【映画】ロングウォーク(ネタバレ感想)

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映画『ロングウォーク』のポスター
©2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『ロングウォーク』のポスター
©2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

戦争によって国家が分断された近未来のアメリカで国をあげて開催される競技“ロングウォーク”。
ただひたすらに歩き続けるだけで破格の賞金と願いを1つ叶える権利を獲得できるこの祭典に、選ばれし50人の若者が挑戦する。
「時速4.8kmをキープすること」
「速度を下回り警告を受けないこと」
「最後の一人になるまで歩き続けること」
この勝者になる為のルールの裏に、休息も睡眠も救いも存在しない。
3つ警告を受けると即死の状況下で臨む、地獄の一本道の先に待ち受けるのは希望か、絶望か──

2025年製作、アメリカの作品。
原題も『The Long Walk』。

もはや改まって説明する必要もないかと思いますが、スティーブン・キングが1979年にリチャード・バックマン名義で出版した『死のロングウォーク』が原作。
1960年代に執筆し、事実上の長編初執筆作と言われています。
日本でも高見広春『バトル・ロワイアル』以降に火のついたデスゲームものの先駆けとも言われます。

原作を読みたい読みたいと思っているうちに映画化されてしまい、原作は未読のまま観に行きました。
結果、原作未読でもとても楽しめましたし、原作とはラストが違うとのことなので、原作もいずれ読んでみたいと思います。

しかし、1960~70年代に書かれた作品が、現代風の脚本にアレンジされているだろうとはいえ、これほど通用するのもすごいですね。
とはいえ、本作は必要最低限の背景やルール以上の説明は一切排除され、人間模様が主軸に描かれるので、そもそもが普遍的なテーマを描いた作品ではあります。

ベトナム戦争だったりと設定のメタファー性については色々なところで言及されていますが、アメリカの文化的背景やスティーブン・キング個人の歴史について詳しいわけではないので、他に譲りここでは触れません。
また、そういった要素を深読みしなくても、純粋にデスゲームもの、青春モノとして十分楽しめました。

とにかく終始歩いているだけなのに、テンポ良く飽きることない緊張感が続いているのが素晴らしかったです
ロングウォーク開始も早く、ゲームを通してそれぞれの登場人物の個性が浮かび上がってくる作りも、非常に巧かったと思います。

読むつもりなので原作については(特にラストについては)あまり調べないようにしているのですが、原作だと14~16歳の少年100人が集められた、という設定のようです。
映画だと明言はされていませんがだいたい20歳前後っぽく、むしろ18歳と言いつつもおそらく未成年だった1人(アダム・カーリー・ホワイト)は、やや小馬鹿にされた感じでした。
さすがに未成年の少年のまま映像化というのは、色々と厳しかったのでしょうか。
今だったら『バトル・ロワイアル』の映画化も難しいのかも。

ちなみに、主人公のレイ・ギャラティが最初けっこう年上に見えてしまっていたのですが、許してください。
レイを演じたクーパー・ホフマンは、ちゃんと22歳ぐらいでした。
むしろピーター・マクヴリーズ(最後まで生き残った勝者)を演じたデヴィッド・ジョンソンが32歳ぐらいだったようで驚きました。

原作の参加者が100人というのは、かなり多く感じます。
50人でも把握しきれないまま退場した人が大量にいたので、映画という時間が限られる中で100人だったら、かなり雑に大勢を退場させないといけなかったでしょう。
50人への削減は必然ですし、良い判断だったと思います。

上述した通り、近未来の話というのはわかりますが、背景の説明は最低限。
あくまでもロングウォーク内のドラマがメインなので、この点も個人的には好印象です。

しかし、ロングウォークはどのぐらいの頻度で開催されているのでしょうか。
1年に1回とかの頻度だと、若者がいなくなってしまう気がします。
もしかすると、国民に希望を与えると言いながらも、若者を疎んじ排斥したい腐った大人たちによる『バトル・ロワイアル』のような裏目的があるのかもしれませんが、個人的には「ロングウォーク後は国民の生産性が上がるから」というのは本当の目的のように感じました。

となると、オリンピックぐらいで4年に1回ぐらいですかね。
でも賞金も相当出るようなので、定期的にやるのも大変そうですし、政府が国民の怠け具合を見ながら不定期に開催している、あたりが妥当かな。

完全に管理社会のディストピアと化したアメリカで繰り広げられる希望のデスゲーム。
デスゲームの多くが強制参加で不合理なまま殺し合いをさせられるのに対し、ロングウォークは応募制のようでした。
しかし、登場人物たちの語る実態としては「応募せざるを得ない」状況であったようです。
自分や家族のために、ロングウォークで一発逆転を見出すしかないぐらい困窮しているのでしょう。

莫大な賞金を出せる政府との対比が鮮明で、応募制とはいえ実質不条理な参加になっていた人の方が多そうでした。
あるいは、北朝鮮のように生まれながらそんな環境で育てばそれが当たり前と思うような、一種の洗脳状態にあったとも考えられます。

そんな状況下で協力し合いながら歩き続ける登場人物たちの姿は、他のデスゲームものとは一線を画す感動がありました
みんな勝者は1人のみとわかっているのに、励まし合い助け合う。
相手のことを詳しく知るほど死の悲しみは大きくなりますが、終わりのない道を孤独に歩き続けるのも心が折れますし、支え合わないと最後まで残りづらいのも確か。
デスゲームとしてはシンプルながら完成されたルールと言えるでしょう。

『イカゲーム』や今村翔吾『イクサガミ』といったような近年話題になったデスゲームでは、複数人生き残れるというルールも少なくありませんが、ロングウォークはあくまでも1人のみというのがエグい。
しかし、それらの作品よりも登場人物同士の対立が少ないのは、とにかく歩き続けないといけないという大変さもあるでしょうが、それだけではないように思います。
みんな苦境の中、希望を求めて参加したというのもあるのでしょうか。

序盤でヘイトを集めたゲイリー・バーコヴィッチも彼なりの理由が語られましたし、参加者の中に悪役や醜い対立がないのも印象的です。
むしろ悪役は政府、そして少佐であり、大きな視点で見れば、全員被害者でもある若者たちが大人の敷いたレールの上を歩かされ、協力し合いながら死んでいく姿は、変に嫌なキャラがいるよりもよほど虚しさが際立ちました

ちなみに少佐、『スター・ウォーズ』でルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルであると観終わってから知りました。
『スター・ウォーズ』は(特に初期のは)あまり観ていないのでマーク・ハミル出演の作品もそれほど観た記憶はないのですが、それでも知っています。

逆に若者たちは、まだ映画出演も少ない若手俳優たちが多かったようです。
レジェンドと言えるマーク・ハミルと若手俳優たちという対比はそのまま作品内にも反映されており、見事なキャスティングでした。

最後の1人になるまで終わらないという先の見えなさは、デスゲームとしては何よりつらいしょう。
ひたすら歩き続けるしかないロングウォークを人生の縮図と見ることもできるでしょうが、あまりそういう見方はしたくなく、純粋に苦しい状況で希望を求め支え合う若者たちの青春群像劇として楽しみました。

それだけに、ラストの容赦なさはさすがスティーブン・キング作品だな、という印象も。
原作とは異なるにしてもスティーブン・キングの許可は取っているようですし、それまでと同じくあくまでも淡々とした流れであっさりと主人公のレイ・ギャラティが殺されるのも、安易な救いがなくこの種の作品としては完璧です

そして勝者となったピーター・マクヴリーズの選択は、個人的には希望の敗北に感じました
だいぶバッドエンドとして捉えています。
ピーターの言葉で復讐に対する執念が揺らぎ、自分には見えないものを見ているピーターに希望を託したレイ。
少佐を射殺したピーターの行動は、これまで他の参加者に希望を与えてきたピーター自身の言葉をすべて否定するものに感じられてしまいました。

ただ、とても美しいとも感じました
大局的には、これでは何も変わらず、暴力の連鎖に吞み込まるだけの衝動的な行動であったとしても、「今」という瞬間を切り取れば、とても美しいものであったと感じます。

政府に歯向かうと厳しい制裁が待っていたので、少佐を殺したら速攻ピーターも射殺されるかと思いましたが、そんなこともありませんでした。
指示役がいなくなったからなのか、兵隊たちも本心では疑問を抱いていたのか。
いずれにせよ、生死を含めてピーターの今後については余韻が残るラストでした。

先ほどはピーターの決断を美しいと書きましたが、現実的な懸念をしてしまうと、極限の睡眠不足かつ疲労で冷静な判断力は完全に失われていたと思うので、本当にピーターが望む決断だったのかどうかは気になります
2~3日完全に不眠なだけでも脳は大幅に機能低下し、幻覚や妄想が現れることもあるので、5日ほどもほとんど寝ていなかったら、実際はもっと朦朧としていたでしょう。
いずれにしても、あの場で衝動的にあの選択をしてしまったところに、リアルな人間らしさを感じました。

歩くのも、あんなに歩き続けられるかな、というのは正直ちょっと思ってしまいました。
特に、靴がなくなったらけっこう速攻ダメになりそう。
命が懸かっていたら火事場の馬鹿力はあるにせよ、終盤までけっこう普通に会話していたところも、少し違和感。
とはいえドラマがメインなので、あまり触れるべき点ではないでしょう。

あえてリアリティよりもドラマ性を重視したであろう部分はそれで良かったと思いますし、それを除けばリアリティもかなり高めで、そのバランスも秀逸でした。
何より、こういう作品では無視されがちなトイレ問題までしっかりと触れていたのは素晴らしい
あんなにちゃんと映さなくても良かったですが。

ちゃんと映すと言えば、何より殺害シーンです。
しっかりと隠すことなくそれぞれの死を淡々と描写する姿勢は、製作陣の強い意思を感じました

作中、ロングウォークをエンタメのように楽しむ野次馬たちに嫌悪感を抱いた人も少なくないでしょう。
「それは観客も同じだ」みたいな視点はもはや陳腐なのであまり好きではないのですが、本作ではそれをあまりにも真正面から突き付けてくるので、考えざるを得ません。

デスゲームものを観る人は正直、フィクションにおける人の死を楽しんでいるでしょう。
だからこそ、死のシーンがぼやかされると物足りなさを感じ、それだけで評価が下がることすらあります。

本作では、「死ぬところが見たいんだろう?」というのが、これでもかと言うほどに突き付けられます
執拗なまでに繰り返し鮮明に映される死の瞬間。
観ている側の黒い部分を刺激してくる本作は、素晴らしくもあり、気軽に観られるB級デスゲーム♪ではない重さがありました(どちらも好きです)。

そんな重さもある本作ですが、メインの登場人物が集まったインタビュー映像を見ると、少佐含めてにこやかに話しているので癒されます。
というか、サングラスのせいでもはやマーク・ハミルは別人に見えるレベルなところがすごい。
声も合っていたなと思いましたが、けっこう声優もされているようです。
『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐の英語版を担当していたのはちょっと笑ってしまいました。
ムスカ大佐、だいぶ渋い声に。

ちなみに、撮影中は38度の暑い中、本当に420km以上を歩いたそうです。
ぶっ続けではないにせよ、10km歩くだけでだいぶ脚は疲れるので、それだけで尊敬。
演技ではない疲労感もリアリティに繋がっていました。

そんなこんなで思った以上に重さはありつつも楽しめた本作。
追々原作も読みたいと思いますし、同じくスティーブン・キング原作で映画化もされた『ランニング・マン』も似たようなコンセプトで気になっていたので、こちらも読んだり観たりしてみたいと思います。

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