【映画】カウントダウン(ネタバレ感想・考察)

映画『カウントダウン』のポスター
(C)2020 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画 カウントダウンのシーン
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あるパーティで、若者たちが見つけてダウンロードしたアプリは、自分の余命時間が表示されるものだった。
それが本物であるとわかった看護師の主人公・クインは、何とか助かるための方法を探して駆け回る──。

2019年製作、アメリカの作品。
原題も同じく『Countdown』。
タイトルはそれ以外考えられませんね。

余命がわかるアプリをダウンロードしたら、本物だった!
しかも消せない!
どうしよう!

という発想ありきの作品で、『ファイナル・デスティネーション』などの流れを汲む、「死の宣告系」です(勝手に命名)。
印象としては、『リング』×『ファイナル・デスティネーション』×『ハッピー・デス・デイ』といった雰囲気で、『ハッピー・デス・デイ』よりは抑えられていますが適度なコメディ要素も。

内容としては、看護師である主人公・クインは比較的頭が良く行動力もあるので、けっこうサクサクとテンポ良く進んでいった印象です。
「死の宣告系」作品でのオリジナリティとしては、やはりスマホのアプリという現代的なツールが使用されている点。
それゆえ、「余命がわかる」という設定自体は決して目新しいものではありませんが、呪いに対してハッキングで対抗しようとするなどといったような斬新さが見られました。
死体でスマホのロックを解除しようとしたところなんて、最高です。

現実においても、あまりセキュリティを気にせずアプリを気軽にインストールしてしまったり、利用規約なんて読まない人がほとんどだと思うので、そのあたりも現代への風刺的。
逆に言えば、そういった現代の身近な日常を恐怖に繋げているあたりが、単なる「死の宣告系」なだけはない面白い設定です。

最近のホラー映画はもう、暗くなったらスマホのライトですぐ照らすのが定番ですね。
「懐中電灯を取りに行って殺される」みたいなシーンは、絶滅の危機。
そういう「古き良き」も好きですが、時代に合わせて進化していく部分も好きです。
色々な意味で、『カウントダウン』はうまく時代を取り入れたホラーでしょう。
ビデオ時代の『リング』であり、ガラケー時代の『着信アリ』的な。

展開も比較的わかりやすく、悪魔の呪いによる余命宣告であり、それを打ち破るために奔走するだけ。
予定されていた行動を変えようとすると「利用規約違反」になるのも2人目ぐらいで気がつける程度のライトさで、誰が生き残るのかというハラハラはありますが、意表を突いた展開はそれほどありません。

ホラー演出は、古典的ながら丁寧
「突然現れる」「大きな音」頼みな側面もありますが、マット(クインの相棒)のトイレでのシーンで、壁があるはずなのに脚が個室間を移動したり、足首が逆に曲がって歩き始めるところなどは好きでした。
その「何かいる」感がとてもうまかったので、後半、特に悪魔がはっきりと登場してからは、失速してしまったのが残念。
やはり、特に霊や悪魔系のホラーにおいては、恐怖の対象が明確に姿を現すと恐怖感が薄れがちです。

比較的シンプルな展開、アプリという現代的な設定、丁寧なホラー演出からは、日本版ポスターに「全米ティーンを震撼させた」とあるように、10代の若者向けに、つまり学生を主人公にして作っても良かったようにも思います。
ただ、そうすると行動範囲も限られて、最後の仮死状態(?)で悪魔の意表を突くというのもできなかったかな。

個人的には何より、ジョン神父が大好きすぎて
古典ホラーの名作『エクソシスト』で神父チームが悪魔に敗北を喫して以降、神父の力が弱まっている昨今ですが、『カウントダウン』ではそれを若干皮肉った感じもありつつ、新たな神父像が示されました。

「悪魔を信じない神父」に「専門家」として紹介されたのは、大音量で音楽を聴く、悪魔に魅せられて神父になっただけのジョン神父
実践経験どころか実際に悪魔と遭遇したことすら皆無のジョン神父が、ついに訪れた悪魔との対決の機会。
「神父オタク」ばりに溜め込んでいた知識による魔法陣や十字架が、まさかの効果抜群で大活躍。
クインの妹・ジョーダンに、コストコで買った魔法陣に使う塩を「吹き飛ばされたら?」と訊かれてその点考えておらず、「ガッデム(goddemn)!」と悪態をついて速攻「sorry」と天に向かって謝るシーンが、この作品の中で一番好きです

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ちょっと考察:結局何が起こっていたのか(ネタバレあり)

映画 カウントダウンのシーン
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(↑地味にアプリに評価つけてる余裕な人がいますね)

さて、『カウントダウン』の難点は、軸となる部分がけっこうブレブレで、シンプルなはずがいまいちわかりづらい話になってしまっている点
細かい突っ込みポイントが大量にあるのは愛嬌ですが、根本の設定が不安定なところが気になりました。

上述した通り、時代を取り入れた作品ではあるのですが、「悪魔」「呪い」と「科学」というのは、相反する概念です。
だいたい悪魔の力の前では電子機器など科学の力は使用不能になってしまうようなご都合主義的な展開が多いものですが、本作はまさに悪魔の呪いがスマホのアプリに及んでいるため、そのご都合主義は使えません。

Countdownアプリは、書物に記載されていた古代の悪魔オージンの仕業なのかはわかりませんが、悪魔の呪いであるのは間違いなさそうです。

悪魔がどうやってアプリを作ったのか、というのはさておいて、「人間の余命を管理するのが悪魔」というのはさすがに無理があります。
そもそも、あのカウントダウンの先にある寿命が「神により定められた運命」という絶対的な概念だとすると、自殺したり誰かを殺害しようとする行動まで織り込まれていないとおかしいはずで、あのカウントダウンによる余命は「運命」よりはルーズな印象を受けます。
ただ一方、それぞれ宣告されていた時間に事故などが起こっていたことも考えると、あの余命は勝手に悪魔が決めたわけではなく、実際に定められた運命であるとも考えられます

ややこしい表現になりましたが、では、どういうことか。
「呪い」というのも合わせて考えると(そもそも「悪魔の呪い」という概念が若干謎ですが)、余命自体は定められた運命的なものであり、「Countdownアプリをインストールした人に対して、悪魔が勝手に余命を教えてしまった」と考えられます。

そして、丁寧に「利用規約」を作り、それに違反した人(=決まっていた運命とは違う行動をしようとした人)を、自ら余命時間通りに殺していたのです。
何も抵抗しなかった人は、おそらく運命通りに死んでいたのでしょう。
悪魔の悪戯なので、この悪魔のアプリの存在による変動までは、神も織り込めなかった(と考えるしかありません)。

「悪魔が勝手に余命を教えちゃって、抵抗すると殺しちゃうよ=呪い」と考えると、『ファイナル・デスティネーション』が「死の運命」によるものであったのに対して、『カウントダウン』はあくまでも悪魔のせい(洒落ではありません)というのが理解しやすくなります。
だから必死に、規約違反者に対しては宣告した時間通りに殺そうとしていたのです。
自分で規約を決めたから、守らないといけなかったのです。
律儀な悪魔なのです。
ハッキングで改竄してから数字が元に戻るまでタイムラグがあったのも、悪魔が気がついてから慌てて戻したのです。

書物に記載されていたイラストで余命宣告に使われていた巻物のデザインと、アプリのカウントダウン表示のデザインが同じなのは、ちょっと笑ってしまいました。
意識して作ったんですかね。

ただ、悪魔が何をしたかったのか、という目的は結局わかりません
アプリ開発の技術を身につけて、浮かれて作成してしまったのでしょうか。
アプリの規約違反者は、全員自分で殺しに行っていたようなので、大変すぎて後悔していなかったでしょうか。

幻覚を見せていた意味も、よくわかりません。
マットの弟などはアプリを使っていたわけがないので、アプリを使って死んだ人が幻覚として現れていたとは考えられません。
かといって、クインの前にコートニー(手術前に死んだ彼)の幻覚が現れていたので、その人にとって関係の深い死者が現れるというわけでもなさそう。

その人にとって印象に残っている死者を見せていた、と考えるのが自然でしょうか。
怖がらせてから殺すことで、悪魔に何かメリットがあったのかもしれません(復活できるとか、力が強くなるとか)。
あとは、弟を使ってマットを魔法陣から出させたり、母親を使ってクインを殺そうとしたように、騙すために使っていた場面もありました。

総合的に考えると、「安易にアプリをダウンロードして余命を知った人間が怖がり、死を回避しようとする(=規約違反)姿を弄んでいた」ぐらいの感じでしょうか。
悪魔のことなので、お遊び程度で大きな目的などなかったのかもしれません。

「悪魔に宣告された余命より前に死ぬ、あるいは生き延びれば、呪いを打ち破ることができる」というのは、その理屈は不明ですが、結果的には合っていたようです。
呪いどころか悪魔まで打ち破ってしまったので、ジョン神父の洞察はめちゃくちゃ素晴らしかったことになります(さすがジョン神父!)。
お遊び程度だったとすれば、悪魔にとってはなかなか本末転倒というか、自業自得というか。

最後にクインが自分に打った注射器は、おそらくサリヴァン(セクハラ医師)に打って殺そうとしていたモルヒネ(致死量の3倍)。
それによってクインは余命より早く死亡したため、謎理論で悪魔は消え去りましたが、ジョーダンにナロキソンを打ってもらったことで蘇生しました。
ちなみに、ナロキソンは麻薬拮抗剤のようなので、序盤で運び込まれてきた女性患者のシーンが伏線になっていたのでした。

ちなみに、アプリをダウンロードしていないサリヴァン医師をクインが殺害しようとした際に悪魔が助けたというのは、上記の仮説とはちょっと矛盾し、この点も含めて整合性のある答えは見つかりません。
想像できるとすれば、「サリヴァンもこっそりアプリをダウンロードしていた」か、「助けたのは悪魔ではなく神(!)」といったあたりでしょうか。

「死の運命からは逃れられない」という『ファイナル・デスティネーション』に対して、そのあたりの中心軸がはっきりしていなかったのが、『カウントダウン』の残念なところ。
それゆえ、ラストシーンの「Countdown 2.0」へのアップデートは、ホラーの定番的な終わり方ながら、さらにグダグダ具合を助長させる結果となってしまいました。
発想や魅せ方は面白いだけに、惜しいところ。

エンドロールの途中では、ハッキングをしてくれたお調子者の携帯ショップ店主・デレックのその後が描かれます。
これも「え?何で?」といった展開ではありますが、エンドロールを飛ばしてしまった方はぜひ観てみてください。

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