【映画】ハロウィン(1978)(ネタバレ感想)

映画『ハロウィン』
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『ハロウィン』

15年前、包丁で自らの姉を殺害したマイケルが精神病院を脱走し、ハロウィンの夜に故郷に戻る。
担当医ルーミスの追跡をよそに、白いマスクをつけ、包丁を手にしたマイケルは殺戮を繰り返すことに。
ベビーシッターのアルバイトをしていた女子高生ローリーも命を狙われるが──。

1978年、アメリカの作品。
原題も『Halloween』。

もはや説明不要な、ジョン・カーペンター監督によるスラッシャー映画の金字塔
本作の40年後を描いた正統続編『ハロウィン(2018)』から入門してしまっていましたが、ようやく原点を鑑賞しました。

観ての感想は、とにかくその完成度に驚きました
そりゃあ名作として現在まで人気を博すわけです。
ほとんど特殊メイクや特殊な技術が使われていないこともあってか、むしろ後発の『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』などよりも古さが気になりませんでした。


とにかくマイケル・マイヤーズの殺人鬼像が安定しており、一切喋らず、ストーカーばりに先々に現れてはこちらをじっと見つめ、満を持して殺戮を開始する姿は、1作目にしてすでに貫禄がありました。
レザーフェイスやジェイソン、フレディといった近い時代のスラッシャーたちに比べて、マイケルは「静」のイメージがあります。
それもあってか、他のスラッシャーたちのようにどたどた走って追いかけたり、主人公たちの抵抗に遭って尻餅をついたりといったようなお茶目な姿を見せる場面がほぼなかったところも、徹底したマイケルの不気味さを際立たせていました。

そのマイケルの不気味さをベースとした静かな恐怖や不穏さが、本作の特徴だったように思います。
実に91分のうち60分ほどまでは、ほとんど殺戮は起こりません。
それなのにあまり退屈さを感じないのは、ローリーが魅力的なこともありますが、じわじわと迫ってくるマイケルの恐怖が丁寧に描かれているからでしょう。
とはいえ、さすがにじわじわ過ぎて60分過ぎる頃にはもどかしさを感じてしまったのは、現代の時間感覚に染まってしまっているのかもしれません。

「名作には名曲がつきもの」というのが持論なのですが、『ハロウィン』のテーマ曲は本当に秀逸です。
シンプルなのに緊張感があり、かつかっこいい。
初っ端からあの曲が流れるだけでテンションが上がりました。

マイケルが追いかけてくる際の「キンキンキンキン……」といった感じの曲は、ゲーム『Dead by Daylight』でマイケルが近づいてくる際にも使われていました。
ちょうどマイケルが実装された頃にやりまくっていたので、あの曲を聴いたときの「逃げなきゃ!」という緊迫感、並大抵ではありませんでした。

レザーフェイス、マイケル、ジェイソンという「古典スラッシャー映画マスク3兄弟」(今、勝手に名付けました)の中でも、マイケルのビジュアルは飛び抜けて不気味でかっこいい(個人的見解)。
作中はほぼずっとマスク状態で、終盤、ローリーの抵抗でマスクを剥がされ顔がチラ見えしちゃったときにはさすがのマイケルも焦っていましたが、片目を負傷した感じでした。
幼少期はまさかのスーパー美少年だったので、入院中に虐待とかされていなかったか心配ですが、自分で顔を壁に打ちつけたりしていたパターンかもしれません。
シンプルにナイフだけで攻めてくるところも良いですね。


背景が徹底して謎なところも、マイケルの魅力を引き立てていたように思います。
お姉さんを殺した理由も明確に描かれなければ、お姉さんを重ねて見ていたのかと思いますが、ローリーに固執していた理由も描かれません。

そもそも、どのような存在なのかすらもほとんど描かれないのです。
ただただ「純粋な悪」としか情報がない。

そんなマイケルがいかに危険かな存在であるかの伝え方も巧みで、もちろん幼少期の動機不明な猟奇的犯行もありますが、まずは犬の殺害でしょう。
動物や子どもを殺すという演出は、簡単にそのキャラのサイコパス性を演出できると同時に、お手軽だからといって大した必要性もなく安易に使用すると批判を浴びる諸刃の剣でもあります。
マイケルに関しては、ほとんど情報がない状態で、いきなり躊躇いなく犬を殺すというのは、異質性を強調するのに有効であったと感じました。

もう一点は、とにかくルーミス医師の存在ですね。
マイケルがただ突っ立って不穏さを漂わせている間に、ルーミス医師がひたすら「やばいやばい、あついは本当にやばいんだって」と繰り返す
周囲の評価を使ってのマイケルの脅威の際立たせることによって、マイケルに無駄な行動をさせずに済んでいたのではないかと思います。

あとは、決して派手なスプラッタ演出に頼ることがなかったのも、静かなマイケルの恐怖に繋がっていました。
マイケルの持つ包丁は、触れるだけで相手を絶命させる魔法の包丁。
長さが足りなくても相手を磔状態にできる魔法の包丁。

ただ、序盤で車の上に飛びかかってきたのがマイケルだというのはびっくりしました
あんな俊敏に動けるんだ。
しかも、ずっと閉じ込められていたのに運転できるんだ。
しかし、ハドンフィールドに着いてからは、あのアクティブさは完全に鳴りを潜めていました。
長距離移動で疲れちゃったのでしょうか。


そして、『ハロウィン』シリーズにおいてマイケルと同じぐらい欠かせないのは、もちろんジェイミー・リー・カーティス演じるローリーの存在
いやほんと、こちらはこちらですでに貫禄が半端ないですね
髪の毛の多さはこの頃から目立ちます。

高校生らしからぬ知的で落ち着いた態度の一方、自分に自信がなく踏み出せないけれど恋などにも興味のある思春期ローリー。
可愛すぎか。
先に『ハロウィン(2018)』から入ってしまった立場からすれば、マイケルに怯える初々しいローリーは実に新鮮
子どもたちの前では素晴らしい責任感を見せる一方、意外と泣き虫なギャップ。

しかし、怯え泣き虫モードに入ると同時に、最強モードにもスイッチが入ったようです。
磁石の同極が反発し合うかのように、至近距離でもマイケルの魔法の包丁のエイムを逸らす空気抵抗。
けっこう切られたように見えたのに、出血せず細い線が入っただけの防御力の高い腕。

リビングのソファで襲われた際には、「うぅ〜(空気抵抗により包丁の狙いを外させる)、うぅ〜(一瞬で振り返りしっかりと首に鉄の棒を刺す)」と弱々しい声を発しながらも最速かつ確実に対処。
2階のクローゼットでは、「私もう駄目です殺されちゃいます怖いです」と怯え泣きながらも、伸ばしたハンガーを使ってフェンシングで金メダル確実なテクニックにより的確にマイケルの目を刺す。
戦いのセンスが抜群でした。


他のキャラでは、トミーとリンジーの子ども2人も可愛かったです。
この2人が、しかもリンジーは同じキャストで『ハロウィン KILLS』に登場したというのは、なかなかに熱いですね。
新3部作も、改めて観直したくなりました。

ボブは「すぐ戻るからな」という典型フラグを立ててビールを取りに行き、綺麗にフラグ回収して殺されてしまいました。
しかし、このフラグってどの作品が最初なんでしょうかね?
この時代にはすでにこのフラグがあったのか、この作品あたりが発端になっているのか、気になるところ。

気になるといえば、『ハロウィン KILLS』の感想で「犠牲者たちにかぼちゃなどハロウィンのお面を被せていたのは、マイケルのキャラとしては少し不自然に感じてしまった」といったことを書いたのですが、何とマイケルさん、初代からこのような無駄な演出は行っていたようです
失礼しました。
シーツを被り、その上から眼鏡かけてボブのフリをしていたシーンですが、あのシーンだけはかなりお茶目なマイケルでした。

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