【映画】フライト・ゲーム(ネタバレ感想・考察)

映画『フライト・ゲーム』のポスター
(C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. – STUDIOCANAL S.A.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『フライト・ゲーム』のシーン
(C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. – STUDIOCANAL S.A.

ニューヨーク発ロンドン行の旅客機に、警備のため搭乗した航空保安官ビル。
しかし、離陸直後、ビルの携帯電話に「1億5000万ドル送金しなければ、20分後に機内の誰かを殺す」との匿名の脅迫メールが届く。
予告通り犠牲者が出てしまい、ビルは乗客を拘束して荷物や携帯電話を調べるが、手がかりは見つからない──。

2014年、アメリカの作品。
原題は『Non-Stop』

ジャウム・コレット=セラ監督と主演のリーアム・ニーソンのコンビは定番化しているようですが、本作が初視聴。
監督自体初めてかと思いましたが、『ロスト・バケーション』『エスター』と同じ監督でした。
幅広い。

『フライト・ゲーム』はとても面白く、106分も短く感じました。
原題通り、息もつかせぬノンストップ・サスペンス・アクション。


ハイジャックものはハズレが少ないとも言いますが、その中でも本作はかなり面白いのではないかと思います。
細かく見てしまうとだいぶ都合の良い出来事も多いですが、スピーディな展開による魅力がそれを上回っていました。

というより、この作品、冷静に振り返って考えてみると、都合の良い展開や偶然がありまくりなんですよね。
心理戦やミステリィ作品と呼べるほど、伏線やヒントが散りばめられているわけでもありません。
それでも鑑賞中、それらのポイントで醒めることがないのは、まさにノンストップな展開や魅せ方が上手いからでしょう。

舞台も完全に飛行機の中だけですが、マンネリ化することもありませんでした。
最初の殺人を行ってしまうのがまさかのビルであり、ハモンド保安官を殺害した瞬間にアラームが鳴った演出はかなり好き。

登場人物全員が怪しく見えてくる演出は見事。
何なら、主人公のビルも怪しく見えてくるほどです。
めちゃくちゃ頑張っているのにどんどんハイジャック犯にされていくビルは、もはや笑ってしまうレベルでかわいそうであり、ブルース・ウィリスが演じていたらボヤきまくっていたことでしょう。

精神的に不安定、というのもあるのでしょうが、ビルはとにかく強引でした
話なんて聞いちゃいない。
誤解されるかもなんて気にしちゃいない。
ちょっと怪しかったらすぐに力づくで押さえつける。
短気さが事態を悪化させてしまった場面も多々。

とはいえそれらも、「唯一の航空保安官である自分が何とかしないといけない」という使命感・責任感からだったと考えられます。
超不器用ながら、自分の信念を貫いていたキャラでした。

だからこそ、終盤で過去を打ち明けるシーンは胸を打つものがありました。
「いや、この話だけでそんなに全員納得する?」感はありましたが、冒頭で若い女性(娘のオリヴィアが生きていたら同年代だったぐらいの女性)をぼーっと見つめていたこと、手に巻いていたリボン、アルコール依存になった経緯など、細かい部分の伏線回収もしっかりなされていて好印象です。

ジェン(隣の席の女性)に便乗してジントニックを頼んだ際、ナンシー(客室乗務員の女性)がミネラルウォーターを持ってきたのは、航空保安官のビルとは面識があり、アルコール依存であることも知っていたからでしょう。
ビルは、飛行機のトイレ内で、わざわざテープまで貼って煙草を吸っていたのは、ニコチンにも依存していたのですかね。


緊張感のあるサスペンスパートから一転し、犯人が判明してからの終盤は、アクション色が強め。

ビルはただの警察官だったとは思えないほど、とにかく強い
現役警察官を含めた若い男性数人を、ばったばったと返り討ちに。
アルコール依存になっても、訓練は怠っていなかったようです。

浮いた銃をキャッチして撃つシーンはとにかく格好良く、見せ場なのはわかるのですが、ポスターに使ってしまったのですね。
だいぶ大事なシーンのネタバレ感。


都合が良すぎるところは仕方ないにしても、マイナス点としては、犯人たちの動機がやや弱かったところでしょうか。
心理戦やミステリィ要素、派手なアクションなど、どれか一つを求めて観ると中途半端かもしれませんが、上手いバランスで組み合わさっており、個人的にはかなり好きな作品でした。

鑑賞後に気になるのは、ビルとジェンの関係性の行方……よりも、1年間国際線無料の約束です。
みんな、ビルに命を助けてもらったので有耶無耶にしてくれるでしょうか。

ノンストップでガンガン進んでいくので、置いてけぼりの謎もそれなりに多い本作。
後半では、ご都合展開部分はさておいて、考察できる大きな部分を少し考察しておきたいと思います。

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考察:大きな部分の謎の検討(ネタバレあり)

映画『フライト・ゲーム』のシーン
(C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. – STUDIOCANAL S.A.

犯人の目的

犯人は、トム(眼鏡教師)とザック(ムキムキ軍人プログラマー)の共犯でした。
とはいえ、終盤では仲違いしてトムがザックを撃ち殺してしまいました。
主犯はトムであり、ザックはそれほど仲が深いわけではないパートナーであったと考えられます。

トムの動機は、大まかには「信じられなくなった国の真実を暴く」というものでした。
きっかけは「3,000人が死んだ」事件であり、それはつまり9.11の事件であると考えられます。
9.11でトムは父親を失い、復讐のため軍に入隊しましたが、そこで何かしら国に対して不審を抱いた様子。
「国が守ってくれるというのは幻想である」という思想のもと、その真実を白日の下に晒すことが今回の事件の目的でした。

そのために、かつてのヒーロー警察官であり、現在は航空保安官として人々を守っているビルに白羽の矢が立ちました。
精神的に不安定なのに雇われていた航空保安官が、立場を利用して私欲のためにハイジャックを行い、しまいには飛行機を墜落させて乗員・乗客約150人を死に至らせることで、「安全という幻想」を国民に知らしめる
そのためには自分の命を捨てても構わない。
それがトムの犯行計画でした。

一方のザックは、おそらく金銭目的で便乗したのでしょう。
トムはもしかすると、最初から逃げるつもりはなかったのかもしれません。

ハモンドはなぜビルを殺そうとしたのか

もう1人の航空保安官であったハモンド。
彼は、セキュリティを通らない航空保安官の立場を、トムに利用されたと考えられます。

ハモンドが、以前からコカインの運び屋を常習的にやっていたのかどうかはわかりません。
金銭目的でトムからの依頼に応えたのだと考えられますが、もともとそういった悪事を働いていたハモンドにトムが目をつけた可能性もあります。

とはいえ、ビルとハモンドは、面識はあれど親しかったり毎回バディを組んでいるといったような雰囲気ではなく、組む相手や乗る便は指示によって毎回ランダムであったと考えられます。
そう考えると、ビルとハモンドがいつ組むかは予想がつかないので、たまたま今回のビルのバディとなったハモンドを狙ったと考える方が自然です。
今回の便で実行しないといけない必然性はなかったので、もしハモンドを買収できなければ、見送るつもりだったのかもしれません

ハモンドは、渡されたバッグをただ運ぶだけの役目でした。
なので、中身を細かく確認することもなく、コカインの下に爆弾まで仕掛けられているなんて思ってもいなかったのでしょう。

搭乗後、彼にも「守護天使」を名乗る匿名メールが届きました。
「バッグの中身を知っている。今すぐに後部に来い」という内容で、彼は慌てて後部へ。

そんな挙動不審のハモンドを見て、ちょうどメールをしている不審者をリストアップしていたビルは、怪しんで彼のあとを追いかけます。
「やっぱりこいつがメールを送ってたんだ!」と思い込んだビルは、「クソ野郎」から話を切り出してしまいました。
そんな暴言を吐きながらトイレに入ってきたビルを見て、ハモンドはハモンドで、メールの相手はビルであり、コカインのことがバレてしまったのだと思い込んで、慌ててビルに襲いかかってしまいました

最初の殺人は、そう仕向けられたにせよ、まさかの早とちり対決による悲劇だったのでした。

機長の毒殺はいつ?

機長は、ファーストクラスのトイレにあった隠し穴から毒針を打たれて死亡してしまいました。
凶器はダストボックスに捨てられていた、組み立て式の吹き矢のものであったと考えられます(捨てていくなんて杜撰ですね)。
揺れる機内で、ちくりと一撃。
忍者か。

機長が死ぬ前の20分以内にトイレに入ったのは、老婦人だけでした。
その後、ジェンも利用したのかどうかは定かではありませんが、利用しているとしてもその2人だけです。

つまり、毒針はこの20分以前に、トムかザックによって打ち込まれていたということになります。
遅効性の毒で、「20分ごとに1人殺す」のタイミングに合うように打ち込まれたのでしょう。
それにしてもタイミング良すぎますけどね。

この毒は、チャールズ(破産弁護士)にも使用されたことから、メイン武器として利用することが想定されていたようです。
「20分ごとに1人殺す」という時間設定も、その遅効性の毒を使うために設定されたものだったのでしょう。

チャールズに罪を被せたのはなぜ?

3人目の被害者は、上述した破産弁護士のチャールズ・ウィーラー。
彼はなぜ被害者に選ばれてしまったのでしょうか。

結論から言えば、偶然であったと考えています。
つまり、あれは罪を被せられれば誰でも良かったのです。

トムがチャールズに毒針を刺し、携帯電話を内ポケットに忍ばせたのは、ビルに機内を引きずり回されているタイミングでした。
あの状況でチャールズをピンポイントで狙うというのは、かなり難しいものがあります。

トムは、ビルに「搭乗前に声をかけろと買収された」と嘘をつき、その相手を探せと言われて引きずり回されていました。
「あいつだ」と適当な相手を選んで見つけた振りをしたことからは、チャールズの前を通ることになるであろうタイミングを窺っていたと考えることもできますが、なかなかにギャンブルです。
「ビルからボディチェックをされていた相手」であれば相手は誰でも良く、ちょうど思惑通りにチャールズの前を通ることになったからチャールズが犠牲になった、と考えるのが自然です。

しかし、気が付かれることなく、ぶつかった振りをして上着の内ポケットに携帯電話を忍ばせ、さらには毒針まで刺すというのは、並大抵の技ではありません。
忍者かマジシャンか。

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