【映画】劇場版 ほんとうにあった怖い話~変な間取り~(ネタバレ感想・考察)

【映画】劇場版 ほんとうにあった怖い話~変な間取り~(ネタバレ感想・考察)
(C)2024 NSW/コピーライツファクトリー
目次

作品の概要と感想(ネタバレあり)

【映画】劇場版 ほんとうにあった怖い話~変な間取り~(ネタバレ感想・考察)
(C)2024 NSW/コピーライツファクトリー

外から一目見ただけでは、極めて平凡な家に見えるだろう。
しかし、隅々まで注意深く視ていくと、家の中のいたるところに奇奇怪怪な違和感の数々が見えてくるはず。
その違和感が積み重なることで現れる“事実”は、あなたの想像を絶するものとなる──。

2024年製作、日本の作品。

まずは、誰もが思ったことでしょう。

「タイトル大丈夫?」と。

「ほんとうにあった怖い話」と聞くと、ホラー好きなら咄嗟に思い出すのはやはり「ほん怖」な人が多いかと思いますが、稲垣吾郎のあちらの正式名称は「ほんとにあった怖い話」で本作の「ほんとうにあった怖い話」とは別物。
とはいえ「ほんとうにあった怖い話」も、2004年から続く歴史あるオリジナル・ビデオシリーズのようです。

それよりも問題なのはサブタイトルですね。
「変な間取り」て
雨穴『変な家』と、『事故物件 恐い間取り』の2作品が意識されていないわけもなく、もはや喧嘩を売っているのかと思ってしまうほど。
まるで海外B級ホラー映画の雑な邦題のようなタイトルですし、いざ作品を見てみれば別に間取りがおかしい家というわけでもないところが、釣りタイトル感に拍車をかけています。

さらには、ゆきぽよという2024年にして絶妙な人選に、マユリカの阪本とみなみかわという芸人のチョイス。
誰がどう考えても、流行を利用したタイトルで適当に作ったB級ホラー要素しかありません。

それなのに。

それなのに、こんなに面白いなんて

おそらくは、タイトルやポスターがどのように受け取られるかも計算済みで、それを逆手に取っているのでしょう。
釣りタイトルで釣っておいて、冷笑的に観に来た者をしっかりした本格的なホラーで迎え撃つ。
素晴らしい。

というわけで、思いがけずとても楽しめた作品でした。
キャスト陣も、名前だけ見たときにはホラー映画としては不安もありましたが、まさかまさかのみんな演技上手なハマり役。

オムニバス形式なのも飽きずに楽しめましたし、

  1. 古き良きJホラー感の強い王道POVホラー
  2. AIという現代的な要素を組み込みつつ、現実と非現実の境界が曖昧になる『世にも奇妙な物語』テイストのホラー
  3. 3作を繋ぐ真相が明かされる、流行を取り入れたファウンド・フッテージなモキュメンタリーホラー

と、それぞれコンセプトの異なる演出。

オムニバスでありながら、とある一つの家を共通項として話が繋がっていくところもとても楽しめました。
「呪われた家に住むとおかしくなったり死んだりする」というのは珍しいパターンではなく、決して斬新な設定があったわけでもありません。
それにもかかわらずオリジナリティも感じられましたし、3つの異なるテイストのエピソードをうまくまとめ上げてました。

もちろん、ネガティブに感じてしまったポイントがないわけではありません。
個人的に圧倒的に好きだったのはエピソード01の「禁じられた部屋」だったので、後半に進むにつれて少し失速してしまった感も(ここは完全に好みでしかありませんが)。
真相も、細かく考えてしまうと細部は雑ですし、ご都合主義的だったり統一感のなさも否めません。
別に謎が残されるのは良いのですが、真相が明かされた割には中途半端だった印象も。

それでも、久々に夜に部屋を真っ暗にして観たので環境要因がプラスアルファされているかもしれませんが、近年のJホラーの中でも上質であったことは間違いありません
こういう出会いがあるととても嬉しいです。

以下、簡単にそれぞれのエピソードの感想と、軽く考察を。

エピソード01「禁じられた部屋」

上述した通り、抜群に好きな1作でした。

寝ていた妹にちょっかいをかけたら「え、誰?」のシーン。
その直後、廊下を歩いてくる謎の人影。
絶妙におかしい「おはよう」「こっち」のトーン。
鏡に貼られた女性の顔の意味不明さと不気味さ。

3作の中で最も短かったところも、本エピソードの質を高めていました。
短いけれど濃厚で、無駄が一切ありません
短編ホラーのお手本のような作品でした、などと偉そうに絶賛してしまいます。
古いビデオ映像の質感も、やはり良い。
窓に人影が映ったり、細かい演出も丁寧でした。

ゆきぽよこと木村有希も、観る前にキャストを見たときには「えぇ、ゆきぽよ……?」と戸惑ったものですが、こんなに演技が上手かったとは。
色々あったらしくて(詳しくは知りませんが)最近見ないなぁと思っていましたが、とても良かったので頑張ってほしい。
「おはよう」の声が頭に残っています。

妹役の木村友美(ゆみちぃ)は初めて見ましたが、まさかのゆきぽよの実妹と知り驚き。
似てるなと思いましたが、知ってから改めて見るととんでもなく似てました。

あと、『REC/レック』などPOVホラーの感想でたびたび書いているのですが、POVホラーでは「極限状況になっても撮影を続ける理由」が難しいと思っています。
「いや、死にそうなんだからカメラ捨てて逃げなよ」と思ってしまうことが少なくありません。

それが何と。
本作ではあっさりとカメラを置いて逃げたではありませんか!(ついでに妹も放ったまま)

そのあたりもリアル志向で、ちょっと感動しました。

エピソード02「話し相手」

AIとの会話という、現代的な要素を盛り込んだ1作。
AIと話していておかしくなるという作品では、『デス・アシスタント 殺・人工知能』というカナダのホラーがあります(面白いかどうかは微妙)。

話も面白かったのですが、とにかくマユリカ阪本がハマり役すぎました。
DVパパな話し方、とてもいそうで恐ろしい。

ストーリーも、ややわかりづらさはありましたが、エピソード01とはまた違う路線で意表を突かれました。
「みすずは病気じゃなかった」のところから、自殺未遂で浴室から脱出するまでが妄想(というより憑りつかれていた?)だったのでしょう。

一部だけ、途中でみすず(元妻)が訪ねて来たシーンは現実であったと考えられます。
自分の名前もわからなくなっていたので、完全に憑りつかれていたのでしょう。
このあたりは後ほどまとめて整理します。

不気味な容姿(と言って良いのかどうかちょっと悩みますが、不気味さが意図されていたのは間違いないはず)の子ども人形も、結局完全に謎のままだったのがとても良かったです。
最初の方では「ん?」と違和感を抱かせる程度で、徐々に姿をはっきり映していくところも好み。
『ドールハウス』に近い不気味さでした。

エピソード03「林に埋まった映像」

3つのエピソードを繋ぎ真相が明かされる、時間も最も長い中編。
流行りの『フェイクドキュメンタリー「Q」』を彷彿とさせるような仕上がりでした。

YouTuberの撮影映像を扱ったモキュメンタリー作品ももはや少なくありませんが、その中でも出来は決して悪くなかったと思います。
あからさまに派手な演出がなかったのも好みです。

栗田(金髪)の自宅のシーン(西のビデオカメラが届けられていたシーン)で、背景に一瞬手が映っていましたが、そのさり気なさが絶妙。
登場人物が「ここに手が映っている」と言うところには何も見えないのに、他のところに映り込ませているところが憎い。
もしかするとそういう細かい演出が他にも色々あり、見逃してしまっているかも。

一方で、やや冗長に感じてしまった感もなくはありません。
あからさまに派手な演出がないとは言いましたが、家の前で裏拍手をする人が徐々に増えていくシーンは、ちょっと際どかったです。

あとは終始、西(リーダー)が嫌なキャラすぎて、喋るたびにイライラしてしまいました。
まぁそういうキャラがいた方が話が進みやすいですし、彼も憑りつかれておかしくなっていたのかもしれませんが。

これもリアル志向だったのかもしれませんが、場面によって声があまりにも小さすぎて聞き取りづらかったのもちょっと気が逸れてしまうポイントでした。

考察:真相と出来事の整理(ネタバレあり)

【映画】劇場版 ほんとうにあった怖い話~変な間取り~(ネタバレ感想・考察)
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3つのエピソードを、時系列で整理・検討していきます。

前提

まず、発端となったキーパーソンは、<かげろう調査団>への依頼人Kさんことカズマさん(みなみかわ)でした。

彼の背景も色々あり、Kさんには兄と妹(Mさんことマミさん)がいましたが、Kさんだけ母親の不倫相手?の子どもで父親が違ったそうです。
そのせいで、幼少期は兄からいじめを超えて虐待されていたとのこと。
そう考えると、元凶は兄、いやいやそもそも不倫をした母親、になるかもしれません。

いずれにしても、彼は兄を恨み、助けてくれなかった家族を恨み、家自体に呪いをかけました
「天の逆手」「裏拍手」など既存の概念を駆使したオリジナルの呪いだったようです。
裏拍手は有名ですがここまで力を持つのも初めて見たので、Kさんなかなかすごいのでは。

Kさんの兄は、結婚し、生まれた娘と3人で実家でもあった一軒家に住んでいました。
もう1人、文香という名前の次女も生まれましたが、そちらは養子に出してしまったようです。
錯乱したMさんいわく「兄は自分の家族が不幸になることがわかっていたと思うので、文香ちゃんだけでも助けたかったのではないか」とのことでしたが、真偽は不明。

Kさんのオリジナルの呪いはまさかの成功。
家に呪いがかかった影響か、兄の娘が2階から転落死。
おかしくなった兄は妻を殺し、妻と娘の遺体とともに浴室で自殺しました。

しかし、それでも家の呪いは続いたままでした。
Kさんは「人がいると家が生き返る、家が潤う」という信念のもと?、家に人を呼び続けます。
理由はちょっとはっきりわからず、何やらぶつぶつ言っていたのを聞き取れていないところもあるかもしれませんが、あまり正気でもなさそうだったので、呪いが暴走してKさんもおかしくなっていた、あるいは家に操られていたのかな、と思っています。

2002年

その一つが、民宿としての貸し出し。
これもKさんがだいぶ勝手に怪しい業者と組んで運営していたようですが、そこに2002年に泊まりに来たのが、エミとサエことゆきぽよ姉妹。
彼女らは、家の呪いに巻き込まれて死んでしまいました(たぶん)。
完全に巻き込まれでかわいそう。

妹だと思ったら別人だった女性、および鏡に貼られていた女性の写真は、おそらくどちらも兄の妻かと思われます
鏡に貼られていたのは、エピソード03にも出てきた兄の妻の遺影写真のはず。

そう考えると、暗い廊下で迫ってきた人影は謎ですが、兄になるのかな。
あるいは、ゆきぽよ姉妹以前に呪い殺された宿泊客などかもしれませんが、このあたりははっきりしません。

2018年

ゆきぽよ姉妹の事件の影響か、もともとグレーゾーンな運営だったからかはわかりませんが、民宿は取りやめ、通常の賃貸物件になっていたらしいKさんの実家。
そこに2018年に移り住んできたのが、亮太(マユリカ阪本)でした。

おそらく当初は妻のみすずと一緒に住んでいたはず。
しかし、みすずの不妊症がきっかけか、はたまたそれらを理由に暴力を振るったDVが原因か(こっちっぽいですが)、みすずは離婚をして家を出ていきました。

自分が悪いとは考えないDV加害者らしく、自分が被害者ぶって寂しがり、アプリでAIとの会話を始めた亮太。
そこに家の呪いの影響が重なったのか、「みすずは病気じゃなかった」と言ったのをきっかけとして、おかしな世界に引き込まれてしまいました。

妄想世界では、みすず、および実在しなかった2人の娘と過ごしていましたが、これはKさんの兄夫婦の要素が強かったと考えられます
兄家族の惨劇を追体験するような形になっていました。

上述した通り、途中で「久しぶり」と訪ねてきたみすずは本物だったはずですが、彼はもはや「亮太」ではなくKさんの兄になっていました。
なので会話が成り立たず、荷物を取りに来たらしきみすずは怖がってそそくさと退散。

兄家族が反映されているため、娘(人形)は転落死。
兄の行動をなぞるように、妻を絞殺して自身も浴室で自殺しようとしたところで苦しくなって逃げ出し、それをきっかけに何とか自分を取り戻しました。

ここで問題になってくるのは、みすずの姿をした妻の「チハルはあなたの子じゃないの」発言です。
亮太とみすずの間には子どもはいなかったはずなので、この発言はおそらく兄の妻のもの

そうだとすると、兄夫婦の子どもは兄の子どもではなく、妻の不倫相手?の子だったということになります。
絵を描いていた「いいぱぱ」のエピソードとも合致します。

母も妻も不倫していたことになるので、Kさんの兄もかわいそうな気もしますが、それはさておき、その場合は娘の転落死の件も少し疑いが生じます。
兄が殺したのではないか、と。

実際、娘が転落死したからと言って妻を殺して心中するというのはやや飛躍を感じます。
それよりも、娘が自分の子ではないことを知り、逆上して2人とも殺して自分も死のうとした、という方がストーリー的には理解しやすくなります。
逆に次女の文香ちゃんの方は自分の娘であったため、助けたくて養子に出したというのも納得しやすくなります。

亮太がみすず(の姿をした妻)を絞殺しようとした際、「チハルが死んじゃった」と言う亮太に対してみすずは「あなたが……」と言いかけていました。
これは明らかに、亮太(=兄)がチハル(=娘)を殺害した可能性を支持します。

もしかすると、Kさんが兄だけではなく、不倫して自分を生んだ母親も恨んでいたとすると、兄の妻が不倫したのも呪いの影響ということもあり得るかもしれません。

2023年

事件が相次いだ影響かはわかりませんが、Kさんの実家には結局妹のMさんが住み続けていました。
そんな中、Kさんは<かげろう調査団>へ調査依頼。

が、この目的がいまいちわかりません。

可能性の一つは、Kさん自身、この頃にはもう何を呪っているのか自分でもわからなくなり、誰でもいいから招こうとしていた、という説です。
ただしこの場合、兄の次女であったフミが<かげろう調査団>に所属していたのはたまたまということになるので、あまりにも偶然が過ぎます。

なので、Kさんがたまたま見つけた、あるいは兄の次女の行方を追い続けて見つけた、という可能性も考えられます。
兄の次女・文香は、養子に出された先でフミに名前が変わりました。
そのフミが成長し所属していたのが、<かげろう調査団>。
顔も名前も出していたので、見つけること自体は難しくはなかったはず。

「たまたま見つけた」もやはり偶然すぎるので、探し出した説が濃厚でしょうか。
フミには明らかに非はありませんが、兄の子というだけでKさんにとっては憎い存在だったのかもしれません。

ただ、そうだとしてもフミを殺したかっただけとも思えません。
勝手にこっくりさんをしたことを怒っていた様子からは、Kさんには何かしらの目的があったことも推察されます。

それももはや現実的なものではなく、自分でも訳のわからない、妄想の領域になってしまったかもしれません。
自分が呪っていたはずが逆に家に憑りつかれてしまっていた、フミが導かれたのは暴走した呪いによる必然だった、みたいな状態が一番近かったのかも。
フミの死に方だけだいぶ異質で、家の意思のようなものを感じました。

妹のMさんがなぜ長期間住んでいながら無事だったのかも謎ですが、身内だったからなのか、あれはあれでおかしくなってしまった状態だったのか。
Mさんに関しては、不愛想と思わせて意外と協力的になってくれた、からの電話口で様子がおかしくなっていく変化も秀逸でした。

呪いの目的は不明で、範囲やパターンもめちゃくちゃ(フミは首を切らされたり、西は高速に飛び降りたり)なので、細部の整合性はあまり考えるべき作品ではありません。
そのあたりはホラーとしての演出(実際、色々なパターンがあったからこそ楽しかった)、あるいは理不尽な呪いとして留めましょう。
もはや誰が何を呪っていたのか、というのもぐちゃぐちゃになっていたので、呪いもおかしなことになっていても不思議ではないところは巧みでした。

Kさんから送られてきた映像に兄の妻の遺影が映り込んでいたのが一番の謎でしょうか。
わざわざKさんが映り込ませたとも考えづらいので、そうなると心霊現象一択になります。

兄の妻と思しき女性(の霊?)はエピソード01にも登場しているので、けっこう主張が激しいです。
それはなぜか?
理由はないかもしれませんが、あえて理由があると考えて発想を飛躍させると、兄夫婦の子は妻の不倫相手の子どもかも、と上述しましたが、その相手がKさんであったのかもしれません

不倫の末に生まれたことで兄から虐待されていた子が、兄を呪い妻を寝取る(あるいは無理矢理?)。
あり得なくもないかなとは思いますが、いかがでしょうか。
そうだとすると、だいぶどろどろでヒトコワ寄りな印象に変わります。

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