【小説】日向奈くらら『私の友達7人の中に、殺人鬼がいます。』(ネタバレ感想)

日向奈くらら『私の友達7人の中に、殺人鬼がいます。』(ネタバレ感想)
(C) KADOKAWA CORPORATION.
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『私の友達7人の中に、殺人鬼がいます。』の概要と感想(ネタバレあり)

タイトル:私の友達7人の中に、殺人鬼がいます。
著者:日向奈くらら
出版社:KADOKAWA
発売日:2020年12月24日

某県の山麓に集まった少年少女7人。
実は、彼らには謎の人物「名無し」から差出人不明のメールが届いていた。
山に登れば「1年前の死」の真相がわかるという──。


前作『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』から立て続けに読みました。
続編ではないので、ストーリーや世界観に繋がりはありません。

前作から引き続きラノベ的な説明口調のタイトルで、内容も同じようにライトな感じですが、個人的には本作の方が先が気になるミステリィ度が高く、楽しめました
山の中というクローズドサークル、1人ずつ殺されていく友達、謎の殺人鬼、過去の事件の真相、双子、顔のない焼死体と、綾辻行人作品かのような本格ミステリィ要素が詰め込まれており、それだけでも大好きです。

ただ、本作は本格ミステリィではなく、あくまでもミステリィ仕立てのライトなホラー。
それはタイトルからも明らかなので、変な期待をして裏切られることもなく、親切設計とも言えます。
前作同様、粗さやツッコミポイントは大量にありますが、さらっと勢いで楽しむべき1作
前作も今作も、中高生ぐらいだったらもっと楽しめたと思うので、擦れた大人になってしまったな……と一抹の寂しさを感じました(何の話だ)。

そしてこれも前作同様、登場人物が全員異常である点が、著者の特徴でしょうか
背景が浅いのはちょっと気になってしまうところですが、もう全員ことごとく自己中で腹黒なので、半ば自滅していく姿も楽しめました。
その意味ではB級ホラー映画感も強めなので、それも好きな要因かも。

登場人物に限らず、相変わらず周囲の悪意もすごい
友達が1人行方不明になったというだけで、ここまで人生終わりますかね。
ネットなどで変な噂を立てられたり疑われたりするのはあると思いますが、中学生が全員、家族からも信用されずに疑われ責められまくるというのは、日頃の行いがよほど悪かったのか。
人間の悪意が極端に描かれる点も、前作と共通していました。

そもそも1年前、松原晴美が死んだ事件の時点で、

晴美に告白した市川玲奈がフラれて逆上して首を絞める
→晴美は死んでいなかったが、日頃のコンプレックスを晴らそうと木下綾乃がトドメを刺す
→晴美の死体を見て興奮した小山悠馬が、死体を蹂躙して川に流す

というとんでもない流れ。
川に流しただけで見つからなかったのも、ラッキーだったというか不運というか。
弓削颯太とか井上香織あたりは完全に巻き込まれでもあったので、かわいそうではありました。
あとは唯一そこそこまともそうだった、晴美の父親の松原壮一も。
まぁでも、もしからしたら犯人がいるかもしれない少年少女の集団を、大人抜きで再び山に送り出したわけなので、無責任感は否めませんが。


舞台設定やミスリードはやや強引ですが、過去の事件と絡めて現在の連続殺人が進行していく様は、先が気になり楽しめました
どうなるのか、犯人は誰かというのは、最後まで完全にはわからず。
まぁ真相はさすがにちょっとずるい感も否めず、叙述トリックとして捉えたらアウトな気もしますが、三人称視点だしぎりぎりセーフでしょうか。
いずれにせよ、あくまでもライトホラーがメインであり、フェアな謎解きを期待していたわけではないので、そこにどうこう文句を言うつもりはありません。

ただ、自分が心理学を専門としているから特に過剰に反応してしまっている、というのは理解の上ですが、多重人格をこういう使い方するのはやめてほしい……とは、やはりどうしても思ってしまいました
まぁ序盤で多重人格設定が出てきた時点で察してはおりましたが、こんな古典的な都合の良い使い方をされるのも、最近では逆に珍しくも感じました。

しかし別人格のヒムラさん、ちょっと間抜けでしたね。
満を持した感じで大笑いしながらみんなの前に登場し、女王様かのような口調で過去の事件の真相を喋っていましたが、当然のように誰からの信頼も得られず。
どう考えても信じてもらえるわけがないのに、信じてもらえていないとわかると「なにっ!?」みたいに驚いて動揺していたの、可愛かったです。


細かく振り返ってしまうとまた粗探しのようになってしまいそうなので、さらっと楽しめました、に留めておきましょう
唯一、ちょっと意地悪というか細かくてどうしようもない点に触れておくと、タイトルが微妙に違和感があるというか、綾乃目線でのタイトルだとすると「友達6人」じゃないですかね、と思ってしまったり。
自分の別人格も信用できないので含めているのだとすれば、だいぶフェアですが。
いえ、もちろん、わかりやすさ優先のタイトルであると理解しております、はい。

というわけで、前作と似ているようで意外と系統が違い、何だかんだ一気読みした1作。
特に、前作と同じ超常現象の可能性もあると思わせておきながら、違った角度での真相(異論はありますが)は幅の広さも感じました。
前作より舞台が限られページ数や登場人物が少なかったのも、コンパクトにまとまっていてちょうど良かったです。


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