作品の概要と感想(ネタバレあり)
第二次世界大戦末期の1945年、ソ連の偵察部隊がドイツの占領地域に潜入し、古い教会で大虐殺の痕跡を発見する。
教会の地下には迷路のような通路が張り巡らされ、その先に隠されていた広大な研究室では、フランケンシュタイン博士の末裔が死体を機械を合成した不死身の「武器人間」を製造していた──。
2013年製作、オランダとアメリカ(とチェコも?)の合作作品。
原題は『Frankenstein’s Army』。
好き!
大好き!
ゲームの『サイレントヒル』や『サイコブレイク』が大好きなので、本作も当然のように大好きでした。
ロマン溢れるクリーチャーたち。
取ってつけたようなストーリーなどあってないようなもので、ひたすら武器人間たちを堪能する作品でした。
逆に言えば、クリーチャー系に興味がない人にはまったく魅力が感じられない映画でしょう。
そういうメリハリの効いた尖った作品、大好きです。
あってないようなストーリーではありますが、武器人間が存在する必然性を描いた舞台設定は巧みでした。
ナチスにおける極秘裏の研究。
しかも武器人間を作ってる博士は、かの有名なフランケンシュタイン博士の末裔。
そりゃあ仕方ないね!
ってなりますよね(なりますよね?)。
しかし、何でもかんでもどんなことでも「あり得るかも」と思わせるナチスは、さすがと言えばさすがです。
ファウンド・フッテージの手法を用いた作りも、本作に合っていたと感じます。
本作におけるマッドな博士は、まさに現代版(とはいえ舞台は1945年ですが)のフランケンシュタイン博士。
『フランケンシュタイン』は、メアリー・シェリーの原作ではフランケンシュタイン博士による怪物の製造方法は謎に包まれていますが、のちの映画では「繋ぎ合わせた死体が、雷を浴びたら生命を得て目覚めた」といった設定となっています。
本作では、フランケンシュタイン博士(孫)が「祖父は雷を必要としたが、私は発電機でやれる」と述べ、実際に発電機で武器人間たちに生命を宿していたので、映画版の設定を踏襲していたと言えるでしょう。
この発電機の仕組みは、博士の企業秘密のようでした。
謎すぎる発電機の作成が、博士最大の発明でしょう。
「私は発電機でやれる」の台詞だけで押し通した勢いも潔い。
ついでに言えば、ソ連軍がみんな英語なのも潔い。
本作のBlu-rayなどを発売しているソニー・ピクチャーズの公式ページでは、
「『ムカデ人間』を彷彿させる戦慄… 今度は、人と機械をくっつけたい!」
と書かれていました。
確かに、『ムカデ人間』は2009年製作ですし、『ムカデ人間』のトム・シックス監督も『武器人間』のリチャード・ラーフォースト監督もオランダの映画監督なので、影響を受けている面もあるかもしれません。
しかし、『ムカデ人間』でムカデ人間を作ったハイター博士と、本作で武器人間を作ったフランケンシュタイン博士は、その人間性がまったく異なります。
まず、フランケンシュタイン博士は、あのヴィクター・フランケンシュタイン博士の孫であり、いわば生粋のマッドサイエンティストの血統です。
さらに、個人的な性癖と趣味でムカデ人間を作り上げたハイター博士に対して、フランケンシュタイン博士には壮大な思想がありました。
それはいわば戦争を起こすような人間たちを武器人間が排除して、戦争を終わらせ、世界平和をもたらすというものです。
共産主義者とナチスの脳を半々にくっつけてお互いを理解し合わせちゃおうなんていう発想は、まさに天才のそれ。
何か最後は博士が死んで暴走してゾンビみたいになっちゃっていましたけれども。
いや、別に本作のフランケンシュタイン博士を持ち上げるつもりは全然ないですし、どちらもそれぞれ個性が光るマッドサイエンティストです。
ハイター博士を演じたディーター・ラーザーも素晴らしかったですが、フランケンシュタイン博士を演じていたカレル・ローデンの演技も光っていました。
本作の博士は発明の才能だけではなく、デザインセンスにも優れていました。
適当に武器と人間を組み合わせるのではなく、クリーチャー好きの心をくすぐってくるような抜群のデザインセンスの持ち主でした。
特に、表紙などにも抜擢されているモスキートの造形、たまりません。
メタ的に見ればリチャード・ラーフォート監督のデザインセンスが優れていたわけですが、あまりにも魅力的すぎて、ゲーム『バイオハザード ヴィレッジ』ではパクリ疑惑まで生まれてしまいました。
いや、「疑惑」と書いたのはカプコンが認めていないだけで、
これはさすがに!?さすがに!?
と思ってしまいますね。
バイオハザード大好きファンでも、これはさすがに。
ちなみに、左が『バイオハザード ヴィレッジ』のシュツルムというボスキャラで、右が『武器人間』のジャパンヘッド。
他にも似たクリーチャーがいたりもするのですが、さすがにこのシュツルムにはリチャード・ラーフォート監督も反応しており、当時のTwitterで「Oh dude, this is worse then I thought. First I felt angry, then proud, but now I see this, I feel sad.(あぁ、これは思ったよりも酷い。まず怒りを感じ、それから誇りに思いましたが、今はこれを見て悲しくなりました)」と述べ、法的措置などは取らずに黙認しつつも、カプコン側に「クレジットに名前を入れてほしかった」など伝えつつ説明を求めています。
ちなみにリチャード・ラーフォート監督は、インタビューによれば100体ほどの武器人間のデザインを考えたそうです。
そのうちの「50%はゴミみたいなやつ(笑)」で、残り50体の中から12体を本作で描いたそうです。
全部見てみたい。
本作の内容に話を戻しましょう。
ファウンド・フッテージな作りは本作に合っていると上述しましたが、POV特有の「何が起こっているのかわかりづらい」という弱点は、本作にもそのまま当てはまってしまいました。
せっかくの武器人間たちをじっくり眺めたかったですが、みんな登場時間が短めだったのも惜しいところ。
グロさはチープめではありますがなかなか攻めており、レイティングはよくR15+で落ち着いたなという印象です。
テッカテカの脳や飛び出した内臓が印象的なだけで、基本グロシーンのカメラの切り替えは早かったり、過激なゴア表現や人体破壊まではなかったからでしょうか。
ジャパンヘッドにやられた少年の損壊死体がしっかり映っていたりしたらR18+になっていたかもしれません。
ストーリーはないと言いながらも、展開はけっこう面白く、中弛みすることなく観られました。
ディマだけ秘密の任務を知っていたことが極限状況でも撮影を続ける理由づけにもなっていましたし、最後のサシャの裏切り(?)からのスターリンの横で得意げに微笑む写真なんて笑ってしまいました。
漁夫の利、とはちょっと違いますが、ずる賢さが一番得をするというのは非常に残酷な現実を描写しており、本作に相応しいラストだったように思います。
ゲーム化に合っていそう(というかそもそもがゲームっぽい)と感じましたが、上述した『サイレントヒル』や『サイコブレイク』はもちろん、あまりクリーチャーではないですが『OUTLAST』に近いかも。
願わくばもっと武器人間たちをじっくり堪能したかったですが、十分すぎるほどに楽しめて大好きな作品でした。
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