作品の概要と感想(ネタバレあり)
インフルエンサーカップルのブルックとケイレブは、キャンプへと向かう。
携帯電話の電波も届かないキャンプ場の奥地へと連れて行かれたブルックは不満を持つが、1人だけで過ごす夜を楽しむ。
翌朝、ブルックは1人でSNSに投稿するための撮影を始めるが──。
2017年製作、アメリカの作品。
原題は『Followers』。
最近、タイのホラー映画を立て続けに観ていたので、久々にアメリカのお馬鹿な箸休め的作品が恋しくなり、鑑賞。
結果、その選択に間違いはありませんでしたが、予想以上にお馬鹿で、予想以上に箸休めというか、箸を持ち上げることが一切ない82分間でした(自分でも何を言っているのかよくわからない)。
さて、SNSを通じて垂れ流した情報によって、住所などの個人情報を特定されてしまった主人公のブルックと、その彼氏・ケイレブ。
彼らをつけ狙い、意識高い系の警告ドキュメンタリー映画を作ろうとしていたチーム・デス・ブログことニック(髭)とジェイク(眼鏡)。
そんな彼ら4人が足を踏み入れた森の奥のキャンプ場は、カルト集団の巣窟でした。
改めてまとめると、とんでもない話ですね。
ファウンド・フッテージ風に、ビデオやスマホで撮影された映像だけで展開されていった本作。
ブルック&ケイレブからニック&ジェイクに視点が切り替わって裏側が明かされるところは、他作品でもよく見る手法ではありますが、本作に持ち込まれるとは思っていなかったので面白かったです。
ただまぁとにかく、「インフルエンサーが個人情報を特定されて襲われる」というメインの軸に、意表を突こうと思ったのかさらに謎のカルトを登場させただけで、それ以上の内容は皆無と言っても過言ではありません。
そのため、展開はひたすら冗長。
だらだらとブルックとケイレブの様子を映したり、ニックとジェイクはひたすら口論していたりと、82分というコンパクトさの割に大半が引き伸ばしのシーンであり、体感時間としては長く感じてしまいました。
ブルックとケイレブは、本当にインフルエンサーなのか……?と思ってしまいましたが、まぁ「インフルエンサー」に定義もないのでそこは置いておいて、本作のような作品に登場するインフルエンサーの被害者としては、そこそこかわいそうな部類でした。
インフルエンサーや動画配信者が痛い目に遭う系はすでに多く、本作よりも後発の作品も含めて『デスNS/インフルエンサー監禁事件』や『#フォロー・ミー』、『ドント・ハングアップ』、『デスチューバー』などいくつか観てきましたが、だいたいが過激な企画だったり調子に乗ったりしたことで痛い目に遭う自業自得系でした。
しかしブルックとケイレブは、それぞれヨガや筋トレといったメインコンテンツを配信し、そしてカップルとなってからはその日常を配信しているだけの、いわば堅実なインフルエンサーでした。
だからこそ、ほとんど非がないのに個人情報を特定されて何かしら被害に遭う危険性を警鐘するには良かったのかもしれませんが、まぁあのドキュメンタリーが完成していたとしても、チーム・デス・ブログが炎上して終わりだったでしょうね。
そこを理解していたからか、ジェイクはニックにも黙ってさらなる次のステップを計画していましたが、結局何がしたかったのか不明。
本当にブルックたちを殺して、世間にインパクトを与えたかったのでしょうか。
「僕が世界を変えるんだ!」という独白は、見ている方が恥ずかしくなってしまいました。
SNSの危険性を提示するというテーマは、若干説教くさくなってしまいますが良いと思うのです。
が、いかんせん警鐘する側が、ニックはブルックのファンというかストーカーっぽかったですし、ジェイクは妄想に支配された肥大した自己愛人間な感じでしたし、結局テーマがよくわからなくなってしまていたところが少し残念。
エンドロール後にもわざわざ赤文字で「BEWARE WHAT YOU SHARE(シェアするものに気をつけろ)」と表示されて終わりましたが、この文言も内容といまいち合っていない気がしなくもありません。
これに関しては、ブルックが最後に自分を偽っていたことを告白していたので、ネットに流れているコンテンツを無条件に信じるな、ということだったのでしょうか。
テーマはブレブレ、展開はツッコミどころだらけで、こういった低予算のスリラー的な作品は自分は好きで、正直、期待していたよりは面白い点もあったのですが、まぁ他の人におすすめはし難いなというのが正直なところ。
U-NEXTで視聴したのですが、字幕も2ヶ所ほど脱字があり、それほど期待されていない感じが漂っていて哀愁。
いや、字幕を作って配信してくれるだけ本当にありがたいんですけどね。
こういった作品からしか得られない栄養が、確かにあるのです。
ツッコミポイントは、映画だからと割り切ってスルーすべきようなものではなく、あまりにも不自然すぎて笑ってしまったレベルのものが多々。
まず、POV作品ではそもそも緊急事態でカメラを手放さないのが不自然なのですが、何とか理由をつけて撮影を続けさせる中、本作ではそれを放棄していたというか、特に弱気なニックがカメラを手放さないのは不自然さしかありませんでした。
そこは割り切っていた感じもあり、ある意味では潔い。
ブルックは自分を偽っていたわけですが、そんな承認欲求とプライド高い系の彼女が、最後にすべてを告白するのも違和感。
浮気っぽい電話をしていたのも、伏線でも何でもなく、本当にただただ浮気していただけでした。
ケイレブは脳まで筋肉でできていましたが、1人ウキウキでプロポーズ計画を進めて盛り上がっている姿は、もはやピエロすぎてかわいそうで涙を誘ってきます。
冒頭のウザすぎる「起きる時間だ♪さあ起きて♪」ダンスにキレなかった時点で、ブルックは相性は良かったのでしょう。
終盤は、手錠をかけられていたとはいえ、カルトの女性1人に抑え込まれていたので、筋肉は飾りだったようです。
ニックとジェイクは、最初に登場したときはニックがリーダー的な存在かと思いましたが、ジェイクの方が力関係では上でした。
しかしまぁ、2人ともあまりに行き当たりばったりすぎて、常に「どうしようどうしよう」となっていた気がします。
そもそもブルックから住所を聞き出す際に、ブルックが住所を言い始めてから慌ててメモとペンを用意していた時点で、こいつら計画性は皆無ですよと教えてくれていました。
常にどうでもいいことで口論していたかと思いきや、急に「お前すごいな!」と盛り上がったり、感性と関係性はかなり謎な2人組でした。
お隣さんのピートは何の伏線でもなく、ただの時間稼ぎでした。
財布を届けたのにお礼がなくキレて煽ってきた人たちは何の伏線でもなく、ただの時間稼ぎでした。
しかし、あの財布の置き忘れに気づいた人、座っていた位置からすると絶対死角だった気がします。
ニックのドローンも何の伏線でもなく、ただの時間稼ぎでした。
そしてとにかく雑すぎたカルト集団。
全員白い服を着て不思議な動きをしていればカルトっぽく見えるだろうと言わんばかりの、白いワンピース女性たちの謎のくねくねダンス。
カルト的な儀式と見せかけて、ケイレブの首から切った血はまったくお皿に注げていませんでしたが、大丈夫だったのでしょうか。
そもそも、人目の少ない奥へ奥へ行ったとはいえ、「原始的キャンプ場」と名前がついているほどキャンプ場の敷地内だったと思うので、あんな殺人カルト集団がいて今まで問題にならなかったことが不思議でなりません。
最近できた組織で、最初の犠牲者が今回の4人だったのかな。
ブルックとニックが2人で逃げて、女性信者に襲われたシーンでは、ニックがブルックを助けるかと思いきや、ニックはブルックに石を渡しただけで、それを使ってブルックが女性信者を撲殺。
「ほら、これだ」じゃないんですよ。
ここだけゴア表現全開だったのも、徹底してニックはヘタレだったのも、笑ってしまいました。
そして極めつきは肝心のラストシーンの、車を取り囲む女性信者たちの、ぺたぺたと窓を撫で回すだけの明らかにやる気のない姿。
もはやゾンビかみたいな感じでしたが、洗脳状態にあったのか、ドラッグでもやっていたのか。
とはいえ、忍者のごとく誰にも気づかれないまま背後に忍び寄ってジェイクの首を切ったり、ブルックたちを追いかけ回す姿は俊敏だったので、もうめちゃくちゃ。
最終的には「よくあれで窓ガラスを突き破れたなぁ」という感慨を残し、幕を閉じたのでした。
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