
作品の概要と感想(ネタバレあり)
“悪魔の口”と呼ばれるタイの水中洞窟。
5人の仲間たちは、社会へ踏み出す前の最後の冒険として、その奥深くへと挑む。
だが彼らはすぐ気づく。
水の底に、自分たちを獲物として狙う”何か”がいることを。
それは素早く、音も立てず、死をもたらす。
息苦しい闇の中で、仲間への信頼は崩れ去り、パニックが広がっていく。
ひとつでも道を誤れば死闘が待ち受けるのだ──。
2026年製作、アメリカの作品。
原題は『The Devil’s Mouth』。
Netflixの『セーヌ川の水面の下に』『猛襲』あたりのヒットを受けて、かどうかはわかりませんが、こちらはAmazon Prime Videoのオリジナルサメ作品。
監督は『イマジナリー』などを手掛けたジェフ・ワドロウ。
まさかの『トゥルース・オア・デア 殺人ゲーム』というややマニアックながらけっこう好きな作品を手掛けた監督でもありました。
夏と言えばホラーですが、サメ映画もぴったりですね。
王道路線のサメサメパニックで、しっかりと楽しめました。
なのでそれほど語ることもないのですが、だらだらと語りましょう。
お馬鹿な若者たちが襲われるというザ・テンプレ展開。
王道な分、やや地味さは否めず、時間が経ってもどれだけ覚えていそうかは微妙なところ。
その割に106分というのは、けっこう長かったように感じてしまいます。
洞窟に入るまでの序盤は、2倍速で流しても問題なさそう。
本作オリジナルの特色としては、
・タイの洞窟というシチュエーション
・ウシザメというサメ映画としてはやや珍しいサメの起用
・マックスという特急呪物の存在
あたりでしょうか。
せっかくなので一つずつ見ていきましょう。
まず、タイの洞窟というシチュエーション。
『女神の継承』を筆頭にタイのホラーが大好きなのですが、本作はそれほどタイの文化が感じられたわけではありません。
それでも、洞窟内の青い光のところとか、CG感もありましたが綺麗でした。
あと、洞窟に入る前夜の海岸での火の演舞とかも何気に。
ただ、狭い洞窟内というシチュエーションでは『海底47m 古代マヤの死の迷宮』という先行作品があるため、あまり本作ならではというポイントが感じられなかったのが残念。
演出面も『海底47m 古代マヤの死の迷宮』の方が多様だったような。
次に、ウシザメの起用。
Wikiレベルで調べてみたところ、淡水でも棲息できる狂暴なサメとして、これ以上の適任はなかったのではないかと思うほどでした。
オオメジロザメとも呼ぶようですが、気性が荒く、海外では人を襲った記録も極めて多いとのこと。
日本でも、1996年に沖縄で死亡事故が発生したようです。
そんなウシザメですが、それにしてもまぁとにかく狂暴すぎやしませんでしたかね。
もはや捕食のためではなく、殺戮のための殺戮。
完全に『ディープ・ブルー』レベルのキルマシンと化していました。
あそこまで突き抜けていたのは、もはや清々しい。
サメはバックできないというのは作中でも言及されていましたが、途中で横道から顔を突っ込んでは引き抜くのを繰り返したシーンは、ちょっと、いやだいぶグレーだったのではないでしょうか。
いつあの洞窟に迷い込んだのかはわかりませんが、餌とかどうしてたんだろう?といったあたりも、細かく追及してはいけません。
そしてそして。
本作を最も特徴づけているのは、マックスの存在と言えるでしょう。
何ならサメより印象に残ります。
我を通し、皆を振り回し、ほぼ全滅させた戦犯。
とまで言うのはかわいそうかもしれませんが、「お馬鹿な若者たち」というよりも「マックスのせい」としてヘイトを一身に背負った上での最期は、爪痕を残してくれました。
序盤から他責はすごいわわがままだわで、観客のストレスも定期的に溜めていく。
そして、もしやマックスも助かるのか?と思わせてからのダイナミックパックンは、ある種の爽快感が伴います。
誰もがどこかで一度は思ったことでしょう。
マックス、はよ食べられないかな、と。
それは残酷でしょうか?
いえ、これはフィクションです。
みんなそれをわかって楽しんでいるのです。
少しだけマックスをフォローすれば、きっと彼女なりの苦悩もあったのでしょう。
サラは確かに、あまり自分というものがなさそうで、引っ張ってあげないといけない、と周りに思わせるタイプ。
さらには、時期の詳細は不明ですがサラは最近父親を亡くしたようなので、なおさら同じく親を亡くしている自分がリードしてあげないと、と思ったのでしょう。
ただ、マックスの引っ張り方は相手を思い遣ったものではなく、あくまで自分の思いを押しつけ貫き通すだけのものでした。
NYに一緒に住むと約束していたのにあっさりLAに変更し、内定が決まっているサラもお構いなしにLAに変更させようとするなど、むしろ相手のことなんてほとんと考えていないのでは、と感じる場面の方がたくさんありました。
そんなこんなで赤のコースに行って悲惨な目に遭ったのも彼女の先導ですし、最後までサラを信じず、言うことを聞かず、自滅と言って良いような最期を遂げました。
あそこで1人待つというのもしんどいのはわかりますが。
ちなみに、亡くなったサラの父親が、かつて悪魔の口のあるあの洞窟を訪れたことがあり、好きだったというエピソード。
脱出の鍵を握るのかと思いましたが、まさかの何の関わりもなし。
サラが急成長を遂げた深層心理も少々謎ですし、登場人物の掘り下げはけっこう浅かったように感じてしまいました。
マックスのわがままを助長させたのは、恋人のジェームズにも責任がありそうでした。
まぁああいうタイプは助言や指摘をしても聞く耳を持たず、合わせてあげないと切られるのでしょうが、ひたすらご機嫌窺いなジェームズは情けなくもありました。
マックスにすべてもっていかれましたが、ママに毎日電話しているグレッグもだいぶやばそうなキャラでした。
男性キャラが総じて頼りにならず、一番まともだったのはグレッグの恋人・エイドリアンだったでしょう。
ガイドのワットもなかなかにやばかったですね。
あそこで見限りたくなる気持ちもわかりますが、本当にあっさりと置いていくのはだいぶすごい判断。
イケメンダイバーは結局見せ場なく終わりましたが、最初の犠牲者となったのでそれが見せ場と言えるでしょうか。
最後にはサラだけ脱出できて雄叫びをあげていましたが、あれ、あのあと助かるのか心配です。
下は岩場でかなりの高さがあったので、飛び降りるのは無理なはず。
まぁ、あれだけ見えていればいつか誰かが気づいてくれるかな。
というわけで、多々ツッコミどころはある一方で物足りなさも否めませんが、ひたすら殺戮のためだけに襲い掛かってくるサメの怖さと面白さを十分感じられた1作でした。

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