【映画】アメリカン・バーガー(ネタバレ感想)

映画『アメリカン・バーガー』のポスター
(C)2015 LITTLEBIG PRODUCTIONS.
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作品の概要と感想(ネタバレあり)

映画『アメリカン・バーガー』のシーン
(C)2015 LITTLEBIG PRODUCTIONS.

夏休みにヨーロッパを訪れ、バスツアーに参加したアメリカの学生たち。
バスの中で大騒ぎしながらとある田舎町にたどり着いた彼らは、美味しいと評判のアメリカン・バーガー工場の見学へ。
ところがそこは、人肉を加工するための恐怖の工場だった。
ハンバーガーの材料確保のため、工場の人間たちはチェーンソーを振り回して学生たちを襲い始める──。

2014年製作、スウェーデンの作品。
原題も『American Burger』。

よくある人肉ハンバーガーホラー。

と思っていたのですが、何これ

馬鹿馬鹿しい。
あまりにも馬鹿馬鹿しい。
グロ馬鹿エロ下品の4拍子

しかしながら、嫌いではありません
好きかと言われると、それはそれで口籠もってしまいますが……。

「アメリカン」は「アメリカの」ではなく、文字通りの「アメリカ人の」ハンバーガー
監督は、何かアメリカに恨みがあるのでしょうか。
と思ってしまうほど、アメリカ国歌やダース・ベイダーの曲が風刺的な雰囲気で使われていました。

しかも、生き残った太っちょオタクの俳優名は「リアム・マクドナルド」。
スペルは若干異なる「Macdonald」ですが、名前だけで選ばれたんじゃないかと疑っちゃう

舞台は、クラケッチなるヨーロッパの国。
実在はしないので、クラケッチとアメリカの間には何か確執がある、という設定なのでしょう。
作品の設定=監督の思想という考えは、安直ですね(反省)。


最近観た『ファンハウス』もホラーコメディでしたが、それとはまたまったく雰囲気が異なります。
というより、ホラーコメディと呼ぶのも違和感があるぐらい、あまりにも笑いがメイン過ぎました
コメディとかギャグというより、コントという表現が個人的には一番しっくりきます。
このブログに残すのが間違っている気すらしてきました。
いや、でも、『デストイレ』よりは良い。

言うなれば、ホラー&スプラッタをお題とした怒涛のコントラッシュ
グロはチープさMAXのため、痛そうな感じはまったくありません。
100%アメリカ人のハンバーガーを取り扱っているだけあり(?)、作品も100%お笑いに振り切られています。
何か、笑いの方向性や感覚が、アメリカなどの海外的なものより、日本のコントに近いようにも感じました。
唯一のホラー要素は、笑いながら楽しそうに殺してきた母親と子どもの家族ですかね。

終始とにかくあまりにもくだらないのですが、これだけ畳みかけられると、夜中に観たせいもあるとは思うのですが、なぜか微妙にツボってしまいました
特に、個人的にはバスガイド
停車するたびにフロントガラスにぶつかる姿に「ふっ……」と息が漏れ、こんなので笑ってしまう自分に悲しくなりました。
終盤のバスの車内で工場スタッフに取り囲まれたシーンでも、「血の惨劇を見せてやろうか」みたいな暴力の快感に目覚めちゃった表情、憎めない。

執拗なまでに繰り返し攻めてくるので、一回ツボるとどうでもいいシーンでも笑えるようになってきて、惨めさが増していきます
たぶん、朝起きてすぐに観たりしたら、無表情で虚無しか感じなさそう。
脳が疲れている状態で観るのがおすすめですね。

笑いの感性こそ人それぞれなので、まったく掠りもしない人にとっては、苦痛な78分間でしかないでしょう。
個人的には、悔しいながら絶妙なラインを攻められてしまったので、やはり嫌いじゃない。
ギャグが面白いかを別にしても、全体的に、個性溢れる独創的なセンスは抜群だったのではないかと感じます。

訳わからない「ミートボール」連呼とか、スローモーションとか、突然歌い出すとか、カナダ人なら許されるとか、「どこか1ヶ所でもいいから笑わせれば勝ち」と言わんばかりのバリエーションに富んでいたギャグラッシュ。
しかし、それら目が奪われがちですが、音楽も地味に良い仕事をしていました
それぞれのシーンの「それっぽい雰囲気」を高めていたように思います。
冒頭のバスで、赤ちゃんや動物が寝てる癒し映像で流れるような曲とか。
音楽のせいで笑ってしまったシーンも多々あり。

ちなみに、オープニング映像はセンスの塊でした
あんなん観たら滅茶苦茶わくわくするのに、あんな展開が続くとは誰が想像したでしょう。
本作は本作で良いと思いますが、人肉バーガー工場という設定はとても好きなので、真面目スプラッタバージョンも観てみたかった。


突っ込みどころは満載、ハンバーガー工場は謎だらけですが、いちいち突っ込むものでも考察するべきものでもありません。
というか、細かいことを気にしたら負けです(何に?)。
みんなでわいわい突っ込みながら観るのは楽しそう。

序盤で約半数が一気に殺されたシーンは、とても潔い。
どう考えても工場の中に連れ込んだ方が効率が良いのに、わざわざ野外で殺す大量の工場スタッフたち。
罠を仕掛けていたことからも、狩りも楽しんでいたのでしょうか。
オープニング映像でトラバサミに挟まれた脚だけが出てきたときなんて、すごい期待したのに

ホラー映画をメタった演出や、生き残りメンバーが裏をかいてきたところなどもセンスを感じましたが、誰が死んで誰が生き残っても特に感慨はありませんでした。
アメリカ人肉バーガーを食べちゃったところは誰も気にしていないところも良い。
GPS頼みのバスの運転手も、運転しながら目を瞑って食べていたので心配でした。

個人的には、工場の中がもっと見たかったです
そもそも、こんなに森の中ばかりで展開されるとは思ってもいませんでした。
狂ったシェフ(demented chef)も、噛み噛みだったり叫んだりと訳はわかりませんでしたが、キャラが立っていたのでもっと見たかった。
「くそったれ」と叫んでいたのは2回ともアメリカ人学生たちを迎えたときだったので、よほどアメリカ人が嫌いなのでしょうか。

作品紹介で「工場の人間たちはチェーンソーを振り回して学生たちを襲いはじめる」みたいなのが多く見られますが、詐欺ですよね
終盤、シェフが振り回していた小さいのも、あれはチェーンソーだったのか……?
コメディとはいえ、ホラー映画に多いようで意外と少ないチェーンソーでの人肉加工が観られるかと思っていたので、その点は残念でした。

とまぁ、色々と思うところがあるのに何を言いのか考えがとっ散らかってしまうような、独創的アートな作品でした。

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『アメリカン・バーガー』が好きな人におすすめの作品

『ファンハウス』

異常殺人犯6人が精神病院から脱走し、事件現場を再現したファンハウスで殺戮イベント。
こちらも『アメリカン・バーガー』と同じく、設定は良いのにコメディ色が強すぎな作品です。

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