【映画】YUMMY/ヤミー(ネタバレ感想)

映画『YUMMY/ヤミー』
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『YUMMY/ヤミー』

恋人アリソンのために東ヨーロッパへ車を走らせるミカエル。
彼女には、子どもの頃から大きすぎる胸へのコンプレックスがあり、今回は“乳房縮小手術”を受けるために、彼女の母親も同行して東洋で評判の高い美容整形病院へ向かっていた。
「Bカップにしてもいいよね?」と告げる彼女に「キミが何カップだろうと構わない」と想いを伝えるマイケル。
彼は手術後に彼女へプロポーズする予定だった。
いよいよ手術開始。
しかし、この病院で若返り治療の実験に失敗してゾンビになった女性が拘束具を外して大暴れ。
逃走中に離れ離れになったミカエルとアリソンは果たしてこの地獄を生き抜くことができるのか!?

2019年製作、ベルギーの作品。
原題も『Yummy』。
「yummy」は「美味しい」といった意味なので、ゾンビ目線でのタイトルですかね。

ベルギー産のゾンビ映画だった『YUMMY/ヤミー』。
軽く調べた限りですが、どうやらベルギー産のゾンビ映画というのは本作が初のようでした。

そもそもベルギーの映画自体、おそらく『変態村』(厳密にはフランス・ルクセンブルクとの合作)ぐらいしか観たことがありません。
『変態村』はいかんせん個性が強すぎたのですが、それが『変態村』という作品独自のものなのか、ベルギーの映画自体に文化的な感覚の差があるのかは不明でした。

しかし、本作を観た上での、2本だけというサンプル数が少なすぎる状態での判断としては、

ベルギー映画、癖強いのかも

総合的に見ると、展開は王道で、オーソドックスなゾンビ映画としてなかなか楽しめました。
ですが、細部を見ると、癖と個性が強すぎ
もちろん、悪い意味ではありません。


ホラーというよりはホラーコメディですが、コメディ部分もまたシュールというかシニカルというか、しかしブラックジョークという表現もやや違和感があり、何とも言葉で表現し難い独特の感性が溢れていました
コメディ要素は多すぎるわけでもなく、真面目なゾンビ映画としても成立しており、絶妙なバランス。

美しくなるための美容整形の病院に来て、美とは対極的なゾンビ化してしまうというのは、なかなかに皮肉。
過剰なルッキズムや美容整形への風刺的なものも感じました。

ゾンビ映画というと、ジョージ・A・ロメロあたりから爆発し、すでにそれこそゾンビ並みに増殖して溢れ返っている現状で、最近は『ゾンビ津波』など、サメ映画と並んでもはや「シチュエーション勝負」になりつつある印象。
しかし、本作は、美容整形の病院という舞台自体は珍しいですが、ゾンビ映画としては比較的スタンダードな展開でした。
そのような中で、細部の演出で強烈な個性を打ち出してくる才能は、只者ではありません。

脚本も担当して、周囲に反対されながらも本作を作ったラース・ダモワゾー監督は「真のゾンビ映画は社会を反映する鏡でなくてはならない。でも何よりもまず、自分たちが楽しくて少しクレイジーなスプラッタ映画を作りたかったんだ」「サム・ライミの『死霊のはらわた』や、ピーター・ジャクソン監督の『ブレインデッド』などノンストップで展開される楽しいジェットコースタームービーを目指したんだ」と述べているようです。

本作からはまさにそのような精神が感じられ、ゾンビ映画はそれほど多く観ているわけではありませんが、オリジナリティ溢れる演出からは、楽しんで作っているというのがひしひしと伝わってきました
たまに挟まれる防犯カメラ映像の使用も効果的。
下半身を失い、はみ出した自分の内臓を食べているゾンビなんか、最高ですね。
この記事の冒頭にも載せていますが、海外版のポスターではこのゾンビが使用されているようなので、監督自身お気に入りなのかも。
自給自足。

そのゾンビ含め、スプラッタシーンも誤魔化すことなくしっかり映していたところも評価高めです。
チープさは少なめで、パターンは多様でした。
脂肪吸引が逆流して爆発するところなんか、「そうはならんやろ!」の極みですが、しっかりと「うわぁ……」と思わされてしまい、好き。
お色気や下ネタ頼みでないところも好感。

キャラクタもみんな個性的で、どれが誰だかわからなくなることもほとんどありませんでした。
やっぱりミカエルが良い味出してた。

あとは、個人的には音楽も好きでした
オープニングは、映像も音楽もかなり好き。
そしてエンディングの音楽は最高で、曲の中にクローチェク医師のセリフを織り交ぜるという斬新さ。
エンドロールを飛ばしてしまった方は、ぜひ聴いてほしいです。

作中の音楽も良かったのですが、何だかシーン合っていないように感じたところも多々。
これは文化差なのかもしれません(自分の感性がおかしいだけの可能性もありますが)。
特に、何度か使用されていた、ゾンビに追いかけられて逃げるシーンでのベースが効いた曲。
曲自体はレトロ感あって良いのに、何かだいぶシーンとミスマッチしているような違和感を抱きました。


とまぁここまで色々と褒めてきた割に、全体的に見て面白かったかと問われると正直微妙ではあるのですが、「楽しいゾンビ映画を作るんだ!」という気概を感じた作品でした。

しかし、とにかくツッコミどころが多かった本作
10分に1回はツッコミポイントがあった気がします。
それも、狙っているのか狙っていないのか、文化差によるものなのか、などがわからない点も多数。

考察するような作品ではないので、後半はそのあたり、怒涛のツッコミポイントを取り上げていきたいと思います。
念のために毎回言いますが、文句や批判ではなく、突っ込むのが野暮であるとわかっていながら楽しんでいるが故のツッコミです。

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もやもやを吹き飛ばせ!(ネタバレあり)

まずは冒頭、薄暗い病院内で火葬された死体が蘇るシーンで、掴みはばっちり!
なのですが、病院内に火葬する設備なんてあります?
ただ、院長のクローチェク医師と黒幕の女性は、人体実験と呼んで差し支えないであろう施術を行っていたマッドサイエンティストだったので、そのために設置していたのかもしれません。

焦っていたとはいえ、火を消さずに火葬炉の蓋を開けたおじちゃん、愚か
ゾンビに襲われてなくても、きっと大火傷してた。

胸の大きな女性は悩みも多いと聞きますが、あんなあからさまに煽ってくるバスの男性陣、愚か
そりゃあんなのが日常であれば、小さくしたくなりますね。

そもそも冒頭の車の3人、関係性を理解するのに時間がかかりました。
パパとママと娘かと思った。
ミカエル、ごめん

しかし何と、アリソン役のマイケ・ネーヴェレは1983年生まれ、ミカエル役のバート・ホランダースは1984年生まれで、しっかりとほぼ同い年!
バート・ホランダース、ごめん
というより、マイケ・ネーヴェレが若く見えますね。

冷静に考えて、娘と母親が一緒に美容整形に行き、それに娘の彼氏が同行するって、すごい状況
しかも、予約していたっぽいのに、どんな施術がしたいかは当日に伝えて当日即手術って、すごいシステム

ママのシルビア、美にはこだわっているのにトイレの場所にはこだわらない。
「肛門周りの美白」というパワーワードも堂々と口にする。
でも、メイクしないと人前には出たくない。
ワイルドで乙女

ミカエル、どれだけ糖分が足りていなかったのかわかりませんが、運転しながらワッフル食べようとするのがそもそもどうなのか。
それで事故って一つの命(謎の小動物)が犠牲に……。
明らかに道路のど真ん中でわちゃわちゃしてるのに、猛スピードで通り過ぎていった車、容赦ない

診察と称したセクハラならぬ強制わいせつしまくりのクローチェク医師、もう顔からして悪人ヅラなの、抜群の配役
若干、少しだけ、『SAW』のジグソウみがありました。
ちなみにダニエルは、若干、少しだけ、ブラピみがありました。

ゾンビ化した被験者番号ゼロの女性、あんな場所で雑に隔離して拘束されていた理由は謎。
しかしあの女性、最初に火葬されていた女性ですよね?
お肌つるっつるでしたけど。
それともあれは別人なのかな。
そこは別としても、本作に登場するのはみんな腐敗はしない系ゾンビでした。

ミカエルが鉄の棒振り上げて感電するシーン、完全にコントすぎて面白い。
「彼氏が速攻退場とは思い切った意外な展開だな」と思いましたが、予想以上にタフでした
頭からあの出血量は相当やばそうなのに。
しかも目を覚まして起き上がった際には、怪我しているであろう部位を垂れ下がった電気にぶつけているのに、それほど痛くなさそうでした。

その後さらにゾンビと間違えられて思い切り殴られたのに、今度は速攻復活。
もはや彼がゾンビ

脂肪吸引の逆流、そうはならんやろ(2回目)

ゾンビが溢れているのにベッドごとママを運ぶ判断力と勇気、すごい。

歌手?らしき有名人の男性が性器を失う流れは、完全なるお下品なコント。
モザイクがめちゃくちゃ雑でした。

マッドサイエンティスト丸出しな培養液だらけの部屋は好きでした。
トカゲカエルみたいな可愛いクリーチャー、もっと活躍するかと思ったのに、あっさり踏まれちゃった

腕をシュレッダーにかけるのは痛たたたたた
あの状況で「この手があった!」とドヤ顔できる根性、アドレナリン溢れまくり。
「この手があった」と言いながら腕をシュレッダーしているというのは相当にブラックですが、「この手があった」は字幕の表現なので、もともとのセリフがそのような表現だったのかは不明。

痛たたたたたで言えば、やはりアリソンの指がマンホールに挟まれてからの切断も。
メガネのレンズで骨まで切れるかな。
そもそもマンホールに挟まれた時点で千切れそう。

医師の腕もアリソンの指も、とりあえず布巻いておけばそれほど問題なし!

ゾンビ化したシルビアママは、『死霊のはらわた』感強め。
頭をかち割ったアリソンも血液浴びまくってましたけど、クローチェク医師も口封じで殺されたので感染していたかはわからず、結局、血液感染はなかったのですかね。

無駄すぎる引き戸のくだりは、絶対にあの爆弾がのちのち活躍する伏線でしたが、想像を上回る大惨事への伏線でした。

屋上を渡る橋、あれもともと設置されていたっぽいですが、何なん?
落下した医師が、咄嗟に失った腕を伸ばそうとしたシーンは最高にブラックでした。
高いヒールを脱がずにあの橋を渡る黒幕女性は、プライドの高さが溢れまくってて最高にパンク。

警察、病院から出てきた人を容赦なく撃つのであれば、もう病院ごと燃やしちゃった方が良かったのでは。
証拠は調べたかったんですかね。
誰も背後には注意を向けていないガバガバ包囲。

下水道プロポーズで散るミカエル。
アリソンに振り回されまくりでかわいそう。

あの下からは1人では登れないハシゴ、どういう設計?

ゾンビ化したダニエルを車で押し潰して、そのまま走り去っても良いのに、一旦離れてからがっつりトドメまで刺して「よし」と呟くアリソン、強くなりました。

あの爆発で身体を損傷していないゾンビとミカエルの謎。

誰がどう見てもゾンビにしか見えない登場の仕方で、最後の最後まで抜けたところを披露してくれたミカエル。
病院の外にゾンビが放たれる絶望パンデミックラストは定番ですが、続編の余地を残して曖昧に終わらせるのではなく、アリソンも含めて全滅バッドエンドは潔くて素晴らしかったです

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