【映画】ミッドナイト・ミート・トレイン(ネタバレ感想・考察)

映画『ミッドナイト・ミート・トレイン』
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

ニューヨークで暮らす写真家の青年レオンは、ある晩ギャングに襲われていた女性を助けるが、翌日その女性が行方不明になったことを知る。
女性との別れ際に地下鉄で撮った写真に不審な男が写っていることに気づいたレオンは、たったひとり調査に乗り出すが──。

2008年製作、アメリカの作品。
原題も『The Midnight Meat Train』。

北村龍平監督のハリウッドデビュー作。
北村監督作品は(たぶん)観たことがないので、他作品との比較はわかりません。

あと、観終わってから知ったのですが、原作がある作品でした。
原作はクライヴ・バーカーによる『血の本(Books of Blood)』シリーズの1作『ミッドナイト・ミトトレイン 真夜中の人肉列車』。
どうやら現在は絶版のようですが、いつか読んでみたい。

クライヴ・バーカーは『ヘル・レイザー』シリーズや『キャンディマン』シリーズなどの監督で、もともとホラー作家だったんですね。
知りませんでした。勉強になった。すごい。


さて、映画としての本作ですが、R18+だけあり、遠慮のないスプラッタシーンが印象的です。
後頭部を殴ったら目玉が飛び出すというコントのような演出は、「さすがにそうはならんやろ!」と笑ってしまいましたが、つかみは抜群。
その後も要所要所で惜しみなく噴き出る血飛沫は爽快で、スプラッタシーンが常に深夜の地下鉄内というやや異空間ということもあり、現実的というよりはエンタメ寄りのスプラッタでした。
死んでいるとはいえ、目玉をくり抜いたり爪を剥がす描写が丁寧に描かれるのは、観ている方が痛い。

その派手さとは裏腹に、ストーリーや全体的な雰囲気は暗くじめじめしていました
殺人鬼モノかと勝手に思っていましたが、だいぶファンタジー路線に進んでいってしまったので、若干の戸惑いも。
アート的な作品の印象でもあり、世界観の理解は少々難解。
だいぶ謎は残りますが、考察するには原作を読まないといけない気もするので、今回は置いておいて、いつか原作を読めたら改めて考えてみたいと思います。

大まかには、人類が生まれる遥か昔より存在する父祖のために肉を運んでいた、ということでした。
背景はクトゥルフ神話的な感じなのですかね?
文化的な背景がわかると、もう少し理解しやすくなるのかもしれません。

夜な夜な地下鉄で人を殺して人肉を調達していた解体屋の男は、父祖を守る組織の一員でしかありませんでした
車掌も、女性の警察官も、真実を知り父祖を崇め秘密裡に守る側の人間でした。
きっと、他にもたくさんいるのでしょう。
組織というより、宗教的な団体の方がイメージは近いかもしれません。

解体屋は、一員というより、車掌の言葉も加味すればしもべであったようです。
胸にあったいぼのような出来物は、契約の証というか、契約に伴うものなのでしょう。
切り取って保管していた理由は謎です。
体調が悪そうだったので、契約すると寿命が縮まったりするのかもしれず、それが車掌が言っていた「潮時」の意味でしょうか。
最初から若干チートな強さを誇っていましたが、走る電車から放り出されても生きていたのはさすがに人間を超越してしまっているので、半ばモンスター化もしてしまう様子
パワー頼みの肉叩きのハンマーに肉を吊るすフックを武器に戦う姿は、あくまでも「肉の処理」に徹する姿勢を貫いており、とても良いセンスでした。


好奇心から闇の世界を覗き込んでしまった主人公のレオンも、最後には調達係となってしまいました
妻(まだ彼女だった?)のマヤの心臓が車掌に抜き取られていましたが、儀式っぽさも感じたので、あれが契約の儀式みたいなものだったのかもしれません。
定かではありませんが、解体屋の男もあまり喋っていなかったので、舌を抜かれるのも契約の一環なのかも。

解体屋は、ちょっと強迫っぽいというか、ロボットのようなきちっとした動きで、独特の雰囲気を放っていて良かったです。
ただ、ラストでは調達係を引き継いだレオンの動きが同じ感じになっていたので、下僕として操られているというニュアンスの動きなのかもしれません。
あの髪型も、規則で決まっているのでしょうか。


個人的には、全体的に登場人物の行動原理がいまいちわからず、「え、何でそんなことするの?」みたいな動きが目立って感じられてしまいました
写真に写った指輪が、冒頭でレオンが助けたモデルの女性が解体屋に襲われた証拠になっていましたが、解体屋の言動的には、わざわざドアを押さえて乗せてあげるのは少々不自然に感じます。
あの紋章のようなものが描かれたゴツい指輪は、最後にはレオンに引き継がれていたので、人肉調達係の証のようなものであるのは間違いありません。

レオンがあれほどまでに解体屋に執着している理由もいまいちわかりませんでしたが、1回捕まって解放されたレオンは、もう半分、下僕のようになって導かれていたのかもしれません
グループ展から地下鉄に向かったのも、何かに取り憑かれたような感じになっていたので、すでに正常な状態ではなかったのかも。
終盤のバトルでは一般人とは思えない強さでしたが、半分力が目覚めていたと考えれば説明もつきます。

レオンは途中で一度解体屋に捕まり、車内に吊るされて父祖に襲われましたが、食べられはせず、胸に紋章のような傷を刻まれただけでした。
それはつまり父祖によって生かされたということであり、それが選ばれし者の条件なのかもしれません
序盤から地下鉄の夢を見ていたのも、熱に浮かされたようにあの事件に執着して引き込まれていったのも、潜在的にそのような要素があったからと考えると少し理解しやすくなります。

映画前半では「食肉解体場で働く男が毎夜人を殺して解体している」ように見えていましたが、真実は逆で、「人肉調達係になると食肉解体場で働き始める」んですかね。
100年以上前の人肉調達係も解体場で働いていたようですが、レオンが調達係になったのを考えると、解体場で働いている人から調達係が選ばれるわけではなさそうです。
あまりにも管理体制ガバガバな食肉解体場なので、就職していなくても働けそうな気もしますが。

一番かわいそうだったのは、人が良くて優しかったのに、逆さに吊るされた上にド派手に血を撒き散らして死んでしまったジャーギスでした。

序盤で登場した「覚えてろよ」のギャングたちが、その後一切登場しなかったのは少し肩透かしというか意外でした。
ですが、現実で「覚えてろよ」という捨て台詞を吐かれても、再び会うことはまずないと思うので、そこだけは妙にリアルだったとも言えます。

というわけで結局、考察は置いておくと言いながら、謎が多くてついつい色々想像してしまいましたが、細かい部分の整合性ではなく、現実にダークファンタジーが混ざり合ったような世界観と、非日常な真夜中の地下鉄内で繰り広げられる惨劇を楽しむ作品なのかな、と感じました。

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