【映画】アウェイク(ネタバレ感想・考察)

映画『アウェイク』
(c)2007 AWAKE HOLDINGS LLC. All Rights Reserved.
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

映画『アウェイク』
(c)2007 AWAKE HOLDINGS LLC. All Rights Reserved.

富豪の青年クレイトンは何不自由なく暮らしてきたが、心臓に病を抱え移植手術が必要だった。
ある日、友人の医師ジャックの根回しでドナーを得たクレイトンは、愛する秘書サムに求婚し、満ち足りた気分のまま手術室へ運ばれる。
しかし、全身麻酔から意識が目覚めてしまう「術中覚醒」が起こり、手術の痛みを味わうとともに、驚くべき事実を知ってしまう──。

2007年製作、アメリカの作品。
原題も『Awake』。

上の2枚目の画像はDVDのパッケージなのですが、謎の疾走感があり「そういう作品じゃない」感が強めで、何でこんなデザインになったのか気になります。
しかもジェシカ・アルバ(サムことサマンサ・ロックウッド役)ばかり妙にフィーチャーされていますし、演技は間違いなく素晴らしかったですが「体当たりの演技!」は何となく違うような。

クレイことクレイトン・ベレスフォード・Jrを演じたヘイデン・クリステンセンはすごく見たことがある気がしましたが、『スター・ウォーズ』のエピソード2および3のアナキン・スカイウォーカーでした。
ジャック医師を演じたテレンス・ハワードも既視感があったのですが、日本人っぽい顔立ちだからかもしれません。


さて、本作は、全身麻酔をしたにも関わらず意識があり、しかし身体は麻痺しているため動かせないという「術中覚醒」をテーマとした作品
もう、それだけでめちゃくちゃ怖いですね。
人が痛がっているを見るのは好き(映画とかフィクションの話ですよ)だけれど自分が痛いのは大嫌いという最低な人間である自分にとって、まさに地獄の拷問のような現象です

その原因はいくつかあり、主なものは以下のようです。

  • 麻酔薬の不足
  • 鎮静作用の相対的不足
  • 個人差の評価ミス
  • 原因が不明確

最後の「原因が不明確」、怖すぎます。
『アウェイク』においては、上の三つのいずれかでしょうか。
逃げ出したらしいフィッツパトリック医師の代理・ラリー医師の意図的なものかとも考えましたが、彼には特にそのようなことをする目的がありません。
アルコール依存っぽかったので、単にミスだった可能性はあり得そうです。

術中覚醒による緊迫感のピークは、クレイの心の声が聞こえまくっているあたりでした。
術中覚醒は、会話がぼんやり聞こえる程度のものから、痛みまで感じるものもあるようですが、クレイはどうやら最悪の、痛みまで感じるパターンだったようです。
あれが長時間続いたら、気が狂いそう。
術中覚醒した患者には心的外傷後ストレス障害(PTSD)も多いようですが、それも当然、と思えます。

クレイが幽体離脱(?)をしてからは、術中覚醒の緊迫感は薄れてしまったので少し残念に思っていましたが、その後はまさかの展開でした。
先ほど「術中覚醒をテーマとした作品」と書きはしましたが、術中覚醒の恐怖がメインかと思いきや、思ったよりサスペンス要素が強めというか、術中覚醒は演出の一部であり、どろどろの人間関係が本質だった本作
ほとんど前情報なしで観たので、これはこれで予想外の展開でとても楽しめました。


だいたい丁寧に説明されるので考察する要素はあまりないですが、若干ややこしかった本作の背景。
少し整理すれば、クレイが心臓の発作で運ばれ、たまたまジャック医師が担当になり命を救ったことで、クレイはジャック医師を主治医として信頼を置くように。
しかし、クレイが大富豪であることを知ったジャック医師は、同僚のパットナム医師やフィッツパトリック医師、そして当時医師として勤務していたサム(当時は違う名前)を巻き込み、心臓移植をトリックとした壮大な金銭目的の殺害計画を練り上げます。

ジャック医師の動機としては、医療過誤訴訟に伴う費用のようでした。
親友と思わせるまで仲良くなりながらも犯行を実行に移そうとしたのは、なかなかの危険人物。
途中でトラブルがなければそのまま実行していたかと考えると、サム以上にやばかったのはジャック医師だったかもしれません
とはいえ根は真面目そうでもあるので、医師の激務や医療過誤訴訟のストレスがおかしさを暴走させたのでしょう。

しかし、やはり本作で一番印象が悪いのはサムでしたね。
名前を変えて別人になってまでクレイに近づき、半ば押し切るように結婚。
とはいえしっかりとクレイの愛情を勝ち取るのは、なかなかの魔性っぷり。
クレイはどうも騙されやすいようですが、仕方ないとも思えるほどの手の込みようではありました。
必要以上にお金持ちになるのも、やはり楽ではなさそうです。

そんなクレイの父親は、やり手の経営者でしたがDV気質で、最終的には母親のリリスがクレイを守るために殺害。
映画序盤は子離れできていない理解の乏しい母親に見えましたが、とにかくクレイのことを第一に考えていたのが最後まで一貫しており、サムとの対比もあって、自らの命よりもクレイを優先する終盤は感動すら与えてくれました。

最終的には「お母さんが正しかった」という展開になりますが、さすがにあの距離感の近さは愛情を超えた依存傾向もあっただろうと感じますし、ベテランのナイヤー医師を紹介したときも押しつけ感がかなり強めだったので、クレイが反発していたのも仕方ないところ
のちの展開の伏線のためとはいえ、ナイヤー医師も「当然私に頼むだろう?」みたいな不遜な態度だったので、すでにジャックという主治医がいたのは別にしてもなお、クレイが好感を抱かなかったのも無理はありません。

一つ考察というか想像したのは、ナイヤー医師がクレイの父親の死亡診断書を偽装したのかもしれない、という点でした。
殴られたあとに落下して頭の同じ場所を打ったにしても、たとえそれが最終的な死因だったにしても、リリスが鈍器で殴った痕は隠しようもなかったはず。
その後何事もなかったように暮らしていることからは、ナイヤー医師が協力した可能性も考えられ、そう考えると「15年の付き合い」という関係性や、リリスとナイヤー医師の妙に近い距離感も何となく納得がいきます。
お金の関係だったのか、男女関係にあったのかはわかりませんが。


実は相当な悪女だったサムの最後の悪あがきと、そんな抵抗も虚しくあっさり捕まる姿は、カタルシスも感じられました。
しかしとにかく、クレイはひたすらかわいそう

ダメな父親だったとはいえ、父親を母親に殺され。
心臓の病気になり。
好きになった女性との結婚を母親に反対され。
信じていたサムとジャック医師に裏切られ。
その陰謀により母親も失い。
果ては全身麻酔まで効かない始末(これは結果的に功を奏したのかもですが)。

文字通り母親から与えられた命で、今後幸せになることを願ってやみません。

全体的に悪い人間が多く登場し、シチュエーションスリラーというより暗めのヒューマンドラマな雰囲気も漂っていた本作ですが、唯一にして最大のツッコミポイントは、日本企業シモトモのミスター・ワタリでした。
最初、日本語を喋っているとは思わなかったぐらい聞き取れない日本語
どうやらワタリを演じていたのはリー・ワンという俳優のようだったので、日本人ではなかったようです。
そのあたりがやはり残念ではありつつ、わざわざ「日本企業」を使っておきながら日本人を使わないというのも、謎といえば謎なのでした。

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