【映画】ロングレッグス(ネタバレ感想)

【映画】ロングレッグス(ネタバレ感想)
(C)MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

【映画】ロングレッグス(ネタバレ感想)
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1990年代半ば、オレゴン州。
FBI支局に勤める新人捜査官のリー・ハーカーは並外れた直感力を買われ、重大な未解決事件の担当に抜擢される。
ごく平凡な家族の父親が妻子を殺害したのち、自ら命を絶つ。
そのような不可解な殺人事件が過去30年間に10回も発生していた。
いずれの現場にも侵入者の痕跡はなく、“ロングレッグス”という署名付きの暗号文が残されていたのみ。
“ロングレッグス”とは一体何者なのか。
真相に迫ろうとするハーカーは暗号文を解読し、事件にある法則を見出すが、その正体も行方も依然としてつかめない。
だがやがてハーカーの過去とロングレッグスの意外な接点が浮上し、事件はさらなる恐ろしい事態へと転じていくのだった──。

2023年製作、アメリカの作品。
原題も『LONGLEGS』。

予告と「この10年でいちばん怖い映画」「『羊たちの沈黙』以来、最高の連続殺人鬼映画」といった煽りに煽る謳い文句で、とても楽しみにしていた1作。
いや、さすがに「あまりにも煽りに煽りまくってくるやん」な謳い文句すぎたので逆に心配でもありましたが、いざ鑑賞してみての感想は、素直に一言。

あっ、そっち!?

でした。

『羊たちの沈黙』や『セブン』といったタイトルを絡めた紹介が散見されていたので、ヒトコワシリアルキラーなサイコスリラーやサスペンスを期待していたら、まさかの悪魔なオカルトホラー
期待ゆえに、あえて情報をほぼ遮断した状態で観に行ったのが、完全に裏目ってしまいました。

というわけで、勝手な誤った期待値を勝手に高めまくっていたのが悪いのですが、個人的にはちょっと残念な結果となってしまいました。
冷静に考えれば、30年で10件というのも、純粋なシリアルキラーの事件としてはけっこう不自然ですしね。

気を取り直してオカルトホラーとしてとらえてみても、やはり悪魔の怖さというのがどうしても実感としてわからないので、「悪魔崇拝だったかぁ……」以上の感想が出てきません
ただ、常に不穏で緊張感のある雰囲気は抜群だったので、オカルトが好きで悪魔の怖さが実感できれば「この10年でいちばん怖い映画」という評価も決して過言ではないのだろうと思います。
日本ではいまいち実感できない方が多いのではないかと。


悪魔モノとしてとらえれば、主人公のハーカーと殺人鬼ロングレッグスの関係性も明らかになり、綺麗にまとまっていると思います。
ハーカーが関わると同時に都合良く事態が動き出したり、あっさりと謎を解いていく超能力的な力も、作中では説明がつくものになっていました。
人形の不気味さも秀逸ですし、やはりニコラス・ケイジとは思えない見た目のロングレッグスもインパクトがありました。

事件の細部やそもそものロングレッグスの目的など、わからない点は多いのですが、そこはそれ、単純に悪魔崇拝として、細部に理屈を求めてはいけないのでしょう
14日が誕生日の子どもがいる家族が犠牲になる理由もわかりませんが(規則や関連性は説明されますが)、わからないからこその恐怖でしょうか。
落ち度があるわけではないからこそ、理不尽な恐怖として感じられます。

キリスト教やアメリカ文化には詳しくないので考察もあまりできないのですが、そもそもパンフレットに映画評論家/映画監督の小林真里による「『ロングレッグス』徹底解析」が掲載されていました。
パンフレットは証拠品を模したデザインになっており、サイズは小さめですが凝っていて素敵です。

【映画】ロングレッグス(ネタバレ感想)

監督による解説ではないので、これが完全なる正解というわけでもないのでしょうが、公式に「徹底解析」として掲載されているので、考察系に関してはこれをベースとするのがベストでしょう。
とはいえ、パンフレットの内容かつ他の方の文章をここに転載するわけにもいかず、かといって公式解釈を上回る考察を繰り広げられるわけでもなく、考察ブログとしては無力でここでは感想を述べるに留まりますが、「徹底解析」の一部は公式サイトにも掲載されています。

『ロングレッグス』徹底解析|映画『ロングレッグス』公式サイト|2025.3.14 日本解禁
ニコラス・ケイジ演じるエキセントリックなキャラクター、ロングレッグスを軸に多くの謎が込められた、このディープかつダークな作品を読み解くための徹底解析をお楽しみください。

これを読めば背景はけっこうクリアになりますが、やはり細部や目的が明確になるわけではなく、理不尽な恐怖の世界観を楽しむ作品なのでしょう。


ハーカーの母娘関係やトラウマなどは、個別に取り上げて心理学的に考察してみることもできそうですが、様々な要素が組み合わさった全体を味わうべき作品なのだろうという印象も受けました。
正直最初は、けっこうたくさんの要素を詰め込みまくっているけれど、一個一個が弱いな、と感じました。
たとえば、思わせ振りな暗号の手紙もあっさりと解読されて終わりですし。

しかし、過去の実在する事件(ジョンベネ殺害事件)からインスパイアされている点も含めてですが、シリアルキラー、悪魔崇拝、人形、虐待、自傷、トラウマといったあらゆるネガティブだったり恐怖を喚起するような要素を詰め込んでいる点が、本作全体を彩っているのでしょう

それを象徴するのが、ニコラス・ケイジ演じるロングレッグスの出番の少なさです。
本作を象徴するキャラではありますが、出番がそれほど多いわけではありません。
見た目と言動で印象に残りますが、それほどキャラが深掘りされているわけでもありません(外見の設定などは、上述した徹底解析で説明されています)。
彼ですら、決して作品のメインではなく、恐怖を演出する一要素でしかないのです。

そう考えると、サイコスリラーっぽい前半からオカルトホラーに転じていくのも、サブリミナル的に悪魔の姿が10ヶ所ほど映り込んでいたりヘビの映像が挿入されたりするのも、何がどうなるのかわからない理不尽な恐怖という全体像のための演出なのだと理解できます。
大筋は綺麗にまとまっていますし、あまり細部にとらわれてもいけない作品なのでしょう。

一個一個を単体で取り上げると弱いですが、こだわりを持って組み込まれているのがわかります。
むしろごちゃごちゃ詰めまくっているのに、軸を持ってまとめ上げているのは見事でした。
刺さる人にはだいぶ深みの感じられる作品なのだろうという予感はします。

というわけで、個人的には残念ながらちょっと刺さらない路線で、あまり深く読み取ることはできませんでしたが、古典オマージュに見せかけて斬新な展開であり、表情に乏しい主人公というのもホラーとしては斬新で、緊張感と不安定さが終始感じられた作品でした。
オカルトであるというのを知らなかったからこその肩透かし感がありつつも、矛盾しているようですが、知らずに観られて良かったな、とも感じます。
日本で2025年3月14日公開だったのも、作中のキーである「14日」に合わせたのかなと思いますが、知らずに初日の14日に観に行けた点も、予期せぬラッキーポイントでした。

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