
作品の概要と感想(ネタバレあり)

炎上系配信者として人気を集めていたショーンだが、過激すぎる企画が原因でアカウントを停止され、スポンサーやファンから見放されてしまう。
配信者としてすべてを失ったショーンは名誉挽回をかけた企画として、ある廃墟でのライブ配信を決行する。
深い森のなかにたたずむその廃墟は、かつて何人もの住人を死に追いやったといわれる、いわくつきの館だった。
ライブ配信を盛り上げるために館内を荒らしてまわり、視聴者のコメントにあおられて挑発的な行動を繰り返すショーンは、やがて触れてはならない何かを呼び覚ましてしまう──。
2024年製作、アメリカの作品。
原題も『Deadstream』。
安定して楽しめるPOVホラー。
気軽に楽しめるPOVホラー。
その中でも評価が高めでずっと観たかった1作でしたが、ようやく鑑賞。
いやぁ、もう。
こんなのずるいよ。
ここまでコメディで楽しい作品だとは、ちょっと予想外でしたね。
『YUMMY/ヤミー』とかに近い感じ。
『デッドストリーム』は事前に他の方の感想とかも全然見ていなかったので、すっかり迷惑系配信者による正統派POVホラーかと思っていました。
最初からショーンの言動は笑えますが、POVホラーとしてのクオリティも高く、「個人版『コンジアム』」とすら言えそうな雰囲気がひしひしと漂っていました。
それがクリッシーが嚙みついてきたあたりから一転、「ホラー>コメディ」だったのがすっかり「ホラー<コメディ」に。
「クリッシー怪しすぎない?」「これもしかして、視聴者がグルでショーンを更生させようとしているのでは?」などと色々と深読みしていた可愛い自分を返してほしい。
そんなこんなで思っていたのとはちょっと違いましたが、かなり好きです、これ。
まずは、自然な導入の素晴らしさ。
迷惑系配信者のPOVホラーは多数ありますが、ただ視聴者数を増やすためというシンプルな理由(それで十分なのですが)に対して、ショーンには名誉挽回というさらに必死になる理由がありました。
それによって、「怖いもの知らず」ではなく「怖がり」な配信者という新鮮な主人公が爆誕。
怖がりなのに自ら帰り道を断つところも、崖っぷちの必死さゆえで自然さがありました。
そして、改めて言いますがPOVホラーとしてクオリティが高いのがとにかく素晴らしい。
後半のコメディが輝いていたのは、ホラー要素のクオリティがしっかりと高かったからでしょう。
前半も笑える要素は多かったですし、緩急が終始見事でした。
上述したように、現代的なアイテムを駆使していた『コンジアム』の進化系とでも言えそうなガジェット群がとても好き。
腕につけて振ると自撮りカメラに切り替わるようなアイテムとか、初めて知りました。
それらを駆使することによって、『コンジアム』より人数は少なくなりながらも飽きない演出が見事でした。
家の規模も小さめでしたが、それぞれの部屋にいわくや役割があり、使い分けが上手。
コメディに入ってからは俄然笑いのアクセルが強まるので、純粋にホラーを求めて観た人には評価が分かれるかもしれませんが、個人的には好き。
笑ったシーンを挙げるとキリがありませんが、あえて一番を挙げるとしたら、即席の槍の先にニンニクを塗り塗りするところが狂おしいほどに好きでした。
ニンニクって、ドラキュラ以外にも効くのでしょうか。
基本的にショーンは真剣にやっているところがまた笑いを誘います。
作中ではあくまでもホラーなんですよね。
笑いを全面に押し付けてくる感じではないところが、好きなのかな。
霊?悪魔?のメイクや造形はかなり雑というか、いかにも過ぎというか、作り物感強めでした。
その点や、本人たちは真面目なのにやり過ぎちゃっててコメディにしかなっていないところが、他の方の感想で散見されましたが確かに『死霊のはらわた』みがありました。
当たり前のように物理でのバトルになっていたところも好き。
ショーンは、こういった迷惑系配信者の中ではずば抜けた好感度で、常に憎めなかったところが新鮮な主人公像だったと言えるでしょう。
たとえば『DASHCAM ダッシュカム』の主人公である迷惑系配信者のアニーには、それはもうイライラさせられたものでした。
もともと性格がよろしくないので迷惑系になるというのはあるでしょうが、とにかく「怖くなんかないぜ」的な愚かなスタンスがストレス要因となってしまうこともしばしば。
その点、ショーンはしっかり怖がりだったので、その点も設定が活きていました。
ショーンに関しては、言動も、高い叫び声も、咄嗟の言葉のチョイスも、どれも好き。
何だかんだ臨機応変さもかなりのものでした。
ショーンの言葉通り、補修テープが超万能アイテムに見えてきます。
生配信の使い方も上手く、困ったらすぐ視聴者に助けを求めたり調べてもらうところなんて、まさに現代的配信者。
87分という程よいコンパクトさに加え、必要な情報がテンポ良く入ってくる環境作りも、飽きない作りに繋がっていた気がします。
迷惑系なのは良くなかったですが、根は真面目そうで憎めないショーンだったので、自業自得なバッドエンドは残念無念でしたが、まぁこういった作品なので仕方ありません。
とはいえ、お祭り騒ぎみたいなラストだったので、悲壮感はほぼなし。
冒頭のTシャツの文言を回収したところは、配信者として芸術点高めでした。
いつの間にか視聴者数や著作権侵害を巡るバトルになっていたところも、訳がわからなさすぎて最高です。
少し俯瞰して見ると、最近のこういった作品にしては、作中で常に視聴者のコメントが流れていたわけではない点が新鮮でした。
あれはあれで本当に配信を見ているような臨場感に繋がりますが、コメントも気になって映像に集中しきれなくなるという難点もあります。
本作ではコメントを要所要所で用いることで、視聴者目線というよりもショーン目線での没入度が高くなっていました。
そんなショーンを見事に演じていたジョゼフ・ウィンターは、何と妻のバネッサ・ウィンターと一緒に、監督・製作・脚本・編集まで手がけたようです。
夫婦で初の長編作品とのことでしたが、それがこんなに高いクオリティとなると、今後も期待せずにいられません。
また、ジョゼフは音楽も担当していた(多才すぎる)とのことですが、『ハロウィン』の曲を流したりするような、作中での音楽の使い方も見逃せません。
ファウンド・フッテージを謡う映像にBGMや効果音が入っているとリアルさが大きく損なわれてしまいますが、そこも配信という設定を利用し、配信者自らが不穏な音楽を流すというのは素晴らしい発想でした。
最初はあれこれ予想したり考えてしまっていましたが、中盤から方向性がわかってからは、ひたすら頭空っぽにして観られる好きな作品でした。
やっぱりコンパクトなPOVホラーは良いですね。

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