【映画】呪いの怨恨 エコーズ・オブ・フィアー(ネタバレ感想・考察)

映画『呪いの怨恨 エコーズ・オブ・フィアー』
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

突如、心臓発作で亡くなった祖父が暮らしていた一軒家を祖父の遺言により相続しなければならなくなった大学生アリッサ。
しかし、固定資産税が高すぎるため、彼女は新学期が始まる前に祖父の家を売却する準備をすることに。
家を修理している間、アリッサはすぐに奇妙な出来事を経験し始める──。

2018年製作、アメリカの作品。
原題は『Echoes of Fear』。

邦題の「呪いの怨恨」というのは、わかるんですが日本語としておかしいような気がして、むずむずします。
原題の直訳は「恐怖の反響」みたいな感じなので、家のことを指しているんですかね。

ジャパニーズホラーから影響を受けたらしく、じめじめした思わせぶりな演出が印象的だった本作。
一方でミステリィ要素も含み、謎が解けるにつれて異常現象の意味も明らかになっていく点も楽しめました。

オカルトと人間怖い系のハイブリッド
被害者の霊がヒントを教えてくることはよくありますが、ここまでどちらの要素もホラー演出に特化した見せ方をしてくれたのは、斬新でした。
幽霊の仕業なのか?人間の仕業なのか?と思わせぶりな演出をしておいて、「実は両方いました!おかしな現象は、幽霊の仕業だった部分と、人間の仕業だった部分が混ざっていました!」というのはなかなか荒業。

伏線というか、真相に繋がっていくアイテムも多く丁寧な作りで、好印象。
しかし、登場人物が少ないこともあってか、展開はややテンポが悪め
二転三転するわけでもなく、ゆっくりと真相が明らかになっていくので、89分というコンパクトさの割には長く感じてしまいました。


しかし、主人公アリッサのおじいちゃんジミー。
とんでもないおじいちゃんでしたね
孫娘の存在で改心するも、時すでに遅し。
あの家を「売らねば……」みたいに言っていましたが、あんな死体を地下に隠したまま売る気だったのでしょうか。
あるいは、片付けてから売る気だったけど死んじゃったのかな。

おじちゃんの死は、間接的には被害者の霊のせいでしょうか
幽霊は実際にいたわけで、アリッサの頭を手でつかむなどある程度物理的な干渉も可能なよう(?)でしたが、おじいちゃんの死因は心臓発作なので、直接的に殺したわけではないようです。
脅かされてびっくりしちゃったのと、長年罪悪感に苛まれていたのも影響していたかもしれません。
事件が何年前のことなのかわかりませんが、直接殺せるならもっと早くに殺していたでしょう。

それで言うと幽霊はけっこう寛大で、自分を殺した鬼畜な犯人であるおじいちゃんの孫娘アリッサに対しては、どうやら恨んでいる様子はありませんでした。
異常現象はすべて、真相を解き明かすためのヒントであり、アリッサへの悪意ではなかったわけです。
ジャパニーズホラーなら末代まで祟られそうなものですが、それよりも、事件の真相が明るみになることを望んだのかもしれません

とはいえ、演出上仕方ありませんが、真実を明らかにしてほしいという幽霊の目的に対して、ヒントの出し方がホラーすぎました
ただあれも、協力を仰ぐしかないので仕方なしにアリッサを助けつつも、やっぱり憎くてちょっとは脅かしてやろうと思ったのかもしれません。


おじいちゃんには辛うじて良心が残っていましたが(いや、保身かも?)、さらに凶悪だったのが従兄弟でありお隣さんでもあったデビッドでした。
病気を装っていたわけですが、パーティのときに持ち歩いていたのは、犯行時に使っていた一酸化炭素(?)のボトルでしょうか。
いつも持ち歩いていたのかな。

日頃から病気を装っていることといい、杖型の刃物という斬新な武器で襲いかかることといい、不意打ちを得意としているようです
というより、年を取って力が落ちたので不意打ち型に転じたのですかね。
ただ、幽霊女性の行方不明のポスターを手に「こいつは俺たちが最後に殺した女だ」と言っていたので、その後は犯行は繰り返していないはず。
とはいえ、おそらく犯行をやめたのはおじいちゃんが理由なので、デビッドはいずれまた犯行の再開を夢見て、年を取っても実行できるように不意打ち型として準備を進めていたのかもしれません。

おじいちゃんとデビッドの犯行目的ははっきりとは描かれませんでしたが、おそらく単なる快楽殺人でしょう
「手順がある」と言っていたのも、オカルト的なものではなく、すぐに死んでしまってはつまらないので、なるべく長く生かして苦痛や恐怖を与え、楽しむためのものであったと考えられます。

ややわからなかったのは、なぜあの女性の死体だけがおじいちゃんの家にあったのか?という点。
デビッドの発言からは、これまで複数の女性を殺害してきたことが示唆されています。
幽霊女性の犯行の際は、回想映像からも、女性の家に忍び込んで犯行に至っていたはず。
なぜあの女性の死体だけおじいちゃんの家に運び込んで解体して隠していたのか?
その点は不自然さが残ってしまっていました


主人公のアリッサは、ホラー映画のヒロインにあるまじき強さを見せてくれました
演じていたトリスタ・ロビンソンは、綺麗ですが目力が強いので、目を見開いて怖がっているアリッサの顔がむしろ怖かったです。
幽霊役もいけそうな目力でした。
声も、アニメ声?ともまた違いますが、個性が光っていました。

真相解明のために家中を駆け回り、破壊しまくる姿は、頼もしさの塊。
ネイルで模様が描かれていた展示物が階段の壁から落下したシーンでは、怖がりながらも、落下に合わせて階段を駆け降りていく様子にちょっと笑ってしまいました。

相棒だったネズミがとにかく可愛かったですね
ハムスターではなかったので、ファンシーラットとかでしょうか。
あの子が癒し枠かつ飽きさせないための演出に活用されていました。
放し飼いであんなに大人しいのすごい。
肩に乗せてみたい。

友人のステフはめちゃくちゃ良い子でした
最後はかなり血を抜かれていたはずなのに、それでもアリッサを助けるという、彼女もまた逞しさを見せてくれました。
序盤でアリッサがステフからもらったお守りみたいなやつが、ステフが「今から行く」みたいな連絡のあとに割れていたので、完全にステフ死亡フラグかと思いましたが、本当にただ単に落ちて割れただけだったようです

そして彼氏のブランドン。
出番は少ないながら、強烈なインパクトを残してくれました。
身勝手なキャラが1人はいるのがホラー映画の常ですが、その中でも異常性が群を抜いていました

夫婦のどちらかが勝手にホームパーティを開いて人を呼び、もう片方が困ったり不満を抱く、みたいなシーンも洋画ではよくあります。
しかし、恋人という関係性で、しかも売るための片付けに来ているパートナーの祖父の家で、近所の人を呼んでホームパーティを開くというのは、正気の沙汰ではありません
完全なる他人でしかないのにそんなことができてしまう神経の図太さ、もはや尊敬レベル。
その他も自己中心的な言動しか見られず、なぜアリッサがブランドンと付き合っていたのか最後まで謎のままでした。

しかしそれにしても、あの侵入していた青年は、本当にただの不法侵入者だったんですね
何かの伏線かと思いきや、勝手に侵入して生活して心霊体験をして、アリッサに見つかって逃げ出して、そしてその後は出番なし。


というわけで、オカルト × 人間怖いのハイブリッドとしてはなかなかチャレンジングで面白かったですが、真相が明らかになった際に意外性やカタルシスがあるわけでもなく、うまくまとめきれず中途半端に終わってしまっていたような、惜しさも感じてしまった作品でした。

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