作品の概要と感想(ネタバレあり)
とある町の郊外にある古びたモーテル。
ひと時の安らぎを求め宿泊客が訪れる。自分が悲惨な末路を迎えるとも知らずに。
そこは客を殺害し、殺人ビデオを撮影している恐ろしいモーテルだった──。
2009年、アメリカの作品。
原題は『Vacancy 2:The First Cut』。
『モーテル』のまさかの続編にして、原題からわかる通りまさかまさかの前日譚。
前作の記憶がすぐになくなりそうだったので、早めに観ました。
前作については、以下の記事をご参照ください。
さて、前作では背景はほとんど描かれなかった『モーテル』ですが、『モーテル2』ではあの殺人モーテルが生まれた背景がついに明かされます。
と、思うじゃないですか。
あまり明かされませんでしたね。
いや、明かされないこともないです。
でも、何か繋がってないように感じてしまいました。
とはいえ、後づけでの「0」や「ビギニング」みたいな前日譚モノは、論理的には破綻しているのがほとんどなのでそこは仕方ありません。
もともとただの盗撮モーテルだったのが、殺人鬼が来てしまったので、殺人ビデオ制作に鞍替えしよう、という設定自体は好きです。
しかし、それにしても。
それにしても中途半端感が否めません。
前日譚にしても、もう少しうまく繋げられたような気が。
低予算丸出しの観づらい映像も、前作より劣化を感じてしまい、やや哀愁が漂います。
最初から最後までB級感だらけなのは個人的には好きですが、特に個性も感じられないまま、記憶の彼方に消え去ってしまう作品でした。
色々と仕方ないにしても、殺人ビデオ制作を持ちかけたスミスが主人公・ジェスの反撃に遭って顔に怪我を負った際、左頬に怪我していたのに、続くシーンでは右頬に応急処置がなされているといった致命的な凡ミスがあり、そのあたりはフォローのしようがありません。
ただ、意表を突こうとする姿勢は窺え、その点は評価したいと思います。
まず、前日譚なので、なぜか名前が違うけれどメドービュー・モーテルが前作のパインウッド・モーテルの前身なんだろうな、というのは当然予想がつきます。
そして、1人の支配人と、2人の殺人担当。
3人組という構成が前作と一緒なので、この3人が前作の殺人モーテル3人組なんだな。
支配人は雰囲気を似せている別キャストだけど、前作のキャストが引き受けてくれなかったのかな?
と、思わせておいて、まさかの殺人3人組が返り討ち。
前作の夫婦の妻・エイミーも予想外の強さを発揮しましたが、本作のジェスはその比ではありません。
池(?)に潜って銃口だけ出てきたシーンなんか、手慣れた暗殺者レベルです。
というか、何か見たことある構図だなと思ったら、忍者ですね。
さらに、ジェスも絶対殺されるだろうという予想も裏切り、まさかの生存。
そんなこんなで、意表を突いた展開を見せながらも、肝心の詰めが甘くて、うまく繋がっているんだか繋がっていないんだかわからない作品になってしまっていました。
それなりに緊迫感はあったり、前作よりは若干のグロシーンもありますが、どうにも「中途半端」という単語が相応しく感じられてしまいます。
「主人公のジェス」と書きましたが、真の主人公は殺人者側かもしれません。
行き当たりばったりのドタバタ追走劇は、「いやよく毎回しっかり見つけられるな」と感心しきり。
後半は、メドービュー・モーテルとパインウッド・モーテルの繋がりについて、簡単に考察しておきたいと思います。
ちょっとだけ考察:『モーテル』との繋がり(ネタバレあり)
メドービュー・モーテルからパインウッド・モーテルへ──。
その繋がりが、いまいちよくわかっていません。
特に、場所です。
メドービューとパインウッドは、同じ場所なのでしょうか?
これに関しては、最後、スミスが「建物の修理が済み次第、カメラを入れて営業再開だ」と言っていたので、やはりおそらく同じ場所なのでしょう。
モーテルの配置や内部がだいぶ違う感じがしましたが、それも改修によるもの、ということですかね。
死体なども、警察が来るまでの短時間でよく片付けたものです。
あるいは、警察がゴードンを信頼していたようなので、あの調子のままろくに細かく調べなかったということでしょうか。
ゴードンの信頼感、抜群。
ゴードンいなくなってるのに。
スミスは、ジェスが逃げ出してから、燃え盛る自分の身体の火を消して、カメラや死体を片付けたことになります。
なかなか仕事が早いです。
しかし、右頬が突き抜けるほど棒をぶっ刺されて、さらにはあれだけ燃えていたのに、殺人鬼らしく不死身ですね。
劣化版ジェイソンみたいな白い被り物をしていたのは、ジェイソンばりの不死身アピールだったのかもしれません。
ジェスが床下で最初に出会った(?)死体は、人形っぽくて若干わかりづらかったですが、ビニールに包まれていたらしいことから、おそらく冒頭でスミスが殺害していた女性でしょう。
いずれにしても、メドービューとパインウッドを繋ぐのは、言わずもがな、殺人鬼スミスです。
彼の嗜好もよくわからず、快楽殺人には性的嗜好が絡んでくることがほとんどですが、特にそんな様子も見受けられません。
本筋ではないにしても、殺人鬼像が甘かったのが少し残念。
ご近所さんからも警察官からも信頼の厚かった支配人・ゴードンは失ってしまいましたが、盗撮ビデオから殺人ビデオまで買っていたオーナー(単なる取引相手?)とともに、新しい支配人を雇ったのでしょう。
ちなみに、『モーテル』と『モーテル2』のキャストでは、スコット・G・アンダーソンという名前が共通していました。
彼こそが、『モーテル2』のスミスです。
え?『モーテル』に出てた?という感じですが、『モーテル』のエンドロールを見ると、「killer」として名前がありました。
そう、仮面を被った殺人者2人のうち1人が、しっかりと彼だったのです。
よく見ると、『モーテル』においてエイミーが殺人者2人を車で一気に排除しましたが、車の天井から上半身を突っ込んでいたのがスミスでした。
死んだあとに仮面が外れますが、逆さまで死んでいるのでわかりづらいながら、ちゃんと彼です。
ただ、火傷を負っていたはずの肌は綺麗になっていましたが……。
どちらかというと年配で、『モーテル2』においては行動は機敏ではなかったスミス。
それが、数年後の『モーテル』では、猛ダッシュを見せたり走る車の天井から身体を突っ込んだりと、ものすごい身体能力とやる気に満ち溢れていました。
自分が取り仕切り、大好きだった殺人で生計を立てられるようになったことで、モチベーションも爆上がりだったようでした。
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