【映画】フローズン(ネタバレ感想)

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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『フローズン』のシーン
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スキー場にやってきたダン、ジョー、パーカーの3人は、日暮れ前に最後の滑りを楽しもうとリフトに乗り込むが、山頂への途中でリフトが停止してしまう。
大声で助けを呼ぶが届かず、地上15メートルの空中に置き去りにされてしまう。
ゲレンデが営業を再開するのは1週間後。
3人は食料不足とマイナス20度の極寒に耐え切れず、何とか脱出を試みるが──。

2010年製作、アメリカの作品。
原題も同じく『Frozen』。
『アナと雪の女王』の原題と同じで若干かわいそう(?)ですが、『フローズン』の方が先に公開された作品です。


雪山でリフトに乗っていたら、置き去りにされちゃった!

その設定がすべての、ワンシチュエーションもののシチュエーション・スリラー
寒い冬に、暖かい部屋でぬくぬくしながら観るのがおすすめな1作。
B級らしく突っ込みポイントも多めなので、みんなでわいわい騒ぎながら観るのに適した作品です。

何だか評価はけっこう低めなようですが、個人的にはかなり楽しめました。
もうこういうの大好き。
ほとんど動きがない中で、緊迫感も頑張って維持されていた印象です。


雪山のリフトに取り残されて、1週間近く誰も来ないかもしれない。
このシチュエーションを設定した時点で、半ば勝っています。
ワンシチュエーションものは、「実際にあり得るかも……」とちょっとでも思わせることが大切

雪山といえば遭難ものがすぐに浮かびますが、遭難ものはサバイバル色も強くなるので、シチュエーション・スリラーに特化できる本作の設定は、馬鹿馬鹿しくも秀逸です。
遭難ものだと、大好きなマッツ・ミケルセン主演の『残された者 ー北の極地ー』という映画が好きなのですが、その重厚さと比べてしまうと、『フローズン』はだいぶライトでお馬鹿感が強く漂います(もちろん、そもそもの方向性が異なりますが)。

すぐそこに地面があり、どうにかなりそうなのに、意外とどうにもならないもどかしさ。
そりゃあ、追い詰められたら「飛び降りても大丈夫なんじゃないか?」と思ってしまいますよね(?)。


会話シーンが冗長という意見は確かにそうですが、許容範囲でした。
実際、会話するしかないですよね、あの状況。
ただ、極限状態になると人間の本性が現れるものですが、皆さんなかなかに自分勝手でした。
気持ちはわかりますし、仕方なさもありますが。

夜のシーンが多かったこともあってか、全体的に終始絶望感が漂っていたところも好印象
登場人物がほぼ3人だけであるところも、孤立感を強めていました。
宙に浮いているという不安定さも、緊張感を高めます。


ただ、ラスボスがオオカミ頼みというか、「一番怖いのはオオカミでした」みたいになってしまっていたのは少し残念。
特に、死亡した2人ともがオオカミの犠牲になったところが、もう一捻り欲しかったところ。
というか、昼間でもあんなオオカミの群れが走り寄ってくるような場所にスキー場があるのもやばいですよね。
営業中もオオカミに襲われる事故とか多発してそう。

せっかくダンがオオカミに食べられてしまったので、その死に様はパーカーには見せなくとも、観客には見せて欲しかったです(超個人的感想)。
ただ、むしゃむしゃ音と、血で喉がゴポゴポ音は、想像力を掻き立てる良い演出だったかもしれません。


難点も挙げておくと、あの状況に陥ったのは半分ぐらいは自業自得だったのと、キャラが3人とも、ちょっと、少し、かなり、だいぶお馬鹿だったので、感情移入しづらかった点でしょうか。
もう少し「自分がこの状況になったら……」「そうそう、わかるよその気持ちや行動」と思わせるポイントがあった方が、没入感が増してより恐怖感も高まっていたはずです。

主人公たちの愚かめな行動は、極限状態ですし、思考や行動は人それぞれなので許容できます。
あとは、ワンシチュエーション・スリラーにおいて、少し強引な展開は仕方ないので許容できるとして、個人的に大事だと思っているのは細部のリアリティです。

細かいリアリティとして気になってしまった点はいくつかありますが、まず誰しも突っ込むポイントは、超つるつるな骨が飛び出していた開放骨折でしょう。
両脚を骨折し、身動きが取れない中でオオカミに取り囲まれるという絶望感は本作最大の見所だったので、骨に気を取られてしまったのはとても惜しい。

しかし、あれだけ新雪が積もっていたら、クッションになってくれた気もします。
ダンが飛び降りたのはけっこう早かったので、新雪が積もる前で少し氷っぽくなってしまっていたんですかね。
新雪だったら新雪だったで、身体が埋まってしまって抜け出すのが大変だったかもしれません。


もう一つは、寒さの恐ろしさがもう少し描けたんじゃないかな、という点です。
凍傷も、あれだけ「触ったらやばいぞ、マジでやばいぞ」と言われていながら、触ったらかさぶたのように剥がれて終わり、だったり。
吹雪いている夜の雪山で寝ても平気だったり。
身体の自由もほとんど奪われていなかったり。

そのあたり、寒さの恐怖がいまいち伝わってきませんでした
寒そうでしたけど。

あと、安全バーに手が張りついてしまったシーンも痛々しかったですが、そのシーンの前に、けっこうペタペタと素手で安全バーを触っていたのが気になっていました。
たぶん、あの気温だったら、少し触れただけで張りついてしまうんじゃないかな、と。
剥がれた手の皮膚が、少ししたら安全バーから消えていたところも、細かいですが気になってしまったポイント。

ジョーの握力と体力、そして精神力は並大抵のものではありませんでした。
あれだけ頑張って、最後には結局オオカミのご飯になってしまったのはかわいそう。
すごい勢いで食べ散らかされてましたね。
パーカーがオオカミに見逃されたのは都合の良さも漂いますが、みんなジョーでお腹いっぱいだったのかもしれません。


ちなみに、ワンシチュエーションものはだいたい似た雰囲気ではありますが、本作を抽象化すると、『ロスト・バケーション』にかなり構造が似ているように感じました。
『ロスト・バケーション』はサメ映画ですが、怪我をして陸が見える距離の小さな岩場に取り残され、周囲をサメが泳いでいる、というシチュエーションです。

「周囲を自然に取り囲まれている」「すぐそこに日常があるのにたどり着けないもどかしさ」「夜の寒さと日中の暑さの地獄」「そんなに襲ってくる?と思うほど、隙を見せたらすぐにしつこく襲いかかってくる動物」など。
片や冬の雪山、片や夏の海で、構造は同じでも舞台が違うだけでこんなにも違って見えるんだな、と面白く感じました。


最後にさらに余談ですが、リフトが止まってすぐにやってきた1台の車。
ダンたちが叫びながら持ち物を投げても気がつかなかったその車に乗っていたコーディを演じていたのは、『13日の金曜日』シリーズの後期(7〜10作目)でジェイソン役を演じたケイン・ホッダーだったそうです。
あそこで何一つ車に当てられなかったのが運の尽きでしたが、もし当たっていても、もしかしたらジェイソン(の中の人)に殺されるスプラッタ映画と化していたのかもしれません。


似ているロシアの映画『フローズン・ブレイク』は、またちょっと違ったテイストで、こちらはこちらで良かったです。

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