【小説】最東対地『七怪忌』(ネタバレ感想)

【小説】最東対地『七怪忌』(ネタバレ感想)
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『七怪忌』の概要と感想(ネタバレあり)

タイトル:七怪忌
著者:最東対地
出版社:KADOKAWA
発売日:2021年4月23日

ラノベ作家を目指す高校2年生の慶太は、美少女の転校生がなぜか七不思議を調べている現場に遭遇。
自身も動画チャンネルを持つ従兄と一緒に夜の学校に忍び込むが、それは想像を絶する悪夢の始まりだった──。


『えじきしょんを呼んではいけない』『おるすばん』に続いて3作目の最東対地作品でした。

いやもうこれは、完全に学園異能バトルでした
より正確に言えば、作中でも言及されていましたが、ホラーゲーム + 学園異能バトル。

『七怪忌』というタイトルからは法事・法要の「七回忌」が連想されますが、まさかの学校の七不思議。
人間の業が溜まってできた異世界、そしてその異世界に通じるための“七式開門”が派生して七不思議が生まれたという設定も、ザ・異世界モノな感じでとても良い。

小杉山慶太の通う高校がある場所の過去も、しっかりとおどろおどろしいものでした。
捕まったら即死なナースから、クエストをこなしながら夜の旧校舎を逃げ惑うのはまさにホラーゲームで、ちょっとプレイしたくなります。


といったあたりの設定もそれなりになされていますが、相変わらずそれほど深掘りするようなものではなく、とりあえずエンタメとしてさらっと楽しめた作品でした。
ちょっとおバカなB級ホラーっぽい『えじきしょんを呼んではいけない』、本格的な都市伝説ホラーの『おるすばん』、そしてラノベ風学園異能バトルな『七怪忌』。
『おるすばん』でも書きましたが、最東対地作品はこれまで読んだ3作だけでも作品によっての空気感が全然異なり、幅が広いなと感心します
逆に言うと、『七怪忌』はホラーというよりはかなりラノベなノリでギャグ路線も強めなので、ホラーを期待して本作から入ると肩透かしを食らってしまいそう。

キャラも完全にラノベノリな強烈キャラなので、そのあたりで好き嫌いは分かれそうです。
ラノベを書いているという設定の主人公に「盛り盛りのキャラ」とわざわざ言わせるのはメタ的なメッセージだと思うので、好き嫌いは別として、本作を読むのであれば「そういうもの」として受け入れるべきでしょう。

特にキャラの濃すぎる【金髪ヘッドフォン美少女ヤンキー】ことピカリンこと山城光(およびまほろ)と、【ミイラ男の校務員】こと二ノ宮。
2人の過去や背景はほとんど明かされませんでしたが、山城光はどうやら最東対地の別作品『#拡散忌望』にも登場するようです
とはいえ、パッと見た感じだと本作との繋がりはほとんどなかったり、光の謎が明らかになるわけではなさそうですが、単純に面白そうなのでこちらの作品もいずれ読んでみたいところ。


そして、ラノベノリであっても相変わらず爽やかには終わらず、何ともいえない後味を残してくれるのも最東作品の特徴であることもわかってきました。
府川繁子先生が冒頭の少女かなというのは途中でぼんやり思いましたが、まさか尾崎広美を殺していたとは。
野戦病院として使われた学校に、さらに殺人事件。
業が溜まっていたからの凶行でもあったのでしょうが、そりゃあ業が降り積もっていきますね。

そんな府川先生が教師になったというのも恐ろしい話ですが
広美を殺すことになった学校の七不思議を、普通に生徒に話すというのも恐ろしい。
本作において人間性が一番やばかったのが府川先生でしたが、最後はしっかりと報いを受けました。
その意味では、ある意味爽快エンドでもあるのでしょうか。
いやでもやっぱり、そもそも府川先生が尾崎広美を殺していた上、今でも「悪いのは広美だ」と思っていたというのは後味が悪いですね。

旧校舎で登場し慶太と出会った尾崎広美は、仲間になるのかな?いやでも怪しいかな?と思っていたところ速攻で怪異と化したのでけっこう驚きました。
このあたりの容赦のなさも、最東作品の魅力の一つ。
とはいえ主要キャラは全員生き残ったので、その点でもだいぶライトめな作品と言えるでしょう。

というわけで、正直それほど語ることもないですが、これはこれでエンタメとしてシンプルに楽しめた作品でした。
ただやはり、他の作品を経由してきたからこそ幅の広さを楽しめたので、本作が初めてかつホラーを求めての最東作品だった場合、他作品にも手を伸ばそうとなっていたかどうかは微妙なところ。
本作から入った方には、ぜひ1作ぐらいは他の作品も読んでみていただきたいと思いました。

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