【映画】ハングリー/湖畔の謝肉祭(ネタバレ感想)

映画『ハングリー/湖畔の謝肉祭』のポスター
(C)THE WRONG TURN MMXX
スポンサーリンク

 

作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『ハングリー/湖畔の謝肉祭』のシーン
(C)THE WRONG TURN MMXX

2002年7月、イングランド南部にあるアクアパークのロッジに宿泊していた、臨月間近の妊婦を含めた男女3人が行方不明になる。
約20年後、野外の音楽イベントに参加するため車を走らせていた6人の若者たちが道に迷い、見知らぬ土地の廃墟と化したアクアパークにたどり着く。
そこで彼らは、人間の皮膚でできたマスクを被り、迷い込んだ者たちを狩っては捕らえ、生きたままその肉を食す悪魔のような食人一家に襲われる──。

2020年製作、イギリスの作品。
原題は『Cannibal Cabin』。

感想や考察を書くとき、基本的なスタンスとして「読んでもらったことで、作品をより深く楽しめたり、そうそうそうだよね、みたいに一緒に感想を言い合うような感覚になってもらえたら嬉しい」と思って書いています。
自分なりの「面白かった」「つまらなかった」はという感想は正直に言いますが、作品を作り上げたというだけでも敬意を表し、作品自体を否定したり、文句や不満を言って批判するのは誰にでもできて一番簡単なので、極力避けようと意識しています。

しかし、本作。
フォローが難しい!

いや、別にわざわざフォローしたり持ち上げたりするつもりもないのですが、さすがにちょっと良いところを見つけるのも難航してしまいました。
本作が大好きな方は読まない方が良いかもしれませんし、むしろ大好きポイントを教えていただきたい。

人の顔の皮を被った食人一族のビジュアルは良いですが、どう考えても『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスオマージュでしかありません。
ストーリーや映し方は素人目にもガタガタで、わざわざ本作のような作品を観る人の多くが求めていたであろうゴア描写はほぼ皆無。
冒頭、妊娠していた女性(ロクシー)が独り言を喋るシーンのあまりの不自然さに「もしかしてこの作品、予想以上にやばいのでは……?」という予感がひしひしと押し寄せましたが、残念ながらその予感は的中してしまいました

公開当時、「あまりにも愛すべきB級感が滲み出すぎてて観たい」とツイートしたのですが、配信で鑑賞を終えた今、映画館に観に行かなくて良かった……とさすがに思ってしまいました。
『デストイレ』のような逆にネタになるZ級感もなく、C級レベルのチープさだけが目立ってしまった切ない作品
殴って気絶させるシーンがここまでチープな映画も久々でした。
「イギリスで起こった衝撃の実話」という謳い文句は、見なかったことにします。


全体的に『悪魔のいけにえ』オマージュなのでしょうが、設定も「田舎に行ったら襲われた系」で何の捻りもなし。
いや、フェイが食人一家の仲間だったという捻りはあるにはありましたが、それも中盤あたりで明らかに勘づいてしまいます。
一応設定としては、主人公たちより先行していたトミー(ギター持っていた男性)たちも食人一家の犠牲になったようでしたが、主人公たちもトミーたちも、フェイによるありもしないフェス情報に騙されてこの地に招かれた、という解釈でしょう。

ただ、フェイが冒頭の妊娠していた女性(ロクシー)の子どもだったというのは想定外だったので、そこはちょっと良かったです。
取り出された赤ちゃんの人形感は笑ってしまいました。

肝心のグロさも何もかも、すべてにおいて冒頭15分ほどの2002年の事件がピークでした
「現在」になってからは、画面が暗いのは仕方ないとはいえ暗すぎますし、カメラワークもごちゃごちゃなので、何が起こっているのかほとんどわかりません。
グロシーン以外でも、けっこう唐突に場面が切り替わるので、流れがわかりづらく感じてしまいました。
「田舎に行ったら襲われた系」のど定番設定が悪いわけでは全然ありませんが、その中での描かれ方があまりにチープであり雑でめちゃくちゃだったのが残念。


ちょっと不満ばかりになってしまいそうなのでなるべく抑えますが、外せないポイントとして、一番問題を感じたのは食人一家に魅力がなかった点だと思います。

そもそも、警察だか保安官だかっぽい雰囲気で登場した「グライムズ執行官」が一家のボスで、他の量産型レザーフェイスたちはその息子たち、ということですかね?
そうすると母親が見当たらず、そのあたりの成り立ちもよくわかりませんが、あるいはフェイ同様、みんな妊婦から奪い取った子どもたちだったのかもしれません。

最初はおじいちゃんマスクがボスかと思いましたが、そうでもなかったようで。
あの人だけ知性がありそうでしたし、なぜ彼だけ人面を被っていなかったのかもわかりません。

ちなみに子どもといえば、彼らは人肉を食べたり所持品を強奪するだけでなく、妊婦からは赤ちゃんを奪い取り、一族に加えることも狙っていたようです。
なので、本作の主人公たちが狙われたのも、ジェン(本作の中では一番まともだった女性)が妊娠していたから、というのもあるかもしれません。
ただ、ジェンが妊娠していたのは、クリス(本作の中では一番まともだった男性、ジェンのパートナー)ですら本作の途中で初めて打ち明けられており、クリスに打ち明けるより前に、最近仲良くなったフェイに話していたとは考えられません。
そう考えると、なぜジェンが妊娠していたのかをフェイも含めた食人一家が知っていたのか謎であり、そのあたりもガバガバ感が否めません。

とまぁまぁ、人食い一家の背景はわからなくても良いのでそこは置いておくとして、一番気になったのが量産型レザーフェイスたち
ほとんど喋らなかったり(1ヶ所セリフがありましたが)、カーリーが閉じこもっている車のドアを開けようともせずフロントガラスを叩いていたりしていた様子からは、どうも知的能力が低そうでした。
そして何より、生きた人間に襲い掛かり、かぶりつく姿。

それはもう、ゾンビなんですよ。

カニバリズムの恐ろしさは、人間が調理されたり、ケバブよろしく肉を削いで食べられたりするところにあると思っています。
生きた人間に群がってかぶりつき肉を食いちぎっていたら、それはもうゾンビなんですよ

途中では調理した人肉料理を鍋からお皿に掬って食べているシーンがあり、あれは良かったです。
あんな感じで統一してほしかった。


登場人物は、敵も味方もほぼ全員が馬鹿すぎますが、ジョナがめっちゃかっこつけてタバコの火をつけて倒した量産型レザーフェイスたちを燃やしつつ、自分も閉じ込められて焦って苦悶するシーンが一番笑ってしまいました。
あのあと一切出てきませんでしたが、あのまま死んでしまったんですかね……

キャラでいえば、マリリンが一番インパクトがありました
マリリンと夫の不気味さは抜群だったので、あの2人をもっと活かしても良かった気がします。
あの2人は、食人はしないけれど食人一家の仲間で、迷い込んできた都会の若者たちを食人一家のもとに誘導して送り込んでいた、ということでしょうか。
「モンローじゃなくてマンソン似」のジョークはセンスがあり、好き。


どうしよう、もう書くことがありません
ツッコミどころが多ければそれはそれでネタになって楽しめるのですが、『ハングリー/湖畔の謝肉祭』は残念ながら「ただただ退屈だった」という感想を残さざるを得ない作品でした。
いや、こういうC級感も好きなので、ある意味では好きは好きなんですけどね。
よほど物好きな人以外にはおすすめし難い。

あっ、使われていた音楽はお洒落で良かったです
でも、それすらも作品やシーンに合っておらず、裏目に出てしまっていた印象(涙)。
そもそも音質があまり良くない上、音楽がかかるとセリフの音量が遠くなって非常に聞き取りづらかったのですが、自分だけでしょうか。

本作の監督、ルイーザ・ウォーレン監督は、ネットを見る限りちょっと不評で悪名高いようですね。
本作だけでも察せられてしまう部分はありますが、こんなスプラッタ系を撮る女性監督も珍しいので、頑張ってほしい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました