【映画】ポゼッション(ネタバレ感想・心理学的考察)

映画『ポゼッション』のポスター
(C)2012 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『ポゼッション』のシーン
(C)2012 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

妻と離婚し、郊外の家で一人暮らしをしながら、娘2人と交流を続けるクライド。
ある日、下の娘のエミリーが、ガレッジセールで古い箱を購入する。
箱を開けたエミリーの様子が徐々におかしくなっていき、その奇行はエスカレートしていく──。

2012年製作、アメリカとカナダの合作。

とても、普通でした。
えぇ、何と言えばいいのか、その、とても普通な悪魔祓いの映画でした

以前書いた『ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷』に引き続き、サム・ライミが製作(公開は『ポゼッション』の方が先ですが)として携わっています。
「実話に基づく」「全米で2週連続興行収入1位!」といった煽り文句がさらに期待を煽ってきますが、やはりその、すごく、普通でした
アメリカでは、評価はどうなんだろう。
悪魔の怖さが日本人だとどうしても感覚がわからないのと、家族の描かれ方はいかにもアメリカっぽいので、また評価が違うのかもしれません。

原題は『The Possession』
こちらもちょうど以前書いた映画『ポゼッサー』が身体の所有を巡る話で、「possessor」は「所有者」という意味でしたが、「possession」は「所有、所持すること」から転じて「悪魔が取り憑くこと」といった意味が含まれます。
その題名通り、悪魔に取り憑かれた娘・エミリーを救おうとする家族(主に父親のクライド)の奮闘記。
レイティングも「G(制限なし)」であり、グロいシーンなどもほぼ皆無、ほとんど人も死なないので、ホラーが苦手な人でも観られる作品です。

何が実話に基づくのか?と言えば、作品中に出てくる箱が、「ディビューク(Dybbuk)の箱」=「悪魔が封じられた箱」という実在する物のよう。
とはいえ、『ポゼッション』のストーリーはほぼオリジナルで、実話と一致する部分はせいぜいその箱をガレージセールで購入したところぐらい。

ディビュークの箱の所持者は、以下のような不可解な現象に悩まされたそうです。

  • 体調の悪化
  • 害虫の大量発生
  • 部屋の悪臭
  • 幻覚

『ポゼッション』でも、これらに近い現象が起こります。
個人的に虫が大嫌いなので、めちゃくちゃ嫌いないので、死ぬほど嫌いなので、蛾が大量発生するシーンは思わず鑑賞を止めようかと思いました
しかもあれ、リアリティ出すために、CGではなく本物の蛾らしいです。
狂ってやがる

口調が乱れて失礼しました。
そんな蛾が大量発生している中でぴくりとも動かなかったり、エミリー役のナターシャ・カリスの演技が素晴らしく、むしろ悪魔が取り憑いていて暴れているシーンより、じっと見つめているだけの姿の方が不気味

父親のクライド役は、『ウォーキング・デッド』のニーガン役で有名なジェフリー・ディーン・モーガン。
かっこいいです
しかも、彼は実際に大学までずっとバスケットボールをやっており、怪我をして諦めるまでNBAを目指していたほどであったらしく、『ポゼッション』でのバスケシーンやボールを弄ぶ姿はとても様になっていました。
短いシーンですが要注目


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考察:「箱」の機能と……もやもやを吹き飛ばせ!(ネタバレあり)

映画『ポゼッション』のシーン
(C)2012 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

「箱」という密室

「箱」という存在は、外界から完全に四方を区切られた、プライベートな空間を連想させます
鍵をかけることもできて、宝箱のように、大切なものや盗まれたくないもの、あるいは秘密を保管しておく場所。
部屋や家も、大きく見れば壁で区切られた箱であり、「心の箱にしまう」といったような内面の表現にも使われます。

その一方で、ガラスや透明な箱でなければ、外から見たとき、そこに何が入っているのかわかりません
中二病の必修項目、シュレディンガーの猫ではないですが、その中身は観測するまで不確定な要素であり、果たしてその内部で何が起こっているのかは外から見てもわからず、そのために不安を煽るものにもなり得ます

「保管する」「しまっておく」という側面以外に、「閉じ込めておく」という機能も有します
牢屋のように、中に入れて、鍵をかけて、閉じ込める。
棺のように、死を閉じ込める場所でもある。
それは、「恐ろしいものが閉じ込められている」という可能性を想起させるものになるのです。

パンドラの箱などを持ち出すまでもなく、「箱」は昔話や伝説、神話などでも数多く登場します
その中身は、善であったり悪であったり、誰かがしまったものであったり閉じ込めたものであったり、様々です。
世代を超えて受け継がれるものが箱に入っていることも、数多くあります。

ホラーでは、「何が入っているのかわからない」「邪悪なものが閉じ込められている」という、不穏さを演出できるお手軽な象徴的存在として、箱は多用されます。
日本のホラーでも、清水崇監督の『樹海村』では、「コトリバコ」という現実の都市伝説で語られている箱が使われていました。

さらに、人間の好奇心は、「駄目」と言われて禁止されるほど、気になって惹かれて、禁止されている行動を取りたくなってしまうものです
これを心理学では「カリギュラ効果」と言いますが、古来、この形式で人間はひたすら失敗してきており、そのエピソードは枚挙にいとまがありません。
そもそもりんごを食べちゃったアダムとイヴがそうですし、日本でも、鶴の恩返しなどがまさにそれ。
ゲームやファンタジーでも、だいたい「駄目」って言われていることをして、悪が生まれたり解放されます。

同じように、箱を見ると、その中身を知りたくなるのが人間です
開けてはいけない箱を開けてとんでもないことになっちゃった、というモチーフの作品も、果たしていくつあるでしょうか。
様々な機能があり、好奇心を刺激され、小さければ持ち運びもできるようなお手軽な存在である箱は、これからも色々な作品で活躍することは間違いありません。
ホラー作品に限らず、キーアイテムとして登場する「箱」の存在に注目してみるのも、きっと面白いと思います

もやもやを吹き飛ばせ!

ここからは、『ポゼッション』で気になった部分、「え?何で?」「どゆこと?」となった部分、いわば突っ込みポイントをピックアップしていきます。
『ゾンビ津波』の記事でも書きましたが、B級映画は、愛ある突っ込みを入れながら観るのが作法だと思っているので、決して否定的なニュアンスではなく、揚げ足を取ることを目的としているわけでもありません。
観た人と共有して、自分の中のもやもやを解消することが目的。
いや、『ポゼッション』は決してB級の立ち位置じゃないんですけど、突っ込みどころがちょっと多くて……そこが愛しい。

冒頭のおばちゃん

「今回は、こんなやばい箱の物語ですよ!」という説明のためだけに登場した、ただひたすらかわいそうな映画冒頭のおばちゃん。
何があったのかわかりませんが、ハンマーを手に超物理攻撃で箱と対峙しますが、悪魔の力にあっさり敗北。
関節を自在に操り、物理法則を無視したトリッキーでド派手なダンスを繰り広げ、悪魔の力の恐ろしさを体現してくれます。

しかし、まさかの生きていたという点が、意表を突かれました。
ミイラ状態で、箱を手にするエミリーに「駄目ーっ!」と叫んでフェードアウト。
ひたすら箱の危険さを伝える存在に徹するその姿には、胸を打たれます

悲しきブレット

母親の新しい恋人?ブレットさん。
完全なただの当て馬状態。
かわいそう

特に見せ場もなく、歯を失って退場。
その後の行方すらわかりません。
かわいそう

学校の先生

冒頭のおばちゃんは、箱を所持していながら殺されずに済んだのに、ただ預かっていた(?)だけの先生は、この作品で唯一の死を遂げた犠牲者じゃないでしょうか(ラストシーンも生死はまだわからないので)。
突然目から血が出てきて、逃げようとドアに向かってよたよたと走る後ろ姿は、涙なしでは見守れません。
かわいそう

悪魔アビズーの攻撃方法

あまり統一感のない、本作の悪魔アビズー
目的もいまいちわからないのですが、神父さんが「肉体も魂も食い尽くしてしまう」みたいに言っていたので、復活を目指しているのでしょうか。
「子殺し」を意味する名前のようなので、ただ子どもに取り憑いて殺すことが目的なのかもしれません。
その割に、「俺に乗り移れ!」という父親の愛情溢れるクライドの言葉通りに移動してくれるなど、せっかくの目的が中途半端になってしまうような優しさも見せてくれます

優しさと言えば、攻撃方法です。
最初のおばちゃんや学校の先生、ブレットには容赦なく超能力攻撃で即KOだったのに、クライド一家には手加減してくれます。
クライドが手に持つ聖書を吹き飛ばすだけだったり。
エミリーの母親のステファニー戦では、裸足のステファニーに対して、食器を床に撒き散らして破片で攻撃するという頭脳プレーまで見せてくれます
まだエミリーの理性がブレーキをかけているのでしょうか。
だとすると、なおさらブレットはかわいそう。

ガバガバな病院

決戦の舞台は病院という、悪魔祓いとしては珍しいシチュエーション。
にしても、病院内のセキュリティがガバガバ過ぎて心配になります
警備体制に落ち度があるとはいえ、勝手に理学療法室を使われて悪魔祓いをされたら、病院側もたまったものではありません。

遺体安置室?は、電気つかないんですかね

ただ、近代科学の象徴である病院で悪魔祓いという舞台設定は、けっこう斬新で面白いな、と思いました。
『エクソシスト』時代にはなかったMRIに映るアビズーの顔(?)なんかも、面白い試みだったと思います。

異端の神父・ザデック

個人的に何よりの突っ込みポイントは、若き神父・ザデックでした。
見た目のパンクさは見逃しましょう。
登場シーンでいきなり歌っていた唐突さも見逃しましょう。
教会が匙を投げたエミリー案件に手を差し伸べてくれた、優しいザデック。

しかし、その悪魔祓い方法には度肝を抜かれてしまいました。
突然身体を上下にリズミカルに揺らしながら歌い出したところは、本気で何が始まったのかわかりませんでした
しかも、「いつ打ち合わせしたの?」という感じで、その歌に合わせて平然と聖書を読み上げるクライド。
これだとどちらかというと、悪魔祓いをするのはクライドがメインに見えます

その儀式もアブズーの抵抗に遭い、逃げたエミリーを追いかけたクライドが自分に乗り移らせた状況の違和感に気がついたザデックは、「これは違う」と呟き、またとんでもない声量で歌い始めます
あとはそのまま、張りのある美声で聖なる言葉を轟かせるだけで、クライドの体内からアブズーを追い出すことに見事成功!
オリーブ油も水も蝋燭も、いらんやん

実はこのザデック役のマティスヤフ、本物の敬虔なユダヤ教徒であり、本業はまさかのレゲエシンガー
「ユダヤ教のモチーフとレゲエ、ロック、ヒップホップのビートボックスのサウンドを融合した音楽で知られる」(Wikipediaより)そうです。
そりゃ歌うわ

「とても普通」と感想で書きましたが、ラストシーンを含め、ザデックだけは強烈な個性を発揮してインパクトを残してくれました
こういうの大好きです。

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