【映画】#フォロー・ミー(ネタバレ感想)

映画『#フォロー・ミー』のポスター
(C)2019 ESCAPE ROOM FILM 2018, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『#フォロー・ミー』のシーン
(C)2019 ESCAPE ROOM FILM 2018, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

過激な動画を配信して人気を集める配信者のコールは、「究極のリアル脱出ゲーム」への参加招待を受けて仲間とともにロシアにやってくる。
ゲームの舞台は、モスクワ郊外に建つ元監獄という不気味な廃墟。
コールは全世界にライブ配信しながら、この前代未聞のスケールを持つ脱出ゲームの挑戦を開始するが、やがてコールは、これが単なるゲームではないことに気づいていく──。

2020年製作、アメリカの作品。
原題は『Follow Me』と『No Escape』と両方出てきます。
日本版だけハッシュタグがついているのは、タイトルから内容をイメージさせやすくするためでしょうか。

ポスターが、ホラーファン大歓喜の名作『キャビン』に似ている気がするのですが、自分だけでしょうか?

映画『キャビン』のポスター
(C)2011 LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED

ただ、どちらのポスターも日本のみの仕様であるようなので、同じところが作っていたり、意識しているのかもしれません。
ちなみに、『#フォロー・ミー』の日本版ポスターの「あなたは、フォローせずにはいられない── たとえどんなに怖くても。」というキャッチフレーズは、かなり意味不明です。

色々な点で内容にも既視感が強く、途中のシーンを切り取って「これは『ソウ』のシーンでしょうか?他の作品でしょうか?」というクイズに使えそう(何のこっちゃ)。

さて、『#フォロー・ミー』の内容ですが、調子に乗ったYouTuberの成れの果てみたいな作品ですね。
コールの撮影時と普段のテンションの差が、妙にリアル。

すべてがコールの10周年を祝うために仕掛けられたドッキリだった、というのが本作の大きなトリックです。
ヒントや違和感がかなり散りばめられていたので、特にミステリィ慣れしている人は、途中で気がついた人の方が多いのではないかと思います。

それでも、テンポ良くスピーディに進むので、あからさま過ぎる感じでもありません。
こういう系でスピードの速い作品は登場人物がごっちゃになりがちですが、全員外見もキャラも立っているのでわかりやすく、親切設計。
コールの演技も上手いので、緊張感もリアルに伝わってきます。
マフィア役たちのロシア人たちは、本業じゃないかと思うほど人相が悪いので、映画的にもドッキリ的にも適役です。

ただ、銃を持ったマスクマンが、銃を撃ちながらダッシュしてきてトーマスとエレベータ下に落ちるシーンは、さすがに違和感ばりばり、というかもはやギャグシーンでした。
何のための飛び道具やねん。

ドッキリであるというトリックは比較的わかりやすいので、その先にさらにもう1ステップあるかと思いましたが、怒りに駆られたコールがアレクセイを殴り殺してしまうという、何とも言い難いステップで終了

そりゃあ、あのタイミングで裏切り者のアレクセイが出てきたら、コールがあのような行動に出る可能性も想定できたはずなので、仕掛け側の準備が甘かったとしか言いようがありません。
何も知らずにみんながドヤ顔で出てきたあとの空気は、いたたまれないものがあります。

胸糞作品は基本的に好きなのですが、『#フォロー・ミー』の感覚は決して胸糞というわけでもなく、何とも言えない空気で終わる感じは、なかなか他の作品では味わえない感覚です。
エンドロールとともに流れるドッキリのメイキング映像が、虚しさを引き立てます。

実際に殺ているわけではなかったので、拷問シーンでの殺され方は基本的に全部不自然です。
ただ、それにしてもグロさ控えめなのは、レイティングをGにするためかと思っていました。

ですが、最後の最後、コールに叩かれてぐっちゃぐちゃに潰されたアレクセイの頭部はしっかりグロく、リアルなグロさはこのシーンのために取っておいたのだとわかり感動。
フィクションと現実(ドッキリ殺人と本当の殺人)のコントラストが、視覚的にもわかりやすく表現されていました。

全体的に大味ですが、雰囲気は好きです。
ロシアの元監獄という舞台が、もうそれだけで怖い
ただ、その割には廃工場みたいな内部だったので、もう少し活かしてほしかったなとも思います。

途中の観光シーンで映る、赤の広場を中心としたロシア(モスクワ)の街並みが非常に美しいところが、現実の世界情勢的に複雑な心境になってしまいました。
元監獄のシーンなどはわかりませんが、少なくとも赤の広場の観光シーンあたりは確実にロシアで撮影しているはずなので、制作時期がもう少し遅かったら誕生していなかったかもしれない作品です。

『パーフェクト・トラップ』などと同じく「頭からっぽにして楽しむ系」の作品であるため、考察ポイントも特にありません。
実はドッキリだったという点も、説明は丁寧。
観光シーンでの食事後、出口の番号が書かれた赤い紙を落とした際に店員さんが拾ってくれたのも、店内にも隠しカメラがあったので、店員さんも協力者だったのでしょう。

唯一はっきりしない点があるとすれば、コールが手にした銃が本物だったのか?という点ですが、マフィアのボスが撃たれていたので、ダミーで確定です。
ペイント弾でも入っていたのだと思われます。

展開はかなりご都合主義ですが、それは仕方のないところ。
一方で、車で逃げるか否かという、コールが選択できる分岐点があったところがポイント高めです。

正直、自分はあの状況で戻れる気がしません。
そもそも、どう考えても助け出すことは不可能に思えてしまいます。

それでも、映画だからとはいえ、戻ることを選んだコール。
人気者になり大事なものを見失ってしまっていましたが、きっと根はかなり良い人なのでしょう。

ただ、あそこで逃げ出していたら、それはそれで仲間たち複雑な気持ちになっていたのではないかと。
特に、恋人の危機よりもファンサービスや配信最優先のコールに疑問を感じていたエリンには、見捨てられていた気がします。
しかし、戻ったら戻ったで、結果論ですが殺人を犯してしまったという悲劇。
どちらに転んでもバッドエンドな選択肢で、コールはかわいそうだったとも言えます。

序盤は、調子に乗っているコールに「どうなのよ」という気持ちになります。
しかし、トリックが明かされたあとは、詰めが甘い上にそこまでやる仲間たちに「どうなのよ」という気持ちに。
数字に溺れる配信者とその仲間たちによる行き過ぎた企画の末路という、現代の闇を浮き彫りにした作品としては秀逸でした。

願わくば、ロシア語にも字幕があるバージョンで2周目を観てみたいものです。
実は、コールがロシア語を理解できないのをいいことに、

「お前、今日の夕飯何にする?」「もちろんビーフストロガノフだぜ!」
「コールの奴すっかり騙されてるぜ!たまんねぇな」

みたいなことを喋っていたのだとしたら、この作品の評価が爆上がりです。

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