作品の概要と感想(ネタバレあり)
橋の崩落事故を予見したサムは危険を知らせ、間一髪で8人が事故から生き残った。
しかし事故犠牲者の葬儀に現れた謎の男から「死は決してだまされない」と告げられ、8人は次々と予測不能なトラップに襲われる。
死の恐怖に怯えるサムらの前に再び現れた男は、「他人に死を贈る」ことで死の運命から逃れられると言うが──。
2011年製作、アメリカの作品。
原題は『Final Destination 5』。
大好きな『ファイナル・デスティネーション』シリーズ5作目。
この記事を見に来られているような方はほぼシリーズファンかと思いますが、念のため、シリーズは以下の通り。
原題 | 邦題 | 製作年 |
---|---|---|
Final Destination | ファイナル・デスティネーション | 2000年 |
Final Destination 2 | デッドコースター | 2003年 |
Final Destination 3 | ファイナル・デッドコースター | 2006年 |
The Final Destination | ファイナル・デッドサーキット 3D | 2009年 |
Final Destination 5 | ファイナルデッドブリッジ | 2011年 |
英語も綺麗にナンバリングになっているわけではないのが微妙ですが、それ以上に何とも邦題がややこしいですね。
2作目は『デッドコースター』ですが、ジェットコースターは出てきません。
2の邦題をつけた人は、3作目でジェットコースターが用いられたのを見て「やっちまった!」と思ったことでしょう。
さて、安定安心の『ファイナル・デスティネーション』シリーズ。
死の運命に翻弄されるプロットは初代ですでに完成していたため、その後のシリーズはほとんど死ぬパターンを変えただけの焼き直しと言っても過言ではありません。
それでも楽しいのは、やはり冒頭の壮大な事故と、その後の死のピタゴラスイッチによるトンデモ人体破壊を楽しむ映画だからでしょう。
シリーズファンは、何とも悪趣味です。
1〜4作目はそれぞれ複数回観ていたのですが、『ファイナル・デッドブリッジ』だけ観られておらず、今回ようやく初鑑賞。
1に続くというまさかの展開を全然知らなかったので、とても胸熱でした。
ラストの飛行機内における1のキャラクターたちのシーンは合成で、実際に再度キャストが集まって撮影されたわけではないそうです。
『ファイナル・デッドブリッジ』のオープニングは、まさか4分もあるとは思いませんでしたが、過去作の凶器や死に様が映されるオープニングとエンドロールも熱かったです。
が、同じようなことを先にやっていた『ファイナル・デッドサーキット 3D』のオープニングが一番スタイリッシュで好き。
もはや条件づけされているので、冒頭でバスが橋に近づいていくだけで、ジェットコースターの頂上へ向かってのぼているときのような高揚感を感じました。
その後の展開も、良くも悪くもまったく期待を裏切ることがない安定感。
コンセントに水が垂れるシーンは、全作登場している皆勤賞な気がします。
本作でシリーズ初めてのR18+でしたが、そこまで変化したようには感じられませんでした。
4と5と、3D作品になるとちょっと不自然さが目立ってしまうところは残念。
「そうはならんやろ!」と思わず突っ込んでしまうところが楽しい恒例のトンデモ人体破壊は、本作ではキャンディス(体操選手)が印象的でした。
オリヴィアの目の手術も痛々しかったですが、この世界の機械には相変わらず安全装置というものは存在しないようです。
ただ、安定感の中でも、細かいところでは過去のシリーズとの違いもいくつか見られる本作。
まず、過去シリーズより、コメディタッチも多く織り込まれていた印象です。
特に、アイザック・パーマー(中国マッサージ店で死亡)とデニス部長は、完全にギャグ要員。
アイザック・パーマーのキャラはけっこう好きだったので、序盤での退場は残念でした。
また、「誰か身代わりを殺せば、その人が生きるはずだった人生を得られる」というまさかの新ルール登場により、人間模様も過去作より描かれていた印象です。
それもあってか、主要人物たちの平均年齢は過去一番高かったでしょうか。
終盤のサムとピーターの対決は、『ファイナル・デスティネーション』では特に求めていない人対人ではありましたが、新鮮さも感じられました。
「誰かを殺せば助かる」というルールが説明されたのは本作だけでしたが、実は1〜4も、そのようなルールが潜在していたのかもしれません。
それらが追加された分の影響か、本作ではほとんど死の予兆がありませんでした。
あったのはせいぜい、ピタゴラスイッチが始まる前に風が吹くのと、オリヴィアの写真が割れて目の部分に亀裂が入っていた2点ぐらいでしょうか。
その分、助けられるか否かといった緊張感はないまま死んでいってしまいました。
『ファイナル・デッドブリッジ』は『ファイナル・デスティネーション』の前日譚だったので、まだ死神も慣れていなかったのかもしれません。
久々のトニー・トッド演じるウィリアム・ブラッドワース(謎の検死官)の登場は、とても嬉しかったポイント。
彼は、1と2に登場し、3は悪魔の声として声だけの出演、4は出演せずでした。
過去作は自分たちで過去の事件などからルールを見出していくのに対して、本作ではまさかの彼がルールについて説明してくれるのは手抜きに感じましたが、それもまさかの1の前日譚だったからという伏線でもありました。
ただ、『ファイナル・デッドブリッジ』が原点というわけでもなく、さらに過去にも同様の現象はあったようでした。
伏線といえばもう一つ、主人公のサムが働いていたレストランが「LE CAFE MIRO 81」という店でしたが、これは初代『ファイナル・デスティネーション』にも登場しています。
1の主人公のアレックスたちは死のリストを回避し、行けなかった修学旅行のリベンジでパリに行きましたが、そこで乾杯をしていたお店が「LE CAFE MIRO 81」でした。
おそらくパリの方が本店なので、サムはパリに修行に行く予定だったのでしょう。
細かい部分に突っ込まずに楽しむのが『ファイナル・デスティネーション』シリーズの嗜み方ですが、どうしても突っ込まずにはいられなかったのが2点だけ。
橋、ペラッペラやん!
と、
ブッダちゃん像、どんだけ重いん!?
の、2点でした。
ちょっとだけ考察:ラストシーンの解釈(ネタバレあり)
あまり謎は残っていませんが、少しだけわかりづらかったラストシーンについて検討しておきます。
サムとモリーの死
終盤、生き残ったサムとモリーは、『ファイナル・デスティネーション』の冒頭で事故を起こすフライト180便に乗ってしまい、命を落としました。
これは、「まだ死のリストに残っていた」のではなく「たまたま巻き込まれてしまった」と考えられます。
モリーはもともと、サムの予知夢でも橋の事故では生き残っていたので、死のリストには載っていませんでした。
サムは、ピーターを殺害したことで、死のリストから外れました。
ピーターも死のリストに載っていましたが、ピーターは死のリストと関係のないFBIのジム・ブロック捜査官を殺害したので、彼の人生を手に入れリストからは外れています。
そのピーターを殺害したので、サムはピーターに受け継がれたFBI捜査官の人生を手に入れた、ということです。
そのため、サムもモリーも飛行機に乗った時点では死のリストには載っていなかったので、ただただ巻き込まれただけという、何とも不幸な人生でした。
ただ、2作目の『デッド・コースター』では、1の飛行機事故の生き残りたちが事故死した際、その事故に関わったり影響を受けた人たちが主要人物となっていました。
死のリストに関わる人たちは、引き寄せ合うような傾向もあるのかもしれません。
ネイサンの死
一方、ラストのラストでネイサン(副工場長)が降ってきた180便の破片に巻き込まれて死んだのはなぜでしょうか。
ネイサンは、工場の事故でロイ(ベテラン工場員)を殺害したために、ロイの生を手に入れて、死のリストから外れたと考えられていました。
故意に殺害した感じではなかったですが、自分が押したためにロイが死んだので、殺した扱いになったのでしょう。
ネイサン自身もそのように思っていたはずです。
しかし、ラストで明かされたのは、「ロイの頭には大きな血の塊があり、いつ死んでもおかしくなかった」という司法解剖結果でした。
これを踏まえると、解釈の一つは、ロイは実際はネイサンが突き飛ばしたことによる事故死ではなく、その直前に脳血管疾患で死んだ、というものです。
そのためネイサンは、事故死を回避したという扱いで一旦は飛ばされましたが、再び順番が巡ってきて死んだのです。
ただ、脳血管疾患による死は、一瞬ではなく、意識は失っても数分ぐらいかけて死に至るはずです。
血の塊が破裂したなり脳梗塞を起こしたにせよ、ネイサンが突き落としてから頭にフックが刺さる一瞬の間に脳の疾患が原因で死に至ったというのはあり得ず、直接的な死因はフックが刺さったことによる事故死としか考えられません。
それを踏まえると、やはりネイサンは、ロイを殺害したことによってロイの人生を手に入れ、リストから外れたと考えられます。
しかし、手に入れたのは「いつ死んでもおかしくないロイの人生」です。
手に入れたけれど、それは結局ほとんど寿命の残っていない人生であったため、「ロイの人生のリミット」が来てネイサンは死に至ったのだと考えられます。
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