【映画】おさるのベン(ネタバレ感想)

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映画『おさるのベン』のポスター
(C)Paramount Pictures.
目次

作品の概要と感想(ネタバレあり)

ハワイの森に佇む高級別荘地の実家に、友人と帰省した大学生ルーシー。
家族と、幼い頃から暮らしてきたチンパンジーの“ベン”との再会に心躍らせる。
プールにパーティ、楽しい休暇。
しかし、いつもは賢くてかわいいベンの様子の何かがおかしい──。

2026年製作、アメリカの作品。
原題は『Primate』で「霊長類」の意。
『おさるのベン』という何とも言えない邦題は、まさか『おさるのジョージ』から取ったのでしょうか。

監督は『海底47m』などを手掛けたヨハネス・ロバーツ。
脚本のアーネスト・リエラとコンビというのも、『海底47m』と同じです。
ヨハネス・ロバーツ監督は、悪名高き『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』も監督・脚本を務めていますが、こちらは(違う意味で)怖すぎて未鑑賞。

今回はサメではなくチンパンジーが大暴れ!
それがすべてな、公式いわく「究極の密室パニックシチュエーションスリラー」。
頭空っぽにして観られるチンパンジーの大殺戮を期待していましたが、期待を裏切らない暴れっぷりを見せてくれました。
映像のクオリティも高く、大満足。

ヨハネス・ロバーツ監督いわく、自身のホラー映画の原体験である『クジョー』という作品(狂犬病にかかった犬が人々を襲う、スティーヴン・キング原作によるルイス・ティーグ監督作)に影響を受けている作品とのこと。
『クジョー』も観られていないのですが、本作はストーリー性は最低限で、チンパンジーの恐怖に特化した王道モンスターパニックでした。

いやぁ、とにかくチンパンジーのベンくんが恐ろしかったですね。
そこまでするかという多様な殺し方で、ファンサも抜群。
一番インパクトがあって好きなのは顎を外したシーンで、「いやそうはならんやろ」と思いましたが、実際にチンパンジーの握力は250~300kg(成人男性平均が50kg)ほどあるとのことで、もしかしたら現実に可能なのかもしれません。

本作のチンパンジーは本物でもCGでもなく、俳優がチンパンジーのスーツを着用して演じていたようです。
すごい。

あまりあらすじも読んでいなかったので、まさかペットのチンパンジーが自宅で大暴れするとは思っていませんでした。
冒頭にちょっとだけ、賢く可愛いベンとの交流が描かれていたので胸が痛みもしましたが、主人公のルーシーが「あれはもうベンじゃない」とあっさり気持ちを切り替えてくれていたので、こちらとしても気が楽でした。

プールを中心に家の中だけのワンシチュエーションでしたが、とにかく家が豪華すぎて色々なシチュエーションが演出できたので、86分という程よい長さなのもあって飽きませんでした。
しかし、森の奥でプール裏がすぐ崖の立地、地震とかあったらすぐに崩れそうで怖かったです。
ハワイもけっこう大きな地震が起こるイメージがありますが、あの辺はそうでもないのかな。
プールに入っているときにめちゃくちゃ揺れたら、プールが波打ってそのまま放り出されそう(余計な心配)。

閉じ込められたのが5人だったのでそこそこ少ないなと思いましたが、途中でお馬鹿男子2人が登場したのは「ちょうどいい餌が来た!」と激熱でした。
ルーシーと妹エリンは生き残るだろうなと思っていましたし、親友ケイトも襲われるのはちょっとかわいそうだったので、ちょうどいい餌がヘレナとニックぐらいしかいない中、絶妙なタイミングで補充してくれたのはさすが理解っていらっしゃいました。

お父さんが聴覚障害であることに何か理由があるのか、終盤に手話で意思疎通を図りながら危機を乗り切るのではないか、など想像していましたが、全然そんなことありませんでした。
もちろん、理由がなければいけないわけでもありません。
音が聴こえないお父さん視点の演出によって、また違う恐怖の描き方がなされていたのがとても巧かったです。

ちなみに、父親のアダムを演じたトロイ・コッツァーは、『Coda コーダ あいのうた』という映画で聴覚障害を持つ父親役を演じたようでした。
ヨハネス・ロバーツ監督によれば、アダム役にトロイ・コッツァーの配役が決まってから、アダムは聴覚障がいを持つ役柄に設定変更されたそうです。

色々な演出で思う存分ベン君が暴れてくれるのをシンプルに楽しめた一方、ツッコミどころはやや多めでした。
こういった作品はツッコミどころが溢れているのが必然で、いちいち突っ込むものではありませんが、それにしても雑なところが雑すぎてやや引っかかってしまったところが多かったのも事実。
せっかくなので、いくつかだけピックアップ。

まず、もうちょいどうにかできた気がします。
ルーシーたちがスマホを取りに行っているときに、プール組は音を立てたりしてベンをおびき寄せた方が良かったような。
あと、ベンがいないときにはプールサイドには上がっておいた方が良かったように思います(冷えるので)。
とはいえ、みんなパニックで恐怖に襲われていたので、合理的な判断ができないのは仕方ありません。

一番気になってしまったのは、終盤、ベンがルーシーの指を折ったあと、何事もなかったように回復していたところ。
ベンが正気に戻ったのか……?家族の絆が描かれるのか……?
「そういうのはいらないな」と思った瞬間に指を折ってくれたベンくんの姿を見て、この作品の信頼度がぐんと上がりました。

それはさておき、あのシーン、指折られてましたよね?
なのにその後平然と立ち回っていたのはさておいても、がっつりシャベルを掴んで振り回したり、ベランダから落ちかけたあとにアダムの腕を握ったりと、なかったことのようになっていたような。
別に良いと言えば良いのですが、上述したシーンで信頼度が上がり印象に残っていただけに気になってしまいました。

一方で、狂犬病の潜伏期間は1ヶ月以上あるらしいとか、結局狂犬病はどこから来たのかとか、そのあたりの雑さは気になりませんでした。
どこから来たのかなんて、結局一切触れないまま終わりましたからね。
「そういうもの」として受け流すのがマナーです(ツッコミどころ全般そうですが)。
ルーシーとケイトの親友の証らしいネックレスも伏線かと思いきや完全スルーでしたし、母親の死も最低限しか描かれなかったので、あくまでもチンパンジーパニックに特化しているのは明白でした。

チンパンジーの知能がもっと活かされるのかと思いきやそこまでではなかったところは、少し残念ポイント。
確かに賢くはありましたが、もっと裏をかき合うような頭脳戦が繰り広げられるのかと思いきや、そこまでではなく。
狂犬病になっていたのでしょうがないですが、「賢すぎて怖い」という点においては、個人的には『ジュラシック・パーク』シリーズのヴェロキラプトルの方が上回っていました。

ただ、車のカギを何度も開錠したり、外した顎を自分の顎に当てたりと、煽り性能が抜群だったところは好き。
タブレットの使い方も巧みで、「死んだ」の使い方も煽り性能高すぎでしたが、そもそも「死んだ」の項目があるのもいかがなものかと。

ベンくんの死は確定だったので不穏エンドは難しいか?
あるいは何か他の動物に感染している可能性が示唆されるか?
など想像していましたが最後も警官がタブレットで脅かしてきて終わり、最後まで世界観を深掘りしない姿勢を徹底して貫き、綺麗にまとまっていたと思います。

人間が狂犬病を発症すると致死率はほぼ100%のようなので噛まれたエリンも心配ですが、発症前に連続してワクチンを打てば発症を防げるそうなので、まだ可能性はありそう。
でもまだ予断は許しませんし、明らかに脳震盪を起こしていそうな勢いで頭を地面に打ちつけられていたアダムも下手に起こさずに担架で運んだ方が良かったと思いますし、「助かったね、良かった良かった」と多くの犠牲もものともせず笑顔でハッピーエンドモードに入っていたルーシー一家の今後、ちょっぴり心配です。

プールのある大豪邸だからこそ助かりもしましたが、さすがにもうあの家には住めないでしょうか。
アダムはお金持ちっぽいので引っ越しも何とでもなりそうですが、放り出してきた映画化の件が無事かどうかも心配です。

映画『おさるのベン』のポスター

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