【映画】ザ・シスト/凶悪性新怪物(ネタバレ感想)

映画『ザ・シスト/凶悪性新怪物』のポスター
(C)2020 FANTOM FILM
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『ザ・シスト/凶悪性新怪物』のシーン
(C)2020 FANTOM FILM

あるマッドサイエンティストが開発した腫瘍治療器が暴走し、患者のおできからグロテスクな人食いモンスターが誕生。
膿汁を噴出し、人間を食い殺す醜悪なその怪物は、診療所を地獄絵図に変えてしまう──。

2020年製作、アメリカの作品。
原題も『Cyst』で、「嚢胞」の意。
邦題の副題はもちろん、「悪性新生物(癌)」由来でしょう。

これぞ。
これぞB級モンスターパニック映画といった趣の、愛すべき作品
面白いか、おすすめかと問われれば激しく微妙で、個人的に期待していた感じとはだいぶ違いましたが、B級ホラー好きであれば楽しいのは間違いありません。
逆に言えば、B級好きでなければまったく楽しくないかも。
特に深みがあるわけでもなく、純粋に頭空っぽにして楽しめる怪獣映画。

ポスターや作品紹介を見たときには、集合体恐怖症的なグロさ、気持ち悪さで攻めた作品かと思いましたが、思ったよりもグロさは控えめ
むしろ集合体より液体の方が気持ち悪い。
それでも集合体恐怖症の人にはおすすめできませんが(そもそもあえて本作を観てみようかと思う集合体恐怖症の人もいないと思いますが)、近い路線での気持ち悪さでいえば『マンホール』などの方が圧倒的でした。

その要因としては明らかに、ポスターから拝借すると「人喰いオデキ」のモンスターの造形でしょう。
ひたすら時間稼ぎを感じる前半を経て、満を持して登場したモンスター。

……キッ、キモカワっ……?

怪獣。
完全に特撮モノの怪獣です。
ウルトラマンとかと戦ってそう。

ミャクミャク様をリアルにしたような(それはだいぶ違う)造形は、まさかの愛着を抱かずにはいられないフォルム。
それほど集合体的な感じもありませんし、何より質感。
ねばぁ……どろぉ……にちゃぁ……としたモンスターかと思いきや、意外とドライで乾燥肌っぽい質感でした

単純に気持ち悪さで言えば、前半でのデキモノからの液体ブシャーや、ガイ先生の注射によってプレストン(正社員になりたかった、モンスター誕生の苗床となった男性)の背中に広がったデキモノ群の方がよほど上でした。
何なら、ポスターが一番気持ち悪いかもしれません。
殺し方も比較的シンプルで、ゴア表現も控えめ。
全体的に、リアルにぞわぞわしてくるような気持ち悪さは乏しく、誇張・デフォルメされたライトな気持ち悪さだった印象です


展開はツッコミポイントだらけですが、B級なので受け入れるしかありません
出られないのにシャッターを閉めてしまった意味がわかりませんが、焦っちゃったんですかね。
何で核シェルター用のシャッターが設置されていたのかというのも、突っ込んではいけません。
タミー(受付の女性)が「誰もが嫌がる存在で愛を知らない」「肌にぴたりとくっつくのは愛情の裏返しよね」と説得しようとするところは、それっぽくて笑ってしまいました。

設定に関しても、トンデモSF設定なのでツッコミは野暮。
もはや細かい設定を放棄したかのような機械の説明は潔い。

タイラー・ラッセル監督が、本作制作においてインスピレーションを受けた作品として『遊星からの物体X』『ブロブ/宇宙からの不明物体』を挙げていたので、SFクリーチャー感があるのはその辺の影響でしょうか。
マッドサイエンティストが開発した謎すぎる機械というのは、ロマンがあります。
「ゲット・ゴーン(Get gone)」が最後の決め台詞になっているダサさも最高。

また、マニアックな対象に取り憑かれたマッドサイエンティストという設定や展開が『ムカデ人間』に似ているな、とも感じたのですが、実際にインスピレーションを受けた作品に『ムカデ人間』も挙がっていました。
ただ、リアルな不気味さ、徹底した悪趣味さ、後味の悪さが強い『ムカデ人間』に対して、『ザ・シスト/凶悪性新怪物』はコメディ色というかエンタメ色が強めだったので、本編後の撮影の裏側映像も含めて、気軽に観られて後味も悪くない1作でした。
日本版ポスターの「キ・モ・イ・デ・キ・モ・ノ」も、『ムカデ人間』の「つ・な・げ・て・み・た・い」が意識されているのでしょう。

低予算感がひしひしと伝わってきますが、1960年代という設定が逆にチープさをカバーする要素にもなっており、巧みでした
セットや服装、髪型などはもちろん、映像の質感や音楽もレトロな感じで徹底しており、とても2020年製作の作品とは思えない(褒め言葉)見事な統一感。

前半はぐだぐだで、舞台がずっと病院内なので単調ではありましたが、登場人物たちのキャラが立っていたので、不思議とそれほど飽きませんでした。
73分というコンパクトさは正解。

ザ・マッドサイエンティストかつ最後の最後まで徹底してクズ人間だったガイ先生に対して、パトリシアは非常にまともでバランスが良かったですが、パトリシアがひたすらかわいそうでした。
無事に生き残りましたが、単純にあれだけ膿のシャワーを浴びまくっていたので、衛生面が心配(日常茶飯事みたいな顔をしていましたが)。
個性強めな特許の審査官たちも良かったです。

シャーマン(唯一脱出できた、シャッターでコブが取れた男性)を演じていたのは、『サクラメント 死の楽園』でカルト集団の教祖ファーザーを演じていたジーン・ジョーンズ。
だいぶ雰囲気が違いますが、本作を観たあとで『サクラメント 死の楽園』を観ると、イメージが変わってしまいそう。
シャーマンのコブがラストで活きてきたのも良かったです。

ちなみに、タイラー・ラッセル監督のインタビューによれば、どこまで本気なのかはわかりませんが『シスト2~リベンジ・オブ・ザ・シスト~』なる続編を考えているとのこと。
シャーマンのコブが活きてくるのか、はたまたまったく違うところからまた生まれてしまうのか。


そんなわけで、あまり改まって語ることも浮かびません。
個人的には、せっかくなら本気で嫌悪感を抱くような気持ち悪い作品に仕上げたら、それこそ『ムカデ人間』のようなカルト的人気を誇る作品になり得ていたのではないかとも思いますが、これはこれで、怪獣好きな層にも刺さるかもしれません。
ただ、ポスターや設定の時点で忌避している人も多いのではないかと予想しますが、実際はそこまでグロ気持ち悪いわけではなかったので、ちょっとチャンスロスをしていそうでもったいない感も。

とはいえインパクトに残る作品であるのは間違いないので、まさに発想勝ちのザ・B級ホラーでした

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