【映画】ジグソウ:ソウ・レガシー(ネタバレ感想)

映画『ジグソウ:ソウ・レガシー』(ネタバレ感想)
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『ジグソウ:ソウ・レガシー』の概要と感想(ネタバレあり)

ある密室に男女5人が監禁される。
5人は目の部分をくりぬいたバケツを頭にかぶせられ、身体は鎖につながれており、対面する壁には一面に鋭い刃が光っていた。
一方、刑事のハロランとキース、検視官のローガンとエレノアは、町中の公園で発見された死体を検証していた。
死体の無残な様子から10年前に死んだはずのジグソウの手口が浮かび上がり、死体に埋め込まれていたUSBメモリを確認すると、「ゲームは始まった。4人の罪人が犯した罪が償われるまで終わらない」というジグソウの声が響きわたる。

2017年製作、アメリカの作品。
原題はシンプルに『JIGSAW』。

本記事には、前7作『ソウ』〜『ソウ ザ・ファイナル 3D』のネタバレも含まれるのでご注意ください。
前作『ソウ ザ・ファイナル 3D』については、以下の記事をご参照ください。


7年の時を経て、完結した(はずの)『ソウ』シリーズが帰ってきた!

と、『ソウ』大好き人間にとっては、公開当時テンションが上がった1作。

今回、改めてシリーズを通して連続で観てみると、どうでしょうか。
正直な感想としては、「うーん……」という何とも曖昧な感じです
以下はちょっとネガティブが多くなりがちかもなので、ご注意ください。

まず、公開当時に観た際の感想としては、内容や雰囲気はしっかり『ソウ』らしさが感じられ、とにかく嬉しかったことを覚えています。
何より、トビン・ベル演じるジョンがしっかりと登場くれた点は、重要なポイントです。
冒頭のアクション映画っぽいシーンは今までの『ソウ』シリーズでは見られなかった雰囲気で、時代の流れも感じました(スタッフもけっこう入れ替わっているんだろうな、という意味)。

ジョン以外は新しい登場人物ばかりで、展開もけっこう目まぐるしくスピーディだったため、最初は登場人物を把握するのに手間取りました。
しかし、ある程度重要な人物が固まってきてからはわかりやすくなり、最後のどんでん返しもしっかりと『ソウ』シリーズの血を受け継いでいたと言えるでしょう。

でも、どうしても感じてしまう、「何かこれじゃない」感
いや、これはいわば老害的な、懐古厨な反応でしかないだろうとは思っているのですが、それでもどうしても違和感が拭えないままでした。
それが特に、改めてもともとシリーズから立て続けに観ると顕著に。
面白いは面白いのですが、なぜか『ソウ ザ・ファイナル 3D』までの7作と比べて、何回も観たいとは思えないのです。


『ソウ ザ・ファイナル 3D』の感想で書きましたが、そもそもシリーズは7作目で完結であることを、当時のプロデューサーが明言しています。
今回、あえて『ソウ』というストレートなタイトルは外しているのは、いわばその判断を尊重しており、スピンオフ的なニュアンスもあったのでしょう。
なのでそもそも、本作を連続するシリーズの一環としては捉えない方が良いのかもしれません

監督はマイケル・スピエリッグとピーター・スピエリッグの2人(一卵性双生児らしいです)でこれまでのシリーズとはパッと見関わりがなさそうですし、脚本のジョシュ・ストールバーグとピーター・ゴールドフィンガーもこれまでのシリーズとの関わりは見当たらず、諸々一新されています。

現時点で本作をシリーズの一環として捉えてしまっているのは、これを書いている時点で間もなく日本公開の『ソウX』が、シリーズのナンバリングタイトルとして帰ってきているから、というのが大きいでしょう(正確には読みは「エックス」でしたが、「テン」も意識されているのでは)。
『ソウX』が10作目ということはすなわち、ナンバリング的には『ジグソウ:ソウ・レガシー』が8作目、続く『スパイラル:ソウ オールリセット』が9作目という解釈になります。
ただ、『ジグソウ:ソウ・レガシー』が製作された当時は、8作目というよりはスピンオフ的なイメージで作ったのではないかな、という点は覚えておいた方が良いかもしれません

シリーズ8作目として捉えると少々厳しい視点になってしまいますが、スピンオフ作品として捉えると少し寛大になれます(自分の勝手な観点ですが)。
完成度も決して『ソウ』シリーズが積み上げてきた歴史を崩しかねないような雑なものではありません。

しかし、「シリーズ完結」と明言されていたのをわざわざ撤回してまで新たに作る必要性があったのかなというと、微妙なところ
このような例は『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・パーク』など枚挙にいとまがなく、大きくなりすぎたタイトルにはつきものなのでしょうが、どちらかと大人の事情で再び利用された、という印象がどうしても。
それが、ファンとしても「シリーズ新作をまた作ってくれた!」と手放しでは喜べない要因かもしれません。

まぁまぁこの点を言い出すと、ホラー映画でも『エクソシスト』だったり『オーメン』だったり、古い名作の続編が今になって作られ始めていたり、そもそも近年はリメイク作品も多かったりと、映画業界全体の壮大な話になってしまいそうなので、止めておきましょう。
『ジグソウ:ソウ・レガシー』にもジェームズ・ワンとリー・ワネルが相変わらず製作総指揮として名を連ねているので、それだけでも外部がとやかく言うべきではないかもしれません。


そんなこんなで、前置きが長くなりましたが内容へ。
数年振りの新作で、作品内でも10年の時が流れているというのは面白かったですし、しっかりとジョンを絡めてきた構成は見事でした
当然ながら「生き返った」わけではなく、異なる時間軸を絡めた構成。
この時間軸のトリックは『ソウ2』を連想させますし、5人の最後のゲームであるアナとライアンのショットガンを挟んだ構図も、足を繋がれた2人、片方の足は切断されている、真ん中に銃、などなど『ソウ』のバスルームがオマージュされているのは間違いありません。

『ソウ』シリーズの後半は「誰がジグソウ側か」というのはだいたいわかっていたので、犯人の意外性はシリーズを追うごとに弱まっていきましたが、今回は再び犯人の正体がまったくわからない状態で、むしろ全員が怪しく見える演出で、最後のトリックからの犯人判明まで意外性があり見事でした
誰が?何のためにこんなことを?という、『ソウ』の原点に立ち返ったようなどきどき感があったのは高評価です。

ただ、ジョンの絡め方は上手かったとはいえ、さすがに強引なあとづけではあるので、粗さは今までのシリーズ以上に目立ちます。
一応メインの筋を勢いで押し切れてはいましたが、「いやいや無理やろ」なシーンは多数あります。

それらにいちいち触れるのは避けておくにしても、どうしても引っかかってしまうのは、また新たなる後継者の登場です
それはもうスピンオフであれシリーズを続ける限り、仕方ないかもしれません。
しかし、まさかのジョンの最初のゲームの頃からローガンが関わっていたというのは、さすがに色々とこれまでの設定が崩壊してしまうような。

ジグソウの最初のゲームにしてはちょっと壮大すぎる、というのも目を瞑るべきかもしれませんが、最初のゲーム対象者はセシル(ジルを流産させた薬物依存の男性)だったんじゃないのかな。
もはやシリーズ終盤でも無茶がありそうな壮大すぎる装置を使っていたのを「最初のゲームだった」というのは、少しずるい気も。

それで言うと、ジョンの登場もそうですね。
こればかりはどうしてもありませんが、さすがに7年の時を経ているので、トビン・ベルもそれなりに当時よりお年を召されています。
それでもほとんど変わっていなかったのはびっくりするほどのレベルでしたが、あれが実は1よりも前のジョンだったというのは、ミスリードにちょっと印象を悪用した感も否めません。

そもそも今さら新作を作るなら「新章」としてジョンを無理に出したり直接的に絡める必要もなかったような、いやでも、やはりジョンが出てこないとシリーズとして締まらないのも事実なような。
それらのバランスを考慮した苦しい環境の中では巧みな脚本でしたが、『ソウ』シリーズを通した年表を考えると、本作によってさらにめちゃめちゃにはなってしまいます


ダメだどうしてもネガティブになってしまう!
以下、良かった点を拾っていきます!

何だかんだ、久々のゲームはやはりそれだけで面白かったです。
一番ツッコミどころが多い装置が一番印象的なものですが、ミッチが巻き込まれた大掛かりすぎるぐるぐる装置(?)はとても好き
他も、引っ掛かり方が「相手の心理を読めばわかる」レベル以上にご都合主義感はありつつも、人体破壊なども技術の進化が感じられました。

特に最後のレーザーメス首輪は、気合が入っていたのが伝わってきました
ハロランの頭部がばっさりと割れて開いた映像をがっつりと映したのは、製作側の自信が感じ取れます。
花のような感じが何となくゲーム『ラスト・オブ・アス』を思い出しました。

犯人だったローガンも、初期からの後継者であったというのは少々無理がありつつも、ジョンとの繋がりは面白かったです。
しかし、レントゲン写真の名前を間違えたって、まぁかなりのミスですよね
悪気はなくとも恨まれて仕方ないレベルですが(研修医1人に任せていた病院も悪い)、それでゲームに巻き込まれたのも、その割にあっさりと助けてもらえて後継者に選ばれたのも、ちょっと謎は多め。
いけない、ネガティブになってしまったのでストップ。

最後を「ゲームーオーバー」で締めなかったのは、個人的には潔さを感じました
「ゲームオーバー」締めは『ソウ』シリーズの象徴なので物足りなさを感じてしまうのも事実ですが、それをあえて避けているのは、上述した通り、やはりシリーズの正統続編ではなくスピンオフ的な位置付けで製作されている意図を感じます。

「俺は死者の代弁者だ」というのは、ジョンの思想とはまったく異なり、とても後継者とは言えないでしょう。
それも踏まえて、ジョンとの関わりを踏まえつつも、単なる後継者としてではなく、独自の思想で動く犯人像として上手く描かれていたのではないかと思います
後継者として動いていたわけではないからこそ、10年振りに事件を起こしたというのも不自然ではありません。


エレノアは怪しすぎたので逆に犯人ではないだろうなと思いましたが、個人の収集だとすると、あそこまで過去のゲーム道具を集めたのはすごいですね。
ダークウェブにファンサイトまでできてしまうジグソウ、それもちょっと現代的で面白い

「ジョンが生き返ったのでは?」と無茶な展開を思わせるミスリードがしたかったのかと思いますが、遺体の交換はあまり必要なかったような。
結局取り出したジョンの遺体はどうしたのでしょう……?

ジョンの遺体と入れ替わっていたのはエドガー(ゲームを開始して撃たれて昏睡して殺された男性)でしたが、エドガーを撃った銃の弾をローガンが入れ替えたシーンがトリックでした。
でもあれ、エドガー、撃たれた直後には銃弾取り除いてもらえなかったんですね
ずっと弾が入り込んだまま昏睡していたんですね。
いやでも、弾が留まっている場所が危なければ、体力が回復してからでないと手術できないとかもあり得るのかな。

ライアン(脚を切断されたゲーム参加者)は、最初めっちゃ嫌な奴でしたが、終盤は謎の憎めない癒し枠になっていました
顔芸というか、何となくコメディめいていたのは意図的だったのか、そう見えていたのは自分だけか。
あの少し緩い空気感も、過去のシリーズでは見られなかった要素です(これは別に良い悪いではなく)。


ちょっと細かく考察というか整理するには大雑把すぎたので省きましたが、大枠としては、

描かれていた5人のゲームはジョンの最初のゲーム
  ↓
それを模倣してローガンが新たなゲームを実施した

という構図でした。
ローガンたちの元に運び込まれてきた遺体の特徴(髪の色など)は、よく見ると最初のゲームの参加者たちのものとは少し異なります。
ローガンの目的は、主にはハロランに対する復讐と制裁でした
色々と不正をしていたハロランでしたが、情報屋であったため放免したエドガーが、ローガンの妻を殺害したのでした。
ついでに、彼に関係のある犯罪者3人を利用した形で、発見された死体は彼らのもの。

というわけで、大人の事情もあって復活したであろう数年振りのリスタート作としてはしっかり『ソウ』の雰囲気は受け継いでいましたが、良くも悪くもジョン(トビン・ベル)頼みな部分もあり、そこが少し中途半端にもなっていた印象でした。

追記

『スパイラル:ソウ オールリセット』(2024/09/01)

次作『スパイラル:ソウ オールリセット』の感想をアップしました。



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