【映画】ドント・ハングアップ(ネタバレ感想・考察)

映画『ドント・ハングアップ』の表紙
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

サムとブレイディたちは、悪戯電話の様子をSNSで実況配信する悪質な遊びに熱中していた。
ある日、悪戯電話をかけた相手から、折り返しの電話がかかってくる。
その男はなぜか2人の名前も住所も把握していた──。

2016年、イギリスの作品。
原題もそのまま、『Don’t Hang Up』。

題名の意味は、作中にもその台詞が出てくる通り「電話を切るな」ということです。
けれど、主人公のサムはけっこうガンガン切りまくってましたね。

それでも「話の途中だぞ、失礼じゃないか」ぐらいで済ませてくれる犯人は、だいぶ優しめでした。
無視されても1時間もかけ続ける忍耐力も、相当のもの。
もし電源を切られていたら犯人はどうしていたのだろうと、ついつい考えてしまいます。
あんなに準備したのに。

さて、『ドント・ブリーズ』の成功に続く「ドント」シリーズ……というわけではまったくありません。
それなりに緊張感はありますが、『ドント・ブリーズ』に比べると残念ながら個人的な点数は低め。

『ドント・ハングアップ』は、こちらも最近観た『#フォロー・ミー』に続いて「調子に乗った動画配信者の末路」系作品
ただ、『ドント・ハングアップ』の方が内容が悪質、というかもはや迷惑系を超えた犯罪レベルなので、どれだけ彼らが痛い目に遭おうとも、完全に自業自得感しかありません

復讐という行為の是非はさておいても、少なくとも主人公のサムたちに共感はしづらい。
前半にサムとブレイディの友情が描かれ、「根は悪い奴らではない感」を演出していましたが、焼け石に水。

個人的になぜいまいちだったのかを考えてみたのですが、やはり犯人の仕返しの壮大さでしょう。
個人情報をすべて把握していたのは、半年以上かけて情報収集していたのでまだ理解できます。
しかし、家の電気をコントロールしたり、警察にかけた電話も自分に繋がるようにしていたところなどは、いくらハッキングやクラッキングの技術があったとしても、非現実感がかなり強め

都合が良すぎたり矛盾があったりといった突っ込みポイントは非常に多く、それらに対しては目を瞑るべきであるのはわかっているのですが、それにしても全体を通して無茶が多いので、どうしても気になってしまいました。

あまりに「さすがに無茶では?」感が強いので、最初はサムに対するドッキリなのではないかと考えました。
ブレイディや他の配信仲間はもちろん、サムの恋人ペイトンや、ブレイディの両親まで協力した壮大なドッキリです。

しかし、モーズリーが死体で発見されたあたりから、「あ、やっぱり本当なのかな」という考えにシフト。
それでもどうしてもドッキリ説が抜けきらないので、緊張感も中途半端になってしまいました。

あとは、登場人物(特にモーズリーとロイ)がだいぶわかりづらかったです。
モーズリーは、あれ?配信仲間でもあり、ピザ屋でバイトをしてる?ペイトンもたまたま同じところでバイトしてる?
映像で窒息死させられてたのは、イタズラモンキー69ことロイだよね?
などなど混乱。

そのあたりが、残念ながら個人的なマイナスポイントに。
ただつまらないわけではなく、後半は引き込まれるものもありました。

モーズリーの死体だと思っていたのが実は犯人で、終盤に立ち上がる姿は、あの作品を連想せずにはいられません。
あまりに有名ですが、まだ観ていない人のために作品名は伏せておきましょう。
観たことある人は、きっとわかってくれるはず。

後半は、考察というほどではないかもしれませんが、犯人の目的やラストシーンについて振り返ってみます。

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考察:犯人の目的とラストシーンの意味(ネタバレあり)

犯人の目的

犯人の目的は、一言で言えば復讐です。

彼のファミリーネームは、コルバイン。
冒頭、イタズラモンキー69の4人が悪戯電話を仕掛けていた女性が、彼の妻でした。

悪戯の内容は、「警察が家を包囲している、容疑者が家の中にいる、電話を切らずに部屋から出ないでください」というもの。
彼女は、娘を助けるために銃を持って部屋を出ます。

しかし、悪戯電話であるため、もちろん家の中に怪しい人間は誰もいません。
彼女は、突然ドアが開いたので驚いて反射的に銃を撃ち、自分の娘(イジー)を撃ち殺してしまいました(見事な腕前)。
そして、絶望のあまり自分も銃で自殺します(胸を撃って自殺するの、初めて見ました)。

彼女は悪戯電話に対して「夫は留守」と言っており、コルバインは不在だったようです。
彼は、帰ってきてから悲劇を目撃したでしょうが、その時点ではサムたちの悪戯電話のせいだとはわからなかったはず。
おそらく、イタズラモンキー69がアップした動画を見て理解したのでしょう。

そのために、時間をかけて入念にイタズラモンキー69のことを調べ上げ、復讐を実行に移したのが本作でした。

当日、サムとブレイディは、2人で飲みながら悪戯電話をかけていました。
その相手の1人がコルバインだったわけで、偶然にしては都合が良すぎないか?とも思うかもしれません。
しかし、そこは電話をハッキングできる彼のこと、他の番号にかけられた悪戯電話を自分で受け取ったのだと考えられます。

中盤、彼はサムとブレイディに選択を迫ります。
友人を殺して、大切な人を助けるか。
大切な人を犠牲にして、友情を取るか。

ただ、目的が復讐であったことを考えると、結局は全員を殺すつもりだったのではないかと推察されます。
少なくとも、ブレイディの両親に関しては、ゲームスタート時点ですでに殺されていました。

ちなみに、コルバインの風貌は、それだけで若干ホラーなものがあります。
もともとああいう顔なのか、事件後に何かあったのかはわかりませんが、もともとだとすると「それだけで若干ホラーなものがあります」というのは良くないですね。

そこはまぁフィクションなので置いておくとして、いずれにせよ、不気味さが漂うようにキャラ立てされていたのは間違いありません。
ブレイディに自分そっくりの被り物を被せていましたが、あれを自分でせっせと作ったのかと思うと少し面白い。
最後に本物が登場しますが、喋るときに口が動いていたので、あれは被り物ではなく素顔なはず。

ラストシーンの意味

コルバインは、最後にサムに銃を向けながら「私と同じ苦しみを味わうがいい」と言います。

この台詞の時点で「サムは殺されないな」というのがわかりますが、これはつまり、「大切な人を奪われた苦しみを味わうがいい」という意味です。
そのため、ペイトンも殺され、サムは生かされたのです。

その後サムは、拳銃と包丁を握らされて気絶していました。
リビングのモニターには、ペイトンとブレイディの浮気映像。
「2人の浮気を知りカッとなったサムが、2人を殺害した」というストーリーで、友人や恋人を殺された上、その濡れ衣を着せられました

矛盾点も多いのであまり整合性を検討するのは意味がない気もしますが、上述した通り、コロバインは最初は全員を殺すつもりであったと考えられます。
少なくとも、サムだけは生かすというのが、最初から計画されていたわけではなかったのは間違いありません。
選択を迫った際、本当にブレイディがサムを殺す可能性もあったからです。

そのため、サムだけ生かし濡れ衣を着せるというのは、終盤ぎりぎり、おそらくサムがブレイディを刺し殺したあたりで思いついたのではないかと考えられます。

ただ、あのシーンも謎がありました。
それは、サムがずっと拳銃と包丁を握っていた点です。

警察に銃を向けられ「武器を捨てろ」と言われているにもかかわらず、両手を上げたのに拳銃と包丁を握ったままというのはかなりの違和感です。
そもそも、気絶から目が覚めた時点で手放すのが自然な気がします。
まだ犯人がいるかもしれないにしても、せめてどちらかだけで良いでしょう。

そのため、ブレイディがコルバインの被せ物を被せられた際、手に包丁をテープで巻き付けられて固定されていたように、サムも拳銃と包丁が固定されていたのではと考えました。
一見、ブレイディのようにテープぐるぐにはなっていませんが、接着剤とかかもしれません。

しかしそうなると、明らかに不自然で第三者の仕業となってしまいます。

なので、あのシーンの真意は、おそらくただ演出の都合によるものです。
気絶から目が覚めて手放したとしても、指紋が残っておりサムが疑われることにはなったでしょう。
ただ、「サムが濡れ衣を着せられた」というのをわかりやすくするために、あのような演出になったのだと考えられます。

ちなみに、ここもあまり考えてはいけない点ですが、サム取り押さえの現場が生中継されている時点で、すでに警察が事件の全貌を把握しているというのもなかなか無理がありますね。
恋人と友人の浮気によって、友人の両親まで殺害するというのも、さすがにちょっと。

最後の最後のシーンの意味

『ドント・ハングアップ』は、サムに関する報道が流れたあと、ジャスティンなる人物にイジーからフレンド申請が来るというシーンで幕を閉じます。

イジーはコルバインの亡くなった娘であり、サムに対しても同じ申請をしていたことからも、あれはコルバインによるフレンド申請であるはずです。

ジャスティンも、どうやら過激な動画配信者の様子。
つまり、コルバインは他人に迷惑をかける動画配信者への制裁に目覚めてしまったようです。

サムやブレイディといったイタズラモンキー69への制裁は、あくまでも復讐が目的でした。
おそらく、ジャスティンはサムたちとは何も関係はありません。

コロンバインは、サムたちへの復讐を終えただけでは飽き足らず、いわゆる迷惑系YouTuberに制裁を加える殺人鬼(あるいはダークヒーロー?)と化してしまったことを示唆するラストなのでした。

ただ、迷惑系YouTuberの現状を考えれば、コロバインを応援したくなる気持ちも生じてしまいますね。
どこの国でも同じような問題で悩んでいるようです。
サムとコロバインの会話、「傷つける気はなかった」「だが実際には傷ついた」というのは、深く重いものがありました。

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