【映画】デス・レター 呪いの手紙(ネタバレ感想・考察)

映画『デス・レター 呪いの手紙』のポスター
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

運転手のイーゴリは、職場に間違って届けられた手紙を届けに、宛先の住所に向かう。
しかし、そこにいた老婆からここの住所ではないと言われ、改めて手紙を見ると、書かれていた住所と宛名が変わっている。
そして、老婆から、受取人に渡すまで絶対に手紙を開けてはいけないと言われてしまう。
謎を解き明かそうと、刑事のマリーナと共に宛名に書かれた女性に届けようとするが、そこには呪いの手紙の更なる恐怖と、謎の少女とイーゴリに関する衝撃の事実が待っていた──。

2017年製作、ロシアの作品。
原題は『KOHBEPT』。
まったくわからないので翻訳にかけたら「コッペパン」と出てきてさらに意味不明。
どうやら「Konvert」で「封筒」の意味のようでした。納得。

『フローズン・ブレイク』に続く、ほとんど観たことがないロシアの作品。
『フローズン・ブレイク』でも同じように感じましたが、勝手な先入観を覆す、かなり完成度の高い作品でした
音楽の使い方とかは、独特に感じます。
エンディング曲はちょっと「え?合ってなくない?」と感じてしまいました。

内容は、かなり文学的というか幻想的というか
ホラーというより、ダークファンタジー要素のあるミステリィといった趣き。
整合性を求めるものではなく、お伽話や「世にも奇妙な物語」を彷彿とさせる、不思議な世界に迷い込んでしまったようなお話でした。
個人的にはけっこう好きです。

ポスターには「恐怖の都市伝説ホラー」とありますが、本当にロシアにそんな都市伝説があるのか、少し調べただけでは見つかりませんでした。
日本版ポスターお得意の捏造の可能性も高そうなので、あまり「都市伝説」に振り回されない方が良いかもしれません。

78分というコンパクトな尺でどんどん展開してくので、テンポも悪くありません。
ロケーションも、廃アパートや墓地などがツボでした。
ロシアの街並みはやはり綺麗。
そして道が広い。

ただ、ストーリーの起伏には乏しく、画面も雰囲気も終始暗く鬱々としているので、派手さを求める人には合わなさそう。
あと、「デス・レター」という邦題から想像するようなホラーを求めて見始めると、期待とは違ってしまいそうです。
明かされる謎も、「そういうことだったのか!」というよりは「お、おぉ……?」といったリアクションに。

登場人物も、みんな不穏で雰囲気があって良かったです
クールビューティでアンニュイなマリーナ刑事が好きでした。
過去に何かあるのかと思うほどのアンニュイさでしたが、特に何もなかった(描かれていた限りでは)。

主人公イーゴリは、ひき逃げ犯なので同情の余地はありません
大人しそうに見えて、ひき逃げはもちろん、女性のバッグに手紙を入れようとしたのを見つかって、明らかに不審な行動をしていたのに逆ギレして殴るといった、キレると危ない人物でもありました

そして、ちょっと刺されたぐらいじゃ負けない不屈の魂
あんなセレブなパーティに、明らかに顔の血を拭き取りきれない男性がふらふら歩いても、スルーされるもんですかね。

手紙の呪いよりも、むしろ交通事故の恐ろしさの方が気になってしまった本作。
イーゴリに救いようがないのはもちろん、刑事のマリーナですらスマホ触りながら運転していましたが、ロシアは違法ではないのでしょうか。
ラストシーンで、時間軸を戻してもらったイーゴリはぎりぎりで少女への事故を回避していましたが、あれもロシアの道の広さがあってこそでした。

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考察:出来事の整理

時間軸やら色々なものが入り乱れている『デス・レター 呪いの手紙』。
一体何が起きていたのか、完全に理解できていなかったり、そもそも整合性には難がありますが、大まかに整理しておきたいと思います。

かなり昔にあったこと

映画冒頭のシーン。
とある男性が、森の中を逃げ回っていました。
時代は18世紀頃のようです。

チーホンという名のその男性は、窃盗や強盗を繰り返していた流れもので、罰として手紙の配達人を命じられました
しかし、チーホンは「開けてはいけない」という手紙を開けてしまい、村に疫病をもたらします。

そのため、チーホンを恨む村人たちに殺されそうになりますが、自身の妻マリアも疫病で死んだのを見て嘆き悲しんでいたところ、ハリー・ポッターのハグリッドみたいな村長っぽい人によって「自分自身で罪を償わせるのだ」と見逃されました。

少し前にあったこと

ダリア・ウラジミロヴナ・アニクシナという女性が、老女と契約を交わしました。
その内容は、年を取らないように時間を止めてもらうというもの。

一方の代償は、ダリア・アニクシナの魂でした。
不老は永遠ではなく、「配達人が訪ねてくるまで」とされており、そこで契約が終了し魂を奪われるようです。
老女の存在は謎のまま明らかにされませんが、魂を代償として求めていたり、「魂を持たない私」といった発言からは、悪魔・魔女的な存在であることが予想されます。

ダリア・アニクシナの夫は、フョードル・アンドレーヴィチ・アニクシン。
そしてその娘は、マリア・フョードロヴナ・アニクシナという名前でした。

夫のフョードルは、1910年生まれで、1945年に妻ダリアに対する殺人未遂で有罪に。
1950年に出所するも、すぐに再び妻に対する殺人未遂で逮捕され、10年の実刑。
1960年に出所後、手首を切って自殺し、その遺体が発見されたのがポルタフカスカヤ通り32番地、つまりのちに主人公イーゴリが訪れた廃アパートでした。
フョードルの墓碑には、1910年2月3日に生まれ、1960年8月10年に没と書かれていました。

フョードルの墓の横には、娘マリアの墓もありました。
その墓碑には、1935年7月17日に生まれ、2017年9月21年に没と書かれています。

つまり、娘マリアが生まれたのは、フョードルが25歳のとき。
最初のダリアへの殺人未遂は、彼が35歳、マリアが10歳のときになります。
2回目は、彼が40歳、マリアが15歳。
妻ダリアの年齢はわからず、外見からもいまいち年齢がわからないのですが、ダリアが不老の契約をしたのは、20代、遅くとも30代で間違いないでしょう。

フョードルがダリアを殺そうとした理由は、まったく明らかになっていません
年を取らないダリアに対して、ダリアが魔女だとでも思ったのか、不吉なものを感じるか何かして殺そうとしたのかもしれません。
このあたりはロシア文化の価値観などもよくわからないので置いておきます。

彼はどうやら、死してなお、停止した時間の中に閉じ込められているようでした。
ダリアに手紙を届けようとしているイーゴリに「俺を解放しろと伝えてくれ」と伝えていることからは、ダリアによって閉じ込められているのでしょうか。
時間を操るという点から言うと、その背後にいる老女の魔女かもしれません。

娘マリアは82歳で亡くなっているので、平穏な人生だったのかはわかりませんが、それなりに長生きしたようです。
父を亡くし、不老の母と暮らしていたのか、あるいは別々に生きていたのか。
ただ、「ダリアは娘にしか会わない」というフョードルの発言からは、母の秘密を知っていながら一緒に暮らしていたと考える方が自然でしょうか。

そして現代であったこと

ダリア・アニクシアの契約書終了を告げる配達人。
この配達人に選ばれたのが、本作の主人公イーゴリでした。

イーゴリが選ばれたのは、「罪を犯したから」でした。
それは、少女に対する交通事故です。
スマホを見ながら運転していたことによる事故でした。
しかし、イーゴリは逃走し、助かったかもしれない少女を見殺しにしました。

イーゴリが選ばれたのはそのような理由ですが、なぜこのタイミングでダリアに契約のリミットが訪れたのかはわかりません
イーゴリが運んだ封筒は、配達人が開けると呪われてしまうとのことでした。
もしかすると、イーゴリの前にも何人かダリア・アニクシナに届けようとして、開封してしまい失敗した人たちがいたのかもしれません。

罪を犯したものが配達人として選ばれる。
老女が契約した相手に無事に封筒を届ければ、契約終了となり、契約相手の魂が老女のものとなる。
配達人が失敗すれば、呪われて死んだ者たちの魂が老女のものとなる。
といった、どちらにしても老女には美味しい、いかにも悪魔的なメカニズムでしょうか。

イーゴリは最終的にダリア・アニクシアに手紙を届け、魔法の解けたダリアは一気に老化します。
その後、スマホを見ながら運転をして交通事故を起こしたという自らの罪を思い出し認めたイーゴリに、「いやいやそっちじゃないから。本当に悪いのは悪いのは逃げたことだから」と老女に嗜められて、時間が事故前に巻き戻されました。
そして、事故をぎりぎりで回避してハッピーエンドに。

しかし、不慮の事故であれば、事故を起こしたこと自体は仕方なかったかもしれませんが、スマホを見ながら運転しての事故なので、事故自体もフォローのしようはありません。
イーゴリの場合は、事故を起こしたのも、逃げたのも、同じぐらいの罪に感じます。
ながら運転、ダメ。ゼッタイ。

そしてまとめると……?

時代を追って振り返ってみましたが、さて、それらを総合してまとめてみると、果たして本作では何が起こっていたのでしょうか。

それがよくわからないんですよね〜

まず、18世紀の出来事。
あのチーホンの悪行が起点だったのかどうか。

チーホンが手紙を開封してしまったことにより、疫病がもたらされ、多数の死者が出ました。
そもそもこの時点で謎というか、呪いかバイオテロか、いずれにしても手紙に問題があったわけです。
もしかすると時代的に、手紙と疫病は何も関係がなかったけれど、無理矢理こじつけられてチーホンが悪人に仕立て上げられた可能性もあるかもしれませんが、その可能性はややこしくなるだけなので置いておきます。

チーホンが運んだ手紙もまた、老女が契約した相手に届けるためのものだったのかもしれません。
いずれにせよ、チーホンは失敗し、本来であれば死を迎えるはずだったのではないかと思いますが、運良く見逃されます。

では、18世紀の出来事と、イーゴリが運んだ手紙とは、どのような繋がりがあったのでしょうか。
単純に「呪いの手紙」の起源として18世紀の出来事が描かれており、特に繋がりはない可能性も考えられます。

ただ、チーホンに対する「自分自身で罪を償わせるのだ」という村長っぽい人物の言葉からは、「罪人が配達人として選ばれ、開封することなくきちんと届ければ贖罪になる」といった可能性も示唆されます。
もしかすると、イーゴリはチーホンの子孫だった可能性もあるでしょうか。
いずれにせよ、チーホン(の霊?)は墓地を彷徨っていましたが、誰かが贖罪を果たさないと、彼の魂も永遠に彷徨い続けていたのかもしれません。

チーホンの妻がマリアで、ダリア・アニクシアの娘もマリアでしたが、あまり繋がりは見えてこず、偶然でしょうか。
18世紀の出来事とダリア・アニクシア一家の件の繋がりも謎です。

繋がりを持つとすれば、やはり謎の老女でしょう。
チーホンも、老女が契約した相手に契約終了を告げるための手紙を届けようとしましたが、失敗。
そこで、「きちんと届ければ贖罪となる」メカニズムが誕生。
その後何人もが配達人に選ばれながらも失敗し、その贖罪をようやく果たせたのがイーゴリ。

と考えるのが一番繋がる気はしますが、やはり整合性を求めるより、考えるより感じる系の作品に留めておいた方が良さそうです。

開封することなく手紙を届けて、自らの罪も認めたイーゴリ。
老女も冷酷無慈悲ではないようで、そんなイーゴリの様子を評価して、再チャレンジの機会を与えてくれたようです。
少女がかわいそう、というのもあったのかもしれません。

とはいえ、イーゴリもちょいちょい手紙を開封しようとしたり、誰かに開封されそうになったりしていました。
それを阻止していたのは、少女自らです。

本作で一番頑張っていたのは、実は少女の霊だったのかもしれません。
助かって良かったね!

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