【映画】ズーム/見えない参加者(ネタバレ感想・考察)

映画『ズーム/見えない参加者』のポスター
(C)Shadowhouse Films and Boo-Urns 2020
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『ズーム/見えない参加者』のシーン
(C)Shadowhouse Films and Boo-Urns 2020

ロックダウン中のイギリスで、Zoomを使った交霊会を行うことにした友人グループ。
のんびりしたオンライン飲みの雰囲気で始まった集まりは、不可解な現象から徐々に恐怖がエスカレートしていった──。

ロックダウンにZoomという、あえて時事ネタを反映させた本作。
何というかまずは、いつの日かこの作品を見返したときに「うわぁ、あったあった。この雰囲気、懐かしい」と笑える日が来るといいですね
あえてこの作品でそのような感覚を覚えるべきかどうかは、議論の余地があるかもしれませんが。

というわけで、何だかネット上での評価はけっこう低めですけれど、個人的には好きで楽しめた作品でした
お金を払って映画館で観たかったかと訊かれると、確かに「はい」と即答はできませんが、でも、終始Zoomの画面だけで進んでいくので、むしろ映画館よりもノートパソコンで観るのが一番適している作品かもしれません
Prime Videoのウォッチパーティ(知人とそれぞれ自宅などでシェアしながら同時鑑賞できる機能)で観るのも、盛り上がりそうです。

「ネタバレあり」と書きましたが、バレて困るようなネタもないほど、ストーリィはほとんど無いに等しい。
「Zoomで交霊会やったら、ふざけて失敗しちゃって大変なことになっちゃった」で、すべてが説明できます。

けれど、演出面はすごく良かった。
斬新さはあまりなく、だいたい音や映像の「びっくり系」頼りではありますが、「POVホラー(に本作が分類されるのかわかりませんが)あるある」をしっかり踏襲しつつ、「Zoomあるある」を最大限盛り込んでいた印象です。
68分というコンパクトさ(実質60分ほど)もあり、ホラーが苦手な人でもさくっと楽しめる、お手軽ホラー作品ではないでしょうか

ロブ・サヴェッジ監督が日本のホラーにも大きく影響を受けたらしいことや、日本でもZoomがWEB会議アプリとして広く浸透していたことなどからも、日本でも受け入れられやすい作品だと言えます。
キャロライン(バーチャル背景)が天井裏を映して、みんなには映像で首吊りの脚が見えていたのに、キャロラインには見えていなかったところなんか、とてもJホラーな雰囲気でした。

ネタ的には、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などのように、「思いつけば自分でも作れてた」系です。
でも、だからこそ、それを最初に作った者勝ちでしょう
ただ、同じようにPC画面上のみで進んでいくホラー作品はすでに他でもあるよう(『アンフレンデッド』『search/サーチ』など)で、それらを観ていなかったのでより楽しめたのはあるかもしれません。

Zoomあるあるとしては、

  • 画面がフリーズする
  • 電波が悪くて切れる
  • バーチャル背景
  • フィルター(あんな仮面みたいなやつ、ありましたっけ)
  • 無料版は40分の時間制限

などが、しっかりと活かされていました。
使ったことがあると、特にわかりやすいと思います。
特に、リアルタイムだと思ったらバーチャル背景の映像で、それを突き破るように何かに襲われたキャロラインの顔がアップで現れてすぐ消えるシーンなどは、好きです。

Zoom(に限りませんが)のフリーズって、ただじっとしてて動いていないだけなのかフリーズしているのか、わかるまでタイムラグがあることが多いですよね。
そういったところの使い方も上手かったように思います。
あとは、全員分の画面が映っている時間も多いので、「次は誰の画面で何が起こるのか」という楽しみも。
徐々に異常現象がエスカレートしていきますが、上述した通り「びっくり系」頼みや見たことのある演出も多いとはいえ、パターンは全部違うので、何とか楽しませようという工夫が強く感じられました

Zoom含めオンラインの集まりは、みんなでわいわい楽しんでいる雰囲気もありますが、ああいった状況に陥ると特に、結局は孤独で、自分でどうにかするしかないというのが強調されますね。
「他の人が同じ場所で一緒にいる」という安心感が常にない、けれど状況を共有しているという曖昧な状態なので、それは新鮮なホラーポイントに感じした。
ヘイリー(主催者)には何かが見えているっぽいのに映像では何も見えないところなんかは、特にその「繋がってるのに繋がってない」ような感覚が活かされていました。

POVホラーの難しいポイントである「極限状態なのにカメラを回し続ける理由」も、Zoomだとすっきり解決です
映すことが、みんなと共有して繋がりを感じられる方法になりますからね。
他の人がみんなログアウトした(させられた)あとは何で?とも思うかもしれませんが、ライト代わりにしていたように見えました。

しかしまぁ、全面的にとにかくセイラン(霊媒師)とジェマ(おふざけ眼鏡)が悪いですよね
そんな愚か者たちのせいなところも、ホラーのド定番を貫いていて好きです。
セイランの「実を言うとズームでは初めてなの」というまさかの始まってからの爆弾発言と、霊とは関係なく不安定だったっぽいネット環境。
結局途中退場してから最後まで出てこず、実は宅配を取りに行った時に殺されていて、最後の最後にパソコンの画面から這い出してきたら完璧だったでしょうか(何が?)。
ジェマに関しては言うまでもありません
ただただ完全に巻き込まれただけのラディーナ(同棲して喧嘩)の彼氏と、テッド(黒一点)の奥さんはかわいそう。
しかもテッド妻は、ちょっと性格が悪かったせいか、けっこう魅せてくれて印象に残る死に方でした。

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考察:見えない参加者たちもZoomをしていた!(ネタバレあり)

映画『ズーム/見えない参加者』のシーン
(C)Shadowhouse Films and Boo-Urns 2020

さて、考察。
そうそう考察ポイントがある作品でもなく、考察というより仮説かもしれませんが、

「霊たちもZoomに参加していたのではないか?」

というどうでもいい仮説を、真面目に検証します。
心理学的な視点もへったくれもありません。

さて、本作において、何が起こったのか。
そこは辛うじてセイランが退場前にぎりぎり役目を果たして説明してくれましたが、いたってシンプル、「霊には敬意を払わないといけないのに、ジェマがふざけたので、悪霊が来ちゃったかもね」とのことでした。

ここで問題となるのは、果たして霊は1人だったのか?複数だったのか?ということです。
カウントの仕方がわかりませんが、とりあえず「人」を単位にしておきましょう。

交霊会の趣旨と雰囲気からすると、何人も呼び出す予定ではなかったはずです。
つまり、誰かの関係のある死者が1人ご招待されるプランであったはず
そう考えると、間違って招いてしまった悪霊も、1人と考えるのが自然です。

しかし、そうなると、ヘイリーとジェマは家が近かったようですが、みんな違う場所から参加していたのに、次々と異常現象が生じて襲われることの説明がつきづらくなります

もちろん、霊のことです。
科学的な枠組みで考えても意味がなく、びゅんびゅん好きなところに一瞬で移動できる可能性もあるでしょう。

けれど、様々なバリエーションに富んだ襲われ方からは、登場人物たちはそれぞれ異なる霊に襲われたのではないかと考えます
ものすごくサービス精神旺盛な1人の霊の仕業という可能性を否定はできませんが、アクロバティックにテッド妻に首を吊らせた霊と、超力技でパソコン画面にがんがんキャロラインの顔を打ちつけた霊と、椅子を動かしたりポルターガイストで驚かすのが大好きないたずらっ子のヘイリーの部屋の霊がすべて同一であるとは、少々考えにくいです。

というわけで、ここでは「霊は複数来ちゃった」という説を推します。

そうなると次の問題は、「なぜ順番に襲われたのか」という点です。
霊が1人であれば、移動は一瞬でできたとしても、同時に複数の箇所で異常現象を起こし、人を襲うのは難しい気がします(超主観)。
しかし、複数がそれぞれの場所にいたのであれば、全員で一気に襲いかかり、Zoomの40分制限ぎりぎりになることなく終えることができたはずです。

なぜ、あえて順番に襲いかかったのか。
どうやって、かぶることなく順番に襲いかかることができたのか。

順番に襲いかかるには、霊同士がコミュニケーションを取る必要が生じます。
テレパシーでしょうか。
それも否定はできませんが、ここで推すのは、そう、「霊たちもZoomを通して会話していた」です。

見えないし聞こえないけれど、彼らもZoomを通してコミュニケーションを取っていた
彼らも彼らできっと、昔馴染みの悪霊たちで、久々に集まれたことを楽しんでいたのでしょう。
「次お前行けよ!」「えー!あんな殺し方したあとじゃハードル高いって〜」「お前パワーあんだろ、ガンガンいっちまえよ!」みたいな感じで、わいわい楽しんでいたに違いありません。

つまり、霊たちもZoomに参加していたということ。

本作のタイトルを思い出してください。
『ズーム/見えない参加者』です

さらに正確に言えば、「ズーム/人間には姿も見えないし声も聞こえない参加者」です。
そういった深い意味が、このタイトルには含まれているのです

以上、完璧な仮説の検証でした。

ちなみに、原題は『Host』らしいですね。

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