力するしかありませんでしたが、与えられた情報は「全員が金庫開錠のための番号を持っている」「番号は頭脳の後ろ」「その順番は虹の彼方に見つかる」の三つ。
そして、このメンバーが集められた共通点の答えは「Xにある」でした。
「虹の彼方に」というのは、数字に色がついていたので、虹の色の順番に入力しろということだったのでしょう。
虹となれば7色で、あそこに集められていたのは8人。
誰か1人は数字が書かれていなかったことになりますが、実は仕掛ける側だったアマンダか、全員が集められる原因となったダニエル(マシューズ刑事の息子)のどちらかだったのだろうと考えられます。
ただ、金庫に全員分の解毒剤が入っていたとも考えづらいので、いずれは家の中を回らないといけなかったのでしょう。
いずれにしても、アマンダに数字が書かれていなかったら速攻怪しまれてしまいそうなので、書かれてなかったのは「みんなが集められた理由」であるダニエルの可能性が高そうです。
その他のメンバーが集められた理由は、全員犯罪者で、前作で説明されたジョンの思想である「感謝を知らない連中に苛立ち、他人の苦痛を笑う奴らに怒る」に引っかかったから、でしょう。
かつ、全員がマシューズ刑事により、冤罪で刑務所送りにされた経験もある者たちでした。
ただ、マシューズ刑事に捕まった件は冤罪でも、もともと犯罪を犯していた者たちだったのは間違いありません。
ガス(ゲームは不明、最初に目を撃たれて死亡)は、詳細不明。
オビ(装置の中に閉じ込められて焼死)は、詐欺師。みんなを誘拐。
ザヴィエル(暴力的大男、注射器のゲーム、ダニエルが殺害)は、麻薬の売人。
ジョナス(ゲームは不明、ザヴィエルが殺害)は、詳細不明。
ローラ(ゲームは不明、毒ガスで死亡)は、詳細不明。
アディソン(両手を刃物でズタズタトラップに突っ込んでたぶん死亡)は、詳細不明。
こうやって見ると、本作で明かされている限りでは、けっこう背景もゲームも詳細はわからなかった人が多いですね。
全部のゲームを見たかったところですが、『ソウ2』のゲームはグロいというより痛々しいのが印象的。
特に注射器のトラップは、シリーズ通してインパクトがありました。
鍵見つけたアマンダ、強すぎる。
ダニエルは、非行に走ってはいましたが完全に巻き込まれでかわいそうでした。
アマンダが守ることになっていたのでしょうが、あの環境下では確実ではないですし、万が一死んでしまっていたらマシューズ刑事のゲームは成り立ちません。
その場合はアマンダの失態として、後継者としてのゲームができなかった、というか後継者になれなかったのかもしれません。
そうなると、ダニエルは本当にただ巻き込まれて死んだだけになってしまいますが。
そして、順番は前後しますが、忘れてはいけないのは冒頭のゲーム。
完全に導入のためだけに使われた彼の名は、マイケル。
他者を監視して密告する「タレコミ屋」「イヌ」だったようで、その目にデス・マスクの鍵を埋め込まれていました。
前作のアダムもそうですが、覗き見に対して厳しいですね、ジョン。
最後に小ネタを二つ。
一つは、ダニエルたちのゲーム内で使われた毒ガスは、字幕には出ていませんが音声では「tokyo subway atttack」と言われていました。
つまり、1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件の、サリンですね。
本作で描かれた症状などはサリンとは異なるものでしたが、あの事件は海外にも影響を与えていたことが窺えます。
二つ目は、少しだけシリーズのネタバレになるかもしれないので、以下、ご注意ください。
ダニエルとアマンダが最後に到達したのは、前作のバスルーム。
この演出ももう完璧なのですが、ここにあったアダムの死体、よく見ると右足に鎖が繋がれています。
しかし、前作で鎖に繋がれていたのは、アダムは左足。
この点が、一時期考察サイトなどでアダム生存説、ひいては黒幕説すら巻き起こしていました。
実はアダムは生きているのではないか、と。
あの死体は別人なのではないか、と。
しかしこれは、実際は何と、ただのミスだったようです。
ミスや勘違いから生じる考察という名の壮大な妄想は、まるで陰謀論のようですね。
ブログで考察も書いている身としては、考察なんてただの個人の妄想の一つに過ぎないのだ、と改めて自戒したいと思います。
追記
『ソウ3』(2024/08/13)
続編『ソウ3』の感想をアップしました。
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