作品の概要と感想(ネタバレあり)
郊外の森の奥にあるキャンプ場を訪れた若者の男女6人。
夜になり焚火を囲むと、1人がこのキャンプ場にまつわる都市伝説を語り出した。
この場所に因縁のある、かつて森林警備員だったスパローという男が、夜な夜なキャンパーを見つけては山刀で切り刻んでいるという都市伝説。
当初はそんな話を誰も信じるわけもなかったのだが──。
2011年製作、ポーランドの作品。
原題は『Sparrow』。
まず正直に、率直に、素直に感想を申し上げますと、
退屈してしまいました。
75分という短さにもかかわらず、途中で何回も止めてスマホ触っちゃった。
いや、低予算なスラッシャー映画なので、もともと過度な期待はしていませんでした。
以下のような、スラッシャーの定番中の定番を踏襲しているポイントは好きです。
- 過去の惨劇から始まる冒頭
- 郊外にある湖畔のキャンプ場
- お馬鹿を極めた刹那的な快楽に生きる若者たち
- 焚き火を囲んで語られる殺人鬼の噂
- 1人ずつ殺されていく若者たち
- マチェテ(山刀)片手に襲い来る神出鬼没の殺人鬼
- エンジンがかからない車
- やっつけたと思ったら蘇る殺人鬼
特に、湖畔のキャンプ場というロケーション、マチェテという武器からは、やはり『13日の金曜日』が連想されます。
シットコム(性欲セクハラモンスター)から都市伝説を聞いた際、ドーン(元彼マットに固執)が「白いマスクをしている?」と質問していましたが、これも明らかにジェイソンを意識したものでしょう。
そのような定番設定は良いのですが、個人的にマイナスに感じてしまったポイントは、この作品オリジナルの個性がまったくと言って良いほど感じられなかった点です。
定番を踏襲していますが、古典作品のオマージュ的な要素があるわけでもない。
かといって、プラスで独自の要素があるわけでもない。
チープながら殺戮シーンも頑張っており、凶器はマチェテ1本だけながら多彩な殺し方を見せてくれて、B級スラッシャーとして悪いわけではないのですが、わざわざ本作を観る必要性や魅力が乏しく、「これを観るんだったら改めて『13日の金曜日』を観れば良くない?」となってしまいました。
個性が弱いからか、観終わった直後から急速に記憶が失われていっています。
これまで『デスチューバー』や『ハングリー/湖畔の謝肉祭』といったような、「さすがにフォローも難しい……」と思ってしまう作品も多々観てきましたが、それらはそれらで、逆に記憶には残っています。
正直に言ってこれらも面白くはないのですが、「何を作りたかったのか」という意図や想いは伝わってくるので、ある意味では好きではあります。
しかし本作は、そこが中途半端な印象です。
個性の弱さは、こだわりの弱さに起因するように感じられてしまいました。
こだわりを持って作っていたら申し訳ないのですが、何だか「『13日の金曜日』みたいなスラッシャー作品を作れ」と言われて無理矢理作らされたかのようなイメージが拭えません。
殺人鬼スパローの都市伝説も、不倫されたからブチ切れて妻と愛人を殺し、そのままキャンパーたちを殺害するようになったというのは、やや飛躍を感じます。
もうちょっとどうにかならなかったのかなと思いますが、それはそれで都市伝説らしいでしょうか。
いや、でも、どうにも「都市伝説」というのもしっくりきません。
不倫が原因なので、殺害の対象はセックスに溺れる若者たちだけだったのかもしれませんが、それでもこれまでそのような事件が複数起きていたのであれば、問題になっていたでしょう。
特に閉鎖などされていた感じでもありませんし……と、考え始めるとどんどんツッコミどころが浮かんできてしまいますが、そのあたりは深追い禁止。
もちろん、シットコムの語った都市伝説の内容が事実とは限りません。
シットコムの話では「この辺りに潜んで夜は徘徊している」「今夜みたいな夜には被害者の叫び声が聞こえる」とのことでしたが、終盤は白昼堂々襲ってきたので「夜に現れるんじゃないんかい!」と思わず突っ込んでしまいそうになりました。
しかし、都市伝説の内容が事実とは限らないことを思い出し、辛うじて「決めつけてごめんなさい」と謝りながらツッコミを飲み込んだ自分を褒めたい。
殺人鬼スパローの魅力が乏しいのも、残念ポイント。
不気味な笑い声は狂気を感じさせますが、良くも悪くも姿がはっきり映らないのと、比較的平凡な外見。
むしろちょっとイケオジっぽく見えましたが、まさか長めの髪でワイルドな風貌はジャック・スパロウを意識してのスパロー……?
いや、それはない。
時間配分も謎すぎました。
どうでもいいシーンや揉め事で時間を稼ぐのはスラッシャー映画の宿命ですが、それにしても。
まさか終了10分前までメインの6人組が襲われないとは思いませんでしたし、さすがにサッカーを始めてしまったときには笑ってしまいました。
しかも長い。
あとは何より、6人の仲があまりにも悪すぎて、観ているこっちの胃が痛くなってしまいました。
「何でこのメンバーで来ることになったん?」と思ってしまう仲の悪さもスラッシャーの定番ではありますが、それが本作では際立っており、本作の個性が強い部分としてはそこかもしれません。
外見だけからはあまり学生には見えませんでしたが、年齢含めてどういうグループなのか一切説明がないところは潔い。
そんなギスギスした謎グループな上、誰一人として魅力がないのも難点。
シットコム的な性欲セクハラモンスターキャラはテンプレですが、さすがに過剰。
ドーンなんて、マットの気を引くために下着姿で水浴びを始めたときは、とち狂ったのかと思ってしまいました。
他のメンバーも全員性格悪く、事あるごとに文句や不満たらたら。
まさかのシンディがファイナルガールでしたが、ファイナルガールらしい活躍を見せることもありませんでした。
典型的なファイナルガールがいなかった点が、スラッシャーの定番から外れているポイントでしたかね。
そもそもメインとなるような人物がいなかったのも、特徴と言えば特徴かもしれません。
考察ポイントは皆無ですが、なぜか最後はちょっと余白を残す終わり方。
とはいえ、最後に管理棟らしき家から出てきたのはどう考えてもスパローでしょう。
あれでスパローじゃなかったら、それはそれで斬新です。
普通に考えればシンディも殺されているのは確実で、特に意表を突いた展開もなく、ただただ順番に全滅してしまっただけでした。
生き残りがいないのも珍しいかも。
ダンカンが猪突猛進せずに戦っていればワンチャンあった気もしますが、脳筋っぽかったので仕方なし。
振り返るとついつい愚痴ばかり列挙する感じになってしまいましたが、良かった点は、合間に挟まれるポーランド(たぶん)の風景の美しさ。
特に、湖の美しさは見惚れてしまいました。
というわけで、典型的なスラッシャーながら、オリジナリティは皆無に等しく、残念ながら何がしたかったのかよくわからなかった1作でした。
最後にスパローが画面に向かって必死にアピールしていましたが、当然のように続編がなさそうなところも切ない。
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