【映画】ラストサマー(ネタバレ感想・心理学的考察)

映画『ラストサマー』
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作品の概要と感想とちょっとだけ考察(ネタバレあり)

ある晩、車で遊びに興じていた4人の若者が、ひとりの男をはね飛ばしてしまう。
怯えた彼らは男を海に投げ捨て、他言無用の約束を交わす。
それから1年後。
彼らのもとに突然、事件を知る謎の人物からメッセージが届く──。

1997年製作、アメリカの作品。
原題は『I Know What You Did Last Summer』。
原題の方が内容をより表しているというか、作中で届いた脅迫文の文言そのままです。

『スクリーム』も担当したケヴィン・ウィリアムソンによる脚本の作品。
そのためか、ミステリィやサスペンス的な「犯人は誰なのか?」という要素も強め。
逆に『スクリーム』よりはホラー要素は弱めだった印象です。
ホラー映画のメタ的要素は本作にもありますが、これも『スクリーム』ほどではありませんでした。

4人の若者たちの過ちから始まった青春ホラーサスペンス。
90年代のこういう作品の雰囲気、独特なノスタルジーが漂っていて最高でした
なかなか殺人が起こらないのに、ついつい見入ってしまう構成も見事。

ポスターに書かれている「気絶してたら、謎は解けない。」というキャッチフレーズも最高ですね。
「そりゃそうだ」としか言えませんし、『ラストサマー』に限らずすべての作品に当てはまりますし、別に本作にそれほど当てはまっているわけでもありませんし、何でわざわざこんなキャッチフレーズにしたのかさっぱりわかりません
そんなところも90年代感があって好き。


ただ、比べるべきではないとわかっていてもどうしても『スクリーム』と比べてしまいますし、比べてしまうとやはりパンチは弱く感じてしまいます。

何よりキラー(殺人鬼)の魅力が弱かったのが、『スクリーム』と比較しての最大の敗因でしょうか。
キラーの正体は、2年前に車に乗っていて海に落ち、死んでしまったスージーの父親ベンでした。

誰やねん!

という、ここまでに登場していた人物ではなく、ぽっと出の新キャラだったところが、ミステリィではなくサスペンス感を強めていた要因であったように思います。
いや、「誰やねん」はちょっと言いすぎで、スージーの名前は出ていましたし、復讐劇として違和感はないのですが、事前の情報で犯人を推理できるというほどフェアなミステリィではありません。

あと、

2年前の7月4日、デビッド・イーガンが恋人のスージーと車に乗っていて海に転落してしまい、スージーだけが死んでしまった(たぶん事故)
 ↓
1年後(本作の1年前)の7月4日、娘を死なせたデビッドを恨んでいたスージーの父親ベンが、デビッドを自殺に見せかけて殺害。
その帰り道?に、ジュリーたち4人の車がベンを轢いてしまい、死んだと思い海に投げ捨てる
 ↓
実は生きていたベンが、さらに1年後の7月4日にジュリーたちに復讐

という、絡み合う設定がけっこう複雑でした
悪く言えば、ちょっと強引。
設定は複雑ですが、展開はシンプル。


話を戻すと、ミステリィ感が弱めなのは何も問題はないのですが、問題は、こんなこと言うのは非常に申し訳ないのですが、ベンがキラーとしての魅力に乏しかったところです。
あのコートはスリッカーコートというらしく(初めて知りました)、そこそこかっこいいですが、漁師なら大抵持っているらしいので、個性が強いわけではありません(だからこそ犯人が誰かわからなかったわけですが)。

凶器がずっと鉤爪かぎつめだったのは、冒頭の怖い話と一致させていたからでしょうか。
最初に鉤爪と聞いたときは『エルム街の悪夢』のフレディのイメージが浮かんでいましたが、実際はフック船長でした

しかし、ベンはただの凡人なのに相当タフでしたね
あれだけ豪快に撥ねられて血だらけになっていた上、海に放り投げられたのに生きていたというのがまずすごい。
レイが「脈がない」と言っていたのが情報が錯綜したすべての元凶でポンコツすぎましたが、仮死状態にあったのだとすればなおさら、復活して海から這い上がったのがタフすぎます。
しかし、若者たちと対等に渡り合う終盤の怒涛のバトルーシーンを見るに、相当身体は鍛えていたのでしょう。

さらには、手首を切り落とされた上に海に放り投げられたのに、まだ生きていたというのもまた驚きです。
とはいえ、少しでもホラー好きであれば、死体が映っていなかったので「生きているのだろう」というのは容易に想像がついたかと思いますが、最後にまたスリッカーコートを着て襲いかかってくる姿は、実に執念深すぎました
女性用のシャワールームにスリッカーコート姿で侵入して襲いかかるというのは、だいぶ変態度も増してしまっていました。

そのような、ベンが「ちょっとおかしくなっちゃった平凡なおじさん」だったところが、『スクリーム』のゴーストフェイスのような人気者キラーになりきれなかった要因ではないかと思います。
あと、やはり「顔」が大事ですね。
「マスクを被った殺人鬼」というのが、1人の人間を超えた存在としてアイコン化しやすいのでしょう

冷静に考えてみると、ベンがジュリーたちを襲ったのは、娘のスージーのことは関係なく、自分が撥ねられて殺されかけたから、ということになります。
7月4日を選んだのも、スージーの命日だからというわけではなく、自分が殺されかけた因縁の日だからということです。
そのあたりもややこしい。

最初にバリーが襲われながらも殺されなかったのは、まだ7月4日ではなかったからでしょう。
そう考えると、関係ないのに凶器をゲットするためだけにあっさり殺されたマックスはかわいそう。


と、冷静に検討してしまうと粗さが目立ってしまいますが、個人的には好きな作品です。

ジュリーがファイナルガールになるのは想定の範囲内でしたが、ベタなホラー映画パターンからすれば、レイも生き残ったというのは意外性もありました。
終盤のチェイス&バトルシーンはもうけっこうめちゃくちゃでしたが、緊迫感もありついつい熱くなる展開。
最近、こういうベタなバトル展開は少ない気がします。
氷?の中からヘレンやバリーの死体が出てくるところも好き。

また、導入部がとても上手いと感じました
4人が愚かすぎず、事故も「運転していたレイも含めて4人全員が飲酒したりふざけていたから自業自得だよね」というほどのパターンではないのが良い。

その後の隠蔽に関しても、「隠蔽しよう」派と「正直に警察に届けよう」派で対立しながらも、マックスが通りかかったので隠さざるを得なかったり、ぎりぎりで躊躇しながらも死体と思っていたのが急に動いたから思わず突き落としてしまったりと、悩みながらも隠蔽の方向に持っていかざるを得ない流れが自然でした


彼らの判断は確かに愚かでしたが、思春期は過ちを犯す時期でもあります
過ちや失敗を受け止めて受け入れて人間として成長していくわけですが、彼らはそれを隠蔽してしまいました。
そして、後悔の念に苛まれ続ける者もいれば、忘れて生きていこうとする者もいる。
しかし、過ちは彼らを見逃すことなく、彼らの人生に立ちはだかりました。

ある意味では、ジュリーたちにとっては、過去の自分たちが犯した過ちとの戦いだったとも言えるでしょう。
ベンは、現在の自分たちの命すら脅かす過去の過ちの象徴でした。
ジュリーとレイが助かり、バリーとヘレンは殺されてしまったのは、過ちを忘れずに後悔し悩み続けていたかどうかが左右したとも言えるでしょう。

ただ、いくら現実を認めて懺悔などをしても、人を1人見殺しにしようとしたという過去が消えるわけではありません。
ジュリーのように、過去の過ちにたびたび襲われ続けていくのです。
その意味では、ラストシーンのスリッカーコートは「めっちゃタフなベンおじさん」ではなく「過去の過ちの象徴」であったのだと捉えるとしっくりきます。


ちなみに、今でも新作が作られ続けている『スクリーム』シリーズに比べて、『ラストサマー』は3作で止まってしまっていますが、『ラストサマー』は何と、2021年にAmazon Primeでリブートドラマ化されたようです。
ただ、評価がいまいちだったこともあり、シーズン1で打ち切りになってしまったようですが……。

最後にさらなる余談ですが、本作ではジュリーとレイ、バリーとヘレンがそれぞれカップルでしたが、現実では、レイを演じたフレディ・プリンゼ・Jrと、ヘレンを演じたサラ・ミシェル・ゲラーが、『ラストサマー』の共演をきっかけに2000年から交際し、2002年に結婚しているようです。
おめでたい。

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